2006年05月26日

Musique pour le café −cyberbloom編

「カフェのための音楽」というのを勝手に企画して、exquiseさんが先に書いてくれたのですが、私の方がだいぶ遅れてしまいました。

私の場合、カフェは実際に存在するお店というよりは、コンセプトしてのカフェ。確かに音楽は音の構築物だが、そのときの状態に合わせて、聞こえるもの、見えるもの、生まれるものが違う。配置された音との交渉、対話によって、そのつど現れる経験や引き出される記憶。環境音楽はその経験のゆらぎ度が高い。どんな環境にも合うというより、風景や想像力と交渉する余地の大きい音楽。

78年に環境音楽の始祖、ブライアン・イーノが music for airports というアルバムを出した。実際の空港のために書かれた曲ではなく、コンセプトとしての空港。しかし、ピッツバーグ空港がこの曲を流し、客から苦情が殺到したらしい。割と頻繁に外国に行ってたときに、トランジットの待ち時間によく聴いていた。だだっ広い茫洋とした空間を見上げる空港のカフェとかによく合う。walkman で聴くのはいいが、空港が流していたとすれば確かに違和感を覚えるかもしれない。人と共有する音楽ではない。美術館と環境音楽の親和性が高いのは、美術館は基本的に孤独な場所だから。私にとって、カフェもまた孤独な場所だ。

Eden 東京 Soulshine

EDEN/EVERYTHING BUT THE GIRL
EBTGのファースト。80年代の定番のひとつ。ジャジーに、アコースティックに、軽やかに駆け抜ける気持ちのよいナンバーの数々。スローに落とし、しっとり歌い上げる変速技も心憎いほど。パンク一辺倒だった私に、大人を感じさせてくれた最初の音楽。これなんかは実際のお店でかかってて欲しい。トレーシー・ソーンとベン・ワットのソロ、A DISTANT SHORE と NORTH MARINE DRIVE もそれぞれお奨め。

□「東京」サニーデイ・サービス
フォーク酒場が団塊のオジサンたちに大人気らしいが、このアルバムも70年代テイストが色濃い。艶やかなストリングスと一緒に、メロメロメロウなメロディがレトロな日本の風景を描き出す。中でも「あじさい」が秀逸。カフェでいうなら、縁側のあるお座敷カフェか。

SOULSHINE/DJ CAM
フランス発。最高にクールなクラブ系の音。踊れるけど、あえて踊らずに、聴き流したい。ボーカル&ラップものもいいが、間奏曲的に入る短いつなぎの曲も心憎い。DJの面目躍如。ヒップホップは本来泥臭い音楽だが、ここまでヒップホップを洗練させていいのかって思えるくらい。ヒップホップをジャズで徹底的に磨き上げたらこうなる。オシャレだけど、遊び心もふんだんに盛り込まれている。これは夏の夜、そして地下室のイメージ。そういえば1曲目のタイトルは SUMMER IN PARIS だった。昼間の熱がすっかり冷めた石造りのヨーロッパの街の地下から聞こえて来そう。1枚目のUNDERGROUND VIBES のビブラフォンの音も心地よかった。夏の夜の汗ばんだ闇から聞こえてくる、そして闇を奥深くまで振るわせるビブラフォン。

AMBIENT 2/BRIAN ENO &HAROLD BUDD
ブライアン・イーノのアンビエントシリーズ第2弾。副題は The Plateau Of Mirror (鏡面界)。イーノはピアノの音を、一音一音、宝石のように響かせる。その音響処理が見事。音響風景としては、ピアノの音がゆっくりと降り積もるような雪のイメージ。しかし、この冷たい音の粒は、緑が萌え揺らぐ今の季節にもはまる。真っ白な壁の一部が切り取られて、鮮やかな緑がのぞく。そういう風景がピアノの音によって、一瞬、鮮やかさを増したり、波紋のように揺らいだり。音そのものがこぼれ落ちる木漏れ日の光の粒になったり。半覚半睡の午後。

POTENTIAL MEETING / SILENT POETS
SILENT POETS にはアンビエント的な試みもあり、BEAMS が手がけたプロジェクト hotel id+ (「第一ホテル東京」の全室をプロデュース)に、ホテルの客室のための音楽を提供している。題して、SOUND TRACK FOR HOTEL+ID。これはカフェにも合うだろう。初期の POTENTIAL MEETING もいい。最近の洗練された音よりも、このアルバムをいちばんよく聴いているかもしれない。素人臭さと手作り感が残る、とてもシンプルな音。そこが逆にしっくりくる。ジャケットワークも秀逸。


■これはいちおうバトンの一環なので、次は木魚さんにタッチ!

cyberbloom

banner_02.gif
↑クリックお願いします!
☆French Bloom Net 最新記事「The Sweethereafter」(05/26)
posted by cyberbloom at 22:09 | パリ ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | Musique pour…のための音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック