2007年05月29日

カンヌ映画祭(7) FESTIVAL DE CANNES 2007 受賞結果&河瀬監督のカンヌでの動画

cannes-mungiu.jpg今回のカンヌのコンペティション部門は、社会的な問題を扱った作品が多かった前回とは違って、ヴァラエティに富んだ映画が集められ、「映画を観ること、映画を作ることの楽しさ」に立ち返っている印象を全体から受けました。
スカパーで毎日放映されていたハイライトや、カンヌ関係のウェブサイトを見ながら、各賞を勝手に予想するのもまた楽しいことです。観客やプレスの受けなどを検討すると、Le scaphandre et le papillon (ジュリアン・シュナーベル)、Persepolis (マルジャン・サトラピ/ヴァンサン・パロノー)、No country for old men(コーエン兄弟)、Paranoid Park(ガス・ヴァン・サント)などの評価が高かったようです。またフランスでも17日に一般公開されたばかりの Zodiac (デヴィッド・フィンチャー)、ルーマニアでの中絶問題を扱った 4 mois, 3 semaines, et 2 jours (クリスティアン・ムンギウ)も大きな関心を集めていました。
もっとも終わりの方に上映された作品などの批評はまだ公になっているものがそう多くないので、結果がどうなるかを予測するのはなかなか難しい(もちろん各作品を観ているわけでもないし・・)。


と、ここまでは授賞式前に書いたもの。昨日コンペティション部門の授賞式が行われ、各賞が発表されました。スカパーで生中継を見ていたところ、レッドカーペットにガス・ヴァン・サントや河瀬直美監督(写真中)らの姿を発見し、一挙に興奮が高まりました。以下に結果をお伝えします。


cannes-kawase2.jpgカメラ・ドール:Meduzot(エトガール・クレット&シーラ・ゲフィン)
さらに特別賞として:Control(アントン・コービン)

審査員賞:Persepolis(マルジャン・サトラピ/ヴァンサン・パロノー)
     Stellet Licht (Lumière silencieuse)(カルロス・レイガダス)

最優秀男優賞:コンスタンチン・ラウロネンコ(作品:Izgnanie (The Banishment)(アンドレイ・ズビャギンツェフ監督)

最優秀女優賞:チョン・ドヨン(作品:Secret Sunshine(イ・チャンドン監督)

最優秀脚本賞:ファティ・アキン(作品:Auf der anderen seite (The Edge Of Heaven))

最優秀監督賞:ジュリアン・シュナーベル(作品:Le scaphandre et le papillon)

60回記念賞(特別賞):ガス・ヴァン・サント監督の今までの功績と今回の出品作 Paranoid Park に対して

グラン・プリ:『殯(もがり)の森』(河瀬直美)

パルム・ドール:4 Luni, 3 spatamini si 2 zile (4 mois, 3 semaines et 2 jours)(クリスティアン・ムンギウ)


「映画を作り続けてきてよかった」という河瀬監督の第一声が印象的でした。『殯(もがり)の森』は奈良を舞台に妻に先立たれた認知症の男性を扱った映画で、「作品に非常に自信を持っている」と監督自ら述べていた作品だけに、喜びはひとしおでしょう。
ガス・ヴァン・サント監督が60回を記念する特別賞に選ばれたのも嬉しいことです。作品を発表するたびに招かれる彼は、「カンヌに愛されている監督」なんだなあと実感しました。Paranoid Park において、彼は再び若者たちの心理を描く映画に取り組み、しかも撮影はウォン・カーウァイ作品でおなじみのクリストファー・ドイル、ということでこれまた公開が待ち遠しい。監督が起用する少年少女たちは雰囲気がある人が多いのですが、今回主演のゲイブ・ネヴィンス(映画初出演)も印象深いまなざしをたたえた若者でした。
最高賞パルム・ドールは、ルーマニアの監督クリスティアン・ムンギウ(写真上)が獲得しました。4 Luni, 3 spatamini si 2 zile は、並行して与えられる各賞をほかに2賞受賞しており、以前から注目を集めていたこの若い監督(68年生まれ)への評価の高さがうかがえます。


persepolis.jpgまた審査員賞に選ばれた Persepolis (写真下)も、プレスの評判が非常に高い作品でした。イラン出身でフランス在住のマルジャン・サトラピが、自らの体験をもとにして制作したアニメーション(!)で、カトリーヌ・ドヌーヴなど、豪華な声優陣も話題になりました。戦争の最中、イラクからフランスへ移住した女の子の冒険物語、ということで、内容のわりにとてもポップな感じがして、とても興味深かったです。


新人監督作品に贈られるカメラ・ドールの特別賞に輝いた Control もほかに複数の賞を獲得していた好作品のようです。監督のアントン・コービンは、UKロック好きには有名な写真家で、ミュージック・ヴィデオ制作も手がけており、ミュージシャンたちからの信頼も厚い人です。Info-base でも取り上げられていましたが、作品はイギリスのロックバンド、ジョイ・ディヴィジョンのヴォーカリストで若くして命を絶ったイアン・カーティスを描いたもので、個人的にも気になる映画です。


全体として、今回は重い内容の作品が賞に選ばれていたように思います。ここ数年は同じような傾向が続いていますが、そうなるとタランティーノの Death Proof みたいな「新しいスプラッター映画」(と監督がこの作品を説明していた)や、Les chansons d'amour や My blueberry nights のようなロマンティックな恋愛ものなどエンタテインメント性の強い作品は不利になってしまうのが残念。特にコーエン兄弟の作品は下馬評が相当高かったにもかかわらず、無冠に終わってしまいました。これは周囲も予期せぬことだったようで、カンヌ関係の掲示板では「なぜ?」という不満の声が多く聞かれました。


受賞作品以外にも、色々面白そうな映画がありました。長くなってきたので、続きは次回に・・


exquise


■カンヌ映画祭の動画集(from AFP)
【動画】<第60回カンヌ国際映画祭>河瀬直美監督、審査員特別グランプリ受賞作『殯の森』を語る
(5月28日、AFP)

【動画】<第60回カンヌ国際映画祭>河瀬直美監督作品『殯の森』予告編

【動画】<第60回カンヌ国際映画祭>受賞者&審査員が語る それぞれの想い
(5月28日、AFP)

【動画】<第60回カンヌ国際映画祭>授賞式&閉会式、レッドカーペットに河瀬直美監督らが登場
(05月28日、AFP)


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posted by cyberbloom at 19:49 | パリ ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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