2007年12月06日

Musique Pour Noël クリスマスのための音楽

Jordan: The Comebackこの時期のお薦めは、1990年に発表されたプリファブ・スプラウト PREFAB SPROUT の5作目、JORDAN:THE COMEBACK 。80年代に名を馳せたトーマス・ドルビーによるプロデュース。プリファブは北イングランドのニューキャスルの近くにある小さな街、ダーラム出身のバンド。もともと田舎のバンドなのだが、彼らの飽くなき上昇志向はプリファブを5枚目にして彼らの最高傑作へと至らしめた。

このアルバムはクリスマスをテーマにしているわけではないが、初冬の街のイメージがある。クリスマスの定番を歌う山下達郎にあやかって、プリファブを自分の中で「イギリスの山下達郎」とか勝手に思っているが、プリファブには彼のような「あざとさ」はあまり感じられない。プリファブの曲は非常に凝った技巧的な作りになっているにもかかわらず、曲の展開がそれを全く感じさせないくらいスムーズなのだ。技巧と洗練のバランスはポップアルバムにとって最も重要な指標。その絶妙なバランスを通してのみ、研ぎ済まされた極上のロマンティシズムが味わえる。

パディの男前なボーカルもさることながら、透明感のあるウェンディのバッキングボーカルも巧みに色を添えている。トーマス・ドルビーも生楽器とプログラミングによって適切なアレンジメントを施し、エコーがかかったような深みのある空間を作り出している。やはりこういうポップアルバムの王道を行く傑作は、やはりイギリスからしか出ないのだろう。

聴きながら歌詞を追っていくと、いやおうなしにストーリー性を感じてしまうが、元はと言えば、それぞれ違ったテーマを持った3つの組曲から構成されるはずだったらしい。特に名曲、Jessie James Bolero & Symphony なんかは、いわゆる「バッドボーイ」の物語だったことがわかる。そんな3つの物語がそれぞれの歌詞の中に濃縮されているわけだ。確かに恥ずかしくなるくらいロマンチックな歌詞が多いが、英語で歌われていることがちょうどいい壁になる。

個人的に好きな曲は WE LET THE STARS GO や THE ICE MAIDEN(雪女?)、それと上記の JESSIE JAMES BORELO & SYMPHONY など。とにかく一瞬のハーモニーの切れが素晴らしい。

ジャケットはこのアルバムの色彩的なイメージをうまく表現している。深い夜の空間に原色の光が揺らめく。このイメージが、クリスマスの時期の華やぐ街の雰囲気と重なり合うのかもしれない。

Jordan: The Comeback
Jordan: The Comeback
posted with amazlet on 06.12.13
Prefab Sprout
Sony Budget (2001/02/12)
売り上げランキング: 13368
おすすめ度の平均: 5.0
5 青臭さがたまらなくポップス
5 美しきマスターピース
5 1990年度個人的英国ポップ部門 第1位!!


■プリファブ・スプラウトの2枚組みのベストアルバムも出ています。本アルバムからも7曲が収録。

PREFAB SPROUT:「38カラット・コレクション


cyberbloom

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2007年06月14日

眠れない夜のための音楽=ロバート・ワイアット

寝るときに音楽を聴く、という習慣が私にはありません。寝場所まわりに音響設備がない、というのもありますが、最大の理由は、音楽を聴くと頭が冴えてしまうから。まぶたが落ちそうなときも、音楽を聴き出すと目が覚めてくる。だから私にとって「眠れぬ夜のための音楽」、とは結局のところ、その音楽をしみじみ聴いて「眠らないための音楽」、ということになりましょうか。ボリュームを絞ったプレーヤーで夜静かに聴いていたい音楽として真っ先に思い浮かぶのは、ロバート・ワイアットのアルバムです。

Nothing Can Stop Usロバート・ワイアットは1945年イギリス生まれ。もともとソフト・マシーンマッチング・モウルというジャズ・ロックグループのドラマーでしたが、73年に転落事故に遭って下半身不随の身となりました。車椅子での生活になってから、彼はソロ・シンガーとして新しい音楽人生をスタートさせ、今でもすばらしいアルバムを発表し続けています。

彼の魅力は何と言ってもその歌声です。髭もじゃのおじさん、という風貌からは想像できない、まるで天から降ってきたかのような澄んだ声を聴くと、月並みな表現ではありますが「心が洗われる」気分になります。素朴でゆったりとした音をバックに流れてくる彼の清らかな声を、秋の夜長に電気を消した部屋のなかでしんみりと聴くのは感慨深いものです。

これまで数多く発売された彼のアルバムのなかで選ぶとすれば1982年発売の「ナッシング・キャン・ストップ・アス」でしょうか。かつて Cyber French Café 時代に書いたミュージック・バトンのエントリーで、「思い入れのある曲」として選んだ At Last I Am Free はこのアルバムに収録されています。残念ながら国内盤は廃盤のようですが、輸入盤はネットショップなどで入手できます。試聴はこちらで可能です(お姿も拝めます)。彼はジャズの名曲をカヴァーすることも多く、このアルバムでも Strange Fruit (奇妙な果実)を歌っていて、ビリー・ホリデイのそれとはまた異なった不思議なひとときを味わわせてくれます。


■「ヒズ・グレイテスト・ミッシーズ −ロバート・ワイアット30年の軌跡」(ベスト盤。At Last I am Free も収録)



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2006年11月18日

メークアップのための音楽 Musique pour le maquillage

Motivation songs for make-up(CCCD)踊りに行かなくなって久しい。最後に行ったのはクラブではなく、アンダーワールドのライブだったと思う。まだ本格的にブレークする前の初来日のときだったが、この音には未来を感じましたね。

ところで私の秋の定番はこれ。テイ・トウワ選曲のコンピレーション、Motivation-songs for make up 。彼が提唱するR&B、ハウスを基軸にした独自のジャンル「アッパー癒し系」が集められている。海外のインディー、メジャー問わない選曲で、女性ヴォーカルがふんだんにフィーチャーされている。アッパーと癒しって語彙矛盾な気がするが、癒しとはつまり、自分のために聴くってことなんでしょう。つまりは、踊らない、ひとりで聴くダンスミュージック。

このアルバムは実際に秋から冬にかけての時期を想定している。確かにこの季節にぴったり合う。秋の夜長はジャズなんかをしみじみ聴きながら過ごすしたいが、いつも暖かい家の中でヌクヌクしているわけにはいかない。木枯らしが吹きつける寒い屋外にも出なければいけない。とりわけ寒い朝が辛い。このアルバムをipodに入れ、毎朝通勤時に聴いて気合を入れる。身体にアドレナリンがみなぎる。何のことはない、寒くなってくるから身体がそういう音楽を求めるのだ。

このコンピレーションは女性に向けられている。都会に住む女性が「部屋でメークして、ひとりで夜の街をドライビング」するという設定だ。確かに絵になるアーバンな風景。ストーリー仕立てのグラビアやPVにそんなのがありそうだ。それに秋って、夏ほど薄着じゃないし、冬ほど着込まなくてもいいし、オシャレにはいい季節。アマゾンのレビューで誰かがこれを聴くと「眉がうまくひける」と書いていた。

選曲に関しては、バンシーズの「ハッピーハウス」のカバーにも心動くし、フランスの DJ CAM を選ぶところなんか心憎い。しかし、どの曲よりも5曲目のMove Me が好きだ 。

Make me feel so nice
Make me feel I’m on ride
Oh, move me
Move me one more time

ハウスのボーカルものの歌詞はだいたいこんな感じ。直接的な言葉が繰り返される。しかし、その言葉が切ないくらいに直接的に伝わってくる。「退屈な日常から私を救って、お願い」って。「すぐに助けてあげるよ」って気になる。相手は姿を伴った人格ではない。欲望は直接的に交換される。最初からハッピーな感じでストレートに乗せる曲よりも、ハングリーな状態から始まる方がボラリティーが高い分だけ、盛り上がったときの高揚感が断然違う。

昔よく聴いたのが、日本の誇る人気DJのひとり、EMMA のノンストップ HOUSE シリーズ。今や13枚目を数えるらしいが、特に2枚目の「EMMA HOUSE 2」を愛聴していた。ちょうど真ん中あたりの PLANET OF DRUMS→YOUR LOVE→THE PIANO へと進行するロングミックスが絶品。トライバルなドラムの執拗な反復の果てに、お告げのようなサビのメロディとともに臨界点がやってくる。毛穴が引き締まって、ウブ毛が感電したように直立する。そしてドーパミンの大量放出。それらは光の粒子になって弾け、飛び散る。

こういう種類の音楽のことを書くとセクシャルな、あるいはサイケな(ヤク中的な)アリュージョンから逃れられないが、つまりは人間の快楽に関わる身体的なパターンとシンクロしているのだ。ロックのようなビジュアルの媒介も、小難しい歌詞を解釈する過程もない。

「ハウス・ミュージックのリミックスは、ナイト・クラバーたちの身体にどれだけの快楽を起こさせられるかによってその価値が決定される。ダンス・フロアで客がどれくらいリミックスに反応するか?それによって原曲は何度でもリミックスされ、そのなかでも最大のリアクションを獲得したミキシングがレコーディングされて市場に流れていく」※

つまりハウスは、作り手の創造性とかは問題ではなく、DJとクラバーの身体的な対話によって作られる快楽原則の音楽。気持ちいいか、ノリがいいか、これをあからさまに、ラディカルに突き詰める。こういう音楽に適応できるのは性格や体質もあるのかもしれない。私はメデタイお祭り人間か。いや、そう言わずに一緒に踊りましょう。

Hey DJ! I can't dance to the music you’re playing!


Motivation songs for make-up(CCCD)
おすすめ度の平均: 4.5
5 眉毛うまく描けます。
4 曲が良いのに
5 めちゃお洒落★

■参考図書:「シミュレーショニズム」椹木野衣(※)


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2006年08月24日

眠れない夜のための音楽=坂本龍一×中谷美紀

寝苦しい夜が続く。

revep01.jpg最近、坂本龍一がAlva Notoとコラボレートした「Revep」をよく聴いている。坂本の作品を熱心に聴いてきたわけではないが、このアルバムはムチャクチャいい。いわゆる音響系の部類に入るのだろうか。音の構成やメロディーを解体して、「音の色、音圧、響きそのものを聴かせる」系だ。最初聴いたとき、音飛びしているのかと思った(笑)。二人はファイル交換を繰り返し、坂本龍一のピアノにAlva Noto(Carsten Nicolai)が電子音を加えるという手順で、共同構築されていったようだ。CD評を見ると、以前「Musique pour le cafe」で紹介したブライアン・イーノとハロルド・バッドの共作「Ambient2」をみんな引き合いに出している。こんな美しい作品は滅多にないと訴える意見も多いが、マッサージ的な意味で気持ちの良い音でもある。電子音のパルスが脳をペシペシ叩く感じだ。また坂本のリリカルなピアノが、間引きされ、解体されている分だけ、ストイックに堪能できる。「戦メリ」のテーマ曲の解体バージョンも入っている。ミニマルなデザインのジャケットや記号っぽい曲のタイトルも涼しげだ。Alva Notoという人はよく知らないのだが、ソロ作品はドゥルーズ&ガタリの著作にちなんだ Mille Plateaux レーベルから出ている。

エアーポケット中谷美紀は東京パフォーマンスドール時代(訂正:桜っ子クラブ)からのファンである。といっても熱心なファンではない。彼女の出ているドラマを逐一チェックしているわけでもないし、話題の「嫌われ松子の一生」も見ていない。私にとっての中谷美紀は「声」なのだ。

坂本龍一が中谷美紀の曲の多くを書き、プロデュースしている。小西康陽や大貫妙子なんかも曲を提供しているが、坂本龍一の曲がいちばん彼女の声にしっくりする。坂本龍一は何よりもアレンジャーだと思う。彼女の曲に完璧なアレンジを施し、透明なまでに磨きあげる。坂本の作った曲に詞を書いているのは売野雅勇。どういう人なのか知らないが、この前紹介した「1999年の夏休み」や萩尾望都のギムナジウムものと共通する詞の世界。そして夏の情景が歌われている。中谷美紀のレズ説もよく聞くが、確かにヘテロな強度に欠けている。ヘテロなものがスパークする暑苦しさがない。以前何かの雑誌でフレンチロリータ系のカヒミカリイとのレズっぽい写真の企画があったが、けっこうハマっていた。中谷美紀は、私にとって極めてクールな存在だ。文字通り、涼しい。

RYUICHI SAKAMOTO + ALVA NOTO
REVEP(共作の3枚目)

MIKI NAKATANI
ABSOLUTE VALUE
MIKI(NICOのChelsea Girlsをカバー!)
FRONTIER(PV)-美しい!
MIND CIRCUS(PV)-バックでアートリンゼイがギターを弾いている!

cyberbloom

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2006年08月03日

午後のコーヒー的英国音楽

5月29日(木)のジャジーなカフェ的音楽紹介(Musique pour le cafe 木魚編)からバトンを受け、私もコーヒーと音楽について語ってみたい。とはいえ、今どきのカフェにぴたりとはまるボサノヴァやソフトロック中心のレコード紹介は、ちまたに星の数ほどあるので、今回はロックを3枚。果たしてここに紹介するレコードが「コーヒーを飲みながら」という環境にしっくりくるかと問われれば疑問だが、リラックスした雰囲気でのレコーディング風景が何となく想像できる音楽ではないかと思う。アルバムの中のどれか1曲というより、アルバムを通して聞いてみたい。

カフェ・ブリュ [でかジャケCD] ハンキー・ドリー

■「カフェ・ブリュ」スタイル・カウンシル
ジャケットはコートをまとったポール・ウェラーとミック・タルボット。カッコ良すぎる。インナー・スリーブではパリ8区フランソワ1世通りのカフェを前に、ほぼ同じスタイルの二人の姿を捉えた写真があるが、ジャケットの写真もこのパリ8区での撮影なのだろうか?ちなみに裏ジャケットには、ロベスピエール、ダントンと並びフランス革命において中心的役割を果たしたマラーの言葉が引用されている。それにしてもこの二人のファッション、イギリス人が意識したフレンチ・カジュアルなのかもしれないが、パンツはくるぶしの上5センチでカットされており実にイギリス的。そして、録音も当然ロンドン。写真はパリ、アルバム・タイトルをフランス語にしてもイギリス人がパリなんかでロックのレコードを録音できるはずがない。

■「ハンキー・ドリー」デビッド・ボウイ
70年代のボウイの作品は緊張感の高いものが多いのだが、この作品からはどこかリラックスした雰囲気が伝わってくる。「スペース・オディッティ」など初期のフォーキーな要素と「ジギー・スターダスト」以降のエレクトリックな要素が見事に融合した傑作。

■「ストレイ」アズテック・カメラ
アズテックというと1枚目、あのネオアコを代表するアルバムを唯一の最高傑作とする意見が多いが、個人的にはこの4枚目が好き。ジャズ・ギタリスト、ウェス・モンゴメリーを意識したというこの作品のギターは決して叙情に流されることなく実に力強い。

誰かにバトンを渡したい所だけれど、もう一つカフェについては書きたいので一ヶ月後くらいに自らこの話題を復活させよう。というわけで、続く。


キャベツ頭の男

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2006年05月29日

Musique pour le café −木魚編

5月7日のcyberbloomはんのカフェ音楽紹介の末尾に、「これはいちおうバトンの一環なので、次は木魚さんにタッチ!」とある。

Bags Meets Wes! Crazy and Mixed Up Quartet

え、あたくしにカフェ用の音楽? 僭越至極、ガラじゃないっすよ、そんなんしてはいけませんよ。ろくすっぽ喫茶店にも行かへんし、今どきコーヒーなんぼするんか知らんけど、その金払う代わりに立ち呑み屋で4時くらいからナンキン焚いたん相手にジョッキ傾けてますわ。町のおちこちにあるファーストフード的なコーヒー屋さんもタバコ飲んだらアカンとこ多いし、まったくこまっちんぐマイ子先生です。

そういう事情やから喫茶店の扉カランコロンするとしたらひとりではなく連れがいる。木魚にとってはおしゃべりのための空間で音楽はどうでもいいかも知れない。心は赤ちょうちんやけど、まだ4時までなんぼもあるし行儀悪いから、しゃないわ。扉カランコロンが喫茶店の原イメージやけど、喫茶店とカフェは似て非なるものなのだろうか。レーミーコ注文しても「はあ?このひと外国の人やわ、何語ゆうてはるんかしら」って思われるんやろな。アイスカフェオレなんやけどな。

カフェ飯って聞いたことあるぞ。そうか、わりとフードメニューに熱入れてて、mandoline さんが作りはるようなワンプレートのオカズにパンやサラダなんかをゆっくり食べれて、ほでもレストランより肩肘はらず、ショットバーみたいにハードリカー中心でもなく、パブのように誰かれ話しかけられるごちゃごちゃな猥雑さもない。オープンと前につくんはカフェぐらいやから、うんうん、あのイメージやな。

さっきも書いたけど、一人では行かない行けない丑三つ時の墓参り。そやからお連れさんとカフェでわーわーやってるとして、でも相手が「ちょいとハバカリ(トイレ)行ってくるわ」って中座すると、岩にしみ入る蝉の声のような静けさだと奥の細道しちゃうんで、ぽつねんと句をひねりたくなる。そん時に耳に入ってくる音楽ぐらいは欲しいかもしれない。

exquise さんはどんなんやったかな(3月24日の投稿)。一日の時間帯にあわせた選曲、知らない曲ばっかりやけど「耳障りにならないあまり主張の激しくない曲」はむべなるかな。入れこむより流れていく、これなんやろね。cyberbloom はんはコンセプトとしてのカフェ、曲にあわせてカフェの形態が変わっていくということなんやろか。テクノからJポップまで多彩やなー。

うーん、困ったな。ほんとは多ジャンル混淆で攻めたいけど、わやくちゃになりそうやから素人名人会談ふうにジャズでお茶にごそ。50、60年代のハードバップの名盤、ワンホーンカルテットやピアノトリオはできるだけ避けよーち。この手んのはどうも夜のイメージが強いと思うからね(ほんまは朝からでもいいもんはいいねんね)。
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2006年05月26日

Musique pour le café −cyberbloom編

「カフェのための音楽」というのを勝手に企画して、exquiseさんが先に書いてくれたのですが、私の方がだいぶ遅れてしまいました。

私の場合、カフェは実際に存在するお店というよりは、コンセプトしてのカフェ。確かに音楽は音の構築物だが、そのときの状態に合わせて、聞こえるもの、見えるもの、生まれるものが違う。配置された音との交渉、対話によって、そのつど現れる経験や引き出される記憶。環境音楽はその経験のゆらぎ度が高い。どんな環境にも合うというより、風景や想像力と交渉する余地の大きい音楽。

78年に環境音楽の始祖、ブライアン・イーノが music for airports というアルバムを出した。実際の空港のために書かれた曲ではなく、コンセプトとしての空港。しかし、ピッツバーグ空港がこの曲を流し、客から苦情が殺到したらしい。割と頻繁に外国に行ってたときに、トランジットの待ち時間によく聴いていた。だだっ広い茫洋とした空間を見上げる空港のカフェとかによく合う。walkman で聴くのはいいが、空港が流していたとすれば確かに違和感を覚えるかもしれない。人と共有する音楽ではない。美術館と環境音楽の親和性が高いのは、美術館は基本的に孤独な場所だから。私にとって、カフェもまた孤独な場所だ。

Eden 東京 Soulshine

EDEN/EVERYTHING BUT THE GIRL
EBTGのファースト。80年代の定番のひとつ。ジャジーに、アコースティックに、軽やかに駆け抜ける気持ちのよいナンバーの数々。スローに落とし、しっとり歌い上げる変速技も心憎いほど。パンク一辺倒だった私に、大人を感じさせてくれた最初の音楽。これなんかは実際のお店でかかってて欲しい。トレーシー・ソーンとベン・ワットのソロ、A DISTANT SHORE と NORTH MARINE DRIVE もそれぞれお奨め。

□「東京」サニーデイ・サービス
フォーク酒場が団塊のオジサンたちに大人気らしいが、このアルバムも70年代テイストが色濃い。艶やかなストリングスと一緒に、メロメロメロウなメロディがレトロな日本の風景を描き出す。中でも「あじさい」が秀逸。カフェでいうなら、縁側のあるお座敷カフェか。

SOULSHINE/DJ CAM
フランス発。最高にクールなクラブ系の音。踊れるけど、あえて踊らずに、聴き流したい。ボーカル&ラップものもいいが、間奏曲的に入る短いつなぎの曲も心憎い。DJの面目躍如。ヒップホップは本来泥臭い音楽だが、ここまでヒップホップを洗練させていいのかって思えるくらい。ヒップホップをジャズで徹底的に磨き上げたらこうなる。オシャレだけど、遊び心もふんだんに盛り込まれている。これは夏の夜、そして地下室のイメージ。そういえば1曲目のタイトルは SUMMER IN PARIS だった。昼間の熱がすっかり冷めた石造りのヨーロッパの街の地下から聞こえて来そう。1枚目のUNDERGROUND VIBES のビブラフォンの音も心地よかった。夏の夜の汗ばんだ闇から聞こえてくる、そして闇を奥深くまで振るわせるビブラフォン。

AMBIENT 2/BRIAN ENO &HAROLD BUDD
ブライアン・イーノのアンビエントシリーズ第2弾。副題は The Plateau Of Mirror (鏡面界)。イーノはピアノの音を、一音一音、宝石のように響かせる。その音響処理が見事。音響風景としては、ピアノの音がゆっくりと降り積もるような雪のイメージ。しかし、この冷たい音の粒は、緑が萌え揺らぐ今の季節にもはまる。真っ白な壁の一部が切り取られて、鮮やかな緑がのぞく。そういう風景がピアノの音によって、一瞬、鮮やかさを増したり、波紋のように揺らいだり。音そのものがこぼれ落ちる木漏れ日の光の粒になったり。半覚半睡の午後。

POTENTIAL MEETING / SILENT POETS
SILENT POETS にはアンビエント的な試みもあり、BEAMS が手がけたプロジェクト hotel id+ (「第一ホテル東京」の全室をプロデュース)に、ホテルの客室のための音楽を提供している。題して、SOUND TRACK FOR HOTEL+ID。これはカフェにも合うだろう。初期の POTENTIAL MEETING もいい。最近の洗練された音よりも、このアルバムをいちばんよく聴いているかもしれない。素人臭さと手作り感が残る、とてもシンプルな音。そこが逆にしっくりくる。ジャケットワークも秀逸。


■これはいちおうバトンの一環なので、次は木魚さんにタッチ!

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☆French Bloom Net 最新記事「The Sweethereafter」(05/26)
posted by cyberbloom at 22:09| パリ ????| Comment(0) | TrackBack(0) | MUSIQUE POUR …のための音楽

2006年05月25日

Musique pour le café - exquise編

cyberbloom さんの発案で、「カフェで流したい音楽」を集めてみようということになりました。もし自分がカフェの店主だったらという観点で考えてみると、本を読んだり、人と話したり、あるいはただぼんやり時を過ごしたりする場所だから、耳障りにならないあまり主張の激しくない曲がいいなあと思うので、そういう曲をふだん聴いているレパートリーのなかから10曲探しました。以下、曲/アーティスト(収録アルバム)となっています。

Moon Safariウォールペーパー・フォー・ザ・ソウルあゝ、我が良き友よ(紙ジャケット仕様)

1 Portrait / Five or Six (Pillows & Prayers 03)

82年にイギリスのチェリーレッドというレーベルから出されたコンピレーション中に入っているもの。川のせせらぎのようなギターの音が心地よく、開店時最初に流したい曲です。

2 All I Need / Air (Moon Safari)(写真左)

母国だけでなく世界へ活動範囲を拡げているフランスの2人組エール。彼らの曲なら1日中店で流していたい。そのなかでも女性ヴォーカルのフランス語なまりの英語が耳に残る、爽やかな曲を。

3 Wallpaper for the Soul / Tahiti 80 (Wallpaper for the soul)(写真中)

英語で歌っていますがフランスのバンドです。実験的な部分もあるのにどこか懐かしい感じもします。まだ暑さの残る夏の終わりの午後にぼんやり聴いていたい曲。

4 Worry About You / Ivy (Long Distance)

映画やドラマで曲がよく使われているアメリカのバンド。この曲も「スティーヴン・キングのキングダム・ホスピタル」(!)というドラマの主題歌でした。ドラマ名からは想像がつかないような、透明感あふれた素敵な曲です。

5 Mother Nature's Son / Beatles (The Beatles (The White Album))

ビートルズのなかでいちばん好きな曲かもしれない。とてもシンプルな作りと美しい旋律で、何度聴いても飽きないです。

6 Sparks / Röyksopp (Melody A.M.)

ノルウェーの2人組で先月来日もしました。出身が北欧だからってわけじゃないけれど、温かいものを飲みながら外の冬景色を眺めていたいような曲。

7 Always Be / The Animalhouse (Ready to Receive)

夕方にこの曲を聴いていると、根拠もないのに「明日はいいことあるかな」と思えてくる。終わりの盛り上がり方が何だか軽快な気分にさせてくれるのです。

8 Walk You Home / Super Furry Animals (Love Kraft)

今いちばん好きなバンドの1つであるSFA。ヴォーカルのグリフ・リースの声は私にとってまさに「癒し系」。黄昏時にかけたい枯れた名曲です。

9 Rock a Boy Blue / Scritti Politti (Songs to Remember)

カフェといえども私なら絶対夜中まで開けてお酒も出しちゃうだろう、ということで、ここからは夜用の音楽を。スクリッティ・ポリッティというとその昔打ち込みバシバシのポップな曲を連発していたグループですが、ブレイクする前はこんなシブイ曲も作っていました。ジャズの香りもして大人っぽい。

10 ゴロワーズを吸ったことがあるかい / ムッシュかまやつ(あゝ我が良き友よ)(写真右)

日本語の曲はどうしても耳に入ってくるのでカフェのBGM向きではないかなと思うけれど、お酒に似合う格好良い曲としてぜひ流してみたい。ちなみにムッシュとはもちろん Monsieur のことですよ。かまやつさんの艶っぽい声でフランスへの愛が語られるこの曲を、フランス好きな人にはぜひ聴いていただきたい!

HMVのサイトで調べてみたら、すべてのアルバムが入手可能なようです(いい時代になりました)。サイトで試聴できる曲もあると思うので、ご興味がある方はそれを利用して頂ければ幸いです。

近頃あまりカフェは行かないのですが、心に残るお店はいくつかあります。その話をしだすと長くなりそうなので、また別の機会に。

exquise@extra ordinary #2

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