2008年04月06日

週刊フランス情報 31 MARS - 6 AVRIL

北京五輪の出席条件、「ダライ・ラマと対話を」
■フランスのヤド外務・人権担当相は5日付のルモンド紙に対し、サルコジ大統領が北京五輪の開会式に出席する条件として、中国政府とチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世との対話開始など三つを挙げた。他の2条件は、チベット住民への暴力的弾圧の停止と政治犯釈放。ヤド氏は「3条件は不可欠だ」と強調し、中国側が応じない場合は開会式をボイコットするとしている。
■ヤド氏は「中国は人権を尊重しないままでは決して大国になれない」と指摘。具体的な条件を挙げて中国側に人権問題で圧力をかける狙いがあるが、中国側がこれらの条件を受け入れることはありえないとみられる。サルコジ大統領は開会式出席について「すべての選択肢は残されている」と態度を保留していた。大統領は7〜12月に欧州連合(EU)の議長となるため、正式決定は加盟国と協議した上で公表するとしている。
(4月5日、毎日新聞)

フランス選手団は五輪期間中「人権尊重」バッチを着用へ
■フランスの五輪選手が北京五輪で「人権尊重」を訴える独自のバッジを着けることを決めた。アトランタ、シドニー両五輪の柔道で金メダリストとなり、仏オリンピック委員会のアスリーツ委員長を務めるダビド・ドイエ氏は4日、会見し、五輪のマークとともに「より良い世界へ」と書かれた丸形のバッジを披露。「いかなる国でも人権を尊重するために」フランスの五輪選手が同日からバッジを着用し、北京五輪開催中も着用を続行することを決めたと述べた。ロゲ国際オリンピック委員会(IOC)会長に着用許可を要請するという。
■パリ市は7日に聖火を迎え、エッフェル塔からスタートして市内28キロをスポーツ選手や知名人ら80人が聖火を掲げて走るが、全員がこのバッジを着ける予定だ。また聖火が立ち寄るパリ市庁舎には「パリは世界中の人権を守る」の横断幕が掲げられる。
(4月5日、産経新聞)

仏大統領、NATO軍事機構へ完全復帰の意向表明
■サルコジ仏大統領は3日、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で、フランスのNATO統合軍事機構への完全復帰を目指す意向を表明した。米主導のNATOから一定の距離を置く伝統的なフランスの外交・軍事政策を転換するものとして、注目される。サルコジ大統領は同日の会議で、フランスが今年後半、欧州連合(EU)の議長国を務める間に、EUの安全保障面の統合を進めると説明。その後にNATO軍事機構復帰を決定する方針を示唆した。
■フランスは、ドゴール政権下の1966年、NATO統合軍事機構から脱退し、政治機構のみにとどまった。軍事的に米国の指導下に入らず独自に国益を追求するのが狙いだった。冷戦終結後は、NATOとの協力関係を深めてきたが、完全復帰は果たしていない。サルコジ大統領は昨年5月の就任以降、イラク戦争で冷却化した米仏関係の改善に積極的に取り組み、今回のNATO首脳会議では、米国の要望に応える形で、アフガニスタンへの仏軍増派を発表していた。
(4月4日、読売新聞)

『裁かるゝジャンヌ』の最後の特集上映
■デンマーク出身の巨匠として知られるカール・ドライヤー監督の代表作5本が、4月19日から26日まで、東京・神田駿河台のアテネ・フランセ文化センターで上映される。この5作品の日本での上映権利が4月末で切れることから、今回が日本での最終上映となる。
上映作品は、フランスで製作した『裁かるゝジャンヌ』(1927)をはじめ、『吸血鬼』(30〜31)、『怒りの日』(43)、『奇跡』(54)、『ゲアトルーズ』(64)。連日、3作品ずつ上映される(20日は休み、21日のみ2作品)。
■『裁かるゝジャンヌ』は、ジャンヌ・ダルクの物語を古文書から紡ぎだし、本物の裁判記録をあたって演出。世界映画史の金字塔とされる無声映画の傑作だ。19日午後2時からの上映は、無声映画伴奏者・柳下美恵のピアノ伴奏付き上映となる。ジャン=リュック・ゴダール監督が『女と男のいる舗道』のなかで、同作のシーンを流したのは、あまりに有名。
(3月31日、VARIETY)

裁かるゝジャンヌ クリティカル・エディション 女と男のいる舗道

ベルギーのフランドル地方、携帯電話でのフランス語使用不可に?
■ベルギー北部オランダ語圏のフランドル(Flanders)地方では、携帯電話でフランス語を話すことが法律で禁止されると、RTLテレビが1日に報じた。RTLテレビによると、ブリュッセル郊外のメイズ(Meise)ではすでにそうした禁止令が試験的に導入されており、フランス語を使用した場合は通訳が会話に割り込み、オランダ語に翻訳されるという。
■もちろんこれらはすべて、エイプリルフールの冗談報道だ。
(4月2日、AFP)
★エイプリル・フール(フランス語では4月の魚 poisson d’avril )の冗談報道は他にもある。イギリスのタブロイド紙「ザ・サン」も悪乗りして、スイスのラボでサルコジ大統領が身長を高くする処置を受け、1年で12センチ大きくなったと書いている。サルコジ大統領はカルシウムを注射されながら、数時間、身長を伸ばすためのベッドに縛り付けられていた(笑)。先の公式訪問の際に、カーラ夫人との身長差が変わっていたことを強調している。ガーディアン紙も、フランス人の洗練されたファションにこじつけて、ブラウン首相がカーラ夫人にイギリス人にファションの講義をしてほしいと頼んだと報じている。

パティ・スミスの個展、パリ・カルティエ財団現代美術館で開催
Horses■パリのカルティエ財団現代美術館(Fondation Cartier)で3月28日から6月22日まで、ミュージシャン/詩人パティ・スミス(Patti Smith)の個展「Patti Smith, Land 250」が開かれている。
■写真やドローイング、フィルムなどのアート作品は、“パンク界のゴッドマザー”と称されるスミスの新たな一面を見せてくれる。「1967年からドローイングやペインティング、写真、詩の執筆をはじめた」とスミス。「私はロックという表現を通じて、人権や反戦についての意見を述べています。しかし、アートの分野では、政治的なものでなく、より自分の心の世界を表現しているのです」「自分の世界が持つ多様性をお見せすることは、私と人々の対話の始まりだといえます」。
■タイトルの「Land 250」は、スミスが夫と兄弟を亡くした1995年から使用しているビンテージのポラロイドカメラの名前に由来している。「その時私は疲れ切っていて、とても自分を表現できるような状態ではなかった。そこで、シンプルで手っ取り早いポラロイドを手にしたのです。(ポラロイドは)困難な時期に、自信を取り戻す助けとなってくれました」小さなポラロイドには、墓石や彫刻、曇り空、風の強い日の通りが写し出されている。他にも、ヴァージニア・ウルフ(Virginia Woolf)のベッドや、ヘルマン・ヘッセ(Herman Hesse)のタイプライター、アルチュール・ランボオ(Arthur Rimbaud)のカトラリー、スミスの友人であり写真家の故ロバート・メイプルソープ(Robert Mapplethorpe)のスリッパなどがある。
■作品に登場する墓地について「とても美しい場所。悲しいなんて思わない。(墓地は)休憩場所であり、生について思いを巡らすための合流点と言える」とスミス。しかし、他のミュージシャンや芸術家のように死に魅了されることはなかった。「若いときに、生きると決めた。(若くして亡くなった)ジム・モリソンたちには生き方でなく作品に惹かれている。仕事をするには、健康でなくてはいけない」
(4月1日、AFP)
★パティ・スミスはニューヨーク・パンクの代表的なアーティスト。1曲挙げるとすれば、「ビコーズ・ザ・ナイト」かな。
Patti Smith / Because the Night
パリ・カルティエ財団現代美術館

ピエール・ポーランの「権力のデザイン」展
■パリのギャルリー・デ・ゴブランでピエール・ポーランの「権力のデザイン Design au pouvoir 」展が行われている。ピエール・ポーランは70年代にポンピドゥー大統領夫妻のエリゼ宮のアパルトマンの、80年代にはミッテラン大統領の執務室の家具のデザインを依頼された。(画像はタイトルをクリック)
Galerie des gobelins

今週の1冊
憧れのボルドーへ もっと知ると、ワインはもっと美味しい! (AERA Mook AERA TRAVELLER)

朝日新聞社
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4 ボルドーへ行ってみたくなります
5 ワインを知らない人でも楽しめる!!


今週のiPod
"Everything is everything"
Phoenix
in Alphabetica (1991)
Alphabetical■バンド名、アルバムタイトル、そして歌詞もみんな英語ですが、フランスはヴェルサイユ出身のバンドです。そうなると Tahiti 80 (関係ないけど、本国では「タヒチ・エイティー」というより「タイチ・カトルヴァン」と呼ばれているそうな)が連想されてきますが、音も Tahiti 80 をさらにほんわかとポップにした感じで、とても聴きやすいです。このアルバムはとりわけエレクトロ・ポップ寄りの音で、ちょっと懐かしい感じのメロディーやぽわんとした電子音が春らしく思えます。(exquise)
Phoenix / Everything is everything



★commented by cyberbloom

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posted by cyberbloom at 00:08 | パリ ☁ | Comment(0) | TrackBack(1) | 週刊フランス情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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本の明晰 04042008
Excerpt:  国連という国際政治最大の機構に対する、信頼というか、信仰にも近い絶対視がいつの間にか、日本の空気になっている。敗戦前の国際連盟からの脱退、ポツダム宣言の条件付き受諾、敗戦、そして米軍の日本本土占領、..
Weblog: つき指の読書日記
Tracked: 2008-04-06 11:22