2007年10月12日

絵画をめぐる犯罪

モネの名画、若者が破損・仏オルセー美術館に侵入
pontargent01.jpgフランスのアルバネル文化・通信相は7日、パリのオルセー美術館に同日未明、若者のグループが侵入し、フランス印象派の代表的画家、クロード・モネ(1840-1926年)の絵画「アルジャントゥイユの橋」に傷を付けた後、逃走したことを明らかにした。地元メディアが伝えた。 アルバネル氏によると、傷付けられた絵は評価額の算定が「困難」とされる名画。絵画に描かれた橋脚部分の下が約10センチにわたって裂けており、こぶしで殴りつけた跡とみられるという。 監視カメラの映像から犯行グループは少年4人と少女1人の計5人組とみられ、酒に酔っていたもよう。美術館の扉の一つから侵入、警報が作動して警備員が駆け付けたが、グループは逃走した。 絵画は縦60.5センチ、横80センチの油絵。モネが1870年代に居を構えたパリ郊外アルジャントゥイユで、セーヌ川に浮かぶヨットと橋を描いた1874年の作品。同じ年に第1回印象派展が開かれたこともあり、美術史の上でも重要な作品とされる。
(10月8日、共同通信)
モネ作品損傷の若者5人逮捕、「閉館後の侵入方法知っていた」
印象派の代表的画家、クロード・モネ(1840~1926年)の傑作「アルジャントゥイユの橋」(1874年)が、パリのオルセー美術館で傷つけられた事件で、女性1人を含む若者5人が仏警察に逮捕された。当局筋が9日夕(日本時間10日未明)、明らかにした。詳しい人定は不明だが、5人のうち女性は同夜、犯行にかかわっていないことが分かり、釈放された。残る4人は犯行の事実関係を認めており、起訴される見通し。グループの1人と称する空調会社勤務の少年(19)が8日、警察に出頭。警察は9日朝、パリ近郊のイブリーヌ県で5人を逮捕したという。アルバネル文化・通信相は、グループの1人が「職業上の理由」で閉館後の美術館に入る方法を知っていた、と述べた。
(10月11日、産経新聞)
破損したモネの「アルジャントゥイユの橋」(画像)

3億円の芸術作品にキス、罰金と公民課程の履修を求刑
仏検察当局は9日、アビニョンで開催されていた米国画家サイ・トンブリの作品展で3億円超の真っ白な作品にキスをし、器物損壊の罪に問われていた女性に対し罰金と公民課程の履修を求刑した。自身も芸術家だというカンボジア生まれのフランス人、サム・リンディ被告(30)は、今年7月に同作品展を訪れた際、作品にキスをし真っ赤な口紅の跡をつけてしまった。リンディ被告は問題の行為について「わたしはただそれにキスしただけだった。これは愛から出たもので、キスをしたとき何も考えていなかった。芸術家ならこれを理解してくれると思う」と法廷で訴えた。今月6日深夜には、酔っぱらった男らがパリのオルセー美術館に侵入し、印象派画家クロード・モネの作品を殴打して傷つける事件が起きており、リンディ被告はこの事件と自身のケースとの違いを主張する声明を出した。 声明には、「一方には極めて不快で野蛮な行為があるが、もう一方には純粋な強い愛の行為がある。わたしの行為は、芸術の力に触発された芸術的行為だった」と書かれている。一方の検察側は、リンディ被告は「自身の犯した罪の重大性に気づいていない」とし、その行為を「野蛮」なものとして罰金4500ユーロ(約74万円)と公民課程の履修を求めた。 原告側の弁護士は、リンディさんがキスしたことは「殴打と同様に攻撃的」とし、修復困難な損害を与えたと非難。また「わたしは愛について別の見解を持っている。わたしにとって愛とは両者の同意を必要とするものだ」と述べ、リンディさんの訴えを一蹴した。
(10月10日、AFP)


これがもし日本で起こったら、絵画を破損したふとどき者たちは名前と顔写真をさらされ、ワイドショーのレポーターに家まで押しかけられ、マスコミが煽りに煽ってバッシングの嵐が吹き荒れることだろうが、フランスでは彼らの名前もあかされていない。確かにあきれ果てた事件ではあるが、当然のことながら、彼らの罪はもうひとつの女性の事件と同様に法律によって裁判で裁かれる。裁判とは別に、マスコミが「正義」の鉄拳をかざして、大衆の感情を煽るようなことはしない。それにしても「公民過程の履修」というのが面白い。

「美術館で名画を盗むより、ヴァージンメガストアでDVDを盗む方が難しい」と「美術館のアルセーヌ・ルパン」はそう言った。90年代の後半にヨーロッパ各地で200点を越す美術館を盗んだステファーヌというフランスの男だ。彼は転売目的で絵画を盗んだのではない。純粋に自分の部屋で鑑賞するために盗んだのだった。彼は絵画コレクターの金持ちの家に強盗に入ったのではない。もっぱら美術館で盗みを働いた。誰にも気づかれずに、全く絵画を傷めることなく。彼はレストランのウエイターだったが、父親が美術商で、小さい頃から絵画や骨董に親しんでいた。彼は結局スイスで逮捕されたが、逮捕されるまでの7年間で230の絵画や美術品を盗んだのだった。

ステファーヌはこうも言っている。自分は絵が好きなのだが、高くて買えないから盗んだ。むしろ美術商こそが泥棒だ。買い取った絵画を10倍で転売するのだから。それは父親へのアンビバレントな感情だったのかもしれないが、そもそも、絵画になぜそんなに法外な値段がつくのだろうか。

素晴らしい絵画は私たちに親密な感情を生じさせる。確かにそれは愛と言えるのかもしれない。しかし、いくら愛しても、それは絶対に触れてはいけないものなのだ。名画の法外な値段はその絶対性を担保している(破損させようものなら莫大な損害賠償を請求される)。こういう事件は私たちと芸術作品との関係についても改めて考えさせてくれる。

ステファーヌは美術館で盗むのは簡単だったと言っている。警備がスキだらけで、数日経っても盗まれたことに気がつかない警備員もいたようだ。オルセーに進入したメンバーの中に出入りの業者がいたようだが、それにしてもオルセーのような大美術館に酔っ払いが簡単に侵入できてしまうのも驚きだ。


cyberbloom

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posted by cyberbloom at 22:59| パリ 曇り| Comment(0) | TrackBack(0) | 時事+トレンド特集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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