2006年11月23日

天空の草原のナンサ

lechienjaune.jpg今回はモンゴルに暮らす子供を主人公にした映画「天空の草原のナンサ」(ビャンバスレン・ダバー監督作品)をご紹介します。


町に住んで小学校に通っていた6歳の少女ナンサが、家族が暮らす草原に帰ってくるところから物語は始まります。ある日ナンサは、ほら穴で一匹の子犬を見つけて連れて帰り、「ツォーホル」と名付けてかわいがります。しかしお父さんは飼うことを強く反対して、彼女に捨ててくるように命じます・・


ストーリーはたいへん素朴ですが、これがモンゴルの広大な自然をバックにゆったりと語られるところにこの映画のよさがあります。さまざまな色合いの、自然の緑や空の青と、ナンサ一家が身にまとう衣装や彼らが生活するゲル(移動式住居)の内部にあふれる鮮やかな色彩が画面のなかで絶妙に調和し、日本や欧米の映画には見られない情緒を生み出しています。


Nansa2.jpg子供と犬を扱った映画はこれまでにも数々作られてきました。そういった作品のなかには、妙にセンチな路線に走りすぎて嫌みな感じになっているものがありますが、この映画でナンサとツォーホルへ向けられる視線は、常に優しく静かであり、演出も非常に抑制されたものです。実はナンサ家族を演ずるのは、素人の遊牧民一家で、「演技している」ということを忘れてしまいそうになるくらい、彼らのたたずまいは自然です。


終始穏やかに話は進みますが、一方で捨て犬が増えてオオカミ化し、遊牧生活をおびやかしていること、お父さんも町で働こうかと考えていることなど、遊牧民が抱える現実の問題も端々に語られています。実際にモンゴルでは遊牧民がだんだん町に移り住むようになり、ゲルで暮らす人々は少なくなってきているそうです。町の生活も知っているナンサが、儀式や迷信や伝説(この映画の原題になっている『黄色い犬の洞穴』の話もそのひとつです)に取り巻かれた草原での生活に、疑問を感じる日はやがて来るのかもしれません・・


Nansa3.jpgところで、この映画は第58回カンヌ映画祭でパルム・ドールならぬ「パルム・ドッグ」賞を受賞しました。この賞はその名の通り、印象的な犬が登場した映画に贈られるものです(ちなみに今年の「パルム・ドッグ」は「マリー・アントワネット」のパグ犬 Mops に与えられました)。ツォーホル君のかわいいブチ模様や人なつこい仕草は実に微笑ましく、雑種犬好きにはたまらない映画です。


■DVD「天空の草原のナンサ」(デラックス版)


exquise@extra ordinary #2

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posted by cyberbloom at 00:42 | パリ | Comment(0) | TrackBack(0) | 日本と世界の映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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