2008年03月11日

豊田市美術館

surrealismto.jpg私の名付け親は絵の先生で、幼い頃、アトリエに遊びに行っては山積みにしてある色々な画集をひっぱりだして眺めているのが好きでした。子供心に惹かれたのは、印象派のような色彩の美しい絵よりも、ミロやダリやエルンストといった「何だかわけのわからない」絵でした。落書きのような奔放なミロの作品を見ていると愉快になってくるし、写真のようにリアルで、しかも人の手足が伸びたり縮んだり、トラだの蟻だの溶けたような時計だの出てくるダリの絵は、怖くて仕方がないけれど、しばらくするとまた見たくなってそーっと本を開いてしまうのでした。


今でもシュルレアリスムの絵画を見ると、その頃に覚えたのと同じ気持ちになります。何を言いたいのか意味が探し出せない不安と、同時に心の奥底を覗かれたかのような当惑、そしてあまりにもの突拍子の無さに逆にこみ上げてくるおかしさ・・ この芸術運動が芽生えてから80年以上が経過しているのに、その作品は今なお新鮮です。


普段見慣れたものも、思いも寄らぬ状況下に集められると、我々はとまどってそれらの関係を理解しようとします。そのように何でも合理的に解釈しようとする我々を笑い飛ばすかのように、シュルレアリスムは次から次へと不思議な作品を提供してきました。そして合理性や「こうでなければならぬ」といった偏見から解き放たれた自由な想像力が存在することを、教えてくれたのです。


今年はシュルレアリスムに関する展覧会が日本各地の美術館で多く開催されています。現在は愛知県の豊田市美術館「シュルレアリスムと美術ーイメージとリアリティーをめぐって」と題された企画展が催されていて、先日見学してきました。


決して大規模ではありませんが、シュルレアリスム、およびその周辺の芸術家たちの作品がまんべんなく集められ、この芸術運動の流れがコンパクトにまとめられています。なかでもルネ・マグリットの作品は、有名な「大家族」をはじめ、注目すべき絵画が多く見られました。ダリの3点からなる大きな連作には圧倒されましたし、メレット・オッペンハイム(写真中)やジョゼフ・コーネルのオブジェは小さいながらも印象的でした。


toyotam.jpg豊田市美術館は、ニューヨーク近代美術館の新館を設計した谷口吉生による建築自体をも楽しめる美術館です。緑と水に囲まれて静かにそびえている建物の外観、そして開放的で繊細な内部空間の設計を、展示作品とともにぜひ味わっていただきたいです。現代美術を中心とした常設展示もなかなか面白いので、この夏休みにちょっと遠くまで足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。


「シュルレアリスムと美術」展は9月17日までの開催です。9月15日からは、姫路市立美術館「シュルレアリスム展 謎をめぐる不思議な旅」展が始まります。こちらはまた別の企画展で、違った観点でまた他の作品が集められています。この美術館も、れんが造りの素敵な建物なので、建築ともども展示作品を楽しんできたいと思っています。




exquise(2007年8月24日)

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posted by cyberbloom at 07:37 | パリ ☔ | Comment(0) | TrackBack(0) | 美術館&美術展 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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