2011年12月03日

長崎県立美術館

「清々しい」「爽快な」「晴れ晴れとした」・・・

その印象を一言で表現しようとしながらも、ボキャブラリー不足を痛感しつつ。
東日本大震災から1ヶ月半が過ぎ、どうにも晴れない気持ちと楽しむことへの若干の後ろめたさを引きずりつつもGW休暇で訪れた長崎。
そこでふと訪れた県立美術館があまりに居心地よかったので、少しここでレポートをば。

長崎駅から路面電車で15分ほど、港に面した公園と一体化した立地にそびえる長崎県立美術館。
小さな運河を橋でまたぐ形の2つの館で構成されたこの建物、ガラスの壁面とそれを囲む細長い石版の層(まるで縦向きのブラインドのよう)がその躯体の大きさにしては意外なほどの軽やかさと、ガラス張りの建築物にありがちな刺々しさ、冷たさを打ち消す落ち着きを併せ持たせていて、なんとも不思議な「軽快な壮大感」を醸し出しています。





エントランスの吹き抜け部分は3方がガラス壁面。
空を背景に見上げる高い天井からすっと地に伸びる企画展のフラッグは色彩も軽やか。



(以下写真は伏せ顔にて失礼)
ああ、もう建物だけでもだいぶ満足と思いつつ2階の企画展エリアへ向かいます。

各階の天井が相当高い館内は展示室以外のほとんどが天井までガラスの外壁のため、通路という通路が光にあふれていながらもすぐ目の前が公園と海(そして驚くほどモダンで巨大なアリコジャパン長崎)。
少し繁華街からも離れているため全ての視界がとても開けていて、2階の通路は特に浮遊感が漂う気持ち良い空間となっています。



現在の展示は「スウィンギン・ロンドン50'sー60's」(5/22まで)。
イギリスだけに限らない今でも垂涎、のフューチャリスティックレトロな名デザイン満載。
ケースに入れられないで間近で全方向から眺めることのできる展示品も多く、広々とした空間使いの妙に歩く疲れを忘れます。

他にもいくつかのコレクション展が開催されていましたが、自然光の入る展示室に飾られた様々な色のモザイクはテレビや本では絶対に伝えることのできない、無数の色と質感・空気感に包まれる感覚。長崎のアーティスト、井川惺亮の作品もとても良かったです。

あと展示エリアの他にこの美術館を好印象づけているのがカフェと屋上庭園。
運河を見下ろすガラス張りのカフェは日本の名シェフの1人、上柿元勝がプロデュース。
メニューのバリエーションは多くないけれど、スープがかなり美味しかったので他のメニューも期待できそう。(空腹でなくてスープしか頼めなかったのが残念。写真も忘れてました・・・)

屋上に上がるエレベーターは扉が開くと、一気に目前に広がる展望に驚かされます。
背景には山と住宅、そして街。それにつながる港と海、向かいの島。そして船。



・・・この位置に船?

ここでふと気がつくのが長崎でずっと感じていた何かの違和感。
自分は神戸在住なので海と山と街というのは全く見慣れているのですが、この屋上から見渡すと、長崎では全てが他にありえない近さで共存しているのが一目でわかります。

神社・お寺・古民家、異国情緒たっぷりの洋館と庭園、レトロな路面電車、繁華街、ビジネスホテル、近代的建造物、大型船、漁港・・・
何もかもが近くて妙にしっくりなじんでいるような、そんな魅力が長崎にはあります。
悲劇の歴史が残したものは排他主義や憎しみではなく、優しい寛容さに昇華されているのかもしれない、というとかっこつけてまとめ過ぎかもしれませんが・・・

どうしてこの街をこんなに面白いと思ってしまうのか、その理由が1つ見つかったのはこのシチュエーションならではの気がして、あらためてこの美術館をスゴイと思ってしまった次第でした。

ちなみにここ、展示エリア以外は無料で散策できるのでカフェ利用、屋上庭園でまったり過ごすという普段使いができるのがうらやましい。屋上ライブなどのイベントも開催されているようです。
長崎探索の際にはぜひ、おすすめです。



あちこちに見られる館内のサインも洗練されてます。

→長崎県立美術館
http://www.nagasaki-museum.jp/

がんばれ東北号

街中を走る路面電車は様々なデザイン。こちらは東北応援号。

□初出2011年5月6日(main blog)




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posted by cyberbloom at 10:46 | パリ | Comment(0) | TrackBack(0) | 美術館&美術展 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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