2007年06月23日

蝶の国勢調査

papillon01.jp すでに記憶の中にしかいない動物や昆虫が多々存在する。「月に雁」よりは格が落ちるが、かつてアジサイにはカタツムリがいた。今はアジサイは咲いていても、カタツムリはいない。私は比較的自然の多い場所に住んでいる。近くにはホタルの幼虫を放流して、ホタルを観賞できる川が流れている。それでもカタツムリは見かけない。

小さいころ、何を思ったか庭のカタツムリを全部つかまえて集めてみようと思い立った。カタツムリの人口調査だ。ちょうど今頃の梅雨の季節だった。アジサイの茂みの中に入っていくと、大きいのやら小さいのやら、無数のカタツムリが見つかった。このアジサイの茂みは深く、隣の家の庭にまで連なっていた。大きなタライの中に捕まえたカタツムリを次から次へと放り込んだ。全部数えると112匹いた。この数字だけはしっかりと覚えている。梅雨空に向かって伸びた456の目玉とヤリがゆらゆら揺れていた。記憶の中でカタツムリはわがもの顔に増殖していたが、今から思えば、環境に敏感な生物だったんだなあと思う。

カタツムリといえば、数年前、スペインのアンダルシアで出会った。それは煮込み料理として出来てきた。スペインのカタツムリは日本のものと全く同じ風貌で、殻がついたまま小鍋の中でひしめいていた。小麦粉を食べさせて胃腸をきれいしてから料理するのだというが、私は食べ物に関してはイメージ先行型で、とうとう手をつけれなかった。

カタツムリといえば、フランスではエスカルゴ。フランス料理を代表する食材のひとつだが、ブドウの葉につくブルゴーニュ産のエスカルゴは乱獲のために絶滅の危機に瀕していて、今はほとんどが輸入ものらしい。

本題はカタツムリの話ではない。蝶の話だ。ちょっと古い、去年の3月23日の「ル・モンド紙」に出ていた記事から。「1,2,3…庭に出て蝶の数を数えましょう!」。自然科学博物館の後援で、「ノエ・コンセルヴァシヨン」というエコロージー団体が蝶の数の調査を始めた。日本と同じようにフランスも環境破壊によって、野原に生息する蝶の数が激減し、絶滅の危機に瀕している種も多い。そこでまず蝶の国勢調査をしようというわけだ。フランスの全土に共通して生息する28種が選別され、「ノエ・コンセルヴァシヨン」のサイトに写真と特徴などが掲載されている。サイトに登録した調査者は、自分の庭にどの蝶が何匹いたかをオンラインのフォーマットに記入して、サイトに報告する。そうやって集められたデータを自然科学博物館の専門家が収集・分析する。そしてデータは調査者にフィードバックされるというシステムになっている。

注目すべき点は、ネットが「個々の庭」をつなぎ、フランスの自然という「ひとつの大きな庭」にまとめあげていることだ。「自分の家の庭」という身近なフィールドが「フランスの自然」全体と意識の中でつながる。エコロジーの意識が高まるのは、何よりも自分の日常と世界がつながっていると実感する瞬間なのだから。

ノエ・コンセルヴァシヨン


cyberbloom

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posted by cyberbloom at 11:00 | パリ ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | エコロジー+スローフード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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