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今回のカンヌのコンペティション部門は、社会的な問題を扱った作品が多かった前回とは違って、ヴァラエティに富んだ映画が集められ、「映画を観ること、映画を作ることの楽しさ」に立ち返っている印象を全体から受けました。 スカパーで毎日放映されていたハイライトや、カンヌ関係のウェブサイトを見ながら、各賞を勝手に予想するのもまた楽しいことです。観客やプレスの受けなどを検討すると、Le scaphandre et le papillon (ジュリアン・シュナーベル)、Persepolis (マルジャン・サトラピ/ヴァンサン・パロノー)、No country for old men(コーエン兄弟)、Paranoid Park(ガス・ヴァン・サント)などの評価が高かったようです。またフランスでも17日に一般公開されたばかりの Zodiac (デヴィッド・フィンチャー)、ルーマニアでの中絶問題を扱った 4 mois, 3 semaines, et 2 jours (クリスティアン・ムンギウ)も大きな関心を集めていました。 もっとも終わりの方に上映された作品などの批評はまだ公になっているものがそう多くないので、結果がどうなるかを予測するのはなかなか難しい(もちろん各作品を観ているわけでもないし・・)。
最優秀脚本賞:ファティ・アキン(作品:Auf der anderen seite (The Edge Of Heaven))
最優秀監督賞:ジュリアン・シュナーベル(作品:Le scaphandre et le papillon)
60回記念賞(特別賞):ガス・ヴァン・サント監督の今までの功績と今回の出品作 Paranoid Park に対して
グラン・プリ:『殯(もがり)の森』(河瀬直美)
パルム・ドール:4 Luni, 3 spatamini si 2 zile (4 mois, 3 semaines et 2 jours)(クリスティアン・ムンギウ)
「映画を作り続けてきてよかった」という河瀬監督の第一声が印象的でした。『殯(もがり)の森』は奈良を舞台に妻に先立たれた認知症の男性を扱った映画で、「作品に非常に自信を持っている」と監督自ら述べていた作品だけに、喜びはひとしおでしょう。 ガス・ヴァン・サント監督が60回を記念する特別賞に選ばれたのも嬉しいことです。作品を発表するたびに招かれる彼は、「カンヌに愛されている監督」なんだなあと実感しました。Paranoid Park において、彼は再び若者たちの心理を描く映画に取り組み、しかも撮影はウォン・カーウァイ作品でおなじみのクリストファー・ドイル、ということでこれまた公開が待ち遠しい。監督が起用する少年少女たちは雰囲気がある人が多いのですが、今回主演のゲイブ・ネヴィンス(映画初出演)も印象深いまなざしをたたえた若者でした。 最高賞パルム・ドールは、ルーマニアの監督クリスティアン・ムンギウ(写真上)が獲得しました。4 Luni, 3 spatamini si 2 zile は、並行して与えられる各賞をほかに2賞受賞しており、以前から注目を集めていたこの若い監督(68年生まれ)への評価の高さがうかがえます。
新人監督作品に贈られるカメラ・ドールの特別賞に輝いた Control もほかに複数の賞を獲得していた好作品のようです。監督のアントン・コービンは、UKロック好きには有名な写真家で、ミュージック・ヴィデオ制作も手がけており、ミュージシャンたちからの信頼も厚い人です。Info-base でも取り上げられていましたが、作品はイギリスのロックバンド、ジョイ・ディヴィジョンのヴォーカリストで若くして命を絶ったイアン・カーティスを描いたもので、個人的にも気になる映画です。
全体として、今回は重い内容の作品が賞に選ばれていたように思います。ここ数年は同じような傾向が続いていますが、そうなるとタランティーノの Death Proof みたいな「新しいスプラッター映画」(と監督がこの作品を説明していた)や、Les chansons d'amour や My blueberry nights のようなロマンティックな恋愛ものなどエンタテインメント性の強い作品は不利になってしまうのが残念。特にコーエン兄弟の作品は下馬評が相当高かったにもかかわらず、無冠に終わってしまいました。これは周囲も予期せぬことだったようで、カンヌ関係の掲示板では「なぜ?」という不満の声が多く聞かれました。
■定年退職前の厳しくも優しいロペス先生のもとで、勉強したり遊んだりする13人の子供たちの姿を追った、心温まるドキュメンタリー映画。Etre et Avoir―タイトルにもなっているこの二つの動詞から見ても、フランス人にとってのフランス語の始まりも、日本人がフランス語を始めるときと全く同じなんだな、と分かります。フランス語をやっている人なら、まるで自分も小学生になったような気分になり、子供たちと一緒に「うぃぃ〜!」「ぼんじゅ〜る、むっしゅ〜」と言ってしまいそう。