2006年12月02日

CAHIERS DU CINEMA 宮崎吾朗インタビュー(1)

ゲド戦記CAHIERS DU CINEMA の今月号(訳しているあいだに新しいのが出てしまった)に「日本アニメの復活」という特集記事があり、そこに「ゲド戦記」の宮崎吾朗のインタビューが掲載されている。

宮崎アニメ好きのフランス人は、2世のデビュー作「ゲド戦記」も心待ちにしていたはずだ。これについて少し調べてみようと思っていたが、ほったらかしになっていたところに、タイミングよくフランスの老舗映画雑誌が特集を組んでくれた。少し前なら、CAHIERS DU CINEMA が日本のアニメ映画の特集を組むなんてありえなかっただろう。これも時代の流れか。

実は以前、もうひとつの映画雑誌 POSITIF に掲載されたお父さんのインタビューを掲載すると予告したのだが(06年7月29日)、これもまたほったらかしになっていた。そのエントリーでは、フランス人が宮崎アニメをどうみているのか、どこに興味を持ち、共感を覚えているのか、「Miyazaki en(in) France」を検証しておく機会があってもいいだろう、と書いた。日本のアニメにやたら詳しいフランス人からの質問の視点も面白いし、日本のメディアに言えないことも洩らしてくれるかもしれない。特に最大の関心事である親子関係について。お父さんのインタビューもそのうち訳出することにして、先に宮崎吾朗氏のインタビューを紹介したい。

― 子供のとき、あなたのお父さんの宮崎駿の作品は別にして、どんなアニメを見ていましたか。他に参照するアニメはあったのですか。
宮崎吾朗:私が若いころ、日本ではいくつかのアニメ映画、アニメシリーズが作られていました。私と同世代のクリエーターたちの多くは、その時代の影響を受けています。つまりロボット・アニメの時代ですが、宮崎駿はそれらが嫌いでした。父は私にそんなものを見るなと言っていましたが、父は家にいたためしがないので、私はそれらを全部見ることができました。私が高校生のころ、押井守の「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」(1984)が出ました。私は大好きでした。「風の谷のナウシカ」の直前に出ましたが、同じ年に出ています。私は周囲の人間に「うる星やつら」の話をしましたが、父は困ったものだと、鈴木さんに洩らしていたようです。

― あなたのお父さんの作品は日本の古典的な映画の影響を受けていますが、ゲド戦記はむしろ「ロード・オブ・ザ・リング」のような同時代の国際的な作品を思わせます。
宮崎吾朗:私は「ロード・オブ・ザ・リング」を見ていません。私のチームの何人かは知っているでしょうが。私は映画好きではありません。今はほとんど見ません。テレビでときどき見るくらいです。私の作品は映画文化よりも、私の読書体験や旅行や人々との出会いが反映されています。

― 「ゲド戦記」は明らかに「ナウシカ」や「ラピュタ」などのジブリの初期作品を参照してますね。また「ナウシカ」から「千尋」に至る絵のスタイルの混合が見られます。それはあなたのアイデアだったのですか、それともアニメーション・ディレクターの稲村さんや山下さんの提案ですか。
宮崎吾朗:それは私のアイデアでした。今、アニメ映画はあまりに細かく描かれていて、絵は情報量や本物らしさに固執しすぎています。これらの映画は技術において進歩していますが、私の意見としては、ドラマティックさを部分的に失っています。年を追うにつれ、ジブリの絵のスタイルは進化しましたが、つねに物語や登場人物への配慮を保つことができていた。私は、若いころに見たジブリ作品の時代から汲み取り、あの雰囲気を取り戻したかったのです。

― 最初のドラゴンの戦いのシーンは全く宮崎駿のスタイルの中にはありませんが、あなたはより現代的なものを撮らせてもらえたということでしょうか。あなたはあるシーンを強引に挿入するために喧嘩したりしましたか。
宮崎吾朗:私は初めドラゴンも魔法使いも望んでいませんでした。私はとても控えめなものを望んでいました(笑)。映画にはそれが不可欠だと強調したのはプロデューサーの鈴木さんです。私は実際、映画の中のあちこちで違った試みをしました。それには満足しています。私が控えめなものを望み、それを正当化すれば、やらせてもらえたでしょう。しかし、私はプロデューサーと喧嘩しませんでした。反対に彼を大変頼りにしました。

宮崎吾朗インタビュー(2)に続く




cyberbloom

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posted by cyberbloom at 09:54 | パリ | Comment(0) | TrackBack(0) | 宮崎駿 Studio Ghibli | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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