2015年11月26日

ジェニファー・L・スコット『フランス人は10着しか服を持たない』

ジェニファー・L・スコットの『フランス人は10着しか服を持たない』という本が、2015年度上半期1位のベストセラーを記録した。フランス関連では、異例の売れ行きとさえ言える。学生が貸してくれたので、僕もようやく読んでみた。内容は、2001年1月から半年間、パリのフランス貴族の家にホームステイしたカリフォルニアガールのカルチャーショックを綴ったブログの書籍化である。もとがブログだから、と言うと失礼だけど、ざっと読み飛ばせる内容だ。そのうえ、各章に1ページの「まとめ」まで付いていて、要点を取り違える心配はない。

フランス人は10着しか服を持たない~パリで学んだ“暮らしの質Lessons from Madame Chic: 20 Stylish Secrets I Learned While Living in Paris (English Edition)

原題は Lessons from Madame Chic. 20 stylish secrets I learned while living in Paris. マダム・シックとは、ホームステイ先のマダムに付けられたあだ名で、もう一人、マダム・ボヘミエンヌというカジュアル系人物もちらっと登場する。邦題は、服は各シーズンに気に入ったものを10着持てばよい、というマダムの教えに由来する。だから、全部で10着しか持たないのではなく、ワードローブには10着しか掛けない方がかっこいい、というニュアンスだ。その点、邦題は、やや誇張広告ぎみではある。ちなみに僕は、「フランス人はケチだから、10着の服を着回している」という、どちらかといえば、ネガティブな話かと思って読み始めたのだが、これは僕の先入観の方に問題があったのだろう。ごめんなさい、フランス人。

本書のメッセージはシンプルで、量より質が大事、ということに尽きる。間食せずに、食事を楽しむ。良品を普段使いする。部屋は散らかさない。近年のフランス映画を少しでも見ていれば、この貴族的なフランス人イメージが、平均的フランス人にあてはまるわけがないことくらい、すぐ分かるだろう。しかし、フランス人といえば、ワイングラスをかちんと当てて「トレビアーン」とか言っている感じ、というステレオタイプがあいかわらず存在しているのも、まぎれもない事実だ。これを、平均的アメリカ人は、チップスとジャンクフードしか食べず、普段はジャージーを着て、部屋は散らかり放題、というもうひとつのステレオタイプと対比させることで、質のフランスvs量のアメリカという本書の構図が、よりはっきりしてくるだろう。

質の向上は、物質的な側面だけでなく、人間においても求められる。新聞購読や「インディペンデント系の外国映画」や旅行を勧めるのは、そのためである。ここでも、平均的アメリカ人は、ネットの芸能ニュースしか読まず、ハリウッド映画を見て、パスポートなんて一生取得しない、というステレオタイプがあってこそ、わざわざ主張する意味が出てくる。

さらには、人間性向上の一環として、「ミステリアスな雰囲気を漂わせる」ことが推奨される。「初めて会った人に私生活のことをあれこれ話さないこと。それよりもアートや哲学やいま開催中のイベントなどについて話そう。興味深い話をして、どんな人なのだろう、とみんなに思わせるように」と、ジェニファーさんは提案している。あれ、こういうのを、スノビズムと言うのでは? いろんなことに興味をもって、自分の意見をもつことは大事だが、「あの人すごい」と思われたい、という動機でいいのか? そういうゲーム的なアプローチでも、いつか本物になるかもしれないという意味だろうか。

さて、不思議なのは、なぜこの本が日本でベストセラーになっているのか、というところだ。この本を手に取る人は、断捨離ブームの流れで、シンプルな生活のヒントを、フランス人に求めるのかもしれない。フランス人はおしゃれというイメージがあるが、10着の服しか持たないって? だったら、たとえ10着でも、「清貧」ではなく、なにかエレガントで知的な暮らしを提案してくれるはず、と読者は期待するのかもしれない。そのあたりは、正直なところ、僕にはよく分からない。

ただ、僕が思うのは、本書の面白さのひとつは、「日本人がパリでシンプルライフを発見した」というありがちなストーリーから少しずれている点にあるのではないか、ということだ(まあ、そういう本もよく売れていますが)。読者は、日本以上に大量消費社会であるアメリカから来た著者がパリの貴族邸であわてふためている場面では、「いや、ジェニファー、それはないだろ!」と突っ込みを入れつつも、「やっぱり人生はクオリティで勝負だよね」という結論部分では共感する、という読み方をしているのではないだろうか。

フランス人は人生を楽しむ達人である、というイメージは、かくしてアメリカ経由で、さらに強固なものになっていく。しかも、人生の楽しみは、恋と美食だけでなく、ファッションからアートまで、知的な楽しみも含む。フランスという文化アイコンの幅の広さと、その機能性の高さを、あらためて再確認できる本である。


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2013年11月08日

なだいなだ『ぼくだけのパリ』

もう1ヶ月ほど前のことになるが、6月6日に作家のなだいなだが亡くなった(※この記事の初出は2013年7月3日)。享年83歳。新聞では「老人党」の話題が中心だった。僕はほとんど著作を読んだことがなく、とくにコメントすべきこともないのだけれど、たまたま手元にある彼の『ぼくだけのパリ』(平凡社カラー新書、1976年)という本のことを、追悼の意をこめて、少しだけ書いておきたい。

なだいなだは、1953年9月にパリに到着し、医学を学んだ。大学寮に住み、アメリカ館で催された詩の朗読会でたまたま聞いたガルシア・ロルカに惹かれ、文学に傾倒し、スペイン語を学び、nada y nada というスペイン語のペンネームを発案するに至る。また、後に妻となる女性とも、そのとき出会ったらしい。つまり、青年の未来のかなりの部分が、あるパリの夜に始まったということだ。僕も同じ大学寮のアルゼンチン館の元住人として、この感じはよく分かる。

その後、なだいなだは何度もパリに足を運ぶ。知識は増え、発見も積み重なる。だが、1953年の経験は、彼自身にとって決定的だった。それはあまりに決定的であるがゆえに、他人と簡単に共有できないし、したくない。この本が面白いのは、洋行が容易になった1970年代の若い世代に対して、露骨なまでの嫉妬を告白しつつ(「ぼくは、かんたんにパリに来られるようになった、現代の若者たちに、胸の中が、まっくろこげになるほど、嫉妬の火を燃やしているのだ」)、「自分だけのパリ」にこだわる自分を笑ってみせる、そんなユーモアがあるからだ。

「ぼくだけのパリ」を愛する姿が滑稽なのは、パリという街の魅力の一つが、その冷たさにあるからだ。どれだけパリに思いを寄せても、パリの方ではよそ者扱いである。だが、その同じパリが、ふと親しげな表情を見せることがある。すると、たちまち仲間に入れてもらったような気になって、魅了されてしまう。そんな風にパリに踊らされる自分を、なだいなだは飾らずに書き留めている。

『ぼくだけのパリ』は、次のような結論で締めくくられている。「パリは、人がいかように見ても、いかように楽しんでも、いかように苦しんでも、かまわない。しかし、そのどのような人間にも、甘美な思い出を、かならず与えてくれるところだ。与えられなかったとしたら、それは君が悪いのだ。パリをうらむことはない。」

まるでカヴァフィスの「イタカ」の詩みたいだが、なだいなだがパリに対して抱いた複雑な愛着をよく伝えている。その彼も今はなく、パリは変わり続ける。ほとんど忘れられた一冊の本は、彼の青春の墓碑である。

□ぼくだけのパリ (1976年) (平凡社カラー新書)


bird dog(初出2013年7月3日)

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2013年04月05日

石井好子『女ひとりの巴里ぐらし』

キャバレーが気になって仕方がない。日本の、ではなくパリのである。フィルム・ノワールにもちらちら出てくるキャバレーは、フランスでしかお目にかかれないものだと思う。洗練された踊りと音楽、芸事、そして美しい女たちのヌードが無理なく一体となったショーが繰り広げられるのだから!ブロードウェイの劇場がどんなに真面目にがんばったところで、その粋には及ばない。現代のモダン・キャバレーの代名詞「クレージー・ホース」とがっぷり四つに組んだフレデリック・ワイズマンのドキュメンタリー映画のおかげで「キャバレーとは何ぞや?」というレベルからは抜け出たものの、多くの店が華を競ったかつてのキャバレーについて知りたくなった。そんな時に出会ったのがこの一冊。

女ひとりの巴里ぐらし (河出文庫)すぐれた食のエッセイの書き手としてもっぱら馴染んできた石井好子さんが、50年代のパリ、ピガール地区で名を馳せたキャバレー「ナチュリスト」のスターとして歌っていた頃を綴ったエッセイだ。基本的に365日休みなし、夜10時から2回繰り返される同じ内容のショー(レビュ)に出演し明け方店を出るという過酷な日々の記録でもある。国の垣根を越えて集められた芸人達、踊り子達との日常やキャバレーの舞台裏が細かいところまで生き生きと描かれている。黄金時代のキャバレーを知ることができてこれだけでも大変ありがたいのだけれど、この本を「とある時代のパリの風俗の記録」以上のものにしているのが、作者のクールな眼差しだ。ご本人は「意地悪」と称しているが、その涙でくもらない視点から語られるピガール地区で働く人々の生き様がこの本に独特の陰影を与えている。ここにあるのは夢のような舞台だけではない。いろんな身の上の人々を喧噪の中に呑み込んでゆく大都市そのものだ。

一方ではパリの人なつっこさもさりげなく綴られている。彼女が働き暮らした古い下町、モンマルトルについての文章は特に印象的だ。この地に骨を埋めた歌手アリスティード・ブリュアン(ロートレック作の浮世絵調ポートレートでも有名)の歌のことばがさりげなく引用されていて、作者が肌で感じた街の気分を上手く伝えている。難しいことは何一つ言っていないし、そこの街角にいる無名のあの娘のことを歌っているだけなのだけど、そこにはこの地でしか生まれない何とも言えない詩情がある。パリにかぶれる人は、こういうところにヤられるのかなと思う。

本の表紙にはパリの街角の絵で名高い荻須高徳氏の作品が使われている。どちらかというと苦手なタイプの絵なのだけれど、本を読み終わってとても素直な気持で眺めることができた。どちらも、まごうかたなき巴里なのだ。


女ひとりの巴里ぐらし (河出文庫)
石井 好子
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2009年01月14日

料理人〜狐野扶実子(このふみこ)

狐野扶実子さんをはじめて知ったのは偶然観た2004年放送の「情熱大陸」でした。

konohumiko01.jpgこのとき彼女は34歳の出張料理人。パリやニューヨークを行き来し、シラク大統領夫人をはじめとするセレブたちのパーティを成功させたり、アメリカの経済界のVIPの自宅で腕をふるい、舌の肥えた彼らをうならせているという内容でした。彼女は結婚後、ご主人の赴任先だったパリに渡り、パリの料理学校コルドンブルーを首席で卒業した後、パリの(現在はミシュラン三ツ星レストラン)「アルページュ」に飛び込みで働くうち、あっという間にスーシェフにまでなり、独立をして出張料理人になりました。彼女はその30分という短い番組の中でも凛とした佇まいで、多くを語らない、そしてしなやかな強さを感じさせる人で、料理に関して決して妥協せず、素材に真摯に向き合い、彼女自身を表すかのようなシンプルな料理を作るのでした。彼女の料理を口にした人は素材自体の美味しさに驚き、そしてそれをパーフェクトに引き出す彼女の料理テクニックに驚くのです。

番組を観た後、若くしてこんな技術を習得した彼女ってどんな人なんだろう、と気になる存在になりました。ただの「料理の天才」ではない、なにか彼女の魅力らしいものに惹かれるのです。その後雑誌などで紹介されることも増えましたが、先日書店で目に付いたこの本を手に取り、少し彼女が見えてきたように思いました。

この本は彼女が著者ではなく、彼女へのインタビューをエッセイ風に文章にしたものですが、装丁もシンプルで美しく、ついつい手が伸びてしまう本なのでした。

彼女の幼少期にあった親戚のおじさんとの料理体験から始まり、フランスとの出会い、結婚、料理を職業にしていくまで、そして現在が、静かに淡々と語られています。しかしこの本を読めば、彼女が料理の才能に恵まれていただけではないことがわかります。

結婚する以前にパリに留学したときには語学学校を掛け持ちして、ただひたすらフランス語を勉強したこと。コルドンブルーではルセットに書かれていることがどうしてそうなのかを理解できるまで、何度も何度も時間をかけて料理したこと。そんなことから他人より時間が掛かりすぎてしまうことも次第に努力でカバーしていったこと。そして、飛び込みで働き始めた「アルページュ」では掃除係から始め、周囲のみんなが無理だろうと思う作業も手間を惜しまずやり遂げ、常に確実に、遠回りでも誠実に料理に向き合い、次第にオーナーシェフ「アラン・パッサール」に認められるようになっていくのでした。

「アルページュ」のスーシェフになるという誰もがうらやむ状況になっても、人気店であることの忙しさや人を管理していかなければならない立場のため、「料理をすること」から遠ざかってしまうことを嫌い、彼女はあっさりと辞めてしまいました。そして彼女は自分の作った料理に対する反響がダイレクトに伝わる、自分の想いがそのまま料理として伝えられる方法として「出張料理人になること」を選んだのだと思います。

料理は作った人の人となりが現れるといいます。私は彼女の料理を食べたことがありませんが、彼女の料理は、きっと彼女の素材に真摯に向き合う姿勢(彼女が子どもの頃に五感で培ったものがベースになっている)や決して独りよがりなものではない、彼女自身が会得してきた料理の技術をただひたすら忠実に使うことで生み出される、彼女自身の生き方のようなものかもしれません。

この本には彼女は現在、フランス・フォション社に請われて就任したエグゼクティブシェフを辞めた後、また出張料理人の立場に戻ったとあります。これから彼女がどんなことをしてくれるのか?も楽しみですが、残念ながら数多くではない人たちに、彼女の料理という感動を静かに作り続けることだけは間違いないと思います。



フミコのやわらかな指―料理の生まれる風景
狐野 扶実子
朝日出版社
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5 私にとっては最高の料理本です
2 すごい人なのは、わかるが。
3 情熱。
5 「食べるをまなぶ」より




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2008年10月10日

「ウィークエンド・ア・パリ」− 優雅なタイトルの裏のドタバタ生活

ウィークエンド・ア・パリ,すなわちパリでの週末.
口にするだけで(といっても口は閉じたままで手を動かしているだけなのだが)思わず恥ずかしくなってしまうようなお洒落な響きである.

午前零時を過ぎても客足の絶えることのないサンジェルマン・デ・プレのカフェ.
あるいは,日曜日の午後のリュクサンブール公園.

Weekend a Paris(ウィークエンド・ア・パリ) パリ季記―フランスでひとり+1匹暮らし (天然生活ブックス) パリ通信

パリの週末にいかなるイメージを付与しようとそれはもちろん各人の自由である.
とはいえ,「パリの週末」とうっかり口にしてしまうものなら,それがいかなる条件の下であれ,絶対的にお洒落でなくてはならない,といった強迫観念に近いものを感じてしまうことも事実である.

猫沢エミの「Weekend a Paris(ウィークエンド・ア・パリ)」は,そうしたイメージを見事に裏切ってくれるパリ生活日記.

「ウィークエンド」とタイトルに入れているものの,実際のところ著者がブログで発表していた日記を収録した本であるので,記述は週末だけを対象にしているわけではない.
むしろ週末という非日常の時間よりも週日の日常生活の記述の方に重点が置かれているように思う.

2002年,東京でミュージシャンとして活躍していた著者はパリに移住する.
そして,このお洒落の代名詞ともいえるフランスの首都にて予期せぬ事態に次々と遭遇することになる.

念願のプジョー・ヴォーグ(ペダルのついたスクーター)に乗ればガス欠となり,ガソリンスタンドを求め街を彷徨う.
アパートでは何の予兆なく唐突に天井が落下する.

当たり前といえば当たり前だが,花の都での生活は,バラ色ばかりというわけではない.

著者の記述が数ある著名人/芸能人のパリ滞在記と異なるのは,そのユーモラスな筆致にある.
笑いのセンスとしては,意外にも椎名誠の自伝エッセイのノリに近い.

とりわけ不幸な事件に遭遇したときの記述は圧倒的で,病気になったときのエピソードなど抱腹絶倒もの.
お洒落で優雅なタイトルの裏のドタバタ生活.

勝手な幻想を抱きがちな街での生活記としては,極めてリアリティーの高いものになっているのは,そうした著者のユーモアセンスによるものだろう.
説得力のある話題とは,言うまでもなく個人的な体験に基づいたものでしかあり得ないのだから.



キャベツ頭の男

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2006年09月19日

「タエコワーズのヨーロッパ・ヴァカンス便り」

タエコワーズのヨーロッパ・ヴァカンス便り
内生蔵 妙子
二見書房 (2004/11)
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おすすめ度の平均: 5
5 夢は見るものでなく、叶えるもの。
5 空想旅行から抜け出して。

ヨーロッパ9カ国50都市を巡った日本人女性の旅日記が一昨年11月に東京の二見書房から「タエコワーズのヨーロッパ・ヴァカンス便り」というタイトルで出版されている。これはもともと彼女のHP「タエコワーズ・ドットコム」(タエコワーズのマドモワゼル手帖)を書籍化したもので、美大出身ならではのセンスが生きたオシャレなHPは、多くのフレンチマニアを魅了した。ブログもあって、なかなかここまで作りこめない洗練されたHPだ。

美大を卒業したあと、デザイン事務所で働くかたわら、フレンチポップのクラブでDJをこなし、ミニコミ誌を自費出版した。そして2003年の1月に会社を辞め、ワーキングホリデービザでヨーロッパを回った。その精力的な行動の記録がHPに掲載され、「タエコワーズのヨーロッパ・ヴァカンス便り」として結実。フレンチ・ブロガーの先駆けのような人だ。しかし、それが最後の置き土産になってしまった。彼女は帰国後体調を崩し、一時は回復したが、今年の3月に帰らぬ人となってしまった。

Taecoise タエコワーズ。本名、内生蔵妙子さん。偉大なフレンチマニアのひとりとして名前を刻まれるだろう。愛用の白いノートPCには今も世界中の友人たちからメールが届き、HPも生き続けている。同郷出身の人でもあり(現在帰省中で地元の新聞で訃報に接した)、ブログを通して交流してみたかった。心からご冥福をお祈りします。

タエコワーズ・ドットコム


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2006年05月17日

稲葉宏爾『路上観察で歩くパリ』

路上観察で歩くパリ 角川oneテーマ21 (C-101)ずいぶん暖かくなってきて、散歩も楽しい季節です。

歩くのが苦にならない Pst にパリを案内された、というかひっぱり廻された友人たちは決まって「ああ疲れた (怒)」とボヤクのでした。パリ市20区は東京の山手線の内側ぐらいの大きさというのがよく持ち出される比較の基準ですが、パリ南端のシテ・ユニヴェルシテールからモンマルトルまで行ってさらにあちこちうろうろしながら帰ってくるってのをよくやってました。金がなかったというのもありますが、ぶらぶら歩いているときに出会う「なにか」が楽しみで、わくわくしながら街を歩き廻っていたのです。そして、いまでもずんずん歩いてます。

先日、稲葉宏爾『路上観察で歩くパリ』(角川oneテーマ21)を購入しました。パリで発行されている日本語新聞『オヴニ』で連載されていたコラムを纏めた『パリ 街角のデザイン』(日本エディタースクール出版部) をもとに、手を入れた新書版です。パリやフランスを旅行した人なら一度は目にしたことのある、あるいは知っているものたちですが、写真とともにあらためて見・読み直してみると、なんとも不思議なものたちがあるものです。かつて歩いた街の風景を思い出しながら、これから行くパリの姿を想像しながら楽しく読んで欲しい本。

たとえば、歩道に縁のあたりにポンっと置かれているボロ布。よく目にするこのボロ布、その名も「雑巾堤防」chiffon de barrage とは何?

「カフェの砂糖」の話なんかも「そうそう」、いろんなデザインがあって、愛らしいのでつい持ち帰ってしまうなあと相槌。

街の壁を彩る (?)「落書き」Tags なんかもあちこち見て廻ると面白くかつ素晴らしいものに出会えたりします。最近、日本でも似たような落書きをちらほら見かけますが、パリの落書きは気合はいってます。あんなところにも書いたぜっていう自己顕示の側面があるでしょうけど、「落書き」と片付けるには惜しい。パリの Tags を撮った写真集もあったはずです。ずっと気にはしているのですが、まだ手にいれてないな。

『路上観察で歩くパリ』は「フンガイ対策」にもきちんと対処されていて、なんと毎日16トン近くの犬の crottes が落とされているパリで「運」がつかない奴はいない!とあらためて思います。『路上観察で歩くパリ』では触れられていませんでしたが、街をあるくときは下ばかりではなく、たまには上も見て欲しいです。真っ青な空、あるいはパリの曇天、そしてときに建物の壁面に書かれたはっとする「壁画」に出くわすことがありますから。

自分だけのパリやフランスを見つけたい。


Pst@ワインと読書の日々

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French Bloom Net 最新記事「Musique pour le cafe -木魚編」(05/17)
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2006年04月03日

チープ・シックなフランス人女性

フランス人の贅沢な節約生活フランス人の贅沢な恋愛生活フランス人がお金を使わなくてもエレガントな理由

フランス人の贅沢な節約生活」佐藤 絵子 (著)
お金をかけずに贅沢なフランス人の美容生活」佐藤 絵子 (著)
フランス人の贅沢な恋愛生活」佐藤 絵子 (著)

フランス人がお金を使わなくてもエレガントな理由」吉村 葉子 (著)
お金がなくても平気なフランス人 お金があっても不安な日本人」吉村 葉子 (著)
結婚しても愛を楽しむフランスの女たち結婚したら愛を忘れる日本の女たち」吉村 葉子 (著)

本のタイトルを見るだけで、筆者の基本的な論点が読み取れる。日本人には金があるけど、愛がない。日本人は金があるけど、生活を楽しめない。それにひきかえ、フランス人はそんなにお金がなくても、生活や恋愛の楽しみ方を知っている。それこそが本当の贅沢ってことだ。

なぜ「チープシック」という価値観が今評価されているのか?それは、小泉首相の構造改革に象徴される、ネオリベラリズム時代を生き残るための価値観だからだ。経済評論家、森永卓郎さんの「年収300万円時代の経済学」の書評でも書いたが、これから年収がどんどん下がっていく時代をいかに生きるかということを考える場合、ヨーロッパのモデルを考えざるを得ない。女性はフランス女性のライフスタイルを見習う必要が出てくるというわけだ。本の内容は実用的な話も多く、実はチープな生き方はクリエイティブで楽しい生き方だとわかる。お金がなかったらその分は自分でやったり、作ったりすればいい。シンプルな原理。人間の楽しみは本来そこにあったのではないのか。

とにかく日本人には金だけはあった。しかし、「下流社会」が本格化して、金さえなくなったら、どうすんのよ。日本人には、金も、愛も、楽しみもないってわけ?だから、チープな今こそ「愛と生活」を考え直すチャンスなのよ。男の育児参加とか、スローフードとか、田舎で暮らすとか、実際そういう生き方がいろんな分野で提唱されている。「チープシック」は「そこそこ収入があれば、負け組みでもいいや」という開き直りの生き方でもある。

佐藤さんと吉村さんはフランス女性的な生き方を提唱して、注目されている。しかし、「フランス女性」って一体誰のことだろう?彼女たちが描き出すフランス人女性というと、そんなに裕福でもないけど、それなりに良きブルジョワの伝統を受け継いだ家に生まれた、小奇麗な白人女性といった感じだろうか。しかし、そんな条件に当てはまるフランス人女性はなかなか見つからない気がする。世代間格差や移民問題など、様々な格差や対立がせめぎあい、なだれこんでいる、現在進行中のフランスのデモの混沌を見て、「フランス人は…」なんて十把一からげに言えないよなあ。

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2006年02月16日

宮下志朗『パリ歴史探偵術』

事件が起こる。いつ? どんな? 僕たちには皆目わからない。しかし、確かに事件は起きた。場所はパリ。

ひとりの魅力的な女性の身に降りかかる、複雑で、歴史的な因果を持つ事件。『ダヴィンチ・コード』を遥かに凌ぐ謎がいくつも浮かびあがってくる。フィリップ・オーギュスト、ノストラダムスに始まり、アンリ・ルソー、モネ、ルノワール、ランボーにプルーストなどなど、多くの人物の名が挙げられていく。

この難事件を解決すべく呼びだされたのが、ホームズ=宮下である。「ワトソン君」の群れにすぎない僕たちには、ただの階段、ただの壁、臭いトイレや廃線の跡でしかないちょっとした手がかりから、ときには一冊の古いガイドブックから、ホームズ=宮下は事件の全貌を鮮やかに解きほぐしていく。そう、パリの街をあちこち歩きまわるこの名 (迷) 探偵は < 歴史 > という謎を僕たちに、明快に、そして楽しげに示してくれる。< パリ > とは幾世紀ものあいださまざまな事件に巻き込まれてきたひとりの麗しき女性の名であるとともに、記憶を喚起させるひとつのトポスに与えられた呼び名でもあったのだ。

ホームズ=宮下のみごとな「推理」をぜひ堪能してください。

Pst@書評
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パリ歴史探偵術
パリ歴史探偵術
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宮下 志朗
講談社 (2002/05)
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おすすめ度の平均: 5
5 パリ・リピーターのための好著
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