2007年02月10日

ファッション業界御用達の謎のレストラン-Davé-

The New Yorker01.jpgパリ、コメディー・フランセ-ズのほど近くにその店はあります。赤い漆塗りのドアに常に“Complet”のサインが掲げられた中華レストランDavéは、ファッション業界人行き付けのお店として知られています。

食の都、中華レストランだけでも1500軒はくだらないと言われているパリで、Daveはどうやってその栄誉を勝ち得たのでしょうか?他店では味わえない究極の美味?スレた業界人を唸らせる粋なインテリア?王侯貴族の心地にさせてくれる完璧なサービス?答えはいずれもNo、です。

薄暗く、店の中央に鎮座する熱帯魚の水槽のライトが室内照明代わり、という高級レストランとは無縁の店内。お料理の味も値段もそこそこ(早朝の市場で選び抜かれた一流の食材、はここでは供されません)。では何が業界人を惹きつけるのでしょうか?
 
秘密は店主Davé Cheungのもてなしにあります。ファッション業界人は人並みはずれて高いプライドの持ち主ばかり。自分の「格」に相応しくない扱いをされることは何よりも避けたい侮辱です。また、いろんな意味で目立つのも仕事のうちという職業柄、四六時中好奇の視線に曝されるという不幸とも戦わなければなりません。そんなやっかいなお客様の気持ちに見事に答えたのがDavéさんでした。一見さんお断りの姿勢を徹底して貫き(例のドアのサインも一般人除けの方便)、押し寄せる業界人のお客様を見事にさばき、常に皆のプライドを満足させるテーブルを手配します。手強い難客(例えばサンローラン全盛期のミューズとして名高いルル・ド・ラ・ファレーズ)も機嫌を損ねずにもてなす客あしらいの手腕は、常連客にとってこの店ならではのスリリングな”趣向“にすらなっているほどです(店主はまた、長年の上得意ヘルムート・ラングのために、これまたお得意様であるディカプリオとジゼルのカップルに外でお待ち頂くようお願いできるほどの、“人徳”の持ち主でもあります)。

メニューはあってなきがごとし、というのもこの店の流儀です。常連達はオーダーに頭を悩ませることはありません。何も言わなくとも店で万事整えてくれます。また、口にするのは蒸し野菜に豆腐がせいぜい、まともな中華料理なぞトンでもないモデル達の食事もDaveさんは嫌な顔をせず引き受けます。

10代の頃両親と共に香港から移住して数十年。ショーが開催されるチュイルリー公園近くに店を開いたことからファッション業界と縁ができたDavéさんは、ファッション・ウィーク中こそコム・デ・ギャルソンなどに身を包んで接客するものの、普段はお洒落とは無縁の普通のオジサン。有名人との親交はあるものの、レストラン店主なら誰しも持つエゴや名声欲を手放し独自の道を歩んできました。「特別なお客様」達を敬愛し、彼らが気兼ねなく気持ち良く過ごせるようひたすら黒子に徹するその姿勢こそが、移転を経た後もずっと支持されてきた理由なのでしょう。彼の潔さに、客商売の原点を見るような気がします。

入店は業界人にコネでもない限り絶望的。何度電話してもDavéさんにきっぱりお断りされてしまうだけですが、運が良ければ店の外で席が用意されるのを待つ有名人を眺められるかもしれません。

★Dave, 12 Rue de Richelieu, Paris(1er)

The New Yorker(Sep. 27. 2004)”Fashion Cafeteria” 
By Michael Specter


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posted by cyberbloom at 01:47 | パリ ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事+トレンド特集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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