2008年02月27日

『人間失格』 太宰治

人間失格 (集英社文庫)冒頭付近の「恥の多い生涯を送って来ました」は落語の出だしにつかえるんじゃないでしょうか。この一文は取り扱い次第ではかなりユーモラスです。おそらくは自身の人間的な深層部分をもちあぐね、死にまで至った作者には申し訳ないのですが、この一文のあと、周囲の人々を笑わそう=楽しませようとした自身の失敗談&醜態の開陳が続くわけで、つまり周囲に気を配りまくって笑いをとろうとする自意識過剰なあほさ加減をさらに自嘲的に書き連ねていくわけですから、「笑い」の分野ではかなり高級なジャンルに相当するんじゃないでしょうか。この作品を通じてぼくも健康的に自己批判できました。「笑う」ってのは申し訳ないような気がしますが、笑ってしまうほうが太宰治の心にも近づけるんじゃないかとぼくは思っています。暗い深刻さとはべつの次元で読むほうが、故人も喜んでくれるんじゃないかな。津軽の新興資産家でなく大阪下町の商人の家で生まれていれば、太宰治は、ユーモアたっぷりの事業家にもなれたし、生粋のストーリーテラーとして上方落語の名人にもなれたんじゃないだろうか…。


人間失格 (集英社文庫)
太宰 治
集英社 (1990/11)
売り上げランキング: 252
おすすめ度の平均: 4.0
5 名作は色褪せない
4 集英社で買った理由。
5 重い・深い・・・


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posted by cyberbloom at 19:02 | パリ | Comment(0) | TrackBack(0) | 書評−その他の小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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