2006年05月21日

デモとブログ−フランスのCPEをめぐるデモ(4)

レジェンドフランスで若者のデモがCPEを撤回させたことは、日本でもかなりの衝撃をもって受け止められ、様々な場所で論議を巻き起こした。先日、「ニュースの深層」(朝日ニューススター、5月5日、辻広雅文VS増田一夫)でもこの問題がテーマとして取り上げられていた。なぜ日本ではデモが起こらないのかという議論の中で、フランスの若者たちが自分たちの力で政治を動かせると確信しているのは、68年の五月革命が成功体験として語り継がれているから。日本の場合、デモが胡散臭く見られるのは、学生運動が内ゲバ化して、殺し合いをしてしまったことにある、という指摘があった。浅間山荘事件がその象徴的な結末だ(当時、私は小学生だった)。

そういえば、中曽根元首相が自分の重要な功績のひとつは組合を潰し、弱体化させたことだと豪語していた。そういう権利侵害を自慢する政治家も信じられないが、そういうマイナスイメージに権力側もつけこんできたのである。

もちろん、その時代から地道に活動を続けている人たちの努力や功績は当然評価されるべきである。しかし、悪いイメージを持っている人たちもいるのならば、別の戦術も考えてみればいい。例えば、9・11(ニューヨーク同時多発テロ)以降、日本にも広まった「ピース・ウォーク」。その特徴は、従来の政治運動の形式や用語を意図的に避け、多様な人々が参加できるようにしたこと。数千人規模のデモやイベントを、反テロや反戦という「ゆるい」理念の枠組みでまとめ、それまで政治に関わって来なかった人たちを広く集めた。デモではシュプレヒ・コールはやらずに、ジョン・レノンやボブ・マーリーを歌い、昔のフラワー・ムーブメントをまねて花束を配る。

上の世代はそういうパロディ的なやり方に違和感を覚えたようだ。辺見庸が、若いやつらのデモは甘っちょろいと、テレビで批判してたのを思い出す。彼にとっては「絶対安全圏からにこにこ笑って反戦」ということなのかもしれないが、政治運動の敷居を下げ、入り口を増やして、数千人規模の人間を動員したことは注目される。

先回、デモがだめならブログがあるじゃないかと書いた。まさに「ブログ・デモ」のような動きが実際に起こり、世論に影響を与え始めている。そのいくつかを紹介。

謎のヘアメイクによる、ご存知「きっこのブログ」(去年、同じランキング部門で後ろにつけていたので親近感が。アクセスは3桁くらい違いましたが)。このブログは実際に政治を動かすほどの発言力と動員力を持ち、最近では「耐震偽装事件」で自民党やマスメディアにテポドンと称するメール攻撃を呼びかけ、証人喚問実現に貢献。マスコミもこのブログの裏情報をあてにしているらしい。

世に倦む日日」では、ほとんど既成事実化している改憲を阻止するために、戦略性に欠ける「9条の会」に対して具体的な提言をしている。「現在の護憲派の連中は、ロートルばかりで、マルクス主義の教義と運動、古臭い左翼陣営の言葉と方法しか知らず、政治の実践にマーケティングの理論を応用する術を知らない」という厳しい批判に基づき、護憲政党を早急に結成することを訴えている。その際のフロントマンには川原亜矢子(流石、フランス帰り!)と桜井和寿(ミスチルのボーカル)の登用を計画。「9条の会」は、何だかなーって感じの文化人の会ってイメージしかなかったが、実は有名な芸能人が多数参加している。彼ら/彼女らを活用し、さらに他の有名人を説得していこうという戦術だ。一見、荒唐無稽のように思えるが、逆にこういう具体的な想像力は妙に説得力がある。小森陽一が戸別訪問作戦を展開しようと呼びかけているのには確かに愕然とさせられた。

そして今国会で強行採決されそうになった共謀罪法案。このブログにもトラックバックをいただいた「再出発日記」さんの記事からの抜粋−「東京新聞」によると「共謀罪」を取り上げるブログが4月15日に50だったのが、4月22日には600に膨れあがったことが強行採決を断念させたとのこと。その後も激増。「どうせゴールデンウィークで遊び終えた頃には事態は収まっている」と与党は思っていたらしいが、その予想に反し、反対の声はますます大きくなっていった。法曹関係者や小さい無数の団体の地道な努力と、ブロガーたちの奮闘によるところが大きい。とくにITの言論は検索することで、今現在どれだけの反対の言論がつくられているか、瞬時にわかってしまう。

IT世論は確かに危うい側面もあるだろうが、日本でもブログが世論形成の一翼を担い、それが参照され初めているということ。それを動かしているのは従来のジャーナリストや知識人ではなないし、そこにはエリートが大衆を啓蒙するという関係もない。自分で情報を集め、考え、情報発信するブロガーの草の根的な動きだ。ほんとにここ1年くらいに始まった動きだろう。(続く…次は「デモと音楽」というテーマで最終回!)

cyberbloom

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posted by cyberbloom at 23:16 | パリ ☁ | Comment(0) | TrackBack(2) | 時事+トレンド特集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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