2010年06月01日

フランスの子育てが変わった!? ― maternage intensif 

アフリカやアジアで生まれ、アメリカで理論化された maternage intensif という子育てのやり方がある。France 2 で特集していたので紹介してみたい。

eleverautrement01.jpgすべての時間を自分の子供のために捧げる。この子育てをとても有効な方法だと信じている母親が増えている。その一方で、議論も巻き起こしている。キャプシーヌは3歳半の娘を胸に抱いて母乳をやる。このやり方は家族の了解を得ている。「いつまでやるの?」「はっきり決めていないけど…」。父親は「続ければいい」と容認している。母乳のあとは栄養のバランスのために普通のご飯も食べさせる。それは栄養学的な観点からだけではない。母と子供の関係を特権化する方法なのです。それをmaternage intensif(=強い母子関係)と呼ぶ。キャプシーヌはそれをネットで知った。そのためのフォーラムもあった。「子供の欲求に答えるのが嬉しくてやっているの。その喜びを分かち合うサイトがたくさんあるわ」。小児精神科医は、「子供の欲求ではなく、親の欲求でやっているのでは」と疑念を抱く。

大きいスカーフで赤ん坊をおんぶしたまま、一日の家事をやる母親もいる。「ベッドに寝かしておくよりいい。目が覚めたらぐずらないでちゃんと起きるわ」。maternage intensif のもうひとつの側面なのだが、「この子はオムツをしたことがないの。5ヶ月の赤ちゃんでも、子供がおしっこのサインを出したら、すぐに準備することができる。子供の反応を見て、おしっこをさせる。したくなったら眉のあたりが赤くなって私をじっと見るの。自然なおしっこよ。これはしつけではなくて、母子のコミュニケーションの問題。ふたりのあいだに会話を構築するの」。

母子一体化が進む一方で、疎外感を訴える父親もいる。またリポーターはお約束のように「それは赤ちゃんの奴隷になることでは?」と尋ねる。「いいえ、赤ちゃんの欲求に答えているだけです」。「おむつ代がかからないし」と言う父親もいる。7ヶ月のヨアキムは母親と毎日一緒に寝ている。「踏んづけたりするのが怖くないですか?」。「全然」。コドド co-dodo(=一緒に寝ること)もオムツと同じように子供がいやだと言うまで待つ。「この子の姉は一人で寝れるようになるまで3年かかりました」。お父さんの中には疎外されていると感じている人たちもいる。健全じゃないと思っている父親もいる。「ベッドは親用なのにいつも必ず子供が入ってくる」と母子関係が一体化していることを心配する父親。精神科医は言う。「それは母親の強い不安に対する薬のようになっている。父親が疎外されると、夫婦関係にもよくない」。3分の1の家族がコドドをやっていて、ときどきそうするという家族も3分の1いる。精神科医によれば、赤ちゃんの発達にどのような影響があるか、それは大人になってからしかわからない。

以上がニュースの内容である。日本人からすると「なぜそれがダメなの?」っていう印象だが(元サッカー日本代表監督のジーコが6歳まで母親のおっぱいをしゃぶっていたというエピソードなんかも思い出す)、 maternage intensif とは母親が3歳を過ぎても子供を抱いて母乳をやることに象徴されるように、歳を決めて早い時期に母子関係を切り離すのではなく、子供が望むままにべったり関係を続けること。フランスは早め早めに子供の自立を促すお国柄だったので、違和感を覚えている人も多いのだろう。日本人とフランス人のカップルの友達がいるが、日本人の父親が娘を寝かしつけながらそのまま一緒に寝てしまうので、フランス人の母親が子供の自立によくないといつも怒っていたのを思い出す。小さな子供でも別室で寝かせるのが当たり前、子供は親=大人の空間に入り込ませないというのが前提の国だったのに。いろんな分野でフランス的な価値観が崩れている。

このような傾向は情報化、消費化した社会の影響があるのかもしれない。現在求められている「ポスト近代型能力」(本田由紀)は、独創性、視点の広さ、コミュニケーション能力によって特徴づけられる。その能力の開発は子供が生まれた瞬間から始まり、子供を放任しておくだけでは伸ばすことができない。子供の意欲やコミュニケーション能力を伸ばすために子供に手間をかけ、細かく気を配る必要がある。教育社会学者の本田由紀は『多元化する「能力」と日本社会』の中で親子のコミュニケーションの豊富さや信頼関係が、子供の意欲や対人能力などのメンタルなスキルに影響を与えるというデータを出しているが、その種のディスクールは最近メディアの中でも蔓延している。maternage intensif はこういう考えと結びつきやすいし、すでに結びついているのかもしれない。

ニュースに「子供の奴隷」という表現が出てきたが、maternage intensif がフランスで懸念されるのはそれが女性の自立の妨げになるかもしれないからだ。まさに本田由紀は、母親が子供の能力を引き出すことに専念せざるをえないと思うことによって、女性のライフコースの選択に大きな影響を及ぼすのではと危惧している。つまり子供をあきらめるか、仕事をあきらめるかの選択を迫られ、仕事と子育ての両立が難しくなると。



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2010年03月12日

日本の子育てはフランスに追いつけるか(2)

ちょうど1月19日にフランス国立統計経済研究所(INSEE)が、2009年度のフランスの出生率(正確には「合計特殊出生率」、女性1人が生涯に産む子供の数)を1.99(暫定値)と発表した。08年の2.005から下落し、2年ぶりに2.00を割ったが、それほど大きな変化ではない。フランスの人口は1月1日現在6466万7000人で、前年同期比で34万6000人増加した。

先回の重要な論点は、もともとフランス人の女性は働いていたのではなく、1960年代まではフランスでも「サラリーマンの夫と専業主婦の妻」というのが標準家庭だったということ。そして70年代以降、働く女性に優しい法律を策定することで、そのようなライフスタイルがここ30-40年のあいだで一気に変わったのだった。

それでは佐々木常夫氏の「日本の子育てはフランスに追いつけるか」の続きを。

「働くのは夫」という共通意識は日本企業を長時間労働に追い込んでいる一因でもある。それは「家で夫は何もしない」という前提だから、会社にすべてを預け、男の人生=会社になってしまう。この役割分担は明治の富国強兵の時代から始まり、高度経済成長の時代にはそれなりの幸せを生み出したのだろう。男たちは家のことが気になっていたのだろうが、会社が帰らせてくれない。しかし家で妻の訳のわからない話を聞いたり、気が重くなる子供の教育に関わるよりは、会社にダラダラいるほうが心地よいし、楽なのだ。

日本にフランス式が根付かないもうひとつの理由は、自己責任や自助努力という考えが日本に蔓延しているからだ。このアメリカ式の考え方が日本にも浸透して、親の経済力では大学に行けないとか、自分の稼ぎでは子供を育てられないという人が現実にいるのに、それを自己責任という理由で切り捨ててしまう。

佐々木さんの出身地の秋田県では07年に子育て新法の導入が議論されたという。4%の県民税に0・4%を上乗せして、年間25億円を集め、県独自の子育て支援に使おうという自治体初の試みとして注目を集めた。その内容は、保育料の半額助成、3人目以降の子供には奨学金を貸与することだった。事前の県民へのアンケートで、この策が秋田県の発展につながると70%が回答したが、一方で新税を負担したくないという回答が70%に上った。そしてこの計画は結局流れてしまう。つまり現実の生活や目先の損得が、長い目でみれば正しいであろう政策や理想を打ち壊したわけである。

やはり日本ではフランスのような少子化対策は無理なのだろうか。政治家はもちろんのこと、知識人やメディアも一緒に信念を持って根気よくアピールことだと佐々木氏は述べている。

佐々木氏は現在、東レ経営研究所社長という立場だが、ご長男が自閉症で、かつお連れ合いがうつ病でご苦労なさったようである。朝5時に起きて家族全員の弁当を作るには、10時に寝る必要があり、当然、残業などやってられない。それで上司と何度もぶつかった。しかしそれを通して佐々木氏は働く女性の立場を理解・実感し、一方で自分が責任を持って家のことをやらないとこの家はダメになると思ったのだそうだ。会社に依存する男性たちを一方的に批判するのではなく、彼らはそういう立場になったことがないから知らないだけなのだと擁護する。

佐々木氏は『東洋経済』の次の号で日本企業の残業について書いている。もちろん誰も表立っては言わないが、正社員は残業手当や休日手当てを増やしたいから、進んで残業をやる。つまりわざとダラダラと仕事をして残業まで持ち込み、効率や生産性を落としているのだと喝破している。そういう男性社員は「家に帰ってもすることがない」と言う。つまり家庭にコミットするつもりもなければ、仕事以外の人生もない。それが多くの男性社員の人生観、生活態度なのだと。

『東洋経済』(1月9日号)にリチャード・カッツ氏(FTやNTに寄稿する知日派ジャーナリスト)が「子供手当論争から日本の病巣が見える」という興味深い記事を書いていた。そこで「日本の社会保障の衰退は日本の社会保障制度が国民全体を対象としていないことが理由だ」と述べている。つまり、社会保障制度が職業や会社の規模、婚姻などによって分割されているからだ。政府が社会保障を企業に丸投げしてきたせいで、どの組織に所属するかで給付される額や受けられるサービスがバラバラで、不公平なものになる。子育てに関しても、余裕のある大企業は子育て支援をするかもしれないが、中小企業はそれどころではなかったりする。相変わらず制度的に主婦が優遇され、働く女性がバカを見たりする。日本全体が潤っているうちはいいが、「貧すれば鈍する」の状況だとそれが顕在化して、自分と立場の違う人間に対する不満と不信が募り、社会的な連帯感が損なわれるとカッツ氏は指摘する。確かに私たちが日ごろ実感していることである。

さらに問題なのは世代間の不信である。佐々木さんが挙げていた「秋田の子育て支援案」が流れてしまった例も、その側面が大きいのだろう。自分の子供や孫にはお金をやっても、他人の子供や孫のためには税金を払いたくないのだ。民主党が打ち出す「子供手当」に対する支持がそれほど大きくない(60%から徐々に下がっている)のはそういう連帯感の欠如が根本にあるのだろう。今や日本では高齢者を抱える世帯の方が、子供のいる世帯よりも多く、過去20年で子供のいる世帯が半減している事実がある。つまり「子育てが自分の問題ではない世帯」がそれだけ増えたということだ。同じように年金保険料を支払わない若者が増えている。それは高齢者を利するだけで、自分たちには見返りがないと思いが根底にあるからだ。

リチャード・カッツ氏はこのような分断状態、あるいは分断から生まれる利己主義は、現在の制度や指導者の言動によって生まれたものだという。国の指導者はそのような国民の姿勢を変えるような状況を作りださなければならないと、佐々木さんと同じようなことを言っている。そのひとつがフランスでもやっている「所得制限なしの子供手当て」(所得制限をつけると富裕層は手当を慈善とみなすだろう)のような国民全体を対象にするような社会政策なのだという。市民不在の日本と言われるが、自民党と官僚に好き放題されていたことにようやく気が付いたところで、まだまだ道のりは遠い。




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2010年03月11日

日本の子育てはフランスに追いつけるか(1)

『東洋経済』12月12日号の「日本の子育てはフランスに追いつけるか」で佐々木常夫が、フランスと日本を比較しながら、日本の子育ての行方を論じていた。その内容を紹介してみたい。

1975年の出生率はフランスが1.96、日本が1.91とほぼ同水準だった。その後、日本は下降の一途をたどり、2005年は1.26まで下げた。一方、フランスは93年まで日本と同様に低下したが、1.65で下げ止まり、08年には2.00を越えるまで回復。今やパリの郊外で暮らす家族は子供3人は当たり前という状況にある。

何がここまでフランスを変えたのか、佐々木氏は3つの要因を挙げている。

@政府の積極的な所得配分政策によって人々の所得格差が小さく、低所得の人でも安心して子育てができること。
A職場での男女格差が小さく、仕事か子育てかの選択を迫られる女性が少ないこと。
B週35時間制により、労働時間が短く、男女とも育児や家事に参加できる。

これに対して「もともとフランス人は働かないからだ」という反論がある。しかしそれは事実とは異なり、彼らの父親世代は週50時間働いていた。1世代で労働時間が大きく減少したわけだ。また現在のフランスの女性は約80%が働いているが、これに対する「もともとフランス人の女性は働いていた」という反論も当たっていない。60年代まではサラリーマンの夫と専業主婦の妻というのが標準家庭だった。つまりフランスは日本と同じようなライフスタイルだったのが、この30年から40年くらいで急激に変化したのだ。

フランスは70年代に働く女性に優しい法律を次々に策定することで、その変化を促した。例えば、親権の平等化、嫡子・非嫡子の平等化、男女平等賃金法、人工中絶の合法化、妊娠を理由に採用を拒否することを禁止する法律、育児休業法などが挙げられる。

同様のことはヨーロッパ諸国で行われている。フランスはヨーロッパ諸国の中では早い方だが、スウェーデンでの法整備は1971年にすでに始まっている。ドイツはフランスと同様、1980年代から女性が働きやすい環境に変わってきた。ただし、フランスは「子育てするフルタイム女性」を支援し、ドイツは実質的に、子育てかキャリアかを選ばせる支援策をとったので、子育てしながらフルタイムで働くのは難しい状況が1990年代まで残った。その結果が、その後の両国の合計特殊出生率の差にあらわれたと言われている。

フランスの法定育児休暇は何と3年。子供が3歳になるまで、フルタイムから全休業まで、いくつかの働きが選択できる。毎月、約6・7万円を上限とする休業手当、しかも手当ての大半には所得制限がない。子供は3歳から保育学校に行けるが、無料。税制のバックアップも大きく、世帯の収入は家族の人数で割って計算するので、子供が多ければ多いほど課税される所得が減る。

現在、日本では少子化対策が急務と言われているが、佐々木氏は、フランスと同じことを日本でやっても無理だろうと悲観的だ。理由は2つある。

ひとつは日本人の持つ家族観に起因している。日本の標準世帯はいまだ働く夫と専業主婦というパターンで、「稼ぐのは夫、家事育児は妻」。所得税の計算でも配偶者控除があり、専業主婦は税金面でも有利。おまけに会社は配偶者手当をつける。そういう家族観は日本の企業に蔓延している。子供ができると育てる責任はつねに女性サイドにあるという常識が待っている。日本の女性は子供を生むときに母親として生きるか職業人として生きるかの選択を迫られる。その結果、約70%の女性が職場から去っていく。つまり、女性が働くインセンティブが働いていないということだ。
(続く)




ワークライフバランスとは…「仕事と生活の調和」と訳され、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を持ちながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる」ことを指す。

日本の子育てはフランスに追いつけるか(2)



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2009年09月11日

「どうしてなぜ日本女性は子どもを作らないのか?」につっこむ

9月5日の記事で、「どうしてなぜ日本女性は子どもを作らないのか?」という「フィガロ」誌に掲載されたインタビュー記事を紹介した。日仏交流に貢献した人に贈られる「渋沢クローデル賞」を受賞したフランス人ジャーナリストが雑誌のインタビューに答えるという形式をとっている。日本人からすれば、もっともらしく日本のイメージが作られているという気がするが、今の日本を捉える重要な問題も含まれているので、ちょっとつっこんでみたい。

―夫たちは仕事に疲れているというのですが、私によればそれは両性間の無理解と、夫婦のコミュニケーションの問題だと思うのです。感情を交えずにすむという理由から性産業は活況を呈しているのに、この話題はカップルのあいだではタブーになっています。

セックスレス亡国論 (朝日新書)1970年代あたりから、日本では終身雇用と年功序列を基本とする企業社会が成立した。それは「男は外/女は内」という性別役割分業制を採り、それが高度経済成長を支えるには効率的なことと信じられていた。また国は企業に福利厚生を丸投げしたことで、男はパブリックもプライべートも企業にべったり依存することになる。そこに男だけのホモソーシャルな共同体が形成され、「男だけの話」が流通する。性産業はそこと密接に結びついていたのだろう。最近ではネット上の2次元の世界で自足してしまう傾向もしばしば指摘される。欲望を細かくえり分けてピンポイントで満たすための分業が徹底されているのもポストモダン日本の特徴なのだろう。愛と性が乖離して、性が単に性処理と化してしまっているのは確かに深刻な病理なのかもしれない(そういえば、フランス文学者が「セックスレス亡国論 」という本を出している)。

一方で、こういう男性の態度が女性の行動や選択を決定するという言い方は、女性をつねに男性のネガとして描くことになってしまう。日本ではとかくこういう思考に陥りがちだ。それじゃ、女性はそれに対してどう思っているのかという問題が見えにくい。そういう意味で下で紹介した『モダンガール論』は面白かった。かつての企業モデルの崩壊で男が会社から解放されると思いきや(解放が解雇だったら全く意味がない)、今度は不況による経済的な要因が男女を結びつけにくくしているようだ(そういえば選挙中、麻生総理の「金が無いなら結婚するな」発言もあった)。

結婚しても愛を楽しむフランスの女たち結婚したら愛を忘れる日本の女たち結婚しても愛を楽しむフランスの女たち、結婚したら愛を忘れる日本の女たち』というクリシェが流通しているように、結婚したら愛を忘れざるをえない日本の女たちに対して、フランス人は恋愛を楽しむ人たちとして知られている。知り合いのフランス人のカップルを見ていると、確かに子供が生まれても意識的にふたりの時間を作り、楽しもうとしている。バカンスもまたそれが優先される時間のようだ。子育てを支える制度が充実していれば、夫婦の関係にも時間的、心理的な余裕を与えることは容易に想像できる。それに加えて、子供に異性をつねに意識させるということも意図的にやっているように見える。恋愛の作法を小さいころから学ばせるということか。

―このことを西洋の観点から判断してはいけません。日本では主婦に悪いイメージはないし、むしろ逆なのです。

確かに主婦という選択は、高度成長期の男女分業制(会社/家庭)においてはリーズナブルなことだったかもしれない。終身雇用制と年功序列賃金で保障された生活をもたらしてくれる相手との結婚は、まさに永久就職だった。さらに高性能な家電製品の普及によって家事が軽減され、主婦は消費の担い手として脚光を浴びるようになる。

日本男性のコミュニケーション下手は、社会的な役割分担の中で、男性の女性への依存関係ができ上がってしまったことに原因があるのかもしれない。この場合の依存とは男性が女性に身の回りの世話をされるという関係で、その役割は母親から妻へと受け継がれる。一方で、女性は男性に経済的に依存し、両者が互いに all or nothing の極端な関係に陥ったことが問題なのだろう。つまり経済的自立と生活的自立のバランスが悪すぎたのだ。その中で自立した人格として女性に働きかけるチャンスが失われ、コミュニケーションが貧困なものになっていくのは当然の成り行きと言える。

モダンガール論 (文春文庫)しかし、状況は大きく変わってしまった。斉藤美奈子が『モダンガール論』の「文庫版のためのちょっとした補足」の中で専業主婦の現在を的確に示している。ちょっと長いが引用しておく。

「かつて専業主婦は平凡の代名詞でした。しかし、そんな時代もそろそろ終わりに近づいています。戦前の社会と同様に、専業主婦は贅沢品だからです。家庭の中に家事専用従事者を置いておけるのは、よっぽど経済的にゆとりのあるお金持ちだけ。現にいまでも、二人が働いてようやく家計がまかなえる家庭は少なくありません。したがって、もしも専業主婦を目指すなら、甲斐性のある男を確実にゲットしなくてはなりません。これもビジネスエリートを目指すのと同じくらい、厳しい戦いです。エリートの数が少なければ、結婚市場における争奪戦も当然厳しくなるからです。さらにまた、専業主婦は以前よりずっとリスキーな選択といえます。終身雇用制と年功序列賃金に守られていた時代ともちがい、いつなんどき夫が失業しないとも限りませんし、妻に定収入がなければ離婚だってむずかしい。が、それでも優雅なマダムを夢見る人はいるでしょう。その場合は、結婚が「永久就職」と同義だった時代とはちがうのだ、という認識をもち、確信犯的に専業主婦の道を目指すことです」

―薬に対して著しい不安をもつこの国では、よその国にくらべて避妊手段があまり利用されていません。そしてリスクを避けるために自制するのです。

パリの女は産んでいる―“恋愛大国フランス”に子供が増えた理由 (ポプラ文庫)薬というのは、つまりピルのことで、ヨーロッパではピルの服用が当然のこととみなされている。それはピルの服用が女性の "reproductive health / rights" 「性と生殖に関する健康と権利」と結びついていて、女性の "reproductive health / rights" を確保するために有効な手段のひとつと考えられているからだ。フランスのピルの普及に関しては、『パリの女は産んでいる―“恋愛大国フランス”に子供が増えた理由』に著者自身のリアルなエピソードが紹介されていたので参考になるかもしれない。日本の女性が「薬に対して不安を感じている」というよりは、従来の家族規範にとらわれ保守派の政治家が、性病がひろがるとか男女関係が乱れるとか言ってピルの普及に反対してるおかげで、保険がきかないし、処方の体制が整っていないから避妊手段として普及しないのだろう。

今出てきた、reproductive health / rightsという用語を説明しておこう。reproductive healthの方は「女性が生涯にわたって身体的、精神的、社会的に良好な状態である」ことを指す。そしてこれを享受する権利をreproductive rightsと言い、妊娠中絶・受胎調節など、性と生殖に関して女性が自己決定できる権利のことである。女性はとかく国家・男性・医師・宗教などの規制や社会的圧力を受けやすいので、女性が選択できる権利、女性の再生産の権利を保障しようということである。内閣府や地方自治体の男女共同参画の部署のHP見ると、よく引用・紹介されている。ちょっと頭の隅に入れておくといいかもしれない。

「日本人の考えでは、性的関係をもつというのは行くところまで行くこと、つまり妊娠が付きものなのです」と言われると、日本人が非常にモラリスティックで、セックスは自然の摂理にもとづき、遊びや楽しみのためのセックスはしないと言っているように聞こえる。まるでアメリカのキリスト教右派ではないか。日本の場合、モラルや家族規範が行動を規制しているのではなく、面倒くさいとか、楽しむための作法やコミュニケーション能力が欠けていることが原因と言われているわけだけど。





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2009年09月05日

どうして日本人女性は子どもをつくらないのか?

POURQUOI LES JAPONAISES NE FONT-ELLES PAS D’ENFANTS? (フィガロ紙公式サイトより抄訳)

lesjaponais01.jpg日本の指導者は、2050年には人口が20%減少するだろうと警鐘を鳴らしているが、実際この経済不況の最中、日本人女性たちは出産を拒んでいる。以下は作家でありAFP通信の特派員である、Karyn Poupéeのレポートである。

Lefigaro.fr/madame:世界でも最低水準である、日本人女性の低い出産率(1人あたり1,37人)をどう説明されますか?
Karyn Poupée:本人たちがどう考えているかにかかわらず、実際に子どもを作らなくなっています。理想では2,3人欲しいようですが、実際にはそれより少ないか、まったく作らないかです。それに日本では結婚せずに、子どもをもつことは一般的でありませんし、出産年齢は上がりつづけています。婚活に励んでいるものの、その分だけ要求も多くなっています。彼女らは70〜90年代の生まれで経済停滞の時期を暮らしてきましたから、生活の安全のことをよく考えるものの、この懸念がカップルたちを縛りつけてしまうのです。終身雇用制であった50年代生まれではありえなかった不安があるのです。

Lefigaro.fr/madame:どうして日本では仕事と出産が両立しないのですか?
Karyn Poupée:女性が社会進出したときに、育児制度が確立しなかったからです。東京は3500万人の人口を抱えていますが、それに見合う託児所施設の運営は不可能のようですし、母親たちは子どもを預けにくい環境にあるのです。そしてぜひ理解しておくべきなのは、女性がみんな仕事と出産の両立を望んでいるわけでないということです。結婚してしばらくは家事に専念し、育児のために仕事を辞めるひともいます。子どもとずっといっしょにいることは大事なことだと考えているのです。さらに、2,3年のブランクをおいて再就職するのは難しくなっています。このことを西洋の観点から判断してはいけません。日本では主婦に悪いイメージはないし、むしろ逆なのです。

Lefigaro.fr/madame:日本大学の研究によると、2007年、ほぼ4組に1組のカップルが数週間数ヶ月もの間、まったく性交渉がないそうです。性は仕事の二の次なのですか。
Karyn Poupée:他国にくらべて、結婚しているカップルの性交渉は少ないです。夫たちは仕事に疲れているというのですが、私によればそれは両性間の無理解と、夫婦のコミュニケーションの問題だと思うのです。感情を交えずにすむという理由から性産業は活況を呈している一方で、この話題はカップルのあいだではタブーになっています。日本人の考えでは、性的関係をもつというのは行くところまで行くこと、つまり妊娠が付きものなのです。薬に対して著しい不安をもつこの国では、よその国にくらべて避妊手段があまり利用されていません。そしてリスクを避けるために自制するのです。

Lefigaro.fr/madame:今回の総選挙の立候補者たちは人口問題をとりあげました。国民はこの問題に敏感ですか?
Karyn Poupée:民主党は、子どもをもつ母親に2年間にわたって月額200ユーロ相当の給付金を出すことを提案しています(訳者註:念のため確認しておきましたが、民主党の公式のマニフェストによると、中学卒業まで年31万円2000円を支給するとありました)。ところが私はこのような対策を通じてもたいした変化はないのではと気にしています。当局者は人口減少を不安視していますが、一般庶民はそうでもなく高齢化社会への心がまえをしていますし、「人が減る」ことは「ラッシュアワーのときの地下鉄が快適になる」と歓迎している向きもあります。さらには年金、健康が有権者の一番の気がかりであり、政治家も選挙のために高齢者の歓心を買おうとしています。高齢者のために、すでに都市は改造され、商業施設やその他の場所も見直されています。

(Karyn Poupéeは『日本人』(写真、上)の作者であり、同書により2009年に渋沢・クローデル賞を受賞)

POURQUOI LES JAPONAISES NE FONT-ELLES PAS d'ENFANTS?
(lefigaro.fr Madame)


translated by superlight

関連エントリー「どうして日本人女性はこどもをつくらないのか?につっこんでみた」(by cyberbloom 9月11日)

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タグ:少子化
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2009年01月15日

2008年のフランス出生率、2.02に上昇

フランス出生率2.02に上昇、欧州トップ
■フランス国立統計経済研究所(INSEE)が13日に発表した統計によると、2008年のフランスの出生率は前年を上回り、女性1人あたりが産む子どもの数が平均2人以上となり、欧州トップの座を確かなものにした。INSEEによると、フランスの人口はドイツについで欧州第2位で、2009年初頭の住民数は08年から36万6500人増え、6430万人となった。
■フランスでは、出産適齢期の女性数は減少しているものの、出生率は上昇を続けている。08年の女性1人あたりの出産数は、07年の1.98人を上回り、2.02人となった。また、08年のフランスの出生数は80万人を超えた。これは過去最高数で、フランスの家族支援政策が成功したことを示す結果となった。フランスでは、政府による養育費支援や家族支援手当が定着しており、また、妊婦支援や育児休暇を提供する労働法が整備されたこともあり、若いカップルの育児が支援される環境がある。
■欧州全体の平均出生率は1.5人で、フランスとアイルランドが高い出生率をけん引している。多くの西欧諸国と同様、フランスでは高齢出産が多く、出産時期は1980年代と比較して2歳ほど伸び、30歳ごろからが多い。出産率は30-40歳のグループで上昇しており、前年の出生数の5人に1人が35歳以上の女性の出産となった。1998年には、晩産は16.5%ほどにすぎなかった。また、2006年以降、婚外子の増加傾向が続いている。2008年には、新生児の52%が婚外子となり、1998年より10%増加した。
(1月14日、AFP)
【動画】C'est en France qu'on pouponne le plus
■Selon l'Insee, la France a franchi en 2008 le seuil des deux enfants par femme en moyenne. Notre pays est ainsi devenu le champion d'Europe de la natalité, une première depuis 30 ans.
(13 janvier, TF1)

フランスだったら産めると思った 産める国フランスの子育て事情―出生率はなぜ高いのか パリの女は産んでいる―“恋愛大国フランス”に子供が増えた理由 (ポプラ文庫)

★2008年のフランスの出生率が2人の壁を突破した。子供を産んで欲しければ、政府がすべてを整備することだ。フランス国民がそれを強く要求し続けてきた結果である。フランスでは育児休暇が16週間、3人目の子供からは26週間取れる。ベビーシッター制度、家族手当、学校手当も充実し、6歳以下の子供を育てるのにヨーロッパで最もお金がかからない国だ。こうした政策が出生率を後押ししている。フランスでは85%の女性が働き、家庭の母と社会的な役割を両立させているが、もちろん男性の協力があってこそだ…これがTF1のニュースの内容。
★フランスと比べると日本の子育て支援なんて、何もしていないに等しい。それどころかこれから子供を作る世代に経済的なしわ寄せを押し付けている有様。働く若い世代の3分の1以上は非正規雇用にもかかわらず、今回の派遣切りでは何のセーフティーネットもないことが明白になった。今回の世界的な不況がフランスにもどのような影響を与えるのか見物だが、こういうときこそ手厚い社会的なバックアップが重要になる。それにしても、このニュースを日本のマスコミはほとんど伝えていないようだが、伝えられると困るのだろうか。
★読者の方に指摘していただいたのだが、「相対的に出生率が高い移民が多いからフランスの出生率は高い」という議論がある。これは「移民をめぐる状況が異なるから日本とフランスは同様に論じられない」とか、「少子化対策として移民を受け入れよう」という主張の根拠になっている。これに関して、「子ども(連れ)にやさしい国の高い出生率」という記事に「出生数全体に占める移民女性の出生数の割合が小さく、出生率全体へのインパクトは限定的で、小数点以下2桁レベルのインパクトしかないという試算もあるようです。第2に、移民女性の出生率が高いという点も移民の時期に左右されるため、割り引いて考える必要がある」と書かれている。筆者はこうした移民と出生率との議論を関連付けることには慎重であるべきだと述べている。「移民の時期」とは、元の国にいたときならともかく、フランスに住む移民が今の時代において貧乏子沢山的な状況にあるかということだろう。何よりも出生率の増加を85%に達する「働く女性」に帰そうとしているが、実際リーズナブルな方向なのだろうし、これは自由と人権の国のアピールにも都合の良いディスクールなのだろう。
★TF1のニュースの中に、出生率の上昇が à faire pâlir d’envie nos voisins (私たちの隣国を顔面蒼白になるほどうらやましがらせる)という表現が出てくるが、とりわけフランスが意識しているのはドイツである。ニュースで発言しているジャーナリストも「ドイツには保育園も幼稚園もない」と名指しで言っている。家族政策を人口政策として位置づけるフランスの方針はドイツとの対抗意識から始まった(もちろん第二次世界大戦の経験も)と言われているが、政策目標を一貫させると(日本にはこれが全くない)効果が現れるという好例である。ドイツ(人口8200万人)より大きくなりたいという悲願は案外、叶うかもしれない。例えば、EU加盟国に割り振られているEU議会の定員はドイツが99人で、フランスが78人。人口に比例し、人口が多いとそれだけ発言力が増すということだ。



★commented by cyberbloom

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2008年08月22日

A.P.C.の幼稚園

APC Tracks, Vol. 2フレンチ・シックの代名詞として日本でも人気の高いフランスのブランド、A.P.C.。デザイナー兼オーナーのジャン・トゥイトゥは、服のデザインだけにあきたらず音楽レーベルを立ち上げレコーディングスタジオまで拵えてしまうなど、56才の今も新しいことに挑むキモチを失わないことで知られています。目下彼が心血を注いで取り組んでいる最新プロジェクト、それは、全く新しい幼稚園をつくること、です。
 
そもそものきっかけは、3才になる娘リリーちゃんを通わせたいと思う幼稚園が見つからなかったこと。奥さんと二人、あれこれかたっぱしからあたってみたのですが、公立幼稚園では子供を教室に詰め込んで画一的なマニュアル教育しかしないし、近所のカソリック系私立幼稚園には、一神教について複雑な思いがある身としては通わせたくない(ちなみにトゥイトゥはチュニジア育ち、両親はユダヤ系)。それなら自分たちの理想の幼稚園を自前でこしらえてしまえばいい、となったそうです。
 
前の結婚でもうけた子供を、ヴァカンスでなく格差社会の現実を教えるためにインドへつれていくなど型破りなパパであるトゥイトゥですが、愛娘のために拵えた幼稚園、Ateliers de la Petite Enfance(略称A.P.E.)のカリキュラムもユニークそのもの。あくまで子供の個性、自主性を尊重し、大人があれこれ押し付けたり仕切ることは一切なし。厳密なルールもありません。
 
apcape01.jpgまた、子供の時から本物に、上質なものに触れさせるべきというトゥイトゥの信念を反映して、普通の幼稚園ではとても望めないような理想的な環境づくりもなされています。A.P.C.のショップ・デザインを手がけるローラン・ドゥローによる簡素ながら機能的で明るいインテリアの教室に配置されたのは、アルヴァ・アアルトがデザインしたコドモ用の椅子。お昼寝のブランケットはグレーのコットンカシミヤで、お絵描き用スモックはA.P.C.調のミニマル・シックなデザイン。親達の反応も上々で、25名の定員枠はオシャレ業界人の子供達で既に埋まってしまっているとか。
 
しかし、理想を現実にするには先立つ物が必要。1年分の授業料はなんと16,000ドル。優秀な先生(お絵描きはジェシカ・オグデンが担当)が児童数人に一人付く手厚いシステムで人件費がかかることもさることながら、パリ6区、リュクサンブール公園から数ブロックという立地のおかげで土地の賃貸料が馬鹿にならないのも高額な授業料の原因だそうです。
 
友人達から「常に時代の先を読んで行動する男」と評されているトゥイトゥ。幼稚園の分校を建設することも検討中だそうです。トゥイトゥモデルの幼稚園が主流になる日がくるかもしれません。
(「W」2008年4月号より)


□A.P.C. http://www.apc.fr/
□A.P.C.-JPN http://www.apcjp.com/jpn/
A.P.C.-MUSIQUE





GOYAAKOD

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2008年07月02日

少子化特集(3) 世界のお産事情

いのちを産む―お産の現場から未来を探る■出産数が減少しているにもかかわらず、家族が立ち会うことが条件の自宅出産は、増加傾向にある。厚生労働省の調査によると、90年の1447人から05年は2509人と約1000人増となっている。また最近では、家族の立ち会いを認める病院が多くなっているため、必然的に夫の立ち会いも増えている。同省研究班が05年に実施した調査では、夫の出産の立ち会いは52・6%。99年調査の36・9%から15・7ポイント増えた。逆にだれも立ち会わなかったケースは40・9%で16・4ポイント減っている。
■しかし、自宅出産が当たり前だった1950年代より前は、夫が立ち会うという考え方はなかったようだ。夫や家族の立ち会いは、一緒に出産を体験し、感動を共有しようとする人が増えてきたからだと考える。家族に励まされながら出産するのは、妊婦にとっても精神的に落ち着いて臨めるため良いこと。立ち会いできる病院を選ぶ夫婦もいるので、今後も増えていくだろう。ただ、夫には出産のときだけではなく、その後の子育てにも積極的にかかわってほしい。
(2007年1月4日、毎日新聞朝刊)

実は私、助産院で出産に立会い、出てきた子供を受け止め、へその緒をハサミで切るという体験をした。薄暗い光の中で、生まれたばかりの赤ん坊がゆっくりとあたりを見回し、へその緒をつけたまま、母親のおっぱいを目指してお腹を登っていく様子は、デビッド・リンチの映画を思わせた。それは生の根源に触れた夢のような時間だった。助産所の体験と助産士さんたちとの親交は、その後の人生に大きな影響を及ぼした。人生観が変わったと言っていい。

自宅出産の増加は、単に伝統の復活ということではない。記事にもあるように、かつての自宅出産は男尊女卑がベースになり、女性によって囲い込まれたものだった。男が関わることはむしろタブーだったのだろう。今は夫が関わる形で、夫婦の関係性の問題として自宅出産が復活している。これは注目すべき点だ。

「古き良きもの」はどんどん活用すべきだが、保守主義者が言うように古い社会構造をそのまま復活させる必要は全くない。食文化の継承にも同じことが言える。男女の新しい関係性の組み直しの中で継承していけばいい。また、生まれたばかりの生々しい命を父親に見せつけることは、「これはオマエが世話すべきものなんだ」と強力に刷り込むイニシエーション的な効果があるかもしれない。子供の誕生は人間という仮面が裂けて、動物的で、野生的なものが発露する瞬間でもあるのだから。

こういう動きは一部の産婦人科医と対立してしまうらしく、彼らは「細菌感染の可能性がある」とか言ってケチをつける。私が通った助産所は良心的な産婦人科医と連携していて、何か問題が起こるとすぐに連絡が取れる体制になっていた。もちろん、助産院で産むのがベストだと言っているわけではない。出産は個人の心身の状態や事情に大きく左右される問題だから。こういう選択が可能だということだ。助産院支持者は、産婦人科=悪、助産院=善という二分法に陥りがちだが、依然として病院で産む人が圧倒的に多いのだから、それを真っ向から否定すると思わぬ断絶を生んでしまいかねない。どんな形で、どんな場所で生まれても、子供は全面的に肯定されるべきことは言うまでもない。

パリの女は産んでいる―“恋愛大国フランス”に子供が増えた理由一方、フランスではどうかというと、無痛分娩が90%を占めるのだそうだ。無痛分娩は硬膜外麻酔によってお産の苦痛を和らげる方法だが、日本で行われる例は極めて少数だ。フランスには麻酔医が多く、無痛分娩は彼らの層の厚さに支えられている。フランス人女性は、「母性愛が腹の痛みと比例する」とか「出産の痛みは母性愛の現出に必要」とかいう言説に長いあいだ苦しめられ(この手の言説はもちろん日本にもある)、無痛分娩は輝かしい権利の獲得という一面もあるのかもしれない。ところで、産婦人科医にしてみれば、無痛分娩は、出産日を調整できる陣痛促進剤と同じように、都合の良いものである。産婦の叫び声を聞くことなしに静かに仕事を終えることができるのだから。

そういうふうに、出産があまりに医学的に管理されたものになった結果、欧米社会では英語圏を中心に自然なお産を見直し、出産を医療側から妊婦の手に取り戻そうとアクティブバース active birth の運動が起こった。フランスのお産もその影響を受け始めているが、これに関しては日本の方が助産院を中心に盛り上がっている。どんなお産をするかは個人の選択の問題であるが、どのような選択をするにせよ、正確な情報がきちんと行渡る必要がある。下記のイギリスのようにイメージに踊らされるケースもあるし、倖田來未の「羊水が腐る」発言のように、高齢出産に対する誤った知識も流通している。

去年読んだニュースによると、イギリスでは帝王切開がブームらしい。ヴィクトリア・ベッカムやエリザベス・ハーレーなんかが自ら希望して帝王切開で生んだ影響のようだ。帝王切開はスケジュールも調整できるセレブな出産というわけだ。too posh to push(力むには上品過ぎる)という流行語まで生まれ、流行と親の都合で誕生日を決められてしまう子供が増えている。イギリスの国立病院では自然分娩か帝王切開かの選択が可能だが、帝王切開が40%を超えることもあるという。お世話になった助産婦さんがおっしゃっていたが、ブラジルでも帝王切開は金持ちの出産方法という認識があるらしく、費用を賄えない人以外は帝王切開が当たり前なんだそうだ。その助産婦さんはブラジルで自宅出産や自然分娩を広める活動をなさっている。


□フランスのお産事情に関しては「パリの女は産んでいる―“恋愛大国フランス”に子供が増えた理由」を参照。この本は突っ込みどころも多いので、そのうち書評を書きます。

□2006年に医療法が改正され、助産院が緊急時に協力してもらう「産婦人科医」と「連携医療機関」を決めなければならなくなった。助産院に協力する医師が見つからないのではと危惧されたが、何とか解決されたようだ。

いのちを産む―お産の現場から未来を探る
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2008年06月17日

少子化特集(2) 名を捨て実を取る

フランス出生率が欧州1位、非嫡出子が半数超える
■2007年のフランスの出生率が、アイルランドを超えて欧州1位となった。一方、結婚していない両親から生まれた子ども(非嫡出子)が半数を超えたことも分かった。フランス国立統計経済研究所(INSEE)が15日、発表した。
■出生率は、1人の女性が一生の間に生む子どもの数の平均値。2007年のフランスの出生率は1.98で、アイルランドの1.90を上回った。欧州連合(EU)諸国全体の平均出生率は1.52だった。一方、1965年にはわずか5.9%に過ぎなかった非嫡出子の割合は、2007年には50.5%と、前年の48.4%から増加し、誕生した子どもの半数を超えた。
■社会学者、イレーヌ・テリー Irene Thery は仏大衆紙パリジャン(Le Parisien)に対し、「革命的変化の論理的帰結だろう。家族を形作るのは徐々に、結婚ではなく子どもになりつつある」と語った。
(1月16日、AFP)

パックス―新しいパートナーシップの形2007年のフランスの出生率は1月にすでに発表されている。日本は今頃出てくるが、フランスは自慢のネタなので早く出すのだろうか。日本の1.34に対して、フランスは1.98だが、欧州1位でも人口が維持できる2.07人のレベルには足りていない。特筆すべきは、結婚していないカップルから誕生した子供が50%を超えたこと。スウェーデンやアイルランドではもっと高いというから驚きだ。

フランスでは結婚件数が27万4400組と前年よりも8800組も減っていて、95年以来の少ない数。しかしフランスでは結婚せずに同棲でも、PACSという法律で結婚した場合と同じ権利を保障されている。pacser という動詞も使われているようで、飛行機で隣になったフランス人のカップルも、On a pacsé と言っていた。

PACSは性別に関係なく、成年に達した二人の個人の間で、安定した持続的共同生活を営むために交わされる契約。同性のカップルでも問題ない。フランスでは従来の結婚がもはや家族の形成を意味していない。さすがに導入をめぐっては保守派や宗教界から「伝統的な家族制度を破壊する暴挙だ」との反発もあったが、今では多くの欧州諸国が導入している。もっとも、同棲カップルがすべてPACSを結んでいるわけではない。同性カップルの契約というイメージもあり、同棲(union libre)のままでいる方が多いようだ(詳細は「パックス―新しいパートナーシップの形」を参照されたし)。

産める国フランスの子育て事情―出生率はなぜ高いのかフランスでは20-40歳の女性の人口は減っているが、働いている女性の出生率は03年45・3%から05年45・8%と増えている。つまり働く女性が子供を産んでいるということだ。最近はさすがに日本の政治家が「女性は家庭に戻れ」と時代錯誤な発言をすることは少なくなくなったが、そういう考え方が今の世では逆に少子化を推し進めてしまう。そんなことを言う人たちは家で何もせずにふんぞり返ってきたんだろうが、先回紹介した記事にあったように、今は夫が家事や育児に消極的なほど、妻の出産意欲が低くなる傾向があるのだ。

ニュースの中である社会学者が「家族を作るのは結婚ではなく、子供になりつつある」と言っている。フランスでは、離婚したあとも子供のために新しい家族を連れてバカンスなどで合流したりする。複雑な感情を抱え、ときには苦々しい思いをしながら、別れた相手の新しい家族と一緒に過ごす。一時的な複合家族が形成されるわけだ。また恒常的な営みとしても、伝統的な家族構成とは違う、変形的な家族形態がどんどん生まれている。

もちろんフランスでも決して体裁の良いことではないのだろうが、見栄や世間体よりも、「こうなっちゃったんだからしょうがない」と開き直る。そうなってしまった以上、その局面において合理性を追求するしかないのだ。サルコジ大統領はセシリア元夫人とは互いに離婚歴があり、就任当時はいかにもフランス的な複合家族を演じていた。元スーパーモデルとチャラチャラしているより、人生の酸いも甘いも知り尽くしたって感じで余程イメージが良かったのに。

「名を捨てて実を取る」という言葉があるが、日本の年配の人たちは「名」が大好きだ。名とはつまり自分たちが生きてきた価値観のこと。しかし、彼らには現在の「実」が全く見えないし、理解できないので、「名」を押し付けようとする。いくら自分にとっての古きよき時代が懐かしいとしても、その社会的前提が崩れてしまっているのだから、今さら伝統的な家族形態を復活させることはできない。名ではなく、実をとること。それは現状を直視し、それをフォローする形で行政を進め、変形的な家族形態であってもそれを支援する。そうやって何とか社会性を担保していくやり方なのだ。

再婚相手の子供を虐待するという事件が日本でよく起きているが、共同体の崩壊にオロオロせずに、生じてしまった関係性を受け入れながら、開き直る強さが必要なのだろう。そういう変化に弱いのは大概男の方で、それを打開するコミュニケーション・スキルも低かったりする。





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2008年06月13日

少子化特集(1) 07年の出生率の発表

07年の日本の出生率が発表されたので、少子化のプチ特集を。「2年連続増」と書きながら、話が全然違うではないか。政府が出生数を増やすうえで頼みの綱とする団塊ジュニア世代の女性が30代後半にさしかかっているらしい。

出生率、07年は1.34と2年連続増
フランスだったら産めると思った■07年の合計特殊出生率(1人の女性が一生に産む子どもの数に相当)は、06年を0.02ポイント上回り、1.34となったことが、厚生労働省が4日まとめた人口動態統計で明らかになった。同出生率は06年に6年ぶりで上昇し、2年連続増えた。ただ、人口減で出産適齢期の女性の数そのものが減っており、出生数は2929人減の108万9745人。史上最低だった05年(106万2530人)に次いで少なく、今後も上昇に転じる見通しはない。
■政府は94年の「エンゼルプラン」を皮切りに、何度も少子化対策をまとめてきたが、メニューは毎度、(1)子育ての経済的負担の解消、(2)保育や育児休業の拡充、(3)労働時間短縮やパートの均等待遇など働き方の見直し−で、新味に乏しい。既に対策は出尽くしている。今やいかに予算を大幅に増やし、国民の意識をどう変えていくかという段階に来ている。
■05年度、60歳以上に配分された社会保障給付費は、前年度比1.7%増の61兆7079億円。全体の70.2%を占める。一方、少子化対策は3兆5637億円と全体の4.1%で、前年度と同水準にとどまる。少子化関連費が10%弱の英、仏との差は大きい。
■政府は「日本の給付は高齢世代に偏っている」との批判を受け、再三配分の見直しを口にしてきた。ところが、後期高齢者医療制度の修正でも、政府・与党あげて高齢者の負担軽減に走り、現役世代にツケを回そうとしているのが実情だ。
■政府の「子どもと家族を応援する日本重点戦略検討会議」は昨年末、保育サービス充実などに1.5兆〜2.4兆円の追加支出が必要との提言をまとめ、暗に消費税1%の増税が必要とにおわせた。後継の社会保障国民会議も、同じ路線だ。
■ただ、所得が低いほど負担が重い消費税増税は若年層への影響が大きく、「子育て支援に向かない財源」との指摘も多い。社会保障費の、世代間の配分見直しは必至だ。政府が出生数を増やすうえで頼みの綱とする団塊ジュニア世代の女性も、30代後半にさしかかった。対策は時間との勝負でもある。
(6月4日、毎日新聞)

企業の子育て支援策に「効果は皆無」、「カネをくれるよりヒマをくれ」
■出産・子育て真っただ中の社員のホンネは、最近、企業で一大ブームとなっているのが、社員の子育て支援だ。最も目立っているのが社内託児所の開設で、例えば総合商社の三井物産は、東京・大手町の一等地にある本社に、「かるがもファミリー保育園」を今年4月に開設。金融業界でも、みずほフィナンシャルグループや新生銀行など名だたる大企業が社内託児所を作っている。ほかにも、社員に子どもが生まれるたびに数十万円規模の祝い金を支給する企業は近年増えており、子育て支援策は、大流行中ともいえるのだ。
■企業によるこういった子育て支援策は、進展する少子化対策の一環として「前向きな話題」だと大手マスコミも積極的に取り上げている。だが、少子化問題に詳しい研究者は、「こういった対策は、少子化対策としてはほとんど意味がない。費用対効果を考えると、会社にとってはむしろ有害とすら言える」と批判する…。(続きはタイトルをクリック)
(6月5日、日刊サイゾー)

プレカリアート―デジタル日雇い世代の不安な生き方 (新書y 181)子育て中の身の上としては、子育てには金よりも時間が要ることは身にしみてわかる。もっとも一定のお金も必要だが、この国の子供手当ては1人目で月5000円。オムツ代にもならない。

この記事の後半にも書いてあることだが、企業は社員の子育ての時間を確保するために人員(雇用)を増やすという肝心なことをやらない。それゆえに他の社員にそのしわ寄せが行き(つまり育児休暇がとりづらいってこと)、イメージは良いが効果の薄い子育て支援に支出していることになる。

企業は、雇用を絞っていることが、若い世代の生活の不安定につながり、それが何よりも子供を作る意欲を削いでいることが根本的にわかっていない。結局はすべて雇用の問題につながっていくのだ。とにかくあらゆるしわ寄せが若い世代に向き、働く3人に1人が非正規雇用という経済的に不安定な状態で、子供を産め、育てろと言っても無理な話だ。

先日授業で読んでいたフランス語のテキストにたまたまフランスの子育てに関する記事があり、「フランス人が子供を作るのは、今の時代はそんなに悪くないし、子供の時代は自分の時代よりは良くなると思っているからだ」とあった。もちろん、真に受ける必要はないが、日本人の若い世代は全く逆のことを考えているだろう。

もっとも企業は確信犯的にやっているのかもしれない。自分たちは多国籍化しているので、日本の将来がどうなろうと関係がない。日本のフリーターを使い倒しても、安い労働力なんてどこの国からでも調達できるということだろうか。中央公論(4月号「いま隣にある貧困」特集)に載っていた佐藤優との対談で、雨宮処凛が「フリーターを使い捨てていく中で、うっすらした憎しみがものすごい勢いで広がっている。後々には大きな影響を及ぼすと思いますが、気にもとめていないような企業の傲慢な態度には驚かざるを得ない」と言っていた。その矢先、例の秋葉原の無差別殺人事件が起こった。

容疑者の青年を自動車部品工場に送った人材派遣会社はいみじくも雨宮処凛がいつも取り上げている会社だった。もちろん犯罪には個別的な条件があるし、同じ条件下でみんな同じ行動に走るわけではない。だが、会社の名前が挙がったついでに、若者の搾取の実態について知っておいても損はないだろう。佐藤優は、このような搾取が続くと、「同じ国を生きる仲間としての同胞意識がなくなり、国家が崩壊する」と危惧する。まず治安の悪化は避けられないだろう。保守主義者たちは日本人としてのアイデンティティーや共同性の重要性をうたいながら、そういう大企業の経営者たちとベッタリ癒着している。全く説得力がない。事件を受けて管理をさらに強化しようと彼らは言うのだが、それだけでは犯罪予備軍としての若者のイメージを煽るだけで、同胞意識や未来を共有しようという共感など生まれようがない。大企業の子育て支援を受けられるのは一部の人間だけである。少子化対策は何よりも若い世代全体の底上げにあるのではないのか。

「カネをくれるより、夫のサポートをくれ」という要求も高い。子持ちの男性を早く家に帰らせることだが、同じように時間の捻出が必要になる。フランスの出生率の上昇には「週35時間労働制」も大きく寄与していると言われている。月曜から木曜まで9 to 5で働けば金曜は半ドン。これは社会党のジョスパン首相のもとでワークシェアリング(1人の仕事の時間を減らして全体の雇用を増やす)として実現。つまり雇用政策が少子化対策にも繋がったのだ。しかし、サルコジ政権は「もっと働いてもっと稼ごう」をモットーにこの枠組みを崩そうとしている。

少子化対策…大本命は夫の妻へのサポート?
■20~30代の生活実態を継続的に追う厚生労働省の「21世紀成年者縦断調査」で、子供がいる夫婦において、夫の休日の家事や育児時間が長くなれば、2人目の子供が生まれる割合が高い傾向が19日、分かった。家庭内で夫の妻へのサポートが少子化歯止めに不可欠な要素といえそうだ。
■調査は少子化対策に役立てるため、14年10月末に20~34歳だった全国の男女を毎年追跡。5回目の今回は18年11月に約1万8000人から回答を得た。調査によると、2人目が生まれた夫婦で、夫の休日の家事・育児時間が「2時間未満」だったのは35.9%だが、「8時間以上」では63.2%となり、夫の家事・育児時間が長いほど、子供が生まれる割合が高くなった。「家事・育児時間がない」と答えたのは20.5%で最低だった。また、子供がいる夫婦で、働く妻の職場に育児休業制度がある場合は、45.5%の夫婦に2人目がいることも判明。「制度なし」では28%にとどまっており、会社の出産・育児支援制度が多産に影響を与える実態も浮かんだ。厚生労働省は「妻が2人目を産む決断をするには夫や会社の支援が大切になる傾向が強くなっている」と話している。
(3月22日、産経新聞)



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2006年04月27日

祐天寺りえ『フランスだったら産めると思った』

umerutoomotta01.jpgEU加盟国の中で、フランスがアイルランドについで高い出生率をマークしたことが去年報じられていた。女性1人あたり1・9人。政府の手厚い育児支援と、子育てをしながら働ける環境作りが、出生率を押し上げる結果になったようだ。

フランスでは子供2人目から「家族手当 allocation familiale」が支給される(収入制限なし)。2005年1月からの規定では、2人目の子供が生まれると月1万6000円(2005年〜)、3人目で月3万6千円が家族に支給され、1人増えると2万円ずつ加算さる。また、11歳を超えると、1人あたり月4500円、さらに16歳を超えると8000円UP。その他、乳幼児手当、新学期手当、片親手当、家事代行格安派遣など、ここまでやるか、というほどの充実ぶり。そう言えば、子供が5人いるフランス人の知り合いのおじさんは、「多産割引」証を持ってて、運賃や展覧会の入場料が割引になるって言ってたなあ。

女性1人あたり子供1・3人の日本は真剣に見習いたいところ。うちには子供がひとりいて、月5000円支給されていますが、あまりもらってる気にならない。今年に入って、政府が育児手当制度を新設する方向で検討に入ったようだ。手当は1万5000円。しかし、何と3歳まで。うちの子は関係ないじゃないかよ!やることが中途半端なんだよ!(マジギレ)

ここでお薦めしたいのが、祐天寺りえ著『フランスだったら産めると思った』(原書房 2002年)。フランスに住むことになった日本人の女性の視点からフランスの子育て事情について書いている。これからはどんな家族のあり方が望ましいのか、具体的にイメージできる本だ。

総務省の社会生活基本調査によると、働きに対して賃金が支払われる有償労働と、家事、育児、介護といった家族のための無償労働の割合は、日本の男性は12対1。先進国の男性は、オランダが1対1、ドイツ、アメリカ、フランスは3対2。マッチョな国といわれるイタリアでも4対1だ。いかに日本の男性が仕事に明け暮れ、家庭を顧みない、いびつな生活をしてきたか、よくわかる数字だ。そうやって日本の男性はホモソーシャルな世界(会社の人間関係のような男だけの付き合い)を最優先して、自らを家庭から疎外してきたわけだ。雇用の流動化が進行している現在、「仕事人間」というアイデンティティーが根底から揺らぐわ、リストラされたら帰る場所がないわ、定年まで勤め上げたと思ったら「熟年離婚」されるわで、自殺するしかないような状況に追い込まれている。少子化の問題は、日本の男性の生き方そのものを問い直すきっかけにもなるだろう。




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