2008年04月25日

『忘却の河』 福永武彦

忘却の河 改版 (新潮文庫 ふ 4-2)人は死んだらどこへ行くのか。死者の記憶とどう向きあえばいいのか。生き残った人はどうやって生きていけばいいのか。そんな問いが現実味をもつのが戦後文学です。それはたぶんドイツでも同じことだったのでしょう、ハインリヒ・ベル、ハンス・エーリッヒ・ノサック、クリスタ・ヴォルフなどの小説にも、同様の迫力を感じます。震災で友人を亡くした僕は、戦後文学のなかに自分が求めている問題が書かれているように思い、一時はよく読みました。福永武彦は、死者をめぐる小説ばかり書いた日本の作家です。そのなかでも、この『忘却の河』は、ある四人家族のそれぞれの内面を交差させながら、そこに水をめぐる神話やフォークロアや古典文学を巧みに重ね合わせて、戦後の忘却と記憶の義務を見事に問いかけていきます。非常に完成度の高い小説なのですが、残念ながら現在絶版です。

□現在絶版、と書いた福永武彦の『忘却の河』は、池澤夏樹(福永の実子)の解説付きで昨年、見事復刊しました。


忘却の河 改版 (新潮文庫 ふ 4-2)
福永 武彦
新潮社
売り上げランキング: 109744
おすすめ度の平均: 5.0
5 人生の意味を真摯に問うた傑作
5 名作は、草の花だけではない。
5 静かに圧巻
5 これはまちがいなく名作です
5 完璧な小説


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posted by cyberbloom at 00:05 | パリ ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 書評−その他の小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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