踊りに行かなくなって久しい。最後に行ったのはクラブではなく、アンダーワールドのライブだったと思う。まだ本格的にブレークする前の初来日のときだったが、この音には未来を感じましたね。ところで私の秋の定番はこれ。テイ・トウワ選曲のコンピレーション、Motivation-songs for make up 。彼が提唱するR&B、ハウスを基軸にした独自のジャンル「アッパー癒し系」が集められている。海外のインディー、メジャー問わない選曲で、女性ヴォーカルがふんだんにフィーチャーされている。アッパーと癒しって語彙矛盾な気がするが、癒しとはつまり、自分のために聴くってことなんでしょう。つまりは、踊らない、ひとりで聴くダンスミュージック。
このアルバムは実際に秋から冬にかけての時期を想定している。確かにこの季節にぴったり合う。秋の夜長はジャズなんかをしみじみ聴きながら過ごすしたいが、いつも暖かい家の中でヌクヌクしているわけにはいかない。木枯らしが吹きつける寒い屋外にも出なければいけない。とりわけ寒い朝が辛い。このアルバムをipodに入れ、毎朝通勤時に聴いて気合を入れる。身体にアドレナリンがみなぎる。何のことはない、寒くなってくるから身体がそういう音楽を求めるのだ。
このコンピレーションは女性に向けられている。都会に住む女性が「部屋でメークして、ひとりで夜の街をドライビング」するという設定だ。確かに絵になるアーバンな風景。ストーリー仕立てのグラビアやPVにそんなのがありそうだ。それに秋って、夏ほど薄着じゃないし、冬ほど着込まなくてもいいし、オシャレにはいい季節。アマゾンのレビューで誰かがこれを聴くと「眉がうまくひける」と書いていた。
選曲に関しては、バンシーズの「ハッピーハウス」のカバーにも心動くし、フランスの DJ CAM を選ぶところなんか心憎い。しかし、どの曲よりも5曲目のMove Me が好きだ 。
Make me feel so nice
Make me feel I’m on ride
Oh, move me
Move me one more time
ハウスのボーカルものの歌詞はだいたいこんな感じ。直接的な言葉が繰り返される。しかし、その言葉が切ないくらいに直接的に伝わってくる。「退屈な日常から私を救って、お願い」って。「すぐに助けてあげるよ」って気になる。相手は姿を伴った人格ではない。欲望は直接的に交換される。最初からハッピーな感じでストレートに乗せる曲よりも、ハングリーな状態から始まる方がボラリティーが高い分だけ、盛り上がったときの高揚感が断然違う。
昔よく聴いたのが、日本の誇る人気DJのひとり、EMMA のノンストップ HOUSE シリーズ。今や13枚目を数えるらしいが、特に2枚目の「EMMA HOUSE 2」を愛聴していた。ちょうど真ん中あたりの PLANET OF DRUMS→YOUR LOVE→THE PIANO へと進行するロングミックスが絶品。トライバルなドラムの執拗な反復の果てに、お告げのようなサビのメロディとともに臨界点がやってくる。毛穴が引き締まって、ウブ毛が感電したように直立する。そしてドーパミンの大量放出。それらは光の粒子になって弾け、飛び散る。
こういう種類の音楽のことを書くとセクシャルな、あるいはサイケな(ヤク中的な)アリュージョンから逃れられないが、つまりは人間の快楽に関わる身体的なパターンとシンクロしているのだ。ロックのようなビジュアルの媒介も、小難しい歌詞を解釈する過程もない。
「ハウス・ミュージックのリミックスは、ナイト・クラバーたちの身体にどれだけの快楽を起こさせられるかによってその価値が決定される。ダンス・フロアで客がどれくらいリミックスに反応するか?それによって原曲は何度でもリミックスされ、そのなかでも最大のリアクションを獲得したミキシングがレコーディングされて市場に流れていく」※
つまりハウスは、作り手の創造性とかは問題ではなく、DJとクラバーの身体的な対話によって作られる快楽原則の音楽。気持ちいいか、ノリがいいか、これをあからさまに、ラディカルに突き詰める。こういう音楽に適応できるのは性格や体質もあるのかもしれない。私はメデタイお祭り人間か。いや、そう言わずに一緒に踊りましょう。
Hey DJ! I can't dance to the music you’re playing!
Motivation songs for make-up(CCCD)
posted with amazlet on 06.11.17
おすすめ度の平均: 

眉毛うまく描けます。
曲が良いのに
めちゃお洒落★■参考図書:「シミュレーショニズム」椹木野衣(※)
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