2007年08月16日

exquise の2006年の3点(小説&音楽編)

まずは、2006年度のベスト3シリーズの小説編です。相変わらず読書はもっぱら通勤電車の中なのでそれほど数は読めていませんが、去年は面白い本に結構出会えた1年でした。今回も何らかの形で昨年出版されたものに限って3点を挙げてみましょう。


1 カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』(土屋政雄訳、早川書房)
わたしを離さないでカズオ・イシグロの作品のなかでも力作といえるこの長編は昨年方々で話題になりました。現在とはそう遠く離れていないと思われる近未来を舞台に、何か不自然な雰囲気を漂わせながらも静かに物語は進行し、やがてその謎が解き明かされたときに、強い印象を我々のもとに残す、という構成にはうまいなあと感心させられます。最近は映画の脚本(ジェイムズ・アイヴォリー監督作「上海の伯爵夫人」が現在も公開中。真田広之も出演してます)なども手がけているイシグロ氏の活躍がこれからもますます期待されます。

2 アゴタ・クリストフ『昨日』(堀茂樹訳、早川epi文庫)
アゴタ・クリストフの小説はいつも、余分なものが極力そぎ落とされ、素っ気ないほど単純な言葉で書かれていて、それだけに強く、重いものです。彼女の作品には、ハンガリー動乱の折にスイスへ亡命し、母国語ではないフランス語で文章を書くことになった自らの人生が大きく反映されており、この小説も祖国を去った少年の絶望的な恋愛が描かれています。彼女の作品は読むたびにつらく、やるせない気持ちになるとはいえ、現代文学において重要な位置を占めているといえるでしょう。機会があれば、ぜひフランス語で読んでいただきたい作家です。

3 川上弘美『光ってみえるもの、あれは』(中公文庫)
光ってみえるもの、あれは (中公文庫)川上作品は好きなものと苦手なものとがあるのですが、これはかなり好きです。「早く大人になりたい」と願う「ふつう」の高校生と、その一風変わった家族と友人たちの物語。所々に色々な文学作品の一節が組み込まれていて、それがまた小説に効果的なアクセントを与えています。「青春小説」としてとても楽しく読めましたが、実際に青春を謳歌している大学生の人たちはこういう本を読んで、どういう感想を抱くのか聞いてみたいなー。


それにしても、どのジャンルのベスト3にも純粋なフランスものが出てこなかった・・反省反省。今年はもうちょっと勉強しよう。

★次は音楽編です(←続きはこちらをクリック)
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2007年08月15日

タラソセラピー THALASSOTHERAPY

タラソセラピーはギリシャ語で「海」を意味する「タラサ」と、療法の意味をもつ英語の「セラピー」からなる造語で(フランス語では、thalassothérapie タラソテラピー)、1867年にフランス人医師ボナルディエールによって名付けられ、医学的に裏付けられたフランス発祥の自然療法。海洋気候の環境のもとで、海水、海藻、海泥など、海の資源を用いて身体の内側から活性化させ機能を高めていく。フランスを中心に古くからヨーロッパの人々に愛されているが、最近、日本でも注目され、タラソセラピーの施設を備えたホテルが目に付くようになった。

タラソセラピーの歴史は、入浴の歴史と重なり、はるか紀元前にまでさかのぼる。古代ギリシア・ローマ時代、戦争で負傷した兵士たちが温海水で傷をいやしたのが始まりといわれる。紀元前420年には医学の祖といわれるヒポクラテスが海水入浴を提唱、治療として海水の外用(海水浴)、内用(飲料)を実践したという。医学的発展の礎を築いたのは20世紀初頭、フランス人のルカ・カントンである。「海水は生命の培養液である」と唱え、海水を犬の代用血液として使用した実験などによって、海水の成分構成(微量元素)が人間の血液と非常に似ていることが証明され、タラソセラピーの人体への作用が注目されるようになる。
 
微量元素は、生命を維持する上で大切な働きをする。体内では血液中に存在するが、バランスが崩れると体調に異常をきたす。例えば、鉄の欠乏が貧血の原因になるなど。こうした、微量元素の成分(亜鉛、カリウム、カルシウム、コバルト、鉄、銅、ナトリウム、マグネシウム、ヨード)を「オリゴ・エレメント」という。
 
タラソセラピーはもともと、リウマチや神経痛、硬化症、喘息、皮膚炎の慢性病に有効な治療とされてきた。また近年では美容分野においても、エステティックサロンや、ホームケアで、海藻や海泥のボディマスクや海塩浴などによって、身体のコンディションを整え、機能を高めるとともに、古い角質や、毛孔の深部にたまった老廃物を除去して、新陳代謝を促し健康な素肌つくりに用いられる。他にストレス解消、生活習慣病の予防やダイエット、スポーツ選手のコンディショニングといった、幅広い目的で親しまれている。
 
療法は10種類に大別されるが、なかでも、入浴療法(バルネオテラピー)は、海水中に含まれるイオン化された微量のミネラルが皮膚から入り込み、毛細血管から大動脈をへて身体の60兆個の細胞に取り込まれ、直接ミネラルを生体内の有機物と結合するので、もっとも重要な施術といわれている。

食生活が大きく乱れている現代において、日常の食事からミネラルを摂取することは大変困難である。ミネラル不足は系要素の消化呼吸を困難にし、さまざまな現代病(肥満、自律神経失調症、情緒不安定、倦怠感など)を引き起こす原因ともされている。そういった中で、必要不可欠なミネラルを多く摂取できるタラソセラピーはますます、注目を集めていきそうだ。


キュオ

PROFILE:趣味は、映画鑑賞(映画館でも家でも)と寝ること。最近はフランス語を習いはじめてフランスの文化について色々と興味を持っています。


THERMES MARINS YOKOHAMA BAY(JAPON)
THALASSA SHIMA-Hotel & Resort(JAPON)

THERMES MARINS DE SAINT MALO(FRANCE)
CALNAC THALASSO(FRANCE)
CASTEL CLARA- Hôtel et Tharassothérapie (FRANCE)

La Fédération Internationale de Thalassothérapie - Mer et Santé
Thalassoline【動画】


★フランスではタラソテラピーの施設は上記のサン・マロ、カルナック、ベル・イルなど、海に面したノルマンディー地方やブルターニュ地方に多い(もちろん大西洋、地中海沿岸にも)。フランス旅行の際にチャレンジしてみるのもいい。La Fédération Internationale de Thalassothérapie はタラソテラピーの国際組織(英語でも読める)。

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2007年07月17日

雑誌ナナメ読み COURRiER Japon 2007年08月号

COURRiER Japon (クーリエ ジャポン) 2007年 08月号 [雑誌]■「クーリエ・ジャポン」の今月号の特集は「エコブームは地球を冷やせるか?」。以前、「クーリエ・ジャポン」を取り上げたのもエコ&ロハス特集だった。7月15日からパリでは脱クルマ社会を促すレンタル自転車システム(VELIB)が始まり、アニヤ・ハインドマーチのエコバッグ、「I'm not A Plastic Bag」に客が殺到するなど、毎日、エコに関する事件や出来事が目白押しだ。7月7日には、前アメリカ副大統領のアル・ゴア氏が呼びかけた地球環境保護コンサート、「ライブ・アース」( Live Earth)が世界9都市で同時開催された。地球温暖化の危機に対して関心を促すグローバルなイベントだ。

「ライブ・アース」は7日のグリニッジ標準時午前2時にシドニーから始まり、東京、上海、ヨハネスブルク、ハンブルク、ロンドン、ワシントンD.C.、ニューヨーク、リオデジャネイロへとリレーされ、インターネットや世界120のテレビ局で中継し、主催者は全世界で約20億人の視聴を予測。

ポリス(ニューヨーク)、マドンナ(ロンドン)、レニー・クラヴィッツ(リオデジャネイロ)などが出演。日本では京都の東寺で開催され、再結成されたYMO(Yellow Magic Orchestra)が登場した。幕張(こちらがメイン会場)では大塚愛や倖田來未が出演。ロジャー・ウォーターズ(元ピンク・フロイド、この人も老けたなあ)も出演していて、記者会見で、有権者は「環境問題に関して明確な政策を持たない政治家には投票しない、とはっきり意思表示しなければならない」と語った。日本の参議院選ではもっぱら年金で、環境問題はほとんど争点になっていないようだが。

「ライブ・アース」では再生可能エネルギーを多く利用し、ステージもリサイクル可能な素材で作られた。例えば、ロンドン会場で販売されたハンバーガーの箱はすべて、生物分解性の繊維とサトウキビのパルプで作られ、売店で使用された料理用油はバイオディーゼル油の原料として回収された。しかし、コンサート開催自体が環境汚染を作り出すと批判するアーティストもいて、ワシントンD.C.では「ライブ・アースは地球を殺す」と書かれたポスターも貼られた。「クーリエ・ジャポン」でもこのコンサートをめぐる是非についての意見が、「エコ懐疑派」と「エコ至上主義派」の論争の一部として紹介されている。(「ゴア氏の不都合な真実」とか言って揶揄されている)ゴア氏はワシントンD.C.からニューヨークまで電車を使用したが、一方で自家用ジェット機で開催地に到着したスターもいた。

もちろん、新しいエコバックを買わずに、すでに持っているバッグを使った方がいいし、余計なエネルギーを消費したくないならライブなんかやらない方がいいに決まっている。しかし、これらは「象徴的行為」として意味がある。エコに関心のなかった人々に思考や行動を促し、「ライブ・アース」に使われたエネルギーが将来的にほとんど無に等しいほどのCO2を削減できればしめたものなのだ。

□ライブ・アースの模様はコチラ

■ところで、ポストモダンは大きな物語の終焉(=共通の価値規範を持てなくなった)によって特徴付けられるが、社会学者の橋爪大三郎が「環境危機は、大きな物語を復活させ、ポストモダンを終わらせる」(「諸君!」7月号、ちょっと主旨が違うが私も先月ブログで同じことを書いた)と言っていた。地球規模の環境危機に直面し、私たちは人類全体に連帯を求めるような価値観を採用することが避けられない。これが人類の共通の価値規範=大きな物語として新たに登場している。具体的には、省資源と経済成長を両立させ、持続可能な成長を論じる新しい経済学が必要になるだろう。省エネテクノロジーで真価を発揮する日本は、省資源型のライフスタイルへの転換への有利な条件を備えている。日本は「グリーン・ジャパン・イニシアティブ(緑の日本構想)」を日本の長期的な国家戦略として採用せよと橋爪は主張している。さらには、身を挺して省資源文明、省エネライフスタイルの先端を走ることで、アメリカにも物が言えるか外交的な主体性も獲得できると。

■またイタリアで紹介された日本のフリーターの記事も興味深かった。村上春樹とパソナ(人材派遣会社)の社長が、フリーターの中にこそ日本の未来を切り開くクリエイティブな人材がいると弁護していたが、そういうことは問題でない。成功するやつは放っておいても成功するだろう。そういうふうにフリーター問題を論じてしまうと、フリーター全体の利益に目が向かなくなる。全体の底上げをしてこそ成功する人間も増えるというものだ。インタビューに応じた社会学者の玄田有人が、「若者はパラサイトだとよく言われるが、実はパラサイトなのは団塊や高齢の世代」と指摘している。上の世代が若者の受け取るべき未来を食いつぶしているからだ。若い世代は明らかに上の世代のような見返りがないにもかかわらず、払うものは払わされている。経済構造がまるっきり変わってしまったにもかかわらず、制度的に見る限り、日本はまだ高度成長期の真っ只中にいるつもりらしい。年金だけでなく、税金の配分も圧倒的に上の世代に偏っている。それは自民党が高齢世代に支えられ、その見返りもそこに集中しているという側面もあるようだ。投票に行かない、物を言わない連中のことは知ったこっちゃないってことか。

■あと、中国の「ITゴミの墓場」の写真が衝撃的だった(この光景は見ておいた方がいい)。アメリカのITゴミ(廃棄されたPCなど)の80%は海外に送られ、そのうちの90%が中国に運ばれるのだという。大量のITゴミが運び込まれるある中国の都市では、IT製品に使われている金属をリサイクルしてお金を稼ぐのだと言うが、プラスチックを燃やして金属を取り出すというプリミティブなやり方で、街中に有毒ガスが充満し、子供たちの健康被害が懸念されているという。インターネットやIT社会はヴァーチャル性が強調されるが、物質に根ざした世界でもあることを思い知らされる光景だ。

COURRiER Japon (クーリエ ジャポン) 2007年08月号[雑誌]


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2007年07月10日

サルコジ夫妻と複合家族

sarkozytemoignage.jpgフランスの新しい大統領は、従来の大統領とイメージが違う異端の大統領と言われるが、異端とまではいかなくても、あまりスマートとは言えない夫婦関係も注目される。

サルコジ夫妻が出会ったのは1984年のこと。セシリアさんの最初の結婚式に、既婚者だったサルコジ大統領がヌイイ・シュル・セーヌ(Neuilly-sur-Seine)市長として参列したときにさかのぼる。最近出た自叙伝(写真)によると、サルコジ大統領はセシリアさんに一目惚れし、それぞれが離婚して12年後に結婚するまで、彼女を口説き続けたという。

しかし結婚したあとも平穏な関係は続かず、2005年にセシリアさんは、PR会社社長とニューヨークに駆け落ち。数か月間別居していたこともある。この件も自叙伝で触れられており、サルコジ大統領は「非常にショックだった。今でもそのことについて語るのはつらい」と記している。

最初の結婚でサルコジ大統領は男児2人、セシリアさんは女児2人をもうけており、1997年には2人の間に男児ルイ君が生まれている。そして、エリゼ宮(大統領官邸)の新任式典でも、それぞれの連れ子2人づつと、夫婦間の子供1人の計5人の子供を連れて登場した。フランス大統領の新任式にはそぐわないような、ふたりの関係のゴタゴタをそのまま写し出すかのような光景だ。

それまでのフランスの大統領は裏で何をしていようが表向きはどっしり構え、優雅さをたたえていた。シラク氏は引退時に愛人に関する告白をした。故ミッテラン氏も愛人だったか、隠し子だったか、記者に問われた時、「それで Et alors?」と、返したのを思い出す。サルコジ大統領はそういう問題を表面化させず、スマートに振舞うどころか、それをさらけ出しているかのようだ。

対立候補だったロワイヤル氏も負けていなかった。ロワイヤル氏は社会党書記長のオランド氏との事実婚(つまり同棲関係)で4人の子持ちだったが、大統領選敗北後に、衝撃の別居。オランド氏の浮気も暴露した。事実婚はフランスの選挙においてマイナスのイメージにはならない。フランスでは結婚という枠組みの外で生まれる子供が半数を占めている。アイスランドやスウェーデンはもっと比率が高い。

親のゴタゴタの最大の被害者は子供なわけだが、サルコジ大統領自身が幼少期に、父親の離婚で貧しい生活を余儀なくされ、辛い思いをしている。

フランスでは、離婚したあとも、子供のために新しい家族を連れてバカンスなどで合流する。複雑な感情を抱え、ときには苦々しい思いをしながら、別れた相手の新しい家族と一緒に過ごすのだ。一時的な複合家族が形成されるわけだ。また恒常的な営みとしても、伝統的な家族構成とは違う、変形的な家族形態がどんどん生まれている。

フランスでも決して格好の良いことではないのだろうが、見栄や世間体よりも、「こうなっちゃったんだからしょうがない」と開き直る。そうなってしまった以上、その局面において合理性を追求するしかないのだ。今さら伝統的な家族形態を復活させることもできない。その社会的前提が崩れてしまっているのだから。現状を直視し、それをフォローする形で行政も進められ、変形的な家族形態を支援する。そうやって何とか社会性を担保していくやり方なのだ。

再婚相手の子供を虐待するという事件が日本でよく起きているが、共同体の崩壊にオロオロせずに、その都度生まれた関係性を肯定しながら、開き直る強さが必要なのだろう。



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2007年07月05日

カール・ラガーフェルドが語る、シャネル07/08年オートクチュールコレクション


★パリで3日、シャネル(Chanel)の07/08年オートクチュールコレクションが発表された。動画を見ると、カール・ラガーフェルドが新作についてフランス語でまくし立てている。初めて動いている姿を見たが、やはりけったいなオッサンだ。デヴィッド・リンチも登場し、悪天候が逆にショーを引き立てていると絶賛。この動画を見たあと、改めて GOYAAKOD さんのエントリー「Mr. Lagarfeld, Who are you? 知っているよで意外に知らないあの方のこと」を読むとエキセントリックなキャラにも親近感が湧いてくる。


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2007年06月28日

ケ・ブランリー美術館、1周年!建築家と植物学者の競演


新たなパリの観光スポットとなったケ・ブランリー美術館。AFPニュースの動画(↑)で館内の様子が見れる。建築家ジャン・ヌーベルと植物学者パトリック・ブランの手による、見た目もユニークなこの美術館は Main Blog で紹介済みですが、この機会に改めて読み返してみてください。

ケ・ブランリー美術館(1)
ケ・ブランリー美術館(2)

もうひとつ、ベルサイユ宮殿の話題。これも動画ニュース。宮殿の中でも最も豪奢な「鏡の間」が3年間の修復作業を経て、300年前の輝きを取り戻した。

日本のマリー・アントワネット現象
「マリー・アントワネット」(ソフィア・コッポラ監督)公開


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2007年06月27日

DETAIL JAPAN 7月号 全冊特集:ル・コルビュジエ 開かれた建築

DETAIL JAPAN (ディーテイル・ジャパン) 2007年 07月号 [雑誌]「DETAIL JAPAN ディーテイル・ジャパン」 2007年 07月号 [雑誌]
“全冊特集:ル・コルビュジエ 開かれた建築”

この特集では、創造者=表現者はまず感化されることから始めるといういつ変わることのない真実を生涯を通して体現したル・コルビュジエの教えに忠実に、彼自身の建築や住宅から新たに「感化される」ことを目指しています。

そのために、カラー写真と図版など、豊富なヴィジュアル資料とともに、第一線で活躍する建築家などによるル・コルビュジエの建築および住宅の再読を通して、いまだ汲み尽くされていないその建築の潜在可能性を多方向から探っていきます。(紹介文より)

取り上げられる主な作品(カラー写真あるいはカラー図版付き):
オザンファン邸、カップ・マルタンのキャバノン、カルタゴの家、クック邸、クルチェット邸、サヴォワ邸、ジャウル邸、シュオブ邸、スイス学生会館、スタイン邸、ナンジェセール・エ・コリ通りのアパート、ペサックの集合住宅、ベステギのアパート、マルセイユのユニテ・ダビタシオン、ラ・トゥーレット修道院、ラ・ロッシュ=ジャンヌレ邸、ロンシャンの教会堂、ワイゼンホフのジードルンク

★ル・コルビュジエ Le Corbusier はスイスで生まれ、主にフランスで活躍した建築家。かつて「パリ国際大学都市スイス学生会館」の住人であった「キャベツ頭」さんが main blog の方にコルビュジエの建築について2本エントリーを書いてくれています。雑誌の方は明日発売!

ル・コルビュジエの建物(1)−パリ国際大学都市スイス学生会館
ル・コルビュジエの建物(2)−パリ国際大学都市ブラジル学生会館

ル・コルビュジエ(Wikipadia)


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2007年06月26日

Fête de la musique@パリ

先週の木曜日6月21日は Fête de la musique でした。フランス全土の街中で無料の野外ライブを一斉にやるという日です(Fête de la musique の詳しい説明は黒猫亭主人さんのブログで)。パリでもカフェや広場や通りで、さまざまなジャンルの音楽のライブが行われます。一昨年は13区のセーヌ川沿いに停泊した船の上で、去年はバスディーユ広場で楽しみましたが、今年もバスティーユ広場にいきました。お目当てはTété。バスティーユは毎年すごい人で若者がふざけて押し合いへし合いになりますが、有名どころがライブをやるので楽しいです。

fetemusique02.JPG

写真には人だかりしか写っていませんが、肉眼ではステージ上のTétéが見えました。ファースト・アルバム L'Air de rien は好きでよく聴いていたのですが、2001年発売ということはもう6年前ですか。この日は久しぶりにLove Love Love(VC From YOUTUBE)が聴けました。A La Faveur De L'automne (VC From YOUTUBE)は流行っていたので口ずさんでいる人が多くて、日が落ちていく時間帯(といっても夜11時前ですが)、ジンとくるメロディ、合唱…野外ライブとしてはかなりパーフェクトな状況でした。

fetemusique01.JPG

他にも家を出たとたんに近所のカフェではフォーンバンドが演奏していたり。毎日やってくれたらなあ。単に浮かれてしまいそうです。

★Tété(テテ)はR&B(リズム・アンド・ブルーズ)やソウル、ジャズなどブラック・ミュージックをルーツに持ったフランスの若手黒人シンガーソングライターです。日本でもライヴをしたり、NHK のフランス語会話のエンディングテーマになって一度出演したこともあるので、あるいは記憶されている方もいるかもしれません。歌詞の内容はとてもセンチメンタルで、黒人にはめずらしい独特の黒縁メガネルックスとも相まって、若い女性から圧倒的な支持を受けています。だけどテテの魅力はなんといってもその抜群のメロディーセンスと、時にダンサブルなリズムのミックス具合にあります。50年代のシカゴ・ブルーズや60年代のモータウン的なサウンド、そこに70年代のブルー・アイド、フィリー/サルサのフォーン・ソウルやニューオリオンズ風ファンクが絶妙に折り合う音楽センスは、ヒップ・ホップが主流の最近のフランスにあってめずらしい、純サラブレッド的なミュージシャンだといえます。

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2007年06月20日

パリのお寿司パックとお弁当

dejeuner01.jpg唐突ですが、わたしのお昼のお弁当は下の写真のような感じです。右のタブレtabouléはクスクスのサラダ。こんな風にパックに入ってフォークもついていたりするので、お弁当にちょうどいいのです。この日は贅沢してDaily Monop'(スーパー「Monoprix」のコンビニ版)のお寿司パックを買ってしまいましたが、大学では、にんじんサラダや、具入りのツナ缶のみをお弁当に持ってきている人たちを見て最初は驚きました。日本のコンビニも遠くなり、節約癖がついた今では、そんなフランス風学生弁当もありかなとおもう今日このごろ。

ところで、寿司パックは普通に近所のスーパーでも見かけるようになりました。寿司はもうパリではめずらしいものではないのですね。日本料理のレシピはネットで簡単にフランス語のものが見つかるらしく、最近およばれしたフランス人学生たちの集まりでも彼らが自力で「寿司」やら「うどん」を作っていて頼もしかったです。おいしくいただきました。


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2007年06月13日

ハイリゲンダム・サミットの表裏(2)

■温室効果ガス削減を話し合う今回のサミット開催により、温室効果ガス3万トンが排出される。ドイツ国内の環境コンサルタント会社がこんな調査結果をまとめた。独週刊誌シュピーゲルが報じた同社の推計によると、参加8か国の代表団の飛行機や車での移動によって排出される二酸化炭素が計7138トン。会議に招待された中国やインド、アフリカ諸国などの代表団の排出分が5000トンにのぼる。さらに、会場を囲む長さ12キロの防護フェンス建設や、開催反対デモなどに伴う排出量を加えると、3日間で計3万トンの余分な温室効果ガスが排出される計算になる。これは昨年ドイツで開催されたサッカーのワールドカップ(W杯)約10日分の排出量に相当するという。
■今回のサミットで3万トンのCO2が余計に排出されたそうだが、3万トンのCO2と言われても、どのくらい影響のある量なのか私たちにはピンとこない。専門家の出すデータや説明を聞いて、「ふーん、そうなのか」と思うしかなく、それを最近の異常気象(これも印象に過ぎないのかもしれない)と照らし合わせて納得している。しかし、その科学的な説明にしても、説得力はあるにせよ、本質的には仮説にすぎない。そこで、私たちの日常的な感覚と、あまりに日常からかけ離れた科学の仮説のあいだに、両者を取り持つ物語が必要になってくる。
■リオタールは「科学は自らを正当化するために物語を必要とする」と言っている。かつては、無知と隷属からの解放という「啓蒙」の物語、労働による搾取とそれからの解放という「マルクス主義」の物語、産業と技術の発展による貧困からの脱却という「資本主義」の物語などが、大きな物語として機能し、科学はそれに依存してきた。しかし、現在、大きな物語が崩壊してしまった(信用をなくしてしまった)わけだが、ここにきて「地球温暖化」がその役割を果たしているようだ。
■すでに指摘されていることだが、G8は発展がめざましい新興国に対して主導権を握り続けるために「温暖化の物語」を利用している節がある。温暖化の物語は「みんなで地球を守ろう」という善意に満ちた外見を伴っているだけに話がややこしい(地球温暖化と大気汚染の問題は分けて考える必要があるのだろう)。80年代に起こったチェルノブイリ原子力発電所の大事故によって、原子力発電は科学信仰への懐疑と進歩の物語の崩壊の象徴になった。今もなお深刻な事故や電力会社の不祥事を頻発させている原子力発電が、今度は「温暖化の物語」に便乗して、地球に優しいクリーンなエネルギーとして復活し始めている。

■サミットの会場、ハイリゲンダムでは、メルケル首相から特別に招待されたU2のボーカリスト、ボノも積極的な外交を展開。米・仏大統領ら他の3人の大物首脳とも相次いで会談し、さらなるアフリカ支援を要請していたが、G8採択した宣言文書「アフリカにおける成長と責任」を「行く先のない言葉の迷宮だ」と厳しく批判。「我々が求めているのは説明責任を果たす言葉であり数字だ。今日はそれが得られなかった」と。フランスのメディアではボブ・ゲルドフ(「哀愁のマンディ」のブームタウン・ラッツのボーカル、バンド・エイドを結成)の名前も紹介されているが日本のメディアでは無視(笑)。ボノは7日、ハイリゲンダム周辺で貧困救済を訴えるコンサートを開いた。
■毎日新聞(6月9日)によると、来年、日本が議長国を務める北海道洞爺湖サミットについて、ボノは安倍首相に、「気候変動だけでなく、アフリカでも指導力を発揮して」とメッセージを送った。「アベに会ったら聞いてくれないか。アフリカを来年のサミットの議題にするのかって」。トレードマークのサングラスを外し、笑顔を交えてインタビューに応じていたボノの表情は一瞬、厳しくなった。

■今回のサミットでは、地球温暖化ガスの削減が中心議題だったわけだが、EUは数値目標を約束として考えたのに対し、日本は基本的に努力目標として捉えた。温暖化ガス半減でも意味が違う。12年が最終年となる京都議定書以降の「ポスト京都」の枠組みに対する姿勢も大きく異なる。EUは京都議定書と同様に削減目標を改めて義務化するつもりだが、日本の財界は「厳しい省エネ制度が課されると企業が日本から逃げ出す」と強く反発している。アメリカや中国も義務化には反対。一方で、日本は省エネ技術を武器に、ポスト京都でも優位に進めたい思惑もある。(6月8日、日本経済新聞朝刊)

■来年の洞爺湖サミットの際に起こるであろうデモ(今回は世界から10万人規模で終結)に対して、すでに議論が始まっているようだ(学生たちは貧乏なので日本まで来るお金がないという話もある)。今回のサミットでは、ドイツの憲法裁判所がデモや集会を保障する権利に基づいて、集会をする場所の確保が出来なかったと警察側を批判したり、一方では著しい危険が伴なう場合はデモを禁じたり、その都度判断を下していた。こういう部分でも権利意識の低い日本はグローバル・スタンダードにさらされるのだろう。
■「役立たずの洞爺湖サミットなど全く必要なし」(6月11日)と「日刊ゲンダイ」が厳しい意見を書いている。反G8の若者たちの主張と重なり合うものだろう。




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2007年06月10日

ハイリゲンダム・サミットの表裏(1)

NO-G8.jpg■6日から始まる主要国首脳会議に向け、開催地近くの都市ロストック(ドイツ北東部)で2日からすでにグローバル化反対などを訴える大規模な抗議デモが始まっていた。
■警察によると、約2000人の「過激派」が瓶や棒、石などを機動隊に向かって投げたほか、デモ隊の一部で黒いフードなどをかぶった黒装束姿の集団などが車に火をつけたり、商店の窓を壊したりした。警察のスポークスマンは、事件は「全身黒づくめの集団」が扇動していたと指摘。それら暴力的なデモ参加者を追い払うため、高圧放水銃と催涙ガスを使用し、事態はすでに鎮圧されたとした。「黒づくめの集団」は現地では、«Schwarzer Block 独 Bloc noir 仏» と呼ばれている。フランスの新聞では火炎瓶 des cocktails Molotov を投げていたとも書かれていた。
(2 juin, cyberpresse)
■もっとも、過激派は反サミットデモの一部に過ぎない。同地ではこの騒動より先に、数万人が参加した平穏なサミット抗議のデモ行進も2つ行われていた。集会の主催者は機動隊との衝突に関して、「無政府主義過激派に集会が利用されてしまった」と憤慨、おおむね警察の対応を擁護している。反グローバリズム組織のATTACも「この暴力を正当化することはできない。私たちは彼らとははっきりと距離を取っている」と表明した。一方で、警官隊が冷静沈着に行動していれば、衝突拡大は防げたとの見方も強い。
■警察はここ最近、1960年代以降、下火になっていた左派活動がサミットを前に再び強まることを懸念し、バルト海に面したサミット会場の周囲12キロを高さ2・5メートルの鉄条網で包囲した。「反グローバル化」のデモの歴史は、米シアトルで99年に行われた世界貿易機関(WTO)の閣僚会議の際に始まる。だが、今回の過激派による暴動行為は、大多数のデモ参加者にも背を向けられており、反サミットや反グローバル化のメッセージを広めるどころか、運動全体に悪い印象を与えかねない。
■4日にもロストクで、サミットに反対するデモ隊と警官隊が激しく衝突し、取材中のジャーナリスト1人が負傷したほか、デモ隊の数人が拘束された。警官隊と衝突したデモ隊は、2日の衝突時と同様、約400人の黒装束集団。その日、先進国の移民政策に反対する約800人のデモ隊がロストクの移民局前で平和裏に抗議集会を行っていたが、黒装束集団が警官隊に向かって投石などを始めたため、警官隊が反撃し、現場は一時、騒然となった。
■6日、デモ隊は、サミット会場のハイリゲンダム周辺の道路を封鎖しようとして警官隊と衝突、約100人が拘束された。デモ隊による投石に対し、警官隊は放水や催涙ガス弾で鎮圧を試みている。デモ隊は約1万人で、道路の一部を一時占拠。安倍首相はデモを避け、空港からヘリで会場に入った。昭恵夫人が予定していたキュールングスボルン市内視察もサミット抗議デモの激化で中止になった。デモ隊は「来年は日本(=洞爺湖サミット)に乗り込む」と意気込むが、デモの中心となっている学生たちは経済的に渡航費用の捻出は難しいだろうと日本ではタカを括られている。
■サミット会場につながる道路を封鎖するというのがデモ隊の戦術のひとつだったようだが、それが原因で深刻な渋滞が発生し、ハイリゲンダム周辺のロストク市などにも波及した。経済効果を期待していた地元の人たちだが、それどころか日常生活にも支障が出る始末。サミットの随行団や記者団の移動も制限され、中止に追い込まれた公式プログラムもあった。 サミットをめぐる警察当局の取り締まりについては、活動家のアジトの強制捜査など強引な手法が非難を浴びた。このため、立ち入り禁止区域に侵入したデモ隊に対して、強制排除といった強硬措置に踏み切れないとの見方もある。デモが正当な権利として認められているヨーロッパならではの歯止めなのか。
■サミットには先進国主導の経済運営などを批判する反グローバリズム団体が世界各地から終結し、デモやダイインなどを連日繰り広げている。彼らの主張を「外山恒一」風に言うならば、「サミットなんて所詮は世界の既得権益者のお祭りにすぎない」ということである。ベルリンから今回のデモに参加した女子高校生、ハイデさんは「G8のリーダーたちは(対貧困国債務削減などの)約束を果たしていない。それを糾弾しているだけなのに警察は力で抑え付けている」(6日、北海道新聞)と、また、ドイツの南のフライブルグ(エコロジーの先進都市として有名)から来た学生、グナール・フィンケさんは「ここで座り込みができただけで大きな成功だ。これは象徴的な段階にすぎないが、G8に反対しているということを表明するためには重要なことなんだ。僕たち計画はとても素晴らしかった。警官たちの不意を突いた。彼らはどうやって僕たちを押さえ込めばいいかわからなかった」と話す(7 Juin, NOUVELOBS.COM)。また、日本から参加したNPO「ほっとけない世界のまずしさ」の林氏は「そもそも、アメリカをはじめとする8つの国のグループが、世界人口の大多数の人々の声を聞かずに、この世界の方向性を決めてしまう。そのこと自体が独りよがりであることを忘れてはならない」と。
■「ほっとけない世界のまずしさ」の林氏は「オーマイニュース」にサミットの裏側についてレポート「2007年G8サミット in ドイツ・ハイリンゲンダム」を書いている。一部を引用する。「デモに参加する顔ぶれやメッセージ、スローガンは実に多様で、平和や環境、HIV・エイズ、債務、貧困など、特定の問題を取り上げるグループから、「G8 Stop Talking, Act Summit(G8のみなさん、もう議論は終わりにして、行動しよう)」とメッセージを発するグループや、G8の首脳らを「貧しい人たちなど全く考えずに、観光に来たG8の王様たち」と揶揄し、G8の開催そのものを反対する人たちまで、そんな多様な顔ぶれが一体となって進みました」。
■日本で伝えられるこの手のニュースは、デモをサミットを妨害する迷惑な人々として一面的にしか見せてくれない。G8に反対すること自体、ピンと来ない行動かもしれない。大手御用メディアは「デモはすべて暴徒」とひと括りにしたいのだろう。確かにデモの中には一般的に支持されないような集団も含まれているが、様々な「主張や方法」があることを細かく見ていく必要がある。


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2007年05月16日

さようなら、シラク大統領!(最後の演説の動画と原稿)

シラク仏大統領、お別れTV演説
☆16日に任期満了を迎えるフランスのシラク大統領(74)は15日夜、国民に向けて最後のテレビ演説を行った。16日にサルコジ次期大統領(52)への引き継ぎを終え、政界活動に終止符を打つ予定で、「新大統領の下で一致団結してほしい」と万感の思いで呼びかけた。
☆シラク氏は「新大統領は、私たちの国を未来に向けて導こうとしている。彼がこの最も厳しく、美しい使命を遂行することを望む」と話した。
☆シラク氏は半年ほど休養した後、「諸文化間の対話と持続可能な開発」をテーマとする財団を設立するとしている。
(5月16日10時58分配信 毎日新聞)

★シラク大統領の記念すべき最後の演説はコチラ(from Youtube)。下に演説の全文を掲載しています。ゆっくりと話しているので、フランス語を習い始めたばかりの人でも、フランス語を目で追っていけると思います。

http://www.youtube.com/watch?v=_2m8UBMMYCs

Verbatim : l'allocution de Jacques Chirac
NOUVELOBS.COM | 15.05.2007 | 20:57


"Mes chers compatriotes de métropole, de l'outre-mer et de l'étranger,
Demain, je transmettrai les pouvoirs que j'ai exercés en votre nom à Nicolas Sarkozy, notre nouveau Président de la République. Je le ferai avec la fierté du devoir accompli et aussi avec une grande confiance dans l'avenir de notre pays.
Nous sommes les héritiers d'une très grande nation, une nation admirée, respectée et qui compte en Europe et dans le monde. Vous avez des capacités immenses de créativité et de solidarité. Grâce à vous, grâce à votre engagement, nous avons modernisé notre pays pour l'adapter aux profonds changements de notre temps et nous l'avons fait dans la fidélité à notre identité et en portant haut les valeurs de la République.
Mes chers compatriotes,
Une nation, c'est une famille. Ce lien qui nous unit est notre bien le plus précieux. Il nous rassemble. Il nous protège. Il nous permet d'aller de l'avant. Il nous donne les forces nécessaires pour imprimer notre marque dans le monde d'aujourd'hui.
Restez toujours unis et solidaires. Bien sûr, nous sommes profondément divers. Bien sûr, il peut y avoir des différences de conception, des divergences de vue. Mais nous devons, dans le dialogue, dans la concorde, nous retrouver sur l'essentiel. C'est comme cela que nous continuerons à avancer.
Dans l'union, dans le respect de notre diversité et de nos valeurs, dans le rassemblement, nous pouvons nourrir toutes les ambitions. Unis, nous avons tous les atouts, toutes les forces, tous les talents pour nous imposer dans ce nouveau monde qui se dessine sous nos yeux. Unie, et en poursuivant sur la voie engagée, la France s'affirmera comme une terre exemplaire de progrès et de prospérité. La patrie de l'égalité des chances et de la solidarité. Une nation moteur de la construction européenne. Une nation généreuse, aux avant-postes des défis du monde que sont la paix, le développement, l'écologie.
Dès demain, je poursuivrai mon engagement dans ces combats pour le dialogue des cultures et pour le développement durable. Je le ferai en apportant mon expérience et ma volonté d'agir pour faire avancer des projets concrets en France et dans le monde.
Ce soir, je veux vous dire le très grand honneur que j'ai eu à vous servir. Je veux vous dire la force du lien qui, du plus profond de mon coeur, m'unit à chacune et à chacun d'entre vous. Ce lien, c'est celui du respect, c'est celui de l'admiration, c'est celui de l'affection pour vous, pour le peuple de France et je veux vous dire à quel point j'ai confiance en vous, à quel point j'ai confiance en la France.
Je sais que le nouveau président de la République, Nicolas Sarkozy, aura à coeur de conduire notre pays plus avant sur les chemins de l'avenir et tous mes voeux l'accompagnent dans cette mission, qui est la plus exigeante et la plus belle qui soit, au service de notre nation. Cette nation magnifique que nous avons en partage. La France, notre nation, mes chers compatriotes, nous devons toujours en être profondément fiers.
Vive la République !
Vive la France !"


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2007年04月22日

仏検

実用フランス語技能検定試験 仏検合格のための傾向と対策5級文部科学省後援、実用フランス語技能検定試験、略して「仏検」の季節がやってきました。毎年、6月と11月の2回実施されています。

4月からフランス語を学び始めた学生さんたちも、フランス語を学んだ成果を形にするという意味でも、段階的な目標にするという意味でも、この先、仏検にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

とりあえず3級を目指しましょう。レベルは5級から設定されていて、4月からフランス語を始めた人でも、5級ならば2‐3週間集中してやれば楽勝(?)かと思います。さっさと取っちゃいましょう。

*試験日程 3級・4級・5級 2007年6月17日(日)
*願書提出締め切り5月16日(水)消印有効
*隣り合った2つの級のみ併願が可能です。
*検定料:3級4,000円、4級3,000円、5級2,000円

仏検の特徴と資格取得のメリット(APEFのサイトより)
☆21世紀。世界から孤立せず、世界と対話しながら、平和で豊かな運命を切り開いていくためには、多くの日本人がいろいろな外国語をマスターすることが大切です。フランス語は、フランスだけでなく、多くの国・地域・国際機関で使われている言語です。また、人類に普遍的な価値、独創的な文化を担った言語です。仏検は皆さんのフランス語能力を客観的に測る日本独自の検定試験です。日本人学習者を対象として、文部科学省および在日フランス大使館文化部後援をうけて実施されるフランス語の技能検定試験はこの「仏検」の他にはありません。
☆学校で学ぶフランス語の学習成果の判定にもふさわしい客観性を備えた試験として、単位取得や編入学試験の資格認定の条件となるケースが年ごとにふえています。
☆フランスの企業が次々に日本に進出してきています。日本の企業もフランスに広く展開しています。英語力とともにフランス語力は仕事の上で強力な武器となります。また、エレガントな教養としてフランス語を学ぶ中高年の方々が急速に増えています。

*詳しくはコチラ
仏検・フランス留学のAPEF/フランス語教育振興協会


参考書や問題集もいろいろ出ています。

仏検合格のための傾向と対策4級―文部科学省認定実用フランス語技能検定試験 仏検3・4級必須単語集―petits pois 楽勝!仏検5級・4級合格講座


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2007年04月10日

フランスの広告

たまごパックにも遂に広告が登場するようになって、巷に雨が降るように、ぼくたちの視界には広告がたえず飛び込んできます。街を移動するぼくらの眼に映るものといえば、人の背中と広告ばかり? 電柱にこっそり貼られた手書きの広告に始まり、車内広告、新聞・雑誌・本にも、ビルには看板が掲げられ、夜には電飾が輝く。大都市から村まで、どんなところにも広告が進出しています。

もう少しなんとかならんもんかいなとは思うのですが...

で、フランスの広告。フランスに広告がないわけではありません。結構、目につきます。メトロの駅には巨大な広告ポスターが貼られています。けれども、決して「なんとかならんもんかいな」とは思わないのですね。なかなか面白いものが多くて、感心してみてしまいます。そういえば、むかし、「フランスの広告戦略」なんて授業を聴いたなと記憶が甦ってきました。キャッチコピーの作られ方とか、イメージの提示の仕方なんかの上手さ、フランスらしさを教えていただいたような、ちがったような。
 
まあ、なんにせよ、たとえば、メトロの駅のあの巨大ポスターを貼る作業はなかなかの見物です。技です。機会あれば、ぜひご覧あれ。

今日は「おっ」と思ったフランスの広告を2点紹介。

pause02.jpg

上下はHSBCのもの。シャルル・ドゴール空港のあちこちに、いろんなヴァージョンで貼られていました。Etre ouvert sur le monde, c'est comprendre les différences de points de vue. というコピー(下)はありふれたものですが、空港という多様な人々が行き交う場で、日常的なものを並べてみせる、並べて読ませる、並べて考えさせるというのは「視点の多様さを理解する」ことを可能にするかもしれません。アメリカ型グローバリゼーションという「閉じた」世界化ではなく、「開かれた」世界化を心がけたいものです。

HSBC01.jpg

最後に、こちらはパリ市のごみ収集車の車体横に見つけた広告。公共広告ですが、インパクトあります。Pas de ça chez vous ? Paris c'est chez vous ! (家ではそんなことしませんね? パリはあなたの家なのですよ!)。声に出して読むと、音の響きもいいですね。

chezvous03.jpg


Pst

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2007年04月04日

ヴィンテージの請負人 Secondhand but HOT

CSIlverCDSleeve.jpg映画祭でスターが何を着るか、は今や賞レースそのものに引けを取らないぐらい世間の注目を集めるようになりました。スター達はご本人のステイタス、イメージアップのためにも専属のスタイリストに極めつけの一着をセレクトさせます。ビッグメゾンにとってもレッドカーペットの上は最高のPRの場です。しかし、ここ数年、ビッグメゾンのデザイナー達をやきもきさせるような現象が起きています。スター達がこぞってヴィンテージのドレスを選ぶようになったからです。
 
ヴィンテージを選ぶのにはそれなりの理由があります。誰もが持っていないという希少価値・意外性はもちろんのこと、デザイン的にも横並びにならず目立つことができます。また、コストの面でも魅力的。ビッグメゾンのブラウス一枚買えるかどうかの金額で、見事なドレスが何着も買えてしまうのです。

しかし、そんないいことづくしのヴィンテージにも弱点があります。一体どこでそんなクールなヴィンテージが手に入る?眺めて愛でるだけの美術品ではなく、今夜のパーティーに映える一着が欲しいのに。
 
そんなハリウッドスターの願いを見事にかなえてくれるのがLAにあるヴィンテージ専門のブティック DECADES。オーナーのキャメロン・シルバーはヴィンテージブームの仕掛け人として有名です。国内外に自ら足を運び集めた服、バッグ、アクセサリーはいずれもシルバー独自の眼鏡にかなったものばかり。シルバーにとってのヴィンテージの条件は、今の目で見てもグラマラスでセクシーであること。長い年月を生き延びてもそれだけではダメ。シルバーに言わせれば、ヴェルサーチのドレスも「ジャンニが生きている頃のものなら」ヴィンテージなのです。
 
ベヴァリーヒルズ育ちの洗練された物腰と着こなし、誰とでもすぐ友達になれる抜群の社交性の持ち主であるシルバーは、ブティックをオープンさせる前はクルーナーとしてショービジネスの世界に身を置いていました、この変った経歴故か、シルバー自らがセレクトしたドレスはハレの場所で身にまとう本人を最高に目立たせてくれると評判で、当日に彼のアドバイスを求めて店に駆け込む、いわゆるセレブリティの顧客も多いとか。

バイヤーとしてのシルバーの彼の武器は、あちこちに顔出しするマメさと数多い友人からの情報、コネクション。これが総てと言っても過言ではないのです。市場にでる前のヴィンテージは、平たく言えば“箪笥の肥し”。着れないけれども処分もできず、遠い親戚の埃だらけの屋根裏や、テキサスの石油成金のクローゼットにひっそり生息しているのです。しかし、そんな眠れる宝も、冠婚葬祭などの人生の節目に引っ張り出され日の目を見る時がきます。この発見にどれだけ関われるかがバイヤーの力量なのです。高齢者にも受けがよく、「何かしてあげたくなる」気にさせるシルバーのキャラクターは、より多くの発見をモノにするのに多いに役立っています。

また、シルバーは「ヴィンテージの処分請負人」とスター達の間でもひっぱりだこ。もう着ない(着れない)、使わないけれど死蔵させたくない。思い出、愛着のある品々を、託すに値する誰かにスマートなやり方でまかせ、再生させたい…そんなお悩みを解決してくれる人として彼に声がかかります。カトリーヌ・ドヌーブから買取をした時は、彼女のパリの自宅に招かれ、アーモンドミルク入りのエスプレッソをごちそうになったとか。シルバーにとってもこうしたスター達からのオファーは願ったりかなったり。素晴らしいドレスに、スターがあの日あの時に着ていたという逸話のおまけがつくのですから。“箔”がついたドレスを好む顧客も多いのです。

スター達の間のヴィンテージブームはファッション業界そのものにも影響を及ぼしつつあり、シルバーが次に何に狙いを定めて買いつけるか、業界の人々も注目しています。彼の御託宣によると、今キテいるのが昔の色鮮やかなクリスチャン・ラクロワ。また、「アジアっぽいもの」がトレンドとなると見ていて、最近森英恵(!)のドレスを買いつけたとか。あなたの身近な人の洋服箪笥にも、お宝が眠っているのでは?

DECADES:www.decadesinc.com

下のフロアで営業する姉妹店DECADESTWOでは買取もしており、離婚などで物入りになった有閑マダム達が訪れる。お騒がせセレブとして悪名高いニコール・リッチ−も、値札がついたままの服を持ち込んだりするのだとか。


GOYAAKOD

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2007年04月02日

アヒルのワルツ

アヒルのワルツ (DVD付)ノートルダムにシャンゼリゼ
サンジェルマンに凱旋門
モンマルトルにカルチェラタン
エッフェル塔にクリニャンクール

と、連想ゲームのようにパリの地名を並べてみたが、これは皆さん一度は聞いたことがあるはずの曲の歌詞の一節です。
とはいえ、その曲、さびの部分しか大部分の人は聞いたことがないでしょう。
というのもコマーシャルソングだからです。

昨年のNHK朝の連ドラ「純情きらり」での熱演も記憶に新しい、宮崎あおいさんと名もないアヒルの熱演による損保会社アフラックのコマーシャル、見たことありますよね?

クウェ、クウェ、クウェ、クワ、クワ、クワ
アヒルのワルツ〜
という奴です。

この曲、テレビCMでは伺えませんが、実はパリがキーワード。

二人 いつか 憧〜れの♩
パリに 行くのを 夢見〜てる♪

と曲の冒頭にあるように、パリが曲の主題です。
そしてそれなりに物語展開のある歌詞で、実は3分30秒を超える大曲(?)

このコマーシャルの曲、アフラックのサイトにてPVでダウンロードできます。
http://waltz.aflac-duck.jp/

Youtubeで即見れます。
http://www.youtube.com/watch?v=9s_VXbH8--Y

とはいえ、ビデオはアニメーション。
宮崎あおいさんは残念ながらテレビのみです。

また、CDも発売中。

アヒルのワルツ-DVD付-マユミーヌ

とりあえずパリに行くのが夢だという方、
4月になっても、仕事に忙殺されている方、
桜が咲いてもブルーな方、
また、宮崎あおいさんと一緒に住めるのならばアヒルになっても構わないという方には、
ぜひ聞いていただきたい。

癒しソングです。


おまけ
Afrac(CM)
Aoi Miyazaki - Making of 'AFLAC CM'


キャベツ頭の男

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2007年03月21日

雑誌ナナメ読み 中央公論4月号「日本と日本人を知る120冊」特集

今月の「中央公論」は「日本と日本人を知る120冊」特集だった。果たしてこの120冊で「日本と日本人」がわかるのか?その中で気になった本とフランス関連本(フランス人の目を通して見た日本)を10冊ピックアップしてみた。

*「表徴の帝国」ロラン・バルト
記号学を駆使して日本人もビックリな日本論を展開。「パチンコは下痢の快楽だ」というような一節があり、そのときちょうどパチンコにはまっていて妙に納得した覚えがある。リニアなフランスのコース料理とは違って、すべてがいっしょくたされたゴッタ煮状態に、さらにはその信じられない照り具合に驚く「すき焼き論」。他には、ふろしき論、天ぷら論、「非合理な日本の番地」論などがあったと記憶している。美少年マニアだったバルト。原書にも彼のお気に入りの舟木一夫の肖像が収められていた。原題のL’Empire des signesは大島渚監督の「愛のコリーダ」のフランス語のタイトルL’Empire des sensをもじっている。

*「自死の日本史」モーリス・パンゲ
三島由紀夫の割腹自殺は世界に衝撃を与え、「ハラキリの日本」を印象付けてしまったわけだが、三島以降、センセーショナルに腹を切った人がいるわけでもないし、日本人の本質論のような書き方されても。当時の大半の日本人の印象は「天才と何とかは紙一重」みたいな感じだったし。自死は今やイスラム世界のものだ。フランスでも kamikaze という言葉は今はもっぱら自爆テロに使われている。

表徴の帝国 サブカルチャー神話解体 増補―少女・音楽・マンガ・性の変容と現在 怪談―不思議なことの物語と研究

*「美しい日本の私」川端康成
1968年ノーベル文学賞を受賞した川端康成の記念講演を収録。日本の古典を引用し、そこに表れる雪、月、花を愛でる日本の伝統美を「無」に集約して語ったが、今や日本は環境破壊がひどいし、多くの日本人は都市生活志向だし、最近は温暖化のせいで雪も降らない。そういう美の物理的な実体が見つからない。小学生のころ、一面雪が降り積もったあとに、雪雲が切れて、月の光が冴え渡る光景をよく目にした。子供心に美しいと思ったものだ。私の田舎は「雪国」の舞台からそう遠くない場所で、深い雪に閉ざされた水の底にいるような静けさも憶えている。しかし、かつての雪景色にここ何十年もお目にかかったことがない。

*「あいまいな日本の私」大江健三郎
「私は渡辺一夫のユマニスムの弟子として、小説家である自分の仕事が、言葉によって表現する者と、その受容者とを、個人の、また時代の痛苦からともに恢復させ、それぞれの魂の傷を癒すものとなることをねがっています」と述べるフランス文学系ノーベル賞作家。昔は「ヒロシマ・ノート」を読んで感動したものだが、文学者には時代を見据える洞察力があり、文学者の言うことを聴いていれば社会や世界のことがわかるという公準はすでに壊れている。「美しいが、あいまい」と川端を批判するが、最近は脇の甘いリベラル文化人として保守論者からつっこまれまくり。

*「秋の日本」ピエール・ロチ
「日本人はサルだ」と言った悪名高い、ピエール・ロチ。当時、ダーウィニズムをベースにした骨相学というのが流行っていて、簡単に言えば、サルの頭蓋骨が始まりで、進化の先端にヨーロッパ人の頭蓋骨がある。日本人はその途中にあるというわけ。時代の認識の限界を感じさせる発言ではあるが。ロチの日本はメルヘンとホラーが混在する異国幻想。つまりは、ヨーロッパ的な理性からは理解できない、典型的な他者としての日本。

*「怪談―不思議なことの物語と研究」ラフカディオ・ハーン
ロチとは対照的に日本に住み着いたラフカディオ・ハーン。日本の中でも近代化の波に侵されていない地方の文化に素朴だが、高貴な精神性を見出した。しかし、今や地方都市ほどグローバル化の影響をもろに受け、農村が荒廃したり、郊外化が進んだり。

*「日本人とユダヤ人」イザヤ・ベンダサン
それまでユダヤ人が脚光浴びることはなかった。日本人とユダヤ人の共通点を説いた本だが、やはり選民的な意識が色濃い。今もネオコン絡みでユダヤ謀略論がよく語られるが、日本ではこれが始まりだったのか。

*「ユダヤが解ると世界と日本が見えてくる」宇野正美
特集では「日本人とユダヤ人」の二番煎じと紹介されていた。実はこの著者に小さいころ遊んでもらったことがある。当時宇野さんは企業のお偉いさん相手にした講演会で忙しかった。今もユダヤ資本の動向を読むことが、投資をする際に欠かせないというのがひとつの定説になっているが。

*「サブカルチャー神話解体 増補―少女・音楽・マンガ・性の変容と現在」宮台真司他
その後サブカルチャー大国と化す土壌となる時代を生きた個人の志向性をコミュニケーション形式によって緻密に分類。私もこの時代を生きていたので、そのどこかにはまってしまうわけだが、そこにはまった自分を認めるのが辛いというか、寂しいというか。文学少年(ロック少年もその変奏)の自意識と身振りを完膚なきまでに叩きのめす仕事は痛快。

*「動物化するポストモダン―オタクから見た日本社会」東浩紀
「大きな物語」が機能しなくなった世界に最も適応しているのがオタクたちだ。−「オタクたちが社会的現実よりも、虚構を選ぶのは、その両者の区別がつかなくなっているからではなく、社会的現実が与えてくれる価値規範と虚構が与えてくれる価値規範のあいだのどちらが彼らの人間関係にとって有効なのか、たとえば朝日新聞を読んで選挙に行くことと、アニメ雑誌を片手に即売会に並ぶことと、そのどちらが友人たちとのコミュニケーションを円滑に進ませるのか、その有効性が天秤にかけられた結果である。そのかぎりにおいて、社会的な現実を選ばない彼らの判断こそが、現在の日本ではむしろ社会的で現実的だとすら言える。オタクたちが趣味の共同体に閉じこもるのは、彼らが社会性を拒否しているからではなく、むしろ社会的な価値規範がうまく機能せず、別の価値規範を作り上げる必要に迫られているからなのだ」−。「朝日新聞を読んで選挙に行くこと」は大きな物語に裏打ちされたツリー型世界観が反映された行動だ。東はデータベース型世界をそれに対置する。そこには、データベース=情報の集積があり、それを個人が読み込むことで個々の世界が立ち現れる。データベース型世界では感情や心の動きは社会的な共感に向かわずに、非社会的に、孤独に、動物的に処理される。それがオタク系の作品の消費のされ方なのだ。「世界は萌えている」ってことは動物化は世界に広がっているってことだ。これはオタク系に限らず、テクノミュージックやハリウッド映画にも見られる傾向だという。


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2007年03月15日

雑誌ナナメ読み NEWSWEEK 2007-3/21号「萌える世界」特集

世界は萌えている…

cover070321.jpg今週号のニューズウィーク日本版(3/14発売)は「萌える世界」特集。そこで取り上げられているフランス関連ネタは本ブログで紹介したものばかり。かなり先端の情報を拾っているんだな。ブログは雑誌より速い!(自画自賛)。まあ、この手の特集にはあまり驚きはなくなってきたが。

まずは日本に憧れて家出したフランスの少女の話。これは真っ先に黒猫亭主人さんが「さらばシベリア鉄道」で紹介してくれました(ソースは「リベラシオン」)。パリの南のエソンヌ県の2人の少女が、Miyaviに会いたい、「NARUTO」を生んだ国を見たいという気持ちを抑えられなくなり、電車に飛び乗り、シベリア鉄道経由で日本に行こうとしたところ、ポーランドのあたりで保護された。

フランス初のマンガ喫茶は Noisette さんが去年の9月の渡仏の際に写真を取ってきてくれました。開店から閉店まで居座る若者も多いらしく、繁盛しているようだ。

IMG_0638 (2).JPG「マンガ喫茶」のサイトをのぞいてみよう。マンガ喫茶は「日本人にとって静かにくつろげる理想の場所」と説明されている。「なぜフランスでマンガ喫茶なのか」というコーナーには次のような解説がある。

「フランスは今や世界で第二のマンガ消費国である。去年は1000万部売れた。近年、発行部数だけでなく値段も上がり、読みたいと思うマンガ・シリーズをすべてフォローすることは難しくなった。唯一の解決策は本屋でこっそりと立ち読みすることだ。さらにマンガは本に限定されない。DVDやテレビゲームやフィギュアや他の派生関連商品へと広く展開している。マンガは真の社会的な事実となったのだ」

海外のオタクたちはアキバ巡礼に出かけ、実際に感動して帰ってくるらしい。昔のような「黄金の国」幻想ではなく、夢見たものがちゃんと日本に実現されているということか。オタク本家の日本では相変わらず、オタクは子供じみた特殊な人々という認識が根強いが、逆に欧米の方がオタクを新しい自己表現として認知しているようだ。BLOG「非国民通信」さんが日本でのゲーム販売数の伸び悩みは日本人のゲーム蔑視だと論じていらっしゃるが、ゲーム蔑視は明らかに上の世代からの同質圧力である。欧米の方がアニメとかゲームに対するイデオロギー・シフトがきちんと起こっているのかもしれない。ゲームが日常化した中で育った世代は、確かに上の世代から見るとゲームに毒されていると見えるのかもしれないが、ゲーム世代はゲームとの付き合い方をそれなりに心得ているのだ。

「大統領候補のひとり、ロワイヤルさんは日本のアニメ、マンガを攻撃してきたひとりだ」という言及もあった。これも文化的世代間闘争の話である。80年代にまず「ゴルドラック」(「UFOロボ・グレンダイザー」)が放映されて、人気を博したが、その後、「ドラゴンボール」や「北斗の拳」が暴力性ゆえに糾弾され、検閲が厳しくなったり、放送中止に追い込まれたりした。それにはかつてのロワイヤルさんのようなアンチ日本アニメ議員の尽力があったわけだ。検閲によって作品の面白さやシリーズの一貫性が損なわれるほどに修正されたので、一時日本アニメ離れも起こった。フランスで放映されるアニメの半分以上を占めていた日本アニメは一時、1割にまで落ち込んだが、これに対して愛好家たちは日本アニメをテレビではなく、原作のマンガで楽しむという方向へシフト・チェンジしたのである。そういう紆余曲折を経て、マンガやアニメはフランスの若者あいだに定着していったのである。


■関連エントリー
フランスのオタク文化(1)−子供の発見

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2007年03月14日

フランスも暖冬

DSC00424.jpg暖冬であった。
といっても日本についてではない。
フランスがである。
メテオフランス(フランスの気象庁のようなもの)によれば、
2006年12月〜2007年2月の平均気温は、1971年〜2000年の平均気温より2.1℃高く、観測統計の残っている1950年以来、最も高かったとのこと。今週のパリの最高気温も、概ね15℃前後である。

ちなみに日本の気象庁の発表によると、今年の日本の冬の平均気温も統計のある1946/1947の冬以来、最高であったらしい。
暖かいと過ごしやすい。
とはいえ、これはやはり「不都合な真実」と言うべき現象なのだろうか。


キャベツ頭の男

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2007年03月07日

春休み、パリ

大学は春休み。

eiffel-pst.jpg3月になって気候もよく、フランス旅行を楽しんでいる学生さんも多いでしょうね。イギリスでも、イタリアでも、スペインでも、そのほかどこへでも好きなところへぜひ行ってみてください。

今春の航空券最安値は、聞いた限りではなんと!往復5万円を割っていました(しかも、たしか... エア・フランス...)。時期などの条件もいろいろと絡むのでしょうけど、驚くべき値段です。


近頃のフランス関連の話題といえば、

 1. ピカソの絵画2点が、パリに住むピカソのお孫さん宅から盗まれたり(記事はこちら)、
 2. ルーヴル美術館の別館がアラブ首長国連邦に建設予定とかで、その名も「ルーブル・アブダビ」。とりあえず、契約は締結(記事はこちら)。

アメリカのアトランタにも「ルーヴル」はありますが、ポンピドゥーも上海に別館計画があるそうで、別館流行のようです。

美術ネタのほかは、もっぱら大統領選ですか。

そういえば先月20日のニュースで、大手ワイン業者のアンリ・メール社が「船に積んで各国を回ったワインは熟成が加速するのでは」と、世界一周の船旅をさせた2002年生まれの赤ワインたちが無事、「美味しくなって」戻ってきたと報じられていました。彼らの名前は「世界一周」Tour du monde 。もし日本に輸入されるなら、「世界一周半」ですよね... 飲んでみたい気はします。

この春、世界のあちこちに旅立った学生のみなさん。面白いネタをぜひ送ってください。どうぞよろしく。


Pst

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2007年02月28日

FOOTSIE‐株価のように料金が変動するBar

07-footsie.jpg今日、この記事を書こうと思っていたら、日経平均株価が大暴落。世界同時株安というか、中国市場の株価の急落がNYに波及し、さらに日本も影響を受けた格好。NYは911以来の下落幅(-416.12ドル)で、日経平均も一時700円以上下げた。朝、シカゴの日経平均先物の値を見たときは目を疑った。時間差で各国市場が繋がっていると感じざるえを得ないここ数日間の動き。経済と金融のグローバル化がネガティブな形で証明されることになった。今日のザラ場も中国市場を睨みながらの展開。少し前までは中国市場の動きなんて問題にならなかったのに。

ところで、パリにFOOTSIEという英国の株価指数の名がついたバーがある。FOOTSIEは「フィナンシャルタイムズ100種総合指数」のことで、通常FTSE100と略される。パリ証券取引所のある2区、オペラ座(ガルニエ)にも近いロケーション。口コミで人気が広がっているようだ。

実はこのバーのドリンクの料金は決まっていない。注文数によって料金が変動するのだ。4つのプラズマTVが、株価のように需要で変動する価格をリアルタイムで演出している。

最初に4ユーロ(=650円)のハイネケンが注文されると、数分後には0・2(=35円)ユーロ値上げされるという具合だ。人気のないドリンクはうまく待てば最初の料金の半額で飲めるが、人気のドリンクは1・5倍に跳ね上がることもある。あるドリンクの値段が上がりすぎているかと思うと突然、大暴落する。「幸運か、暗黒の木曜か、FOOTSIEで運試し Chance ou jeudi noir au Footsie 」というネットの記事で、「破格の値段でシャンパンが飲める」とあったが、値段の変動幅はせいぜい6ユーロ(=1000円)のようだ。

システムからするとモダンな印象を与えるが、バーの内装は意外にも天井の高い木造の落ち着いた造りになっている。こんなバー、値段の変動が気になって落ち着かない気がするが、毎日株価ボードと睨めっこしているデイトレーダーには逆にこの方がしっくりくるのかもしれない。ヨーロッパは例年にない好景気で、投資ブームに乗っかったアイデアなのだろう。


cyberbloom

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2007年02月24日

「ここが変だよ寿司ポリス」 NEWSWEEK日本版 2/14号

NW20070214.gif先月、パリで正統的な日本料理を選別する試みが始まったことを紹介したが、これはフランスに限った話ではないようだ。実は日本の伝統を守るために「正しい日本食」認証制度を提唱したのは松岡農水相で、日本の農水省の旗振りが背景にあったのだ。どうやらこれも「美しい国」プロジェクトの一環らしい。外国にもひとりよがりな「美しい国」を押し付けようという作戦か。しかし、「日本政府が認めない店は和食と名乗らせない」と言わんばかりの制度に、「グローバル時代に料理を定義する権利が政府にあるのか」と欧米メディアは激しく反発。日本食を審査する覆面審査官は「スシポリス」と呼ばれているらしい。パリの場合、複数の覆面スシポリスが店を訪れ、日本的な店舗や雰囲気、日本料理の有資格者の有無、メニューに日本食としての質や多様性があるか、米やしょうゆ、酒が日本製か、それと同等の品質か、など18項目に及ぶ基準を点数化。そして50点満点で7割以上取得した料理店を「日本食レストラン」として推奨している(*日本食レストラン価値向上委員会) 

「日本は他国の技術や料理に手を加えておきながら、その逆は許さない」と批判したアメリカのラジオもあったようだ。確かに日本は「オマエに言われたくない」って状況だ。「テリヤキバーガー」は売られているし、「ナポリタン・スパゲッティ」はイタリアに存在しないし、「天津飯」も天津の人たちには想像できない料理らしい。こういう出所不明の料理は枚挙にいとまがないが、そういうコンテクストを無視したラディカルな加工が日本の面白さでもある。この前、創作和食レストランで食べた「生麩の豆腐フォンデュ」は独特の食感があり、なかなか美味しかった。

松岡農水相がアメリカのコロラド州を訪れた時に、メニューに寿司と焼肉が一緒に載っていたのを見て、「こんなのは日本食レストランじゃない」と憤慨したそうだ。外国に行き、言葉が通じないときに、こういう感情がよく喚起される。言葉が全くわからない状況で、日本食レストランを見つけて嬉しくなるが、同時に日本人としての誇りの感情も同時に沸き起こる。それが、「こんなもの、日本料理じゃねよ」、とケチをつける行動として表れる。言葉が通じないコンプレックスがナショナリズムをくすぐる。しかし、日本に帰って国家権力をバックに日本食の検閲制度を作るなんて大げさなことをやらなくても、その場で自分の言葉で店主に日本料理の何たるかを説明すればいいことだ。この制度の発想が国際感覚の乏しい人たちの皮相的な海外体験がベースになっていることは容易に想像できる。そういう日本人の個人的な発信能力を鍛え、発信の場を積み重ねて行く方が先決だろう。時間はかかるが健全なやり方だ。

「創造する主体は日本人であるべきという、文化ナショナリズム的な発想だ」とか「スシポリスは文化における複数性の無視、否定になる。国や文科省の考える文化を愛せという愛国心に関する議論と同じ構図だ」と手厳しいのは、上智大学の吉野耕作先生(社会学)。加えて、日本文化自体が混淆的で、ジャポニカ米のルーツ(揚子江下流?)はどこかとか、寿司のルーツ(東南アジアのなれ寿司?)は何かとか、正統性にこだわればこだわるほど自己矛盾に陥っていく。

しかし、それを超えたコンセンサスとしてスタンダードな日本食や和食というものは存在することは事実。「舌で食べるか、頭で食べるか」というコラムもあったが、私たちは舌で食べる以上に、頭で納得しながら食べている。美味しければ何でもいいというわけでもなく、私たちは食に関しても、正統性とか、本物という言葉に弱い。

外国の人々が日本食に興味を持つのは、日本の伝統文化に直接興味があるからではない。マンガやアニメに関しても言えることだが、日本文化に興味を持つきっかけになるかもしれないが、直接的な動機は明らかに別のところにある。それは、「脂質が少なく健康に良い」というダイエット志向や、BSE以降の脱=肉食の流れに乗っての再評価ということだ。

先月、マクドナルドが期間限定で発売した「メガマック」がバカ売れした。それに乗じてマクドナルドの株(JASDAQ)も急騰。一方、マクドナルドのお膝元のアメリカですら確実に脱ジャンクフードの流れが起こっている。NY市は最近、市内の飲食店に対してフライドポテトの油によく使われる「トランス脂肪酸」を含む調理油の使用を禁止したばかりだ。また、イギリスでは脂質、塩分、糖分の高い食品(つまりジャンクフード)のCMを、今年の1月から16歳未満を対象にしたテレビ番組で流すことが禁じられた。それまで子供番組のCMといえばジャンクフード(日本もまさにそうだ)という慣習が覆るらしい。

少なくとも言えることは、他国に口出している場合ではないということ。そんな認証制度に2億7600万円(!)の税金をつぎ込むより、まだ終わっていないBSE問題、最低水準の食料自給率、大量の残飯廃棄、そういうものに意識を促した方が断然いい。ついでに「あるある」の言いなりになって納豆を買いあさり、やらせが発覚すると怒り狂うというメンタリティーを何とかした方がいい。日本の食卓自体が崩壊寸前で、日本食が世代的に継承されていくかすら怪しいのに。


ニューズウィーク日本版オフィシャルサイト


cyberbloom

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2007年02月16日

仏蘭西のアメリカ人@−アメコミの巨人がフランスで繰り広げる凸凹夫婦漫才−

チープ・スリル60年代~80年代にかけてアメリカ・カウンターカルチャーの申し子として大活躍したロバート・クラム。コミックは読んだことがなくても、ジャニス・ジョプリンのアルバムのアートワーク(写真、右)と言えばでピンとくる方も多いことと思います。彼とその複雑な周辺を取材したドキュメンタリー映画が話題になるなど、近年かつてとは別の角度でスポットが当たっていますが、ご本人は十数年前に故国を離れ、南フランスの片田舎で奥方アリーンと平穏な日々を送っています。年代物の家に住み、花を飾り食を楽しむ静かな暮し…ショッキングな作風で知られるかの御大も『人生の楽園』調の隠居生活に落ちついたかと思いきや、心配ご無用。時折発信される夫婦合作の身辺雑記調コミックは、かつてとは一味違った「毒」を放っています。
 
のどかな田園へ移ってもヒトはヒト。クラム氏(寄る年波を強調した姿で登場)は戦前アメリカのルーツ・ミュージックのレコード収集に邁進。アリーン女史はフィットネス(!)に目覚め見事肉体改造に成功、ヒッピー時代よりハデなヨーロピアン・ファッションを楽しむマダムになり、キュートなお洋服が似合う私でいたいの、とついには最新シワ取り手術で実の娘より若く華やかに変身するありさま。妻の言動にたじろぎ慌てる気弱なクラム氏のぼやきに、年不相応なはしゃぎっぷりと俗っぽさで応えるアリーン。コマの隅々まで徹底的に描き込む独特のペンタッチでいじられ放題のキャラクターとして描かれた夫妻は、関西のベタな夫婦
漫才より遥かに笑える、リアルな無駄話を繰り広げます。
 
ロバート・クラムBEST―Robert Crumb’s troubles with womenマイペースな二人ですが、丸くなってしまったわけではありません。村が車とパラボラアンテナ、ラッパー風の若者(見かけだけで無害)とモダン・デザインに侵食され変貌するのをさみしく思う一方、フランス人が「懐かしのフランス文化」を省みないのは第2次大戦中の占領下の忌わしい記憶を思い起こさせるから、と喝破する一面も。異国で日常的にアメリカ食が楽しめる事実を複雑に受けとめつつ、コーラをオーダーすれば(アリーンは過去のトラブルからアルコールを絶っている)、ワインでなくそんな下品な物を飲むなんて、と皮肉る地元気質もムッとする。表現方法やトーンは変れどヒトコト言いたい気持ちは変わっていません。
 
最近はカンヌ映画祭やファッション・ウィーク中のニューヨークにも出没。ミーハー全開で動き回るアリーンのハッチャキぶりと、カンヌのセキュリティの悪相度からモデルの奇矯な歩き方まで何事も細かくチェックするクラム氏の観察眼(”網タイツとハイヒール着用で生ハンバーグと化した女房殿の足“)のコンビネーションはいよいよ冴え渡り、ヒトコトの鋭さも増しています。カウンターカルチャーのヒーローの座を自ら降り、片言程度のフランス語で異国での生活を始めて十数年。プレッシャーから解放され、未だ片言な異邦人で、若くもないが枯れてもいない中途ハンパな「私」をツッコミも入れつつのびやかに見据えた夫妻の共同作品は、思いがけない自由な精神に満ちています。
 
クラム氏が雑誌のために書き下ろした感謝祭をテーマにしたイラストは、遠く離れた故国の現実を冷徹に描き、厳かささえ漂わせています(サンドイッチマンの看板に多くを語らせているところも見事)。彼が達した独自の境地を見ることができます。


■凸凹コンビの最新作は今本屋に並んでいるThe New Yorker(2007年2月12日号)で読むことができます。興味のある方はどうぞ。

ロバート・クラムBEST―Robert Crumb’s troubles with women


by GOYAAKOD(Get Off Your Ass And Knock On Doors)


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2007年02月14日

日本の「マリー・アントワネット現象」-APF通信

marieantoinette01.jpg1月20日に公開されて以来「マリー・アントワネット」は875000人の観客を動員し、1億800万円を売り上げている。今週末には観客は100万人を超え、最終的な売り上げは2億に達するでしょうと、東宝東和の広報。ビジュアルを強調した宣伝をともない、275の映画館で上映されている。

「この映画はあらゆる年齢の女性をターゲットにしています。この映画がソフィア・コッポラの映画だという事実を強調する代わりに、この映画の女性らしい側面を強調しています。ソフィア・コッポラを知らない若い女性たちも興味を抱くように」

映画のキャンペーン担当の渡辺さん。

「若い女性たちの心をつかむために、私たちはモード、お菓子、キャンディー、媚態、自堕落さに賭けました。成熟した女性には、マリー・アントワネットの強烈な性格を前面に出しました。女として、フランスの女王として、今も生き続けているフランスの心とエスプリの象徴として」

日本人女性にとって、マリー・アントワネットはポジティブなヒロインであり、ある意味、日本の女性の美徳と試練を体現している。彼女たちは自分たちとその姿を同一視するのである。

報われない愛を経験し、善良だが、退屈なフランス人の夫に悩まされ、知らない異国の人々のギロチンによって処刑された。しかし、オーストリアのプリンセスの運命にはフランス人たちを喜ばせるすべてが揃っている。

マリー・アントワネットの人気は、1970年代の少女たちにとってのカルト的なマンガ、「ベルサイユの薔薇」に多くを負っている。池田理代子のマンガは、1974年にミュージカルになるほどの成功をもたらした。宝塚歌劇団によるミュージカル作品はこの女性だけの歌劇団の最も大きな成功となった。宝塚歌劇団は「ベルサイユの薔薇」を2000回も上演し、これまでに400万人以上の日本女性たちが喝采を送った。

しかし、宝塚歌劇団だけではない。

ミハエル・クンツェとシルベスター・リーヴァイ(「エリザベート」「モーツアルト!」の作者)によって書かれた新しいミュージカル「マリー・アントワネット」がこの冬東京の帝国劇場を満員にした。

このブロードウェイにふさわしいミュージカルは日本のために特別に書かれたもので、11月に世界で封切られた。この自由に解釈された歴史ロマンは、遠藤周作の有名な小説「王妃マリー・アントワネット」にインスパイアされている。

「もちろんマリー・アントワネットは日本でとても有名で、多くの劇作品があります。しかし、私たちのマーケティング・アプローチが違うのは、歴史ロマンとしてソフィア・コッポラの映画を見せたくはなかったということです。映画「マリー・アントワネット」は甘ったるい愛の物語ではありません。マリー・アントワネットの劇作品は宝塚歌劇団やそれと同じスタイルの劇団の愛好家たち向けのものです。それに引き替え、この映画はマリー・アントワネットの市場を広げ、新しい方向性を開くことを可能にしています」

と先ほどの渡辺さん。

この新しいマリー・アントワネットは、東京のデパート(=伊勢丹)で最近行われた、フランスのプレタポルテの企画による12人のデザイナーの展示会のテーマでもあった(※)。モスリンと羽毛とリボンとレースの洪水に包まれた女王のコスチュームを再解釈するものだ。「マリー・アントワネットは歴史上の最初のファッションの犠牲者である」、とカタログの中でデザイナーのひとり、アノー(Hannoh)が賞賛している。


Vendre "Marie Antoinette" au Japon? Du gateau!
Lundi 5 FEV (AFP)

■関連リンク(※)
マリー・アントワネットに恋するファッション
パンク風に18世紀宮廷モードをアレンジ


cyberbloom

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2007年02月10日

ファッション業界御用達の謎のレストラン-Davé-

The New Yorker01.jpgパリ、コメディー・フランセ-ズのほど近くにその店はあります。赤い漆塗りのドアに常に“Complet”のサインが掲げられた中華レストランDavéは、ファッション業界人行き付けのお店として知られています。

食の都、中華レストランだけでも1500軒はくだらないと言われているパリで、Daveはどうやってその栄誉を勝ち得たのでしょうか?他店では味わえない究極の美味?スレた業界人を唸らせる粋なインテリア?王侯貴族の心地にさせてくれる完璧なサービス?答えはいずれもNo、です。

薄暗く、店の中央に鎮座する熱帯魚の水槽のライトが室内照明代わり、という高級レストランとは無縁の店内。お料理の味も値段もそこそこ(早朝の市場で選び抜かれた一流の食材、はここでは供されません)。では何が業界人を惹きつけるのでしょうか?
 
秘密は店主Davé Cheungのもてなしにあります。ファッション業界人は人並みはずれて高いプライドの持ち主ばかり。自分の「格」に相応しくない扱いをされることは何よりも避けたい侮辱です。また、いろんな意味で目立つのも仕事のうちという職業柄、四六時中好奇の視線に曝されるという不幸とも戦わなければなりません。そんなやっかいなお客様の気持ちに見事に答えたのがDavéさんでした。一見さんお断りの姿勢を徹底して貫き(例のドアのサインも一般人除けの方便)、押し寄せる業界人のお客様を見事にさばき、常に皆のプライドを満足させるテーブルを手配します。手強い難客(例えばサンローラン全盛期のミューズとして名高いルル・ド・ラ・ファレーズ)も機嫌を損ねずにもてなす客あしらいの手腕は、常連客にとってこの店ならではのスリリングな”趣向“にすらなっているほどです(店主はまた、長年の上得意ヘルムート・ラングのために、これまたお得意様であるディカプリオとジゼルのカップルに外でお待ち頂くようお願いできるほどの、“人徳”の持ち主でもあります)。

メニューはあってなきがごとし、というのもこの店の流儀です。常連達はオーダーに頭を悩ませることはありません。何も言わなくとも店で万事整えてくれます。また、口にするのは蒸し野菜に豆腐がせいぜい、まともな中華料理なぞトンでもないモデル達の食事もDaveさんは嫌な顔をせず引き受けます。

10代の頃両親と共に香港から移住して数十年。ショーが開催されるチュイルリー公園近くに店を開いたことからファッション業界と縁ができたDavéさんは、ファッション・ウィーク中こそコム・デ・ギャルソンなどに身を包んで接客するものの、普段はお洒落とは無縁の普通のオジサン。有名人との親交はあるものの、レストラン店主なら誰しも持つエゴや名声欲を手放し独自の道を歩んできました。「特別なお客様」達を敬愛し、彼らが気兼ねなく気持ち良く過ごせるようひたすら黒子に徹するその姿勢こそが、移転を経た後もずっと支持されてきた理由なのでしょう。彼の潔さに、客商売の原点を見るような気がします。

入店は業界人にコネでもない限り絶望的。何度電話してもDavéさんにきっぱりお断りされてしまうだけですが、運が良ければ店の外で席が用意されるのを待つ有名人を眺められるかもしれません。

★Dave, 12 Rue de Richelieu, Paris(1er)

The New Yorker(Sep. 27. 2004)”Fashion Cafeteria” 
By Michael Specter


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