2007年10月16日

サントリーローヤルCM ランボー編

サントリーローヤルのCM「ランボー編」は、使われていた音楽とともに、当時の視聴者に強いインパクトを与えたようで、記憶に残るアーティスティックなCMとして挙げられることが多い。時代を象徴するようなCMだったのだ。このCMと一緒に思い出す、様々な事柄…。

サントリーと言えば、サントリーホールやサントリーミュージアムに象徴されるように、元社長の佐治敬三が文化活動に積極的に関わり、また創業者の鳥井信治郎は広告が好きだったせいもあり、クオリティーの高い広告戦略を展開してきた。カンヌ国際広告祭でグランプリを受賞したサントリーホワイトのCM(ちょっと記憶にない)。そしてサントリーローヤルのCMには「ランボー編」の他に、「ガウディ編」や「マーラー編」があった。個人的には「ガウディ編」の踊っている顔の大きな女が強く印象に残っている。「ランボー編」がテレビで流れていたのは1983年のことだ。



80年代の文化を語る上で忘れてならない企業がある。セゾングループである。セゾングループが展開した東京発の文化は当時の若者の憧れだった。個人的にもパルコはよく通ったし、CD の調達先はいつも WAVE だったし、80年代後半にできたクアトロにライブをよく見に行った。80年代世代は、セゾングループによって文化的な欲望を誘導されたと言っても過言ではない。考えてみれば、服を買ったり、映画を見たり、音楽を聴いたりして、時代の先端を走っている気になっていたのも、実は企業家であり詩人であった堤清二というお釈迦様の手の中だったのだ。「大衆消費社会を批判する前衛文化を、大衆消費社会の担い手である流通産業が積極的にフィーチャーしてみせる」という「矛盾を孕んだ文化戦略」と浅田彰がセゾングループの功罪を評している。

私が文学に興味を持ったのも、この矛盾をそのまま抱え込んでのことだった。それ以前の世代との決定的な違いはここにあるだろう。今となっては「まんまと騙された田舎者」という自覚すらあるが、文学や芸術と消費社会の折り合いの付け方を体験的に学んだおかげでブログをやれているのかもしれない。

岡崎京子(お元気なんでしょうか?)の「東京ガールズブラボー」(岡京と浅田彰の対談付)なんかを読むと時代の空気がわかる。テレビでは「カノッサの屈辱」をやっていたフジテレビが、他にもとんがった深夜番組をやっていて、宮台真司が対談で言ってたが、浅田彰がポール・ヴィリリオを紹介するような深夜番組もあったらしい。

セゾンやフジテレビではない、ランボーのCMの話だった。だいぶ脱線したが、このCMもそういうとんがった時代の空気の中にあり、それらと共振していたように思う。

ランボー全詩集 (ちくま文庫)とはいえ、ランボーほどその生涯が神話化されている詩人はいない。10代で家出を繰り返し、パリ・コミューンで盛り上がるパリをうろついたり、ヴェルレーヌに誘われてベルギーを旅しながら、同性愛に耽ったり。しかもランボーはヴェルレーヌを嫉妬で狂わせ、拳銃を発射させるほどの絶望に陥れた。ヴェルレーヌの放った2発のうち1発がランボーの左手首に当たり、ランボーは入院、ヴェルレーヌは逮捕。しかし、ランボーは早々に詩を捨てて、その後、兵士、翻訳家、商人など様々な職業を転々とする。そして37歳で病死する。

ランボーの名前と、そのスキャンダラスな人生の断片について知っていても、実際の作品の方は難解そうで、読んだことがないというのが一般的な態度だったのでは。私自身もそれなりに憧れはあったが、実際に読んでみると(とりあえずほとんどの作品に目を通したが)あまりピンと来なかった。「Aは黒、Eは白、Iが赤で、Uが緑の、Oは青」なんて、それがどうしたって感じだったし、いきなり詩の中にイボ痔が出てくるし(笑)。

イメージのインフレを起こしていたランボーを、一種のわかりやすさでもって一挙に消費しまったのがこのCMだったのだろう。「あんな男、ちょっといない」というコピーと、本人らしきものがそれらしく現れたものだから、ランボーがわかった気になったのだ。

ほぼ同時期、82年に公開されたシルベスター・スタローンの主演映画が大ヒットしてからは、「ランボー」といえば、そちらの方に連想が働くようになったこともあり、それ以来、アルチュール・ランボーのデフレ時代が始まる。

改めてCMを見てみると、あのフリーキーなキャラたちは、あまりランボーっぽいイメージがしない。「ガウディ編」もそうだが、むしろ南米のカルト系映画監督、ホドロフスキー(これも当時もてやはされていた)のテイストを感じる。「ガウディー編」の音楽はとりわけホドロフスキーの「サンタ・サングレ」(1989年)を想起させる。手回しオルガンの感じとか、そっくり。もちろんこのCMの方が5年以上早いのだが。

鞄を持った男ちなみに「ランボー編」のBGMはMARK GOLDENBERGの「Queen of swords(剣と女王)」って曲。彼のベストアルバム「鞄を持った男」(1985年)に収録されている。


サントリーローヤルCM(ガウディー編)
サントリーローヤルCM(マーラー編)



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posted by cyberbloom at 22:10 | パリ ☀ | Comment(0) | TrackBack(1) | おフランス商品学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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