2006年07月29日

宮崎アニメ特集(1)−「ゲド戦記」と2世の台頭

「ゲド戦記」が今日封切られる。「ゲド戦記」は宮崎駿ではなく、息子さんの宮崎吾朗の作品だが、アニメ界のサラブレッドの実力が試される。

以前にもまして2世の活躍が目立つ今日この頃。2世の台頭は格差社会の象徴的な現象と言われる。2世は勝ち組の親の遺産やノウハウや信用をそのまま継承できる。下流出身は親から受け継ぐものが何もない。今やお金がないとまともな教育も受けられない。成り上がることが難しくなったということだ。今の若者は2世に憧れるのだという。昔は2世というと、伝統に縛られ、親の言いなりになるしかない不幸な人ってイメージがあったが、今は違う。情報過多の世に生まれ、やりたいことが見つからない若者にとって、最初からやることが決まってる人間はうらやましいのだ。フリーターに共同取材を試みた金子勝と大澤真幸が「見たくない思想的現実を見る」でこんなことを書いていた。この感覚は、私たちが一般的に抱く「スタート地点がすでに違う2世はインチキだ」というのとちょっと違う。

野心剥き出しの成り上がり者に対して、2世のやることはいつもスマートだ(多少ヘマをしても親がもみ消してくれる)。成り上がり者の代表格、堀江社長がこけたあと、GyaOとのシナジー効果を狙ってライブドアとすかさず提携したUSENのイケメン宇野社長。岡本綾を助手席に乗せてた朝帰りした中村獅童はおいといて、NHKの子供番組でもポップな展開を試みる狂言師、野村万斎。政治の世界は世襲が当たり前。余裕綽々、すでに首相気取りの安倍さんだが、ボンボンとしての風格も漂っている。お父さんは宮沢喜一、竹下登と首相の座を争って結局、首相になれなかった安倍晋太郎。そしてお祖父さんは「昭和の妖怪」と呼ばれた岸信介。

政治家の格差社会に対する頓珍漢な発言が目立つが、親の潤沢な基盤を受け継いでいる人たちには格差社会の残酷なリアリティなんて永遠にわかないんだろう。勝ち組の日常には何の影響もないんだから。とはいえ、優れた作品は正当に評価すべきということには異論はない。宮崎駿が息子に自分の仕事を継がせたのにはナルシシズムを感じる。自分に子供ができて、そういう世襲感覚というのが少しわかった気がする。

話がそれてしまったが、実は私、「ハウルの動く城」もまだ見てない。その前の「千と千尋の神隠し」から片付けなければならない。そうしないと先に進まない。7月はパリで「ジャパンエキスポ」があったり、パリ郊外に住む日本大好き少女が日本を目指して家出したり、フランスとの関わりでアニメが盛り上がった。おそらくフランスでも「ゲド戦記」の封切は待望されているのだろう。これも調べてみよう。

「ゲド戦記」が話題になっているときに、なぜ「千と千尋の神隠し」なのか?もうひとつ理由がある。「千と千尋」に関して授業で取り上げたこともあり、資料がそれなりに揃っているという個人的な理由からだ。それをここで吐き出してしまおうというわけ。フランス人が宮崎アニメをどうみているのか、どこに興味を持ってるのか、検証しておく機会があってもいいだろう。「POSITIF」というフランスの映画雑誌がある。そこに掲載された宮崎駿のインタビューを紹介しながら、「Miyazaki en(in) France」を紐解いてみたい。(続く)

■「ゲド戦記」公式サイト

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posted by cyberbloom at 12:03 | パリ ☀ | Comment(2) | TrackBack(2) | 時事+トレンド特集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
http://www.ghibli.jp/20special/000283.html
駿氏は息子も「自分」とつながるものとは考えないほどのナルシストorエゴイストであるように語られていますね。それはこれまでの言動や行動からして、ありうるものと思えます。
それもまた鈴木氏の演出のひとつと読むこともできるわけですが……。
Posted by 通りすがり at 2006年08月08日 15:30
通りすがりさん、コメントありがとうございます。
駿氏と吾朗氏の関係についての話題には全く疎いのですが、そういうふうに言われているのですね。「自分とつながるものとは考えないほど」というのは、親子ということを自覚していない、自覚できないほど、ということなのでしょうか。吾朗氏のエコな経歴も何か親の欲望そのままって感じですよね。全くの新人が受け継ぐよりも、話題性があるってことなんでしょうか。
Posted by cyberbloom at 2006年08月09日 23:25
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