2008年03月21日

『なしくずしの死』 ルイ・フェルディナン・セリーヌ

なしくずしの死〈上〉 (河出文庫)生き続けるのは残酷なことだ、他人とともにいるのは不幸の源だ、というのは文学の大きなテーマの一つ。「不思議なのは、どうして誰も自殺しないでいられるのかということです」と、トマス・ベルンハルトの芝居の登場人物は呟きました。セリーヌの『なしくずしの死』は、まさに自殺を回避するための戦いの記録です。人生がくだらないと思っているなら、どうして死んでしまわないんだ、という問いに、神だとか愛だとか家族だとかを持ち出さずに答えようとすると、なかなか大変です。原題は『クレジット払いの死』ですが、本当は「抵当に入った生」というべきです。主人公は子供の頃から失敗ばかりします。それでも、寝転がって星を眺める心はもっています。しかし、不器用な大人の悲惨な死に直面したとき、都会の空は濁って、もう星は見えなくなります。星を見ることに関して、これほど美しく悲しい小説を僕は他に知りません。暗い、とはいえ、笑える場面もたくさんあります。カフカやベケットで笑えるという人に限りますが。


なしくずしの死〈上〉 (河出文庫)
ルイ‐フェルディナン セリーヌ
河出書房新社
売り上げランキング: 83940
おすすめ度の平均: 4.5
5 怒りをこめて生き延びる
4 なしくずし




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posted by cyberbloom at 07:52 | パリ ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 書評−フランス小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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