2006年06月02日

(7)カンヌ映画祭特集−カンヌ結果発表!

kenloach01.jpg第59回カンヌ映画祭の授賞式が28日に行われ、各賞が発表されました。ウォン・カーウァイ監督が選ぶ作品は何かと期待していたところ、意外(?)と硬派な作品に賞が集中しました。

まず今回のサプライズは主演女優・男優賞でしょう。女優賞はペドロ・アルモドバル監督の Volver の主な出演女優ら、男優賞はラシッド・ブシャレブ監督の Indigènes の主な出演男優ら(「アメリ」や先頃公開されたリュック・ベッソンの新作「アンジェラ」に出演しているジャメル・ドゥブーズも登場)全員に授与されることになり、式場では大変盛り上がりました。どちらの賞も主要な俳優全員が獲得する、ということはこれまでなかったように思いますが、ここには俳優だけではなく作品全体も評価しているよ、という審査員側のメッセージも感じられます。Volver は脚本賞も受賞しており(また今回も掟破りが)、以前に「オール・アバウト・マイ・マザー」でも監督賞を受賞したアルモドバル監督は、母親をテーマに扱うと、カンヌで受けがよいですね。

さて、最高賞であるパルム・ドールはイギリスのケン・ローチ監督作品 The Wind That Shakes The Barley が、また次点のグラン・プリはフランスのブルーノ・デュモン監督の Flandres が受賞しました。ローチ監督は常にイギリスの社会問題を見つめて映画を撮り続けて来きたベテランで、逆にブリュノ・デュモンは長編がこれがまだ4作目(とはいえカンヌ受賞はすでに2度目)という若手。前者は1920年代のアイルランド紛争を、後者は中東らしき戦場に派遣された若者たちを扱っての受賞です。第2次世界大戦時のフランス軍アルジェリア系兵士を題材にした先述の Indigènes も合わせて、今回は戦争や民族間闘争を取り上げた作品が多く注目されました。

また私がちょっと気になっていたアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督の Babel は監督賞を受賞しました。難解な構成が特徴的な監督ですが、今回はわかりやすい編集にしているそうで、それが功を奏したのかも。銃の問題が取り上げられるなど、これも社会性の強い作品のようです。

スカパーのハイライトでいくつかの作品紹介を見てきたところ、受賞を逃した他の作品にも、興味深いものがたくさんありました。ファストフード業界裏側の暴露本をもとに作られたリチャード・リンクレイター監督の Fast Food Nation、天安門事件の頃の若者たちの日常を描いたロウ・イエ監督の Summer Palace などはぜひ日本でも公開してほしいです。今年は政治や社会問題をテーマにした映画が意識的にノミネートされたそうで、評価が高いものが多く混戦模様でした。ウォン・カーウァイのことだから、映像美や実験性のあるものが有利かなと思っていたら、それどころかシンプルでストレートに事柄を伝えるやり方のほうが好まれたようです。パルム・ドールは満場一致だったそうですから、真摯に作られた映画の力強さがまさに「国境を越えて」審査員に受け止められたといえるでしょう。

来年は第60回という節目の年。近年のカンヌはメッセージ性の強い映画が多く登場していますが、次回はどうなるのでしょう。あまのじゃくな私は、こうなると純粋な「娯楽」映画にも頑張ってもらいたいなあと思ってしまうのですが…

exquise@extra ordinary #2

banner_02.gif
↑クリックお願いします!

French Bloom Net 最新記事「FLOWER BY KENZO」(06/02)
posted by cyberbloom at 21:38 | パリ ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック