2007年11月28日

セーヌ河のアメリ

amelie001.jpg何かいいパリの写真がないかと、ネットを巡っていたときに、この写真に遭遇した。

これは、都築清さんという雑誌や広告で活躍なさっているフリーランスのカメラマンの作品だ。今や 「パリ Paris-カメラマン都築清の写真ブログ」もフランス系の有名ブログになっている。タイトルは、あの有名な映画と関係があるのかと思ったが、モデルさんの名前のようだ。

この写真はセーヌ河に架かる橋のひとつ、ポン・デ・ザール(Pont des arts 芸術橋)が背景になっている。セーヌ河の他の重厚な橋に比べ、この橋は鉄製で、床は板張りになっている、歩行者専用の橋だ。若者たちが座り込んで憩う場にもなっている。日本の CM のロケにもよく使われる。

モデルに焦点が合い、背景の橋がぼやけ、影のように写っているが、私が個人的にポン・デ・ザールに抱いている印象と、この構図がピッタリ一致した。瞬間的に現れ、通り過ぎていく、はかない虚像を、辛うじて支え、自分も消えそうになっている橋。この橋、鉄製とは言え、実は繊細で、もろい。過去に何度も水害で流され、ふたつの世界大戦では爆撃を受け、破壊されている。

ポン・デ・ザールは、その名前の由来であるルーブル美術館と、フランス学士院を結んでいる。両側にそびえ立っている石造りの歴史的建築物が時間の重力の中に沈みこんでいるのに比べると、そこはパリの中心に生まれた無重力地帯のようだ。重く垂れこめ、鈍く光る金属のように見える冬の空気も、そこだけ気化しているように軽い。

ポン・デ・ザールが映画「アメリ」にも登場することに気がついている人も多いだろう。ジュネ監督もこの橋を「軽やかさ」と結び付けている。アメリがブルトドーさんに幼少期の思い出が詰まった箱を返したあと、ポン・デ・ザールを軽ろやかな足取りで歩きながら、「世界と調和の取れた自分」を感じる。そして目の見えない老人の手を引き、道案内を申し出る。ポン・デ・ザールの浮遊感から、道案内のシーンのめくるめく速度への展開は感動的だ。

かつてシラク大統領が、ポン・デ・ザールのレプリカを京都の鴨川に架けてはどうかと提案したことがあった。当時の京都市長は喜んで提案を受け入れ、準備を始めたが、世論の激しいブーイングに合い、計画は頓挫。京都の景観論議にも一石を投じることになった。印象的だったのは、日本人よりも、京都在住の外国人やフランスから反対の声が強かったことだ。


cyberbloom

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posted by cyberbloom at 07:17 | パリ ☁ | Comment(0) | TrackBack(1) | バーチャル・バカンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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パリのセーヌ河岸(フランスの世界遺産)
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