2006年08月10日

「戦争の克服」(1)

戦争の克服鵜飼哲。注目すべき「フランス語系人」のひとりだ。ジャック・デリダの高弟、あるいはジャン・ジュネや移民文学の研究者として知られている。しかし、最近は「フランス文学」や「フランス現代思想」などを肩書きに使う人はめっきり減ってしまった。流行らないのだろうか。もっとも鵜飼さんの思索と活動の範囲は「フランス」という枠組みに収まらない。この本では哲学者と紹介されている。

鵜飼さんは、戦争を「この世界で生きていくために考えなければならない最も本質的なテーマ」と位置づけ、一橋大学で「平和と文化」というリレー講義をコーディネートしている。この講義は、語学教員が中心になって各国の「平和と文化」を論じ、さらに憲法や歴史の講義をからめることで、戦争をどう考えるかという判断力に不可欠な教養を与えようという試みだ。

戦争という巨大なテーマを巡っては、自分の専門領域に閉じこもって個別に思索を深めるだけでなく、保守、リベラルを問わず、知識を持つもの同士の交流の必要性がある。それがリレー講義という形で実現されたようだ。

さて、この対談本。一橋大学のリレー講義のエッセンスが収められていることを期待したいのだが、インタビューアは自称「対談の名手」いう森巣博。オーストラリアに住むギャンブラー兼作家なんだそうだ。同じような形式の対談本「克服シリーズ」がいくつか出ていて、「ナショナリズムの克服」では姜尚中さんと対談。

戦争をどう理解したらいいのか?
戦争に対する新しい解釈が得られれば、戦争を克服できないまでも、そういったバカバカしい「正義の体系」に、せめて穴を穿つことくらいは可能となるんじゃなかろうか。

森巣さんがチューサン(中産=中学3年レベル)階級の代表として、戦争に関する素朴な質問をぶつけ、それをわかりやすく説明してもらうという形式で対談が進行する。そして途中から国際法学者の阿部浩己さんが加わる。「テロのとの戦い」という大義名分で、アフガン戦争、イラク戦争とアメリカがやりたい放題やっているなかで、一体国際法はどうなっているのか。これも私のような素人も素朴に抱く疑問である。

広島に原爆が投下されたのが6日、昨日9日は長崎の日である。そしてもうすぐ終戦記念日。「今戦争のことを考えなくていつ考えるんだ」という時期にお薦めの一冊である。(続く)

戦争の克服
戦争の克服
posted with amazlet on 06.08.10
阿部 浩己 森巣 博 鵜飼 哲
集英社 (2006/06)

cyberbloom

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posted by cyberbloom at 22:43 | パリ ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事+トレンド特集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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