2007年01月31日

音楽で観る映画 − 番外編

cyclo.jpg映画に使われていた音楽が、その映画と同じくらい、あるいはそれ以上に強い印象を与えた、というご経験はないでしょうか。


ある時。ベトナムに暮らす貧しい姉弟の悲劇を描いたある映画を観ていると、これから身を売ろうとする姉が客を待っているディスコで、英語の曲がかかっていました。切ないメロディーとヴォーカル、そしてその甘さを切り裂くような激しいギターのカッティングがときおり響くその曲は、その映画が当時まだよく知らなかったトラン・アン・ユン監督の「シクロ」という作品であることがわかっても、誰の何の曲なのかわからぬままでした。


またある時。キャメロン・クロウ監督の「バニラ・スカイ」の冒頭で主演のトム・クルーズが目覚める場面で、"Open your eyes" というフレーズとともに不思議な曲が流れてきました。その直後に続く誰もいないニューヨークの街を映した非現実的な場面とともに、(映画自体はそれほど面白いとは思わなかったけれども)この音楽は記憶に強く残りました。しかしこの曲はオリジナルサントラだと思っていたので、あえて深く作曲者だとかを追求することはありませんでした。


そしてまたある時。村上春樹の『海辺のカフカ』を読んだ後で、カフカ少年が闇の中で聴いていた音楽が知りたくなり、この実在するロック・グループのアルバムを探しだしてプレーヤーにかけたとき、スピーカーから流れてきた最初の音は、「バニラ・スカイ」のあの曲でした。そしてどんどんこのバンドの曲を聴いていくうちに、「シクロ」で気になっていた曲が、彼らの大ヒット曲 "Creep" であることもわかったのです。


KidA.jpgイギリスのロックに詳しい方なら、彼らとは現在イギリスで最も実力あるバンドのひとつ、 Radiohead のことだとすぐおわかりでしょう。私は10代の頃からUK音楽に親しんできましたが、このバンドがメジャーになりはじめた1992〜3年頃は、ちょうど新しい音楽をほとんど聴かなかった時期にあたり、(名前ぐらいは聞いたことがあったけれど)彼らのこと、つまり "Creep" で一挙にブレイクし、逆にそのための重圧に押しつぶされそうになりながら、"OK Computer"、"Kid A"(注1)といった90年代のロック史に不可欠なアルバムを苦しみつつ発表しつづけてきたということ、など全く知りませんでした。


その後彼らの曲やこれまでの歩みを知るにつれて、レディオヘッドは自分にとってとても重要な存在となりました。聴くたびに胸を打たれる美しく重みのある旋律と歌詞、常に実験精神を忘れない姿勢、ヴォーカルのトム・ヨークをはじめメンバーの人となり、など彼らの魅力を語れば切りがないですが、音楽的な情報源とは別なところから知ったこともあり、ほかの好きな人々とは違う特異な位置を占めるようになりました。彼らの曲を聴くときは、しばしばその曲が引用された映画(注2)や小説、また彼らがコラボレートしたアーティストたちの作品が浮かんできます。つまり、私にとってレディオヘッドの音楽は、分野を問わず他の作品やアーティストへとつながる中継地のような存在でもあるのです。


sixdays.jpgさて先日、今年のサマーソニック出演者の紹介番組を見ていたら、気怠くてどこか懐かしい感じのする音が、おそらく中国人と思われるカップルを扱った退廃的な映像とともに流れてきました。それは DJ Shadow の "Six Days" という曲で、もう4年も前のものでした。そのプロモーション・ヴィデオ(PV)が何だかウォン・カーウァイみたい、と思って調べてみたら本当に彼が監督したものでした(注3)。DJ Shadow は、U.N.C.L.E. という別のユニットでも活動していることもわかったのですが、その U.N.C.L.E. の PV をすでに1年ほど前にジョナサン・グレイザーという映像作家の作品集で観たことがあり、それは実はトム・ヨークと共作した曲のものだったのです。そしてその PV に登場する、車にはねとばされながらも歩き続ける強烈な人物を演じていたのは、「汚れた血」のドニ・ラヴァン。うーん、レディオヘッドはいろんな所へつながっている・・



注1:写真中。村上春樹さんはカフカ少年が聴いていたのはおそらくこのアルバムだと述べています。


注2:最近のフランス映画では、cyberbloom さんのエントリーでも扱われていたセドリック・クラピッシュ監督の「スパニッシュ・アパートメント」で "No Surprises" が聴けます。


注3:カップルの男性を演じているのは、「ブエノスアイレス」の旅する美青年役が印象深いチャン・チェン。



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「小説バトン-キャベツ頭の男・番外編」(01/30)
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2006年12月29日

2006年の3点(映画編)

早いもので、今回が今年最後のエントリーです。そこでこの年末年始の投稿数回では2006年のベスト3を考えてみたいと思います。といっても、今年は時間的な余裕にあまり恵まれず、映画も本も思うように楽しむことができませんでした(Pstさんには及ばないけれど、ワインだけは結構飲みました)。でも少ないなりに心に残るものはやっぱりいくつか出てきますね。このエントリーでは今年何らかの形で発表・発売されたものに絞って選んでみます。


broken-flowers-0.jpg1 ブロークン・フラワーズ(ジム・ジャームッシュ、アメリカ)
 
FBNでもご紹介した久々のジャームッシュの新作は、クールで、チャーミングで、そしてどこかヌケたところがホッとさせてくれる映画でした。殺伐とした内容の映画が多かった中、こういう作品が観られたことが嬉しい。もう一度観たいなあ。


iwojima3.jpg2 硫黄島からの手紙(クリント・イーストウッド、アメリカ)

前回ご紹介した「父親たちの星条旗」と二部作を成す作品で、ほとんどが日本人キャストなのですが、「父親〜」よりもイーストウッドらしさを感じました。戦争という重く深いテーマを、情に流されることなく、常にニュートラルな視線でドライに描ききる監督の力量が今回も遺憾なく発揮されています。渡辺謙をはじめ、俳優たちの演技にも誠実さが感じられます。


historyof.jpg3 ヒストリー・オブ・バイオレンス(デヴィッド・クローネンバーグ、アメリカ/カナダ)

昨年のカンヌ映画祭に出品されて高く評価されていた作品で、文字通り「暴力」がひとつの幸福な家庭を崩壊させる物語。「ロード・オブ・ザ・リング」のアラゴルン役だったヴィゴ・モーテンセンの新たな一面が見られます。悲惨な話なのに、どこか笑える要素も含まれている、不思議な味わいの映画です。


来年は、もう少し落ち着いて映画を観られたらなあと思っています。それにフランス映画ももっとご紹介できるようにならねば! それでは、皆様どうぞよいお年を。


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posted by cyberbloom at 20:39 | パリ 🌁 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日本と世界の映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2006年11月23日

天空の草原のナンサ

lechienjaune.jpg今回はモンゴルに暮らす子供を主人公にした映画「天空の草原のナンサ」(ビャンバスレン・ダバー監督作品)をご紹介します。


町に住んで小学校に通っていた6歳の少女ナンサが、家族が暮らす草原に帰ってくるところから物語は始まります。ある日ナンサは、ほら穴で一匹の子犬を見つけて連れて帰り、「ツォーホル」と名付けてかわいがります。しかしお父さんは飼うことを強く反対して、彼女に捨ててくるように命じます・・


ストーリーはたいへん素朴ですが、これがモンゴルの広大な自然をバックにゆったりと語られるところにこの映画のよさがあります。さまざまな色合いの、自然の緑や空の青と、ナンサ一家が身にまとう衣装や彼らが生活するゲル(移動式住居)の内部にあふれる鮮やかな色彩が画面のなかで絶妙に調和し、日本や欧米の映画には見られない情緒を生み出しています。


Nansa2.jpg子供と犬を扱った映画はこれまでにも数々作られてきました。そういった作品のなかには、妙にセンチな路線に走りすぎて嫌みな感じになっているものがありますが、この映画でナンサとツォーホルへ向けられる視線は、常に優しく静かであり、演出も非常に抑制されたものです。実はナンサ家族を演ずるのは、素人の遊牧民一家で、「演技している」ということを忘れてしまいそうになるくらい、彼らのたたずまいは自然です。


終始穏やかに話は進みますが、一方で捨て犬が増えてオオカミ化し、遊牧生活をおびやかしていること、お父さんも町で働こうかと考えていることなど、遊牧民が抱える現実の問題も端々に語られています。実際にモンゴルでは遊牧民がだんだん町に移り住むようになり、ゲルで暮らす人々は少なくなってきているそうです。町の生活も知っているナンサが、儀式や迷信や伝説(この映画の原題になっている『黄色い犬の洞穴』の話もそのひとつです)に取り巻かれた草原での生活に、疑問を感じる日はやがて来るのかもしれません・・


Nansa3.jpgところで、この映画は第58回カンヌ映画祭でパルム・ドールならぬ「パルム・ドッグ」賞を受賞しました。この賞はその名の通り、印象的な犬が登場した映画に贈られるものです(ちなみに今年の「パルム・ドッグ」は「マリー・アントワネット」のパグ犬 Mops に与えられました)。ツォーホル君のかわいいブチ模様や人なつこい仕草は実に微笑ましく、雑種犬好きにはたまらない映画です。


■DVD「天空の草原のナンサ」(デラックス版)


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 「ANTI-PUB 広告に反対する運動(2)-合法か、非合法か」(11/23)
posted by cyberbloom at 00:42 | パリ | Comment(0) | TrackBack(0) | 日本と世界の映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2006年08月01日

Brokeback Mountain(ブロークバック・マウンテン)

ブロークバック・マウンテンどうも日本男児は腰が引けているのではないか−映画館に入った瞬間にそう思ってしまった。

確かにそれはレディースディだった。確かにゲイのカウボーイ映画という評判が先行したからかもしれない。ついでに言うなら主演の二人も若いイケメンだった。それでも日本男児よ、そんなことでいいのか。見かけた男性観客と言えば初老の夫婦者らしきひとりだけ。あとは全員女、女、女。しかしゲイ、ヘテロそんなことに関係なく、久しぶりにラブ・ストーリーの佳作だったというのに。そう、愛とは痛いものなのだと認識させられる映画である。
 
筋はきわめてシンプルだ。20歳のイニスとジャックの二人はひと夏を山で家畜の番をする仕事につく。過酷だが美しい自然の中、邪魔するものは何もない山中に二人だけ。ごく自然に二人の距離は縮まりふとしたことから身体を求め合う。山の静けさに裸でじゃれあう二人を望遠鏡で見つめる雇い主。二人は予定より早く任を解かれ山を降りる。

それまでは単なる何の娯楽もない山の上での慰みと思っていた関係。それがポンコツ車でジャックが去った後、突然襲ってくる激しい痛みと吐き気にイニスは身体を二つ折りに苦しむ。

それから数年、イニスはいいなづけと結婚、二人の娘をもうけ苦しい家計ながらなんとか平安に暮らしているが、ジャックからの会いに行くという葉書が。待ちきれずにビールをたてつづけにあおるイニス。現れたジャックを引き寄せて交わした激しいキスを妻アルマに見られてしまう。

妻との不和、離婚を経て出会いから20年間、二人はつかの間の逢瀬を何度か重ねるが、牧場を買って一緒に暮らしたいと望むジャックにイニスはかつてひどいリンチを受け、殺されたゲイカップルの話を持ち出して拒否する。隠れて会う以外にないーと。喧嘩別れしてしばらくたったある日、思わぬ葉書がイニスのもとに・・・

生い立ちも相まって昔かたぎのイニスはジャックに惹かれる自分を受け入れられずに苦悩する。自分の性的嗜好を認めて拘らないジャックとは対照的だ。そのために家庭も男としての誇りも傷つけられ、「俺たちにはブロークバックマウンテンでの思い出しかない」と責めるジャックに「お前のせいで俺はこんな負け犬になってしまった」と叫ぶ。

ジャックを演じたジェイク・ギレンホールの青い目の演技には男も女もぞくぞくさせられる。この人はいつもひたむきな役が良く似合う。男に夫を奪われる妻の苦悩を、生活に疲れた顔ににじませたミシェル・ウィリアムズのアカデミー助演女優賞ノミネートというのもよくわかる。何より今まで息子役(パトリオットでメル・ギブソンの、チョコレートではビリー・ボブ・ソーントンの)を演じてきたヒース・レジャーの、初めての父親としての、大人の男としての身体の演技が素晴らしい。さびれたダイナーでパイをつつく丸めた肩のなんともいえないわびしさ。娘の忘れていった服を丁寧にたたんで残り香を嗅ぐしぐさからにじみ出る娘への愛情。ジャックと別れて思わず地面に崩れ落ちるその身体。屈強だからこそもろい、もろいから敢えてタフに振舞う。どうしても器用に生きられない不器用な男の悲劇。

ラストシーンが印象深い。ジャックが実家で彼のシャツに密かに重ねて隠していた自分のシャツを貰い受けたイニスが、今度は自分の衣装入れにブロークバックマウンテンの葉書を貼り、その下にかけた二枚のシャツにそっと呟く。

「誓うよ、ジャック・・・」

そう。真実の愛とはひどく痛いものなのだ。突然奪われると頭よりも身体の方が先に反応するものなのだ。そしてその思い出があれば一生生きていけるものなのだ。別れただの、会えなくて寂しいだのと泣き言をいえるくらいなら、そんなものは愛じゃないのだーなんてそんなことを言ってしまうほど、二人の愛が切ない。そしてそれを認めず、抹殺しようとする社会の狭量さ。カウボーイというアメリカの男の代表にゲイというタブーを持ってきたアン・リー監督の挑戦と、二人の愛を永遠にした美しい山の自然に敬意を表したい。もしこれがもっと成熟した社会でなら、ことは違ってくるのだろうか・・・? 同性結婚もOKな国も出てきたことだし。

□アメリカ映画 アン・リー監督作品 「ブロークバック・マウンテン」(DVDは9・25発売、予約受付中) 2005年度アカデミー監督賞受賞作


BY 黒カナリア

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posted by cyberbloom at 21:40 | パリ ☁ | Comment(0) | TrackBack(1) | 日本と世界の映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2006年07月31日

THE SWEET HEREAFTER

スウィート ヒアアフター デラックス版一筋縄ではいかない映画である。というか、わからない−当事者でない自分にはわからないということがわかればいい映画なのかもしれない。
 
舞台はカナダ。ブリティッシュ・コロンビア州の小さな田舎町。そこで起きたスクールバスの事故(バスの運転手も被害者も全て町の住人という共同体の中での悲劇)を巡って、訴訟弁護士と事故で生き残った少女の視点を借りて事故の前と後の町の人々を描いた作品だ。
 
わからないーというのはわざとわからないように作られているからということもある。大体オープニングミュージックが終わるといきなり洗車場の洗車マシーンのどアップなのが面喰う。有無を言わさずガシガシ回る機械の巨大なブラシと洗剤の泡。その中の小男は洗車中の車に閉じ込められていて携帯もまともに通じない。一方的に娘に責められて電話を切られる。見る側には一体なんの映画だかわからない。

次に切り替わったシーンでは野外ステージで歌う美少女とそれを見守る男性の姿があり、前のシーンとのつながりも一切説明されない。
 
しばらく見ているとやっと映画の中で三つの時間が流れていて、弁護士が娘に請われて機上にいる現在−97年。二つ目が弁護士が事故の責任の所在を問う訴訟を起こそうとしている事故の後−95年。最後が事故の前日から事故の瞬間までとなっていることがわかってくる。
 
この三つの時間の流れが交差し、事故で亡くなった子供たちの親の苦悩、怒り、悲しみ、罪の意識が淡々と描かれる。弁護士は自身も麻薬中毒の娘との関係に悩み、親たちの苦悩を理解しつつも一方で彼らのやり場のない怒りの矛先を、賠償金をとれる企業に向けさせるいやらしさを見せる。
 
この映画が奇麗事に終わらないのは町の人々が悲劇を強調しようと理想化されていない点だ。あるものは隣人と不倫中だし、あるものは借金漬け。田舎町特有のうっとおしいまでの濃密な、でも決して親密ではない共同体らしくゴシップは筒抜けだ。美しい歌声の少女は父親と近親相姦関係にある。

事故の後、どんな共同体にもあるこういった隠れた齟齬や傷、罪といったものが生々しくむき出しになる。ごく当たり前に出かけた子供たちが突然奪われた後、人はどんな風に感じ、どう生きていくのか。共同体は再生できるのか。この映画は答えを出さない。当事者にしかそれはわからないのだと繰り返す。生き残ったが足の自由を奪われた少女は、訴訟を望む父と急速に気持ちが乖離していく。奪われた命と夢の代わりに金? しかし自分は事故前から父に人生を壊されていたのではないのか?

双子を失った不倫中の男は訴訟に反対する。これ以上共同体を壊すつもりか−と。彼と少女が交わす一瞬の目の会話。ぼんやり見ていると気付かないようなシーンが後で効いてくる。

訴訟を起こすか起こさないかの重要な証人として彼女は最後に何を語るのか。父親を凝視しながらの証言は淡々としたこの作品の山場である。

死ぬまでにしたい10のこと」のサラ・ポーリーのブレイク前の、少女と女の間のなんともいえない透明感のある美しさを見るのもいい。英国俳優イアン・ホルムの弁護士が見せる人間の多面性も。

強いて感傷的にならないように距離をおいて作られた映画の中で、逝った子供たちをハーメルンの笛吹きになぞらえて、「なんとも不思議なすばらしいところ」に行ったと繰り返すのが、唯一せつなく、優しい。

アカデミーはそもそもアメリカ映画のための賞なのだからか、ノミネートに終わっているが、審査員グランプリを与えたところがカンヌ国際映画祭の懐の深さというべきか。エゴヤン、あなどれない。

■FILM INFO:「スウィート ヒアアフター」 カナダ映画 アトム・エゴヤン監督 97年カンヌ映画祭審査員グランプリ アカデミー賞監督賞・脚本賞ノミネート作品

スウィート ヒアアフター デラックス版
ジェネオン エンタテインメント (2004/04/23)
売り上げランキング: 25,572
おすすめ度の平均: 4.5
4 人間の複雑さ
5 町のことは町の人間が決めていく。それが掟。
4 人間にとって幸福とは?を考えさせられる悲劇。


by 黒カナリア

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2006年07月24日

「ブロークン・フラワーズ」ジム・ジャームッシュ

brokenflowers01.jpg昨年のカンヌ映画祭で高く評価され、グランプリを獲得したジム・ジャームッシュ監督の「ブロークン・フラワーズ」を観ました。

若い頃、女性関係が絶えなかったドン(ビル・マーレイ)のもとに、ある日「あなたには19歳の息子がいる」という内容の無記名の手紙が届きます。半信半疑のドンは、世話好きな隣人ウィンストン(ジェフリー・ライト)の言葉に乗せられて、いやいやながら可能性のある4人の元恋人を訪ねます。久々に会う彼女たち ー ローラ(シャロン・ストーン)、ドーラ(フランセス・コンロイ)、カルメン(ジェシカ・ラング)、ペニー(ティルダ・スウィントン) ー は何も関係ないようにも見えるし、何かを隠しているようにも見える・・・結局何も明らかにならぬままドンの旅は続きます。

今回の作品でまず目に留まるのは「ピンク色」。ピンク色のレターセットにしたためられた冒頭の手紙を皮切りに、ドンが訪れる女性たちのまわりにはピンク色があふれ、この従来のジャームッシュらしからぬ色使いがミステリー仕立ての物語を盛り上げます。

けれどもこの映画でいちばん面白いのは「謎解き」よりも、ドンとさまざまな人々がかわすやりとりです。「言葉」と「言葉」の掛け合いだけでなく、その「言葉」が途切れたときに生まれる「間」のおかしみが楽しい! ジャームッシュ監督の沈黙の描写のうまさは、処女作「パーマネント・バケーション」から変わっていません。

そのジャームッシュ節に、俳優陣たちが味のある演技で見事に応えています。ビル・マーレイの飄々としたふるまいと、元恋人を演ずる女優たちのアクの強さの対比が何ともいえません。特に印象に残るのは最初に登場するシャロン・ストーン。セクシー路線の彼女とはちょっと違う、屈託のない、のびのびした姿が見ていて快いです。ジュリー・デルピー(ちょっと老けちゃいましたけど・・)やティルダ・スウィントン(かなりの変身っぷり)といった自分好みの女優さんも出ているのも嬉しい。そのほかクロエ・セヴィニー(怪しげなところがナイス)をはじめ、脇役の俳優さんたちもいい感じです。

さて、ネタバレはあまりしないでおこうと思うのですが、この映画には最後に気の利いたオチがあります。どんなオチなのかはお楽しみ。さらに、それにはもうひとつ隠れたオチがあるので、これからご覧になる方は、エンド・クレジットまでぜひお見逃しなく!

「ブロークン・フラワーズ」日本公式サイト


ブロークンフラワーズ [DVD]
レントラックジャパン (2006-11-24)
売り上げランキング: 25217
おすすめ度の平均: 4.0
4 ビル・マーレイという花
5 哀愁
5 この肩透かしが、ジャームッシュ映画の魅力
5 父親にとって息子とは?
4 面白かったです






exquise@extra ordinary #2

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posted by cyberbloom at 22:41 | パリ | Comment(0) | TrackBack(0) | 日本と世界の映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする