2007年09月05日

新しいゴシック(2) マリリン・マンソンとバウハウス

アンチクライスト・スーパースター「もともと70年代のパンクロックから派生したゴシックは80年代後半のヨーロッパやアメリカで一種のサブカルチャーに発展」と Wikipedia にあったが、「死体や吸血鬼を思わせる白塗りの化粧を施した欧米人風の彫りの深い顔立ちに、目の周囲に黒く濃いアイシャドーを塗」ったマリリン・マンソン Marilyn Manson が、アメリカのゴシック文化の代表のようだ。

マリリン・マンソンと言えば、1999年に起こったコロンバイン高校銃乱射事件の際、犯人が愛聴していた悪しき音楽として槍玉にあがり、「おまえが事件の根本原因だ」と言わんばかりの激しいバッシングを受けた。次々と異形のイメージを繰り出すヴィジュアルは決して一般受けしないだろうし、格好のスケープゴートになるのもよくわかる。しかし、ヴィジュアル自体を評価すれば、良く作りこまれていて、洗練度も高い。同じくらい面白かったのが、「ボーリング・フォー・コロンバイン」(事件を題材にしたドキュメンタリー映画)でマイケル・ムーアのインタビューに答えるマリリン・マンソンの発言だった。

「なぜオレが攻撃されるのかわかるよ。オレを犯人すれば簡単だからだ。つまりオレは恐怖のシンボルってことさ。皆が恐れるものの象徴なんだ」

そして、コロンバイン高校の事件が起こった同じ日に、米軍がコソボで最大の爆撃を行ったことを「全くの皮肉だ」と指摘し、それなのに「大統領のせいで事件が起きたとは誰も言わない。メディアの望む恐怖の生産法と違うからだ」と言う。つまり、アメリカ人は恐怖を向ける方向をメディアによって誘導され(それは銃を向けるべき日常的な敵である)、アメリカ政府が対外的にやっている恐ろしい行為に全く関心が向かないのである。

マリリン・マンソンのような非合理なイメージを徹底的に引き受ける人間には、一見合理的に動いているように見える社会の虚偽や欺瞞が透けて見えるのだろう。非合理なものを突き詰め、突き抜けていく先にしか、みんなが疑念も抱かずにドップリと浸かっている見せかけの合理性を批判できる場所はない。これが現代のゴシックの構えのひとつなのだろう。

マリリン・マンソンのゴシックなクリップを選んでみた。ハロウィンなんてそのままだ。ユーリズミックスのカバーもしているが、こういう解釈を通してみると、元の歌詞も別の味わいを帯びて聞える。

Marilyn Manson - Sweet Dream

クラックル:ベスト・オブ・バウハウスそして、ゴシックを語る際に避けて通れないのが、80年代前半の英国。そしてバウハウスBAUHAUSだ。バウハウスといっても、ドイツの建築&美術学校ではなく、イギリスのゴシック・バンドのことだ。本当にかっこよかった。サウンド的にも、ヴィジュアル的にも80年代のベストバンドのひとつだ。70年代のグラム・ロックの流れを汲み(Ziggy Stardust とTelegram Sam のカバーあり)、Luna Sea や Back-Tick など、日本のビジュアル系の代表的なバンドにも多大な影響を与えたバンドだ。

バウハウスのクリップ集、「シャドウ・オブ・ライト Shadow Of Light 」(ArchiveとカップリングでDVDが出ている)は必見だ。タイトルが示すように陰影の美学に基づいたシアトリカルなライブ・パフォーマンスが堪能できる。曲のタイトルにもゴシックな香りが匂い立つ。Rosegarden Funeral Of Sores とか、St Vitus Dance とか、Spirits とか(そういえば、Antonin Artaud って曲もある)。極めつけは、Bela Lugosi's Dead。ライブシーンではドラキュラのような風貌のピーター・マーフィー(Vocal)が、棺を覗き込んでいるようなナルシスティックな立ち振る舞いを見せる。

ベラ・ルゴシ(Bela Lugosi, 1882-1956)とは、ハンガリー出身の俳優で、ドラキュラ役で名高い怪奇映画の大スターだ。ニューヨークで人気を博した舞台をトッド・ブラウニング監督が映画化した『魔人ドラキュラ』(1931年)に主演した。この映画で彼は「黒いスーツに黒マント」という典型的ドラキュラ像と、トランシルヴァニア出身のドラキュラ俳優という強烈なイメージを人々に強烈に植え付け、伝説的なゴシック・アイドルとなった。

Bauhaus - Bela Lugosi's Dead
Bauhaus - In The Flat Field
Bauhaus - Spirits


cyberbloom

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posted by cyberbloom at 23:51 | パリ ☀ | Comment(2) | TrackBack(0) | ART+DESIGN | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
マンソンはゴシックではないよ
Posted by あさ at 2008年11月03日 15:17
あささん、コメントありがとうございます。確かに一語でいうならゴシックバンドとは言えないですね。ゴシック的な要素を含んだオルタナ・メタルと言えばいいのでしょうか。グラムとかインダストリアルな要素も感じられます。あるサイトでアメリカのゴシック文化の代表みたいに論じている人がいたのでそれに引っ張られたのかもしれません。マリリン・マンソンはあまり熱心には聴いてないのですが、VCなんかを見ても「異形」度に関してはかつてのヴァージン・プルーンズとかに匹敵するものがあります。あささんの見解をお聞かせください。音楽ネタのつっこみは大歓迎です。
Posted by cyberbloom at 2008年11月03日 19:14
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