■フランス東部の地下奥深くに有害な放射性廃棄物が埋まっていることを、人類はどのようにして何千年、何万年も後に生きる人々に伝 え続けられるだろうか?巨大なピラミッド、あるいは博物館を建てれば良いだろうか?それとも将来の地質学に期待するのか? フランスの放射性廃棄物管理公社アンドラの記憶プロジェクトの責任者パトリック・シャルトン氏はここ16年間、この哲学的難題に取り組んできた。
■フランスは、世界で原子力に最も大きく依存し、国内に58基の原子炉を持っている。過去30年間に発生した放射性廃棄物をこれまでノルマンディー沿岸のラアーグにある核燃料再処理工場敷地内の地上施設で保管してきた。しかし、この場所はテロ攻撃や航空機の衝突に対して脆弱だ。このため、アンドラは最も高レベルの放射性廃棄物を同国東部ビュール近郊の地下500メートルの場所で永久保管する可能性を検討している。アンドラは既にビュールで地下研究所を運営しているが、永久保管計画が進められる場合、2025年に保管施設の運用が始まり、2175年前後に終了する。
■高レベルの放射性廃棄物が有害でなくなるまでには少なくとも10万年かかる。しかし、保管施設を恒久的に閉鎖した後、そこに放射性廃棄物が埋まっているという記憶を、途方もなく長期にわたって後世に伝え続けるにはどうしたらいいか?シャルトン氏のチームはこの問題に取り組んでおり、保管施設の記憶温存のため、26の研究対象を候補に挙げた。同氏はロイター通信とのインタビューで、「必要としているのは1つの万能策ではなく、長期間の記憶保持を可能にする複合的な対策だ」と語った。
■候補として挙がっているのは、保管施設の上に放射性廃棄物に関する博物館や巨大なピラミッド、あるいは「芸術家の家」を建てるという案や、長期間のデジタルファイルに頼るという案がある。シャルトン氏のお気に入りは、いわゆる「地形地質学」の活用で、何世代も後の考古学者に地下に何か埋まっていることを知らせるという案だ。永久保管計画では、地下のトンネルは、放射性廃棄物の缶で満杯になったら、土で埋められる見通し。
■しかし、埋められた場所の土の密度は周囲と違うため、表面に育つ植物が違ってくる可能性がある。同氏は「これは地質学者や地形考古学者の好奇心をかき立てるかもしれない」と述べた。また、埋められた地下トンネルに銅板に刻んだ警告をつける案もあるという。 これはアンドラの取り組む別の研究分野につながっている。それは言葉やシンボルの研究で、将来の世代の人々が「警告メッセージ」と確実に理解できるような言葉やシンボルだ。同氏は「フランス語が消滅したら、何が起こるだろうか。またシンボルの意味は時を超えて同じだろうか」と問い掛けた。
■これらの質問への答えは今後の議論次第だ。ビュールの地下保管計画が進められるとしても、少なくとも250年は保管施設が恒久的に閉鎖されない。それだけにアンドラの研究者たちにはまだ多くの時間が残されている。シャルトン氏は「わたしの希望はといえば、人々がこの保管場所を監視し、一般人と対話していけるような建物が存在することだ」と述べた。ただ同氏は、ピ ラミッド案は必ずしも最も熟慮されたやり方ではないと指摘。
とりわけ審美的な観点からすれば「ちょっと異国情緒に過ぎる」と語った。
(11月9日、時事通信)
□『10万年後の安全』予告編↓ =フィンランドの放射性廃棄物処理工場を舞台にしたドキュメンタリー映画
□『10万年後の安全』予告篇2=英語版 http://youtu.be/9oMOxdQrbR0
ギリシャや伊の混乱の背景に南欧の習慣
■ギリシャ政局の混乱は、パパンドレウ首相の辞任と、サマラス党首率いる「新民主主義党」との連立政権樹立の合意で一応の収束をみた。ギリシャ政治を考える上で鍵になるのは、「パトロン(後援者)とクライアント(従者、顧客)」という言葉だ。ギリシャやイタリアでは、総領などと訳されるドン(パトロン)が村人(クライアント)の面倒をみると同時に、搾取もする社会を表現するのに使われる。村人の中にはドンに反発する者もいるが、誰もが金銭や就職、トラブル解消で世話になっている。
■ドイツは南欧の年金生活者が優遇され過ぎていると非難する。借金を返すため年金を改めろと言われると、ギリシャもイタリアも抵抗する。例えば、イタリアの元閣僚は月に3万4000ユーロ(約360万円)の年金を受ける。なぜこんな高額になるのか。その疑問を解くのが「パトロンと クライアント」だ。ドンである元閣僚がクライアントの友人、知人、配下、故郷の縁者を食わさなければならないからだ。こうした一見無駄に見えるシステムで金が末端にまで回る。「地中海圏の共通点はまともな福祉がなく、その穴を年金で賄っていること」(イタリア国立研究会議の社会学者、エンリコ・プリエーゼ教授)
■福祉を充実させたドイツのように、メルケル独首相に命じられるまま年金を抑えれば、ギリシャもイタリアも困る人が出てくる。ドイツなどが推す改革に、南欧が素直に従えない一つの理由は、制度、慣習の違いだ。それを変えるには時間がかかる。市場の変化に比べ、習慣変更のテンポは格段に遅く、その差がユーロ危機の要因となっている。
■では、市場の速さを緩められるのか。それとも、南の慣習を変えるべきなのか。10月31日に始まったギリシャの政治混乱は、結局のところ何を見たのか。パパンドレウ対サマラス。2人のドンの「領域」争いだ。パパンドレウ家は政治家の名門で、日本で言えば鳩山家。国民は首相を「宇宙人」とみており、デモクラシー紙の見出しに「UFOと共に去りぬ」とあった。一方、サマラス家はペロポネソス半島南西部のエリート一族出身で、政策は金持ち優遇だ。その2人が意地で闘う。「非常時なのだからまずは挙国一致を」とそばの者はじりじりするが、彼らは後々の取り分、そしてドンとしての名誉もあり、簡単には引けない。2人のドンの争いは、地中海圏政治の典型と言えるのだ。
(11月7日、毎日新聞)
★S&Pがフランス格下げの文書を一部契約者に誤って送信し、フランス国債は急落。S&Pは技術的なミスと釈明した。France2では「今日のニュースはギリシャやイタリアの話ではありません。我々の国のことです」と、ニュースからも戦々恐々とした雰囲気が伝わってきた。
「女性未活用大国」ニッポンの処方箋―米専門家が人口危機解決策を指南
■先進国で最も深刻な労働人口の危機にさらされながら、依然として女性の活用に消極的な不思議の国、ニッポン。世界は、そんな目で日本を見ていることが改めて浮き彫りになった。ニューヨーク在住エコノミストのシルビア=アン・ヒューレット氏が先月発表した研究によれば、日本経済復興の特効薬は女性の活用にあるが、今も才能とやる気にあふれた女性の多くが男社会の壁に阻まれているという。
■ヒューレット氏の調査では、日本の大卒女性で仕事を持っている人は67%にすぎず、その多くが、パートタイムか、「お茶くみ」を含めたアシスタント的役割にとどまっていることが分かった。なかでも、自ら退職する大卒女性が74%に上っている点に、同氏は注目する。実に米大卒女性(31%)の2倍以上だ。
■さらにヒューレット氏が「最も驚くべき発見」と指摘するのが、米国などと違い、育児や老親の介護などのために家庭から引っ張られる「プル要因」で退職する女性よりも、労働市場から押し出される「プッシュ要因」で辞める女性が多い点だ。つまり、キャリア形成の機会を与えなかったり、過剰な長時間労働を強いたり、妊娠と同時に退職を促したりといった日本の伝統的な企業文化が健在であることが分かる。今も、退職する日本女性の約半数が、仕事に将来性を感じられないことを理由として挙げている。
■英誌『エコノミスト』は、11月5日号で、ヒューレット氏の研究を取り上げ、日本を「才能が生かされていない国」と批判。労働人口危機に直面する日本企業が生き残る道は女性の処遇を改善すること、と一喝する。長時間労働を退職理由に挙げる女性が66%に達することについては、「日本企業は、紙のリサイクルに熱心だが、女性の才能を浪費することには無頓着だ」と皮肉っている。
■そうした日本の「神秘性」に加え、世界の人々をやきもきさせているのが、迫りくる日本の少子高齢化だ。日本では、あと40年もたたないうちに、子どもとシニアの人口が、18〜64歳の稼ぎ手の数と肩を並べる。それが分かっていながら、なぜ女性にも移民にも活路を見いださないのか。欧米のエコノミスト やジャーナリストのなかには、そんな日本の危機感のなさに首をかしげる向きが多い。
■過労死するほどの長時間労働をもってしても、もはや男性だけで日本経済を回せる時代は終わった。低賃金労働と豊富なマンパワーで猛追してくる新興国の挑戦をかわし、イノベーション力でグローバリゼーション時代を勝ち残るには、ダイバシティ(多様性)が決め手である。
■一方、ダボス会議で知られる世界経済フォーラム(WEF)が11月1日に発表した「2011年男女平等指数」によれば、日本は、昨年より4ランク下がって98位に落ち込んだ。米国は、2ランク上がって17位につけている。ゴールドマン・サックスが昨年10月に発表した「ウーマノミクス(女性経済学)3.0」リポートによれば、高学歴女性をフル活用すれば、日本の労働人口 は820万人増加し、国内総生産(GDP)は15%もアップするという。ヒューレット氏が、大震災後の復興と労働人口減の克服を目指す日本企業にとって、 女性の活用が決定的な意味を持つと説く理由も、ここにある。 日本経済再生の処方箋は、女性にチャンスを与えること。これに尽きる。
(11月11日、WSJ)
□FBN記事:「世界経済フォーラムの男女格差報告で日本は135カ国中98位」
■France 2:フランスでは社員の福利厚生を考慮することが法律によって義務付けられているが、調査によると1日のうちの50%がストレスによって生産性があがっていない状態だと言う。数年前にフランステレコムの社員の連続自殺事件があり、20人以上が亡くなったが、リストラのプレシャーだったと言われている。仏教に凝っているある企業の社長は社員のストレス解消のために瞑想部屋を作り、座禅を組ませる。社員たちは半信半疑だが、社長の言うことだからと従っている。
★「余暇は不可欠で、働きすぎは怠惰と同じ」が欧州ではデフォだが、バカンスの国ですらこうなのだとしたら、残業時間が世界一で、その割には生産性の上がらない、過労死の国はどうなんだろう。
■Vanessa Paradis et Karl Lagerfeld inaugurent les vitrines du Printemps:ヴァネッサ・パラディとカール・ラガーフェルドのツーショット。プランタンのショーウィンドーの除幕式で。ショーウィンドーにはラガーフェルドの人形が動く。http://bit.ly/uQ6Nj6
■谷口ジローのインタビュー 仏で予想外の高評価:当時フランスでは既に日本のテレビアニメや少年向け漫画が流入、一部で過剰な暴力シーンが批判され、その中で「詩のようだ」と評価。世界最大級の漫画イベント「アングレーム国際漫画祭」で、出版社を介し、20代の頃から尊敬する仏漫画界の巨匠メビウス氏と出会った。http://bit.ly/txDIEO
■『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』など日本映画群が仏「映画の殿堂」=シネマテークで特集上映!http://bit.ly/tGYbQB
□映画『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』予告編 http://bit.ly/tMTvCx
■イヴ・サンローランのミューズ、ルル・ドゥ・ラ・ファレーズ Loulou de la Falaise 死去。http://bit.ly/tUn1BK
★何だか「崖の上のポニョ」 Ponyo sur la falaise を思い出す。
★commented by cyberbloom

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