2008年01月17日

ゾディアック

zodiac_ver2.jpg1969年、ドライブ中のカップルが銃撃され、女性が死亡する事件が起き、警察に「自分がやった」と電話がかかってくる。その後、新聞社に「ゾディアック」と名乗る人物から、犯行の内容を語る手紙と暗号文が次々に届き、同時に新たな殺人事件も発生する。担当の刑事(マーク・ラファロ)、新聞記者(ロバート・ダウニー・Jr.)、そしてその新聞の風刺漫画家(ジェイク・ギレンホール)は、それぞれ事件を追っていく・・この映画は実際にアメリカで起きた未解決の連続殺人事件を扱ったものです。「ブロークバック・マウンテン」の色っぽいジャック役だったジェイク・ギレンホールが、一転して地味で真面目な青年を演じています。


手書きの手紙を多数新聞社に送りつけ、警察や関係者の自宅に電話をかけたり、果てはテレビの身の上相談にまで出演しようとするなど、メディアを大胆に利用した犯行で、目撃者もいれば遺留品も多く残しているのに、犯人への手がかりはなかなかつかめません。それはゾディアックが用意周到で、巧みに人々を翻弄したこともありますが、別の要因として警察の中での連携の悪さ、メディアの報道による混乱も描かれています。


zodiac4.jpgそれぞれの地域の警察が情報をうまくやり取りしなかったことで、犯人に接触する機会を逃してしまったり、ゾディアックからの手紙の内容をテレビで流したために世間がパニックに陥ったり、警察から情報を得られないまま自己判断で犯人像を仕立て上げた新聞記者が今度はゾディアックの標的となってしまったりする状況は現在起こったとしても全くおかしくないわけで、とても40年近く前の事件だとは思えない生々しさが伝わってきました。そして皮肉なことに、解決に一途の光が見えてくるのは、世間が事件を忘れ去ろうとしたころ、依然として関心を持ち続けていた風刺漫画家が、警察と「陰で」連携して独自に調査を進めたときからなのです。


心身ともに疲れ果てて異動を願い出る刑事、ドラッグやアルコールに溺れる新聞記者など、この事件の捜査から脱落していく者たちが出てくるなか、利害関係にとらわれず単なる好奇心からアプローチした風刺漫画家だけが、「生き残り」ます。取り憑かれたように事件のことばかり考えている夫に不安を感じる妻から問いただされて、彼がゾディアックを追う目的を語る場面、そしてついに彼がその目的を果たす場面は、静かながらも高揚感を覚えます。


zodiac3.jpgこの作品を観た人たちの感想をネットで見たところ、「退屈だった」という意見が多くて驚きました。たしかに監督がこれまで撮ってきた「セブン」「ゲーム」「ファイト・クラブ」などと比べれば、派手な展開もなければ、大どんでん返しといったサプライズも見当たらず、そういった内容を求めた人には期待はずれの映画でしょう。しかしながら、余計な小細工や無駄に感情的な部分を省いた正攻法で真摯な撮り方、タイトな物語構成、丁寧に再現された70年代の空気がすばらしく、私には2時間37分の上映時間があっという間に思えました。


ゾディアックが送った手紙には、「自分の映画を作れ」という要求も書かれていました。実際この事件を扱った映画は過去に作られ、またこの事件を題材にしてクリント・イーストウッド主演の「ダーティー・ハリー」も制作されました(この映画の中でも一部が流れます)。今回また映画が制作されてその要求に応える形になったわけですが、ゾディアックそのものよりも、彼を追う人々に焦点を置くことで、犯人の思惑から外れた作りにしてある点に、フィンチャーらしいヒネリが感じられます。


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posted by cyberbloom at 23:18 | パリ ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 日本と世界の映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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