2006年06月19日

オタク文化、フランスで大人気!

オタク文化、仏で人気 イベントに6万人予想」との記事が、今日のヤフーのニュースのトップで流れていた。

□「オタク文化」と呼ばれることもある日本の漫画やアニメ、コスプレなどの人気がフランスで拡大中だ。日本のサブカルチャーを集める「ジャパンエキスポ」がパリ郊外で7年前からほぼ年に1度のペースで開催され、今年は7月7日から3日間の日程で過去最高の6万人の入場を見込む。
□フランスは世界で最も早く日本のアニメが紹介された国の一つとされ、世界有数の漫画市場。エキスポ関係者によると、コスプレ人口も増加中で、パリ近郊だけで約2500人を数える。
□エキスポの入場者は第1回の3200人から年々増加。今年は、名古屋市で8月に開かれる「世界コスプレサミット2006」のフランス予選を行うほか、日本のプロレスも紹介する。
(共同通信、6月19日)


barral01.jpgここで日本のアニメとマンガがフランスの子供たちの心をわしづかみにし、明治以来日本が仰ぎ見た文化大国にそれらが根付いた経緯を紹介してみたい。

1987年にクリュブ・ドロテ(Club Dorothée)という記念すべき番組がTF1(テレビ局)で始まった。クリュブ・ドロテは、ドロテという女性司会者を起用したバラエティー番組。その番組で日本のアニメが何本も放映されることになった。1978年にA2(テレビ局)がすでに Goldorak (原題は「UFOロボ・グレンダイザー」)によって日本のアニメ放映の口火を切り、人気のある定番作品がいくつか存在していたが、クリュブ・ドロテでは、まだ知られていなかったアニメ作品が次々と発掘された。

この年、フランス最初のテレビ局であったTF1はフランス社会を自由競争によって再建するというミッテラン政権の政策の一環として民営化されたばかりだった。民営化によって突然出現した放送時間の空白を埋めるために、すぐに使える作品が緊急に要請されたのであった。このようにコンテンツ不足状態にあったフランスのテレビ局にとって、日本のアニメは安上がりかつ品揃え豊富な番組用のコンテンツの宝庫だった。ほとんど手当たり次第に買い付け、にわか作りの番組編成だったのが、またたく間にフランスの子供たちの心を捉えてしまった。日本のアニメは1981年の時点で3つのテレビ局で年間237時間放映されていたが、1989年には5局で2611時間と80年代に10倍以上に増加した。

1990年代に入ると「北斗の拳」がその暴力性ゆえに放映中止に追い込まれ、これをきっかけに日本のアニメがメディアに叩かれ始める。「ドラゴンボール」も同じ理由で批判の対象になり、ピーク時にはフランスで放映されるアニメの半分を占めていた日本のアニメは一割にまで減少した。また検閲によってアニメ作品の修正箇所が増えて、シリーズの一貫性やストーリーの面白さを損なうほどになり、それがテレビのアニメ離れに追い討ちをかけた。

このような事態に平行して、フランスのアニメ愛好者たちはテレビで放映された作品を、その原作であるマンガという形式で楽しむことを始める。企業もアニメの市場としての潜在力を認識し、テレビの原作マンガが次々と翻訳され、同時にビデオの需要も拡大した。1988年に公開された大友克洋の「アキラ」映画版の成功を受けて、翌年にマンガ版が翻訳される。しかし、その支持はまだ熱狂的なものではなく、隣国のイタリアやスペインに比べると遅れてさえいた。

ところが、「ドラゴンボール」の第二部「ドラゴンボールZ」の放映が始まってから、それと平行して「ドラゴンボール」のマンガシリーズが飛ぶように売れ、アニメに遅れて本格的なマンガ・ブームがフランスに到来するのである。フランスは今や日本に次ぐ第二のマンガ消費国になっている。

オタク・ジャポニカ―仮想現実人間の誕生数年前にエチエンヌ・バラール Etienne Barralによるルポルタージュ、『ヴァーチャル世界の子供たち』(上の写真が原書の表紙、右は翻訳版、タイトルは「オタク・ジャポニカ―仮想現実人間の誕生」)がフランスで発行され、OTAKUの存在を知らしめた。バラールは日本通のジャーナリスト。この著作はオタクと呼ばれる若者たちの綿密な取材に基づいているが、その基本的な論調は、常軌を逸したサブカルチャー集団であるオタクが、日本社会の特殊性や病理性に起因しているというもの。つまり、オタクは受験戦争や集団主義によるストレスによって生み出された、いびつな日本社会の産物というわけだ。

最近は、フランス発のアーチストたちが日本アニメに対する憧れを告白しいてる。松本零士とコラボレーションしたDaft Punkのメンバーは、「日本は第二の故郷だ」とまで言い切っている。彼らは5歳から10歳にかけて、「宇宙海賊キャプテンはーロック」(フランスでのタイトルはAlbator)に夢中になり、放映時間には家族とテレビの前に集まり、学校ではクラスの仲間とハーロックや宇宙船を描いていたという。私の小さいころと何ら変わりのない光景だ。つまり、80年代に日本アニメの洗礼を受けたフランスの世代が表現を始め、私たちがフランス経由で自分たちの文化に再会するという事態が生じたのである。ブログでも紹介したPLEYMOなんて、来日ライブで、ハードな音を求めてやってきたイカツイお兄ちゃんたちに、「ナウシカ歌おうぜ!」と強引に「風の谷のナウシカ」の主題曲を合唱させるという暴挙に出ている(笑)。

■関連記事「フランスのオタク文化(1)−子供の発見」(07/07)

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posted by cyberbloom at 22:59 | パリ ☁ | Comment(2) | TrackBack(0) | マンガ+アニメ+BD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 >『ゴルドダック』(Goldodak、原題は「UFOロボ・グレンダイザー」)

ゴルドダックだと金色のアヒルを連想させますが(笑)、違いますよ。Goldorakです。
Posted by NOAM at 2006年06月21日 02:13
NOAMさん、ご指摘ありがとうございます。rakと打ったつもりが、よくみたらdakになってました。確かにアヒルみたいですね。訂正します。
Posted by cyberbloom at 2006年06月21日 07:08
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