2007年12月25日

イローナのクリスマス・ソング

ときめき☆アーモンドパフェ~アルバムときめき☆アーモンドパフェ」でフランスで大ブレークしたフランスのお子様アイドル、イローナ・ミトルセ(Ilona Mitrecey)は FRENCH BLOOM NET で何度か紹介しているが、今日はクリスマスということでイローナのクリスマス・ソング、「すてきなクリスマス」(Noël que du bonheur)を紹介したい。PV ではイローナのアニメキャラがクリスマスの風景の中でパラパラ風ダンスを踊っている。フランスでこの曲がヒットしたのは一昨年の12月だが、去年の12月には日本でも「すてきなクリスマス」の着うたが配信されていた。お子様向けの打ち込み系ダンスだが、歌っている本人よりもアニメキャラが断然かわいい。この曲が入ったイローナのアルバムはフランスでは2005年の10月に発売されているが、日本では今年の2月にこの曲が入ったフルアルバムCDがようやく発売になった(日本ではミニアルバムが先行発売されていた)。


Ilona Mitrecey - Noël, que du bonheur 投稿者 _Nessim_

他の曲もいろいろ聴いてみると、メロディーがなんだか懐かしいというか、どこかで聞いたようなものばかり。おそらく80年代ディスコの影響が色濃いのだろう。一昔前フランス人はボニーMやアラベスクなんかの、80年代ディスコがが大好きだった。90年代の後半だったかパーティーでなんちゃってDJをやったことがあるが、人がせっかく先端の音を選んでかけていたのに、フランス人の若いやつときたら、簡易ブース(笑)の前まで大勢で押しかけてきて、こんなのより80年代ディスコをかけろ、フランスではこれがいちばん盛り上がるんだ、と不平タラタラだった。

「すてきなクリスマス」は子供向けなので、詞は平易なフランス語で書かれているし、クリスマス用語や表現が覚えられる。例えば、Noël(クリスマス)、Père Noël(サンタクロース)、grand sapin(クリスマスツリー)、cadeau(x)(プレゼント)、Les clochers carillonnent(鐘が鳴る)、Les gens réveillonnent(人々はお祝いの夜食をとる)など。

Noël que du bonheur

C'est Noël, je marche dans la rue
Père Noël, Père Noël, où es-tu ?
Les guirlandes, les lumières des vitrines
Les regards des enfants s'illuminent

C'est Noël, dans le ciel
Les étoiles, étincellent
C'est Noël, dans les coeurs
De la joie, du bonheur

Des enfants qui dansent
Une ronde en cadence
En se donnant
La main Autour d'un grand sapin
Des enfants qui chantent
Une musique entraînante
Des rires et de la joie
Partout sous tous les toits

Noël, que du bonheur

Ding, dang, dong, les clochers carillonnent
Minuit sonne, et les gens réveillonnent
Tout le monde va s'amuser ce soir

C'est Noël, dans le ciel
Les étoiles, étincellent
C'est Noël, dans les coeurs
De la joie, du bonheur

Des enfants qui dansent
Une ronde en cadence
En se donnant la main
Autour d'un grand sapin
Des enfants qui chantent
Une musique entraînante
Des rires et de la joie
Partout sous tous les toits

I wish you a Merry Christmas
La la la la la
We wish you a Merry Christmas
La la la la la

Les yeux dans le ciel
On attend le matin
On pense à nos cadeaux
On rêve du lendemain
Le coeur plein de joie
D'attente et d'espérance
On invite la Terre
A entrer dans la danse

Les yeux dans le ciel
On attend le matin
On pense à nos cadeaux
On rêve du lendemain
Le coeur plein de joie
D'attente et d'espérance
On invite la Terre
A entrer dans la danse

La la la la la




cyberbloom

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2007年04月14日

APRIL MARCH

Paris,the girlsエイプリル・マーチは、フランスのバンドのように思われていますが、実はバンド編成でもなく、女性のソロで、しかもアメリカのカリフォルニア出身…。で、「フレンチかぶれ」なことをしているみたいです。アメリカにもこんな人がいるんですね。普段から出しているアルバムにも、フランス語のものや、仏語と英語の両バージョンがある曲が多いです。でもパッと聞きは本当にフランスのアーティストかと思いますけどね…。日本の「渋谷系」連中の、海外版みたいな感じでしょうか(笑)。ものすごく良く出来たフェイクだと思います。

エイプリル・マーチはゲーンズブール・フリークで、彼がプロデュースしていた時代のフランス・ギャルのカバーをしています。例えば、ギャルの名曲、「娘たちにかまわないで Laisse tomber les filles」。原曲と大まかな部分は変わりませんが、少しテンポが違う感じがします。あと、キーも変わっていたような…。印象としては、フランス・ギャルよりもオテンバな印象ですね。何か、「変に若い」です(笑)。投げやりっぽいというか、何と言うか…。ギャルの方が声こそ舌たらずな感じですが、大人っぽく、音も歌も落ちついている感じがします。エイプリルの方はとにかく「元気」な印象ですね。キャンキャン言ってるような感じ…(笑)。色で例えると、ギャルは渋いピンク色、エイプリルはビビッドなオレンジ、みたいな。聴き比べてみると、私としてはエイプリルの方が「とっつきやすい」とは思います。

あと、日本でもSuitcase Rhodesが「娘たちにかまわないで」(carrefour)のカバーをしています。この人たちは見事「渋谷系」なわけですが、彼ら(男女2人組)の「娘たち〜」は、テクノポップ的でテンポも速い、甘めのアレンジになっています。唯一、あの特徴的なベースラインのメロディーが残っていて、あとは全てリミックス、といった感じです。声も、ギャルから離れて、いっそう「ロリータ」に徹しています。「作られた感」はものすごいです。ただし、フランス人の友人のジョアン君によると「おもしろい試みだとは思うけど、何言ってるかほとんどさっぱりわかんない」らしいので、サウンドはともかく、あくまで「歌」は日本人向けなんじゃないかと思います(笑)。


ALBUM INFO:
Paris in April(Laisse tomber les filles 収録)
Chick Habit(Laisse tomber les filles 収録)
Paris,the girls(同系グループの compilation)

VIDEO CLIPS FROM YOUTUBE:
MIGNONETTE / APRIL MARCH
CET AIR-LA / APRIL MARCH


Kaz

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posted by cyberbloom at 10:24 | パリ | Comment(0) | TrackBack(0) | フレンチポップ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2007年04月06日

MAREVA GALANTER マレーヴァ・ギャランテール

UkuyeyeYoutubeでフランス・ギャルの「娘たちにかまわないで Laisse tomber les filles」のビデオを探していたら、カバー曲らしいビデオがリストにあった。Mareva Galanter なんて名前聞いたことないなあと思いながら再生ボタンをクリックしてみた。最初はマジで自分の知らないフレンチ・アイドルが存在していたのかと思った。ビデオの60年代風のチープな作りにまんまと騙されてしまったのだった。ガレージのような独特なアレンジと、お下げ髪のマレーバのコケティッシュな仕草に一発でやられてしまった。誰が何と言おうと、これはフランス・ギャルのベスト・カバーだ。

マレーヴァ・ギャランテール(Mareva Galanter)。1979年2月4日、タヒチ生まれ。彼女の名前は「流れ星」を意味するらしい。1m78の長身とエキゾチックな美貌で、14歳からモデルとして仕事を始める。1998年のミス・タヒチに次いで、1999年にはミス・フランスに選ばれる。その後、テレビのバラエティー番組の司会者も努めるが、中でもM6 AWARDSのプレゼンテーターとしての仕事が代表的。女優としても、映画やテレビドラマに出演。パリ在住で、デザイナーのジャン・カステル・ド・カステルバジャックJean-Charles de Castelbajac(Max Maraの仕事で有名)と生活を共にしている。カステルバジャックはマレーヴァにアルバムで曲を提供し、マレーヴァは彼のイメージモデルの仕事もしている。

そして問題のデビュー・アルバムは去年、2006年に発表された。タイトルは「ukuyéyé」ウクレレとイエイエをくっつけたもの。ウクレレはマレーヴァが小さいころタヒチでいつも耳にしてた楽器だ。イエイエはフランス・ギャル、フランソワーズ・アルディ、シェイラに代表されるフランス60年代のロックシンガーを指すが、要はイエイエのリバイバル・アルバムだ。思い出深いことには(といってリアルタイムで聴いたほど年じゃありません)、伝説のフレンチ・ロリータ、ジャクリーヌ・タイエブ Jacquerine TAIEBの曲、「7 heures du matin」「On roule à 160」もカバーしている。

日本盤出る予定ないのかな。そこそこ売れると思うけど。イエイエの入門にもいいのでは。


□ALBUM INFO:Ukuyeye / Mareva GALANTER

Laisse tomber les filles / Mareva Galanter
7 heures du matin / Mareva Galanter
On roule à 160 / Mareva Galanter

マレーヴァ写真集

□関連エントリー「夢見るシャンソン人形 / フランス・ギャル


cyberbloom

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posted by cyberbloom at 14:51 | パリ | Comment(0) | TrackBack(1) | フレンチポップ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2007年01月18日

MC SOLAAR

Qui Seme le Vent Recolte le Tempoフランスで最も有名なラッパー。1969年、セネガルのダカール生まれ。70年代にはフランスのバンリュー(郊外)に住み着いていた。85年にフランスに帰化。

1991年に発表された MC SOLAAR の1枚目、QUI SEME LE VENT RECOLTE LA TEMPO は、かなりショックな体験だった。それまでヒップホップにはあまり馴染めなかったし、アメリカのパブリック・エナミーくらいしかしなかった。ヒップホップもフランスだとこんなにオシャレになるのかと感心した。他のフランスのハード系のラップを当時あまり知らなかったせいもあったのだが、Nique ta mère(=Fuck your mother )とか、パリを爆弾で破壊するとか、マルセイユは理想の都市だとか、自分は火星からの来訪者だとか歌っていたラップとは一線を画していた。

音もジャズっぽいし、ラップのスタイルがクール(文字通り暑苦しくない)だし、何よりも流れるような韻の踏み方がカッコよかったのだ。5曲目のL'Histoire de l’art のラップを真似ながら、フランス語の滑舌を良くする訓練をしたものだ。特にリフレインをよく口ずさんでいた。

Les salauds salissent Solaar cela me lasse mais laisse les salir Solaar, sur ce salut!

Armand est mort という、失業して、離婚されて、ホームレスになって、喧嘩に巻き込まれ拳銃で撃たれて死んでしまった男の曲があるが、あまりに洗練されていて、まるでマーヴィン・ゲイのように聞こえる(音ネタが使われているのかも)。名曲 Caloline は一時パリ中でかかっていて、あちこちのカフェやブティックで耳にした。ラップの中で女性をドラッグになぞらえているが、Caroline はドラッグそのものという説もある。

Elle était ma drogue, ma dope, ma coke, mon crack, mon amphétamine, Caloline

バンリューの現実を告発したり、警察や権力を攻撃するようなラップの内容よりも、ソラーはむしろ純粋に言葉による表現を志向している。ことわざやクリシェをパロディ化し、シラブルと韻を自在にあやつる高度な技巧は賞賛に値するだろう。それゆえ、ヒップホップの系譜よりも、レオ・フェレ、ジョルジュ・ブラッサンスなど詩人=ミュージシャンの系譜に数えられ、とりわけ「コーヒー色のゲーンズブール」と呼ばれている。このように文学的に洗練されたソラーのラップはインテリにも支持され、ル・モンド紙がアルバムや発言を取り上げたり、高校や大学でソラーのラップが授業の題材になったりしている。

そういうソラーを政治家も放っておかなかった。1994年に国民議会の演説で当時の文化大臣、ジャック・トゥーボンがフランス語の擁護者としてソラーの名を挙げたのは有名だ。移民系のミュージシャンによって、フランス語の顕揚とナショナリズムが担われるというのも皮肉な話だが。演説の一節を最後に引用しよう。

みなさん、MC Solaarをお聞きください。彼以前にはボビー・ラポワントやボリス・ヴィアンがやろうとしていたことを、今度は彼がフランス語でやるのを聴くことになるでしょう!

Qui Seme le Vent Recolte le Tempo
MC Solaar
Musicrama (1994/07/25)
売り上げランキング: 323,861
おすすめ度の平均: 5
5

フランス語がわからなくても気軽に楽しめます。

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2006年12月01日

シャルロット、久々のアルバム

charlotte.jpgセルジュ・ゲンズブールといえば、フレンチ・ポップスを語る上では避けられない大御所。みずから歌うのはもちろんのこと、ブリジット・バルドー、ジャンヌ・モロー、そしてジェーン・バーキンなど数々の女優たちを歌わせては、彼女たちの新たな魅力を世に知らしめました(ついでに浮き名を流しちゃったりもしてました)。ゲンズブール・プロデュースの名盤はいろいろあれど、私がいちばん好きなのはバーキンとの間の娘、シャルロットが15歳のときに出した「シャルロット・フォーエヴァー」。これはセルジュが自分と彼女を主演(おまけに親子という設定)にして監督した同タイトルの映画のサントラで、映画もアルバムも、父と娘というには濃厚すぎる関係を描いたかなりヤバーイ内容だったんですが、それをサラリと表現するシャルロットは、別段いやらしい感じもせず、不思議な雰囲気のある女の子だなあと思っていました。にしても、自分の父親とデュエットして、 "Amour de ma vie" と語りかけるなんて、日本人ではなかなかできませんな〜。


セルジュはその後もスキャンダラスな人生を歩みますが、シャルロットは父親に対して愛情と尊敬を失うことはありませんでした。「フォーエヴァー」以降、シャルロットがマイクの前に立つことはなく、91年にセルジュが亡くなったときは相当ショックだったようで、彼女の歌声は永遠に聞かれないかと思われました。


それから5年ののち、「ラブ etc.」(1996)という映画のなかで彼女が1曲だけ披露してくれたことは嬉しい驚きでした(いい曲でした)。それでも彼女が本格的に歌うことはないだろう、と思っていたら、なんとここへきて20年ぶりに新アルバムが出るというニュースが。それも映画とタイアップしたものではないオリジナルもので、バックにフランスの2人組エールが、さらにプロデュースにレディオヘッドも手がけるナイジェル・ゴドリッチがつくという、私のツボをおさえまくった人選!早速先日発売されたこのアルバム「5:55」を手に入れてまいりました。


1曲目から、エールとすぐ分かる気怠い音に、シャルロットのはかなげなヴォーカルが重なり、「フォーエヴァー」のときとはまた違う彼女の一面を発見できます。大人っぽくなった彼女の声(当たり前か)は、ちょっとお母さんのジェーンを思い出させるときもあります。エールの2人も、彼女の声の魅力を損なわない、じつに「いい仕事」をしていて、両者のファンの期待を裏切らない好アルバムです。


“5:55”
“5:55”
posted with amazlet on 06.12.01
シャルロット・ゲンズブール
ワーナーミュージック・ジャパン (2006/11/08)
おすすめ度の平均: 5.0
5 いい感じです
5 歌姫と円卓の騎士


exquise@extra ordinary #2

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2006年10月19日

ミッシェル・ポルナレフ(2)

愛と青春のトルバドゥールポルナレフが発表した最初の曲は「ノンノン人形」。1966年のことだった。驚くべきことは、レッド・ツェッペリンを結成する前(さらにはヤードバーズに参加する前)、セッションギタリスト時代のジミー・ペイジが、このレコーディングに参加していることだ。

1970年のオランピア劇場でのライブのあたりで、ポルナレフ定番のスタイル、つまり白いフレームのサングラスに、金髪のカーリーヘアが確立されたという。デビュー当時は、右側のジャケットのように髪もストレートで、メガネもかけていない。メガネをかけたのは目が弱く、極度の近眼だったせいらしいが、彼に得体の知れないミステリアスな雰囲気をまとわせることになった。あのハイトーンの声といい、確かにあらゆる面でエキセントリックで、それこそ宇宙人的なイメージがある。それゆえに、彼の風貌と行動は常にメディアの攻撃の対象になり、とりわけゲイだと噂されたりした。

極めつけは「お尻丸出し事件」。1972年に「ポルナレフ革命 Polnarévolution」と題したライブコンサートが再びオランピア劇場を舞台に行われた。その際、パリ中にコンサートを知らせるポスターが貼られたが、それはポルナレフがお尻を丸出しにしているセンセーショナルなものだった。ポルナレフは裁判所に呼び出され、「強制ワイセツ罪 attentat à la pudeur」としてポスター1枚につき10フランの罰金を科せられた。

私はこの事件をアルバムのライナーノーツで読んだ。そういうポスターが街中の至るところに貼られてしまうフランスって一体どんな国なんだろうと、考えただけで頭がくらくらしたものだった。日本の片田舎に住む中学1年生の想像力をはるかに超えた、難解すぎるキャラだった。ポルナレフのおかげで私のフランスのイメージは初っ端から思い切り偏ったものになってしまった。問題のポスターは雑誌か何かで見た記憶があるが、今やコレクターズ・アイテムとなっている。私の記憶が正しければ、それは女装をして、スカートの裾をめくりあげてお尻を出していたような…ともかく、フランス中の顰蹙をかいながらも、コンサートは行われ、翌月の11月には日本に飛んでいる。

ついにポルナレフの来日が実現する。まずは日本武道館で開催された「第3回世界歌謡祭」にゲスト出演し、そのあと、郵便貯金ホール、新宿厚生年金ホールにて初の来日コンサートを行った。以後、1979年まで計4回の来日コンサート・ツアーが行われた。何度目の来日のときか定かではないが、NHKの歌番組、「レッツゴーヤング」(今のポップジャムに当たるのかな。思えば恥ずかしい番組タイトル)に出て、「シェリーに口づけ」を歌っているのを見た覚えがある。また当時のNHKのテレビのフランス語講座ではいつもポルナレフのビデオが流れていた。

去年、ポルナレフは若い愛人と裸で抱き合っているところをスクープされ、その写真が「パリマッチ」の表紙になった。これもお尻丸出しだったが、それがポルナレフのものだったか、愛人のものだったか、記憶が曖昧だ(タイムリーにその号を入手できたが、うっかり捨ててしまった)。あんな写真を表紙にするセンスも疑うけど、久々のポルナレフとの、それもあんまりな再会だった。もう50歳を過ぎているはずだが、定番のメガネと髪は健在だった。

下は比較的最近出たベスト盤だが、「愛の願い」「愛の休日」「愛のシンフォニー」「渚の思い出」「哀しみの終わるとき」など、名曲をほぼ網羅している。私も買い直そうかな。

ポルナレフ氏は未だ健在で、その容貌はさらに怪しさを増している。最新の話題と言えば、フレンチ・ディスコの先鋭、ボブ・サンクラール Bob Sinclar とコラボ。

ポルナレフ・ベスト
ポルナレフ・ベスト
posted with amazlet on 06.07.23
ミッシェル・ポルナレフ
ユニバーサルインターナショナル (2006/01/25)

cyberbloom


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posted by cyberbloom at 22:58 | パリ ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | フレンチポップ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2006年10月18日

ミッシェル・ポルナレフ(1)

polnareff01.jpg私が生まれて初めて買ったレコード、それはミッシェル・ポルナレフだった。一緒にフランス語を勉強していたキクチ君に教えてもらい、自分で買って聴いてみようと思った。当時、中学1年生だった私の周辺には、自称ソ連の共産党員でロシア語をやっている先輩や、中東情勢に詳しく、アラビア語が話せる先輩などがいたが、私が最もシンパシーを感じたのはフランス語をやっていた先輩だった。なぜらなら彼はやたらと女性にモテたのだ。私はフランス語をやるしかないと決めた。思えばこの不純な動機が今の不幸の始まりだった。

しかし、同学年にはライバルがいた。それがキクチ君(今や東大の先生だ)だった。フランス語をやろうと決めたはいいが、私はフランスのことなどまるで知らなかった。しかし、キクチ君はフランスでいちばん流行っているミッシェル・ポルナレフとかいう歌手のアルバムを持っていたのだ。

Je cherche un job, job, job, job, job, job
Pour aller lui acheter sa robe
Job, job, job, job, job, job
Pour un jour lui enlever sa robe

キクチ君は私に「Je cherche un job」という歌の歌詞カードを見せ、この意味わかるかと聞いてきた。挑発的な口調だった。こんなもの簡単さと、辞書をひきひき、直訳でなんとか意味はとれたが、ウブだった私には意味する状況がさっぱりわからなった−俺は仕事を探す。彼女に服を買ってやるために。俺は仕事を探す。いつか彼女の服を脱がせるために−何でせっかく彼女に買ってあげた服を脱がせるわけ?

「ジョブ」はあまり有名ではないが(シングルのB面)、ポルナレフの最も有名な曲といえば「シェリーに口づけtout tout pour ma chérie」だろう。授業中にかけても、誰もが知っていると手を挙げる。今もときどきCMに使われ、最近ではホンダのゼストのCMに使われていた。98年のフランス開催のW杯では日本のナショナルチームの応援ソングがこの歌の替え歌だった。今の学生は「シェリーに口づけ」を聴くと、「ウォーターボーイズ」を思い出すらしい。

日本で「シェリーに口づけ」がリアルタイムにヒットしたのは、1971年のこと。フランスではすでに2年前に発表されていたが、日本では1971年8月にCBSソニーよりシングル盤「シェリーに口づけ」と、ファースト・アルバムに「シェリーに口づけ」を追加収録したアルバム「愛と青春のトルバドゥール」が発売された。今ではフランス語の曲が日本で売れることはありえないが、当時は日本各局のラジオチャートでトップに入り、40万枚を売り上げる大ヒットシングルとなった。(続く)

ポルナレフ・ベスト
ポルナレフ・ベスト
posted with amazlet on 06.07.22
ミッシェル・ポルナレフ
ユニバーサルインターナショナル (2006/01/25)

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2006年07月27日

CARLA BRUNI

Quelqu'Un M'a Ditカーラ・ブルーニ。1968年、イタリア生まれ。天は二物を与えずというけれど、三物も、四物も与えられた、世の中の才能と幸福を独り占めにしているような女性だ。父はイタリアの有名タイヤメーカーの創業者であり、劇場、テアトロ・レッジオの経営者。母親はピアニスト。ヴィスコンティの映画に出てくるようなお屋敷に住んでいたというというから、生まれがすでにセレブはセレブでも超のつくセレブ。

5歳のときにパリに移る。美術と建築を学んでいたが、19歳でモデルになるために学業を断念。モデルといっても、そんじょそこらのモデルではなく、ナオミ・キャンベルらとスーパーモデルの一角を占め、とりわけ、ディオール、ラバンヌ、リキエル、ヴェルサーチのショーを務めてきた。またリチャード・リーコックの「キャットウォーク」に出演し、女優デビューも果たしている。

そして2002年、本アルバム、Quelqu’un m’a dit で歌手デビュー。ヨーロッパで100万枚を売り上げるヒットとなった。このアルバムはアイドルやモデルによくあるように、プロデューサーにすべてをお膳立てされたわけではない。自分で詞を書き、曲を作り、ギターまで弾く。さらにはハスキーで落ち着いた魅惑的な声の持ち主ときている。

びっくりしたのは、Quelqu’un m’a dit のビデオクリップを撮っているのが、「汚れた血」「ポンヌフの恋人」で有名なレオス・カラックス監督。歌っているカーラの背後でろうそくを持った怪しげな男が徘徊している。確かにカラックスっぽいが、あの演出は余計な気がする。映画にもときどき見られるカラックス的なひとりよがりを感じるが、咳払いをひとつして歌い始めるところは、憎い演出だ。ソファに正座して、ギターをつまびきながらしっとりと歌い上げるカーラの姿には本当に魅入ってしまう。アルバム・バージョンとは違って、ストリングスは入ってなくて、ギター一本のシンプルなバージョン。Serait-ce possible alors? の部分のメロディーも少し変えている。

公式サイトでビデオクリップが見れる。2004年にすでに来日公演をしている。一目見たかった。

Quelqu'un m'a dit−風のうわさ−

Carla Bruni 公式サイト
☞ビデオクリップはDiscographie→Chapitre Videoをクリック!

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2006年03月28日

PLEYMO

Rockプレイモ。このバンド、名前は知ってたんだけど、最近ようやく聴いた。学生さんに「ぜひ聴いてみてください」と言われ、重い腰を上げた−K学院大の石田さん、ありがとう。フランスで最も売れているフランス産のバンドのようだが、ちゃんとフランス語で歌ってます。けっこうハードな音。アルバムはすでに3枚出ている(写真は3rd)。カネボウのCMに曲が起用されたり、日本のロックフェスティバル「サマーソニック」のメイン・ステージにもすで出てたんだね。

サウンド的には、リンキン・パークやリンプ・ビズキットを思い出させる、ロック+ヒップホップ。いわゆる、「ミクスチャー」(ごちゃ混ぜ)。この手の音を最近は「オルタナティヴ」とも呼ぶらしい。一昔前、「オルタナティヴ」と言えば、PILやスミスのことだった。そのあと、ニルヴァーナなんかのグランジ系がそう呼ばれた。その時代におけるオルタナティブ(=もうひとつの選択)の位置づけが変わっていくのは当然のことだけど。私のような頭の固い年寄りはロックとヒップホップは別ものという意識が強いので、いまひとつ馴染めない音だが、若い人たちは違和感がないのでしょう。しかし、このアルバムに関して言えば、かなりロック色が強く、ポップな曲もある。一皮剥けたのかも。カネボウのCMに使われた曲もなかなかよかった。

特筆すべきは、リーダーのマルクが大の日本びいきなこと。小さいころから「AKIRA」「攻殻機動隊」などのジャパニメーションに深く傾倒しており、フランスのディズニー・スタジオ等で働くイラストレーターでもある(アニメと関係ないけど、お父さんがソルボンヌ大学の先生)。「キャプテンハーロック」(フランスで最も知名度が高い日本アニメのひとつ)の影響を受けたと告白するダフトパンクのメンバーから見ると、世代がひとつ若いようだ。マルクは尊敬する人物として宮崎駿、押井守をあげる。1stアルバムでは映画「AKIRA」をベースにし、日本語もとりいれた曲"K-RA"を披露。2nd(写真下)では自らアートワークのイラストを手がけ、そのキャラクターは「人狼」に捧げられている。さらにステージではオープニングSEに「攻殻機動隊」の曲を起用するほどの徹底ぶり。そして3rdの初回限定版に付いているDVDのライブ映像(サマーソニックのもの。字幕がなくフランス語がわからない人には不親切かも)ではハードコアな音を求めてきた日本のいかついお兄ちゃんたちに「ナウシカ歌おうぜ!」と日本語で叫び、強引に合唱させている(笑)。日本ではアニメとハードコアが結びつくことってあまりないが、これはフランス特有の現象なのだろうか。彼らの世代が、特定の日本のアニメの流入とアメリカからのニューメタルの流入を同時に体験したとか考えられるが。

そう言えば、リンキン・パークの韓国系のメンバーが日本アニメのマニアだった。リンキンには、なぜか、チャイコフスキーの遠縁がいるのも、わけわかんない。アメリカのバンドに東洋系のメンバーがいることが当たり前になったけど(昔、WASPなんてバンドがいたっけ)、幼少期の日本アニメ体験もほとんど世界標準になっている。うちの3歳の息子の最近のお気に入りはPUFFY(AMIYUMI)が歌っている、アメリカン・アニメ「TEEN TITANS」の主題歌(アルバム「59」に収録)。GUITAR WOLFもゲスト参加していて、いまどきのガキの嗅覚に甚だしい世代ギャップを感じてしまうのだった。私が3歳のときといえば、テレビが家に来たばかりじゃないか。

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5 フランス産のお宝
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2006年03月10日

ライRAI !(後編)

1, 2, 3 Soleils何はともあれ聞いていただきたいのは『アン、ドゥ、トロワ、ソレイユ』 1,2,3 Soleilsのライブ盤です。DVD も出ています。かのジダン(彼もアルジェリア移民二世であることはご存知の通り)を擁し多様な人種で構成されたフランス・チームがワールドカップを制した1998年、Black blanc beur というスローガンのもと、黒人白人アラブ人が力を合わせて新しいフランスを作る!という雰囲気が最高潮に盛り上がっていた頃、フランスにおけるライ界もその絶頂を迎えました。ハレドとラシード・タハ、フォーデル Faudelという三人のアルジェリア系アーチストがパリのベルシー・スタジアムを満員にした歴史的コンサート。こんなに大掛かりなコンサートでしたから、音的には非常に洗練されたものになっています。『アン、ドゥ、トロワ、ソレイユ』 で弾みが付いたら、次は「ライの王様」ハレドでしょうね。彼のものなら『クッシェ』Kutche(本当はクッチェという発音ですが、日本ではこの名で販売されています)、名前をそのままアルバム名にした Khaled、それから N'ssi n'ssi、Sahra、Kenza、ライブアルバムの Hafla などどれも聞きごたえ満点です。去年出た最新作の Ya rayi は首都アルジェの民衆歌謡シャアビを取り入れて傾向が大きく変わっていますが、これも必聴であることには違いありません。

シェブ=マミも Let me rai、Saida、Meli meliと傑作を連発しています。彼も最新作のDellali がライらしさをなくし過ぎた作品と批判されましたが。他にお勧め盤を言い出すとキリがありませんが思い付くままにあげてみると、シャバ=ザフアニアChaba Zahouania のアルバム、フォーデル FaudelのBaida、Cheb Abdou のHabibi、Cheb Bilal のSidi sidiなどなど…ライ界のキーパーソン、ヌレディン・ガファイティNourredine Gafaiti が今力を入れているラシダRachida も見逃せません。またCheb Houari Dauphin の Live とかCheikha Nedjma のものとか、アラブ・コミュニティーでカセットでだけ流通している音にすばらしく面白いものがあるのですが、それは少なくともパリまで出てBarbes 他のアラブ人街のカセット屋まで買いにいくしかありません。世界にはインターネットで買えないものがたくさんあるわけですね。

ところで今ライで一番注目すべき傾向は、フランスにおけるライとr'n'b の融合です。去年Kore & Skalp というコンビが多くのアーチストを集めて製作したRai'n'b Fever というコンピレーション・アルバムは大セールスを記録しました。なかでも113, Mohamed Lamine, Magic System の歌った Gaou a Oranという曲が昨年一年間でフランスの「クラブで最も多く流された曲」に輝いています(Yacast発表)。「R'n'b」というのはもちろん「リズムアンドブルーズ」のことですが、フランスでこの名称で呼ばれる音楽はあんまり「リズムアンドブルーズ」ばかりとは聞こえません。このGaou a Oran の場合それも当然で、歌っているアーチストのうち113(サントレーズと読みます)は Tonton du Bled などのヒットのあるアラブ移民系ラップバンド(グループ名は彼等の育ったパリ郊外の団地の建物番号、「113号棟」というのからとったとのこと。いいネーミングですね)ですし、 マジックシステムはコートジヴォアールのバンド(彼等のUngaou a Paris という曲がUn gaou a Oranの下敷きなわけですね)ですから。彼等とライのモハメド・ラミンが作り上げたすごく楽しい音を是非一度お聞き下さい。あとこのアルバムではもちろんハレド、リミッティの声も聞くことができますが、都会っ子フォーデル(彼はフランス生まれで、アルジェリア系としてフランスのアイドル人気を得た存在です)やReggae Rai のヒットがあるシェブ=ターリクCheb Tarik などの活躍が目立っていますね。

こんなライの音から、今のフランス社会の現実を想像してみるのは楽しくて、意義のあることだと思いますよ。

raidaisuki

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Rai 'n' B Fever
Rai 'n' B Fever
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posted by cyberbloom at 22:51 | パリ ☁ | Comment(0) | TrackBack(1) | フレンチポップ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2006年03月09日

ライRAI !(前編)

RAIはアルジェリア生まれのポップ音楽です。はじめて聞く人の中には「世の中にこんな音楽が存在するなんて思いもしなかった!」と驚いてたちまちファンになってしまう人(そしてCDがどこで手に入るか分からずイライラする人たち)も多いです。イスラム圏、アラブ圏の音楽の一種であって、これほどポップで世界中の支持を集めたジャンルは他にないでしょう。日本の人があまり知らないのは、音楽業界の閉鎖性ということもありますが、このジャンルに関する情報が事実上フランス語でしか入らない、ということも大きなネックになっているのです(こういうのよくあることです)。

さてそのライですが、どんなジャンルか定義するのはたいへん難しいです。現時点で「ライ」と呼ばれるものが共通にもつ性質というのは存在しないと言っても過言ではありません。アルジェリア西部オラン地方の民衆歌謡から発達したことは確かですし、典型的なポップ・ライはオラン方言のアラブ語で歌う歌物でシンセサイザーを主たる伴奏楽器とするもの、なのですが、今日その形に当てはまらなければライではないとは到底言えません。早い話が「ライの母」シェイハ=リミッティCheikha Rimittiも「ライの王」ハレドKhaledも年代ごとにどんどん変わっていってますし、フランスでアラブ移民二世たちがグループでやっているライや、ラシード・タハ Rachid Taha などフランスで一般に「ライ」と呼ばれているアーチストまで含めるとその多様性は驚くばかりです。それだけにライ・ウォッチングは非常に面白いのです。

またライはアルジェリア社会、フランス社会、はては世界情勢にまで奇妙に密接な関わりを持ちながら発展してきた、その様相を見るのがたいへん興味深いジャンルでもあります。両大戦間の頃フランスによる植民地化によってアルジェリア社会が激変、生活の場を失ったべドウィンたちが都市に定着しその歌謡を都市化させた時点をライの始まりとすると、やがて社会内で弱者の立場に置かれている女性の意識の解放、それも性心理の解放を志向して歌うシェイハと呼ばれる女性歌手たちの活躍がオラン地方で顕著になってきます。その代表的存在が80歳を超えた今もバリバリ現役で活躍しているシェイハ=リミッティで、文盲にも関わらず豊かな詩的創造力を駆使して性的欲望の肯定、イスラムではタブーであるアルコールへの言及、社会への異議申し立てなどをその歌に込めた彼女は、以後のライの精神的土台を全て作ったということができます(それでも彼女は神に祈りを捧げる歌や愛国歌も歌っています。これらは彼女の中で全然矛盾せず共存しているのです)。社会の最下層から生まれこのような性格を持った音楽をアルジェリアの政府も、宗教界もまともに扱おうとはしませんでした。奇声を上げながら挑発的に歌いまくるリミッティは今でもアルジェリアを代表するアーチストとしての扱いをなかなか受けにくいのです。

デザート・ローズ/サウザンド・イヤーズ80年代にシンセサイザーが導入されて「ポップ・ライ」が成立すると、アルジェリアの若者のライ支持は圧倒的なものになっていき、体制側もこれを無視することはできなくなりました。またライはイスラム圏から出てきた欲望肯定主義の異色の音楽ということで西洋のマスコミの注目も浴びてきたため、逆にこれを内外にアピールする政策をとりはじめたわけです。ただこのライ発展には思わぬ不吉な要素が加わりました。イスラム原理主義の台頭というものです。アルジェリアにイスラム原理主義テロが猛威を振るっていた1994年、カリスマ的スターだったシェブ=ハスニ Cheb Hasni が彼等の凶弾に倒れています。90年代の「アルジェリア危機」の時代に多くのライ歌手が国外に逃れることになりました。皮肉なことながらこれが同時にライの国際化を加速していったわけです。後に述べる『アン、ドゥ、トロワ、ソレイユ』 コンサートやシェブ=マミCheb Mamiがスティングとデュオで世界的にヒットさせた『デザート・ローズ』Desert Rose はライの国際展開の象徴と言えます。9・11事件の後、ハレドやマミたちは音楽を通じて西洋とアラブ世界の架け橋を作るため様々な活動を展開しているところです。
 
ここまで読んで興味を引かれて、試しに聞いてみようと思われた方は、輸入盤ショップやネットのCD販売をあたってみてください。東京在住の方は渋谷、宮益坂のEl Sur さんなどに行ってみて下さい。

raidaisuki

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1, 2, 3 Soleils
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Taha Khaled Faudel
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4 何も知らずに買ったがとてもいいCD

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posted by cyberbloom at 22:27 | パリ ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | フレンチポップ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2006年02月28日

DAFT PUNK-Human After All

Human After All~原点回帰HMVにぶらりと入ったら、ビデオが流れてて、ダブルネック・ギターが目に入った。一瞬、レッド・ツェッペリンの秘蔵ライブでも出たのかと思ったら、ダフト・パンクのRobot Rockだった。ヘビーなビートとギターのリフ。相変わらずカッコいいじゃないの。即、購入。

先週末、昼間からあちこち飲み歩いていたが、どこの店でもダフトの新作がかかっていた。みんなこれがフランス発だって知ってるのかなと思いつつ、ついついそう思ってしまうのはフランス語教師の悪い癖だと反省。フランス発と知らなくてもダフトがカッコいいことには変わりない。フランスが築き上げてきた伝統的なブランド・イメージをダフトは突き抜けている。

前作、Discovery(2001年)でダフトは日本の伝説的なアニメーター、松本零士とコラボレーションを果たした。小学生の一時期、彼のアニメに魅了された私にとって、松本零士がフランス経由で回帰して来たことは驚きでもあり、感慨深いものでもあった。今回は再び音で勝負って感じ。ダフト・パンクと言いつつ、パンクではなく、極めてファンクなダフトだが、さらに、Robot Rockなんて、デジタルな音ながら、まさに往年のツェッペリンのような骨太なロックを感じてしまう。ダブルネックを出してくるあたり、意識しているのかもね。一方で、私のような80年代世代をニヤリとさせてくれる音ネタも相変わらず要所に仕込まれている。

よく授業で「ディスカバリー」のビデオを学生と一緒に見た。ダフトのトーマとギー=マニュエルの二人は、日本アニメブームの中で、松本零士の「宇宙海賊キャプテンハーロック」を見て育ち、「日本は第2の故郷だ」と断言するまで彼らに大きな影響を与えたことも話した。それがきっかけで、かなりの学生がCDを買って聴いてくれたものだ。もうひとつ忘れていけないことは、彼らが耳の肥えたリスナーだったということ。フランスの若者は、決してメジャーシーンを形成できない自国の音楽シーンにコンプレックスを抱きながら、80年代、90年代と、英米の先端を行く音楽を必死に聴き続け、リスナーとして成熟していった。世界第2のレコード消費国である日本の若者にも同じことが言えるだろう。ダフトを聴いていると、そういう蓄積が花開いた音楽なんだなと改めて実感してしまう。

このジャンルはフレンチ・ハウスとかフレンチ・エレクトロと呼ばれている。いわば音楽の進化が止まり、すべてが音ネタとしてデータベース化=サンプル化した状況から生まれた音楽。つまり、どれだけ音楽に対して耳が肥え、どれだけの音ネタに精通しているか、また、それらをどのようにリミックスするかにかかっている音楽と言える。

Human After All~原点回帰
☆アルバム「ディスカバリー」における松本零士とのコラボレーションは映画「インターステラ5555-The 5tory of the 5ecret 5tar 5ystem-」として結実。カンヌ映画祭でも上映された。

cyberbloom(2005年5月-CYBER FRENCH CAFEに掲載)
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posted by cyberbloom at 20:33 | パリ ☔ | Comment(0) | TrackBack(0) | フレンチポップ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする