最近気がついたのだが、スタバには「COFFEE CSR」というパンフレットが置いてある。CSR とは「Corporate Social Responsibility 企業の社会的責任」のことだ。企業は本来ひたすら利益を追求する組織で、いつも社会的責任をないがしろにすると考えられてきた。確かにそう思わせる不祥事も多い。しかし、アメリカで CSR は経営そのものになりつつある。美徳や評判も企業価値を高める不可欠な要素で、それが市場でも重要な評価基準になっている。世界で一番そういうことを考えなさそうなアメリカの消費者ですら、中東の紛争や自然災害のニュースに接して、自分の行動と環境への影響を考えるようになっているという。ガソリンが急騰し、巨大ハリケーンがいくつも来襲すれば、どんな鈍感な人間でも危機意識を持たざるを得ないのだろう。
CSR は消費者に対してだけではなく、生産者との関わりにおいても重要だ。フェアトレードはスタバが自らを演出するもうひとつのキーワードだ。コーヒーを安く買い叩くのではなく、公正な価格で買い取る。そうすれば、コーヒー農家は喜んで品質向上のために努力する。コーヒーの市場価格は1ポンド(=454グラム)あたり、40‐60セントだが、スターバックスの昨年の仕入れ価格は1ポンドあたり、1ドル28セント(74%増)だそうだ。さらにはコーヒー農園の運営資金をサポートしたり(スタバが契約しているコーヒー農家の多くは小規模な家族経営)、生産者が生活する地域の環境の改善のために診療所や幼稚園などのインフラも整備している(パンフレットに書かれていることを信じるならば)。
こうやってスタバはフェアなイメージを前面に出しているが、最初からそうだったわけではない。生産農家についての情報公開を拒否していた前科がある。2000年2月、ABCテレビがグアテマラのコーヒー農園での児童労働とひどい低賃金の現状を報道。そのコーヒーがスタバにも販売されていることを明らかにした。その後、NPO、学生団体、フェアトレード団体、労働組合、教会団体などの抗議や株主への働きかけによって、フェアトレード運動が広がった。スタバもその波に押されて、2000年からフェアトレードコーヒーの購入を始め、同年11月にはコーヒー供給業者が行動規定を守っているかについて情報公開することを決めた。
マクドナルドを1ヶ月間食べ続けるという恐怖の人体実験ドキュメンタリー映画「スーパーサイズ・ミー」が大きな話題を呼び、マクドナルドもそういう批判を無視できなくなった。スーパーサイズを廃止したり、罪滅ぼしのためかフェアトレードのコーヒーを導入したりしている。
企業がそういうイメージアップに対して重い腰を上げたのも、消費者が企業に対してそういうものを求めていると実感したからだ。少し前までそういう問題は一部の過激な活動家が騒いでいるだけとたかをくくっていた。しかし企業はそれが利益にもつながり、業績や株価にも影響すると考え始めた。
日本企業の中でも、グローバル企業とローカル(国内)企業では意識の差が出てくる。欧米に進出しているグローバル企業は訴訟や不買運動などに直面するが、企業天国の日本の国内ではあまりそういう目には合わないので切実さがない。しかし、資金を調達する株式市場や金融機関が国際化している状況で、ローカル企業だからといってコンプライアンスを無視していいということにはらない。これまた外圧がなかったら、日本の内輪の論理で通しちゃえってことでは情けない。
ところで、この前、スタバにノートパソを持ち込んでブログの記事を書いていたら、ブログでも紹介したフランスのバンド Autour de Lucie がかかっていた。視聴コーナーで確認したら、スタバ限定発売のフレンチもののコンピレーションに収録されていたのだった。スタバではソウル、ボサノバ、ジャズなどがよくかかっているが、趣味の良い音楽を選んで、ライフスタイルもカスタマイズしてくださいってことね。
cyberbloom
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