2009年04月29日

イザベル・アンテナ「南の海の魚」

夏に向けてボサノバ。

愛にエスポワール ABC・・・〜アンテナ・ベスト

ボサノバはカフェで流れるオシャレ音楽の代名詞のようになっているが、サンバをベースにして生まれたブラジルの音楽。ジョアン・ジルベルトアントニオ・カルロス・ジョビンといった巨匠がまず思い浮かぶが、本来ポルトガル語で歌われ、その独特の柔らかい発音がボサノバの魅力になっている。

ポルトガル語にはフランス語と同じく、鼻母音(鼻にかかった柔らかい母音)がある。本場のボサノバからは、アゥン[綴り表記はão]というポルトガル語の二重鼻母音がよく聞こえてくるが、ボサノバは鼻母音の特性を生かした歌。だからボサノバはフランス語とも相性がいい。

今日授業で聴いたのは、イザベル・アンテナの「南の海の魚」。

poivre(胡椒)、vanille(ヴァニラ)、jasmin(ジャスミン)、safran(サフラン) など、歌詞にはトロピカルなイメージがちりばめられ、バックの演奏も心地よくもミニマムな音作り。ボーカルにバックの音が被らないので、ヒアリングの教材にも最適な数少ない歌モノだ。フランス語の発音もクリアに聴き取れ、単語の響きをひとつひとつ堪能できる。この曲はアルバム「愛にエスポワール」に収録。原題は Hoping For Love で、英語でわかりやすいのに、フレンチな感じを出したいためか、邦題ではわざわざ「エスポーワール espoir (=hope 英)」という語を使っている。

アンテナのボサノバは、もちろんでフェイクで、ボサノバのニューウェーブ的解釈なわけだが、それゆえ、ボサノバ以上にポップで洗練されている。アンテナ自身はパリ生まれのようだが、彼女はベルギーのレーベル、「クレプスキュール」(クレピュスキュールが正しい表記)の代表的なアーティストだった。80年代当時はこのレーベル名のエキゾチックな響きにやられてしまったものだが、坂本龍一もイギリスの「チェリーレッド」とともに大推奨していたっけ。Crépuscule は黄昏と訳されるが、昼と夜の境界を意味する。ヨーロッパでは一種の「魔の時間帯」とみなされ、とりわけ昼の長い(北ほど長くなる)夏のたそがれ時は独特の雰囲気がある(関連エントリー「ヨーロッパの長い一日」参照)。

1980年代の始めにイザベルは、仲間と「アンテナ」というバンドを組み(最初はバンドの名前だったようだ)、クラフトワーク(ドイツの元祖テクノ・ポップ)に触発された曲をやっていたというから、いろんな方向性の試行錯誤があったのだろう。いくつかデモテープを作り、「クレプスキュール」と契約。1982年、アントニオ・カルロス・ジョビンの名作をカバーした「The Boy from Ipanema」(原曲は「Garota de Ipanema(イパネマの娘)」)を含んだ最初のアルバム「Camino del sol」を発表。ボサノバ&ジャズ・ポップ路線が確立された。


MY SPACEで「南の海の魚」を含むアンテナの曲を聴けます。

イザベル・アンテナ公式サイト

□ALBUM INFO:
愛にエスポワール
ABC…〜アンテナ・ベスト」(お薦めベスト盤)
Toujours du Soleil」(今も現役、2006年に出たクラブ系サウンド)
*実はアンテナのCDは FRENCH BLOOM NET での売り上げベスト1(とはいっても合計数十枚程度だが)。

関連エントリー「COOL BOSSA IN MY POD」でブラジルのボサノバを紹介しています!




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posted by cyberbloom at 23:35 | パリ | Comment(4) | TrackBack(1) | フレンチポップ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
新着からきましたー!足跡ですっ!☆でゎ
Posted by はちみちゅ at 2006年05月26日 08:53
はちみちゅさん、足跡ありがとうございます。またお立ち寄りください!
Posted by cyberbloom at 2006年05月26日 21:56
「南の海の魚」懐かしいです。開局まもない(あるいは試験放送の)J-Waveで1日何回も流していました。たぶん中原仁さんの選曲ではないかと想像します。

この曲は、ジョビンに敬意を表して作られ、「ゲッツ=ジルベルト」の雰囲気を出すために、オーバー・ダビングを一切やめ、一発どりで録ったらしいですね。
Posted by まいじょ at 2006年05月27日 15:59
まいじょさん、コメントありがとうございます。タワレコに寄ったらアンテナの新譜が出てました。クラブサウンドアレンジの新しい夏の定番です。でもこの曲がやはりベスト。一発どりということですが、そのせいでバックの音がかぶらずにボーカルがはっきり聞こえるんですね。そのシンプルさが魅力です。ゲッツのサックス的なものがないぶんもっといいのかも(笑)。
Posted by cyberbloom at 2006年05月27日 16:17
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