2006年05月14日

カンヌ映画祭特集(5) 司会のヴァンサン・カッセルって誰?

今年のカンヌ国際映画祭で開会式と受賞式の司会を務めるのは、ヴァンサン・カッセル。1966年生まれで、91年に映画デビュー。何と言っても、彼が最初に世界の注目を集めた作品が、マチュー・カソヴィッツ監督の「憎しみ」だ。この作品は1995年のカンヌの監督賞を受賞。ヴァンサン・カッセルはパリ郊外に住むユダヤ系の若者、ヴィンツを演じた。

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Jusqu'ici tout va bien...
L’important, c’est pas la chute, c’est l’attérrissage.

憎しみ冒頭の、ライムのように語られるこの台詞にいきなりやられてしまう。50階の建物の屋上から落ちている男が自分に語りかけている。「ここまでは大丈夫。重要なのは落ちていることではない、どう着地するかだ」。50階の高さから落ちているのだから、助かりようがない。それがパリの郊外に住む移民系の若者の現実だ。何千台もの車が焼かれた、去年の秋の暴動も記憶に新しい。警官に追いかけられた郊外の少年が変電所に逃げ込み、感電死した事件をきっかけにフランス全土に広がった。カソヴィッツがこの映画を撮った動機として、同じような事件があった。1992年、パリの交番で18歳のザイール出身の若者が殴り殺された。郊外の若者は、失業率が異常に高く、ホスト国からはよそ者として蔑視され、常に犯罪予備軍として警察の監視下にある。そういう状況下で、方向性のない憎しみを鬱積させる若者をカッセルは見事に演じた。その後カソヴィッツの「クリムゾン・リバー」にも出演。ジャン・レノの相棒役を務めた。父親も有名な俳優(ジャン=ピエール・カッセル)だが、「憎しみ」を見てショックを受けてたという。「フランス映画にありがちな気取った芸術作品に出てたやつにはわからないさ」と二世俳優の枠に収まろうとしない頼もしい発言をしている。

ドーベルマンカッセルのもうひとつの重要な作品は「ドーベルマン」である。このヤン・クーネン監督の作品によって日本でも広く知られるようになり、自動車のCMにも声がかかった。「ドーベルマン」はテクノチューンにのって疾走する鬼畜系バイオレンス映画。フランスでも物議を醸した。カッセルが演じたのは、ロケットランチャー内蔵のマグナム357で銀行強盗を繰り返す主人公、ドーベルマン。これもカンヌで上映され、アメリカのミラマックス社の社長を震撼させたという。下品極まりないキレた登場人物たちが、汚い言葉を吐きまくる。自分でシナリオを起こして学生と読んだが、訳すのに困った覚えがある。大友克洋の「アキラ」やケン・イシイのテクノが大好きだというヤン・クーネン監督だが、映画の中でギャングのひとりに「ゴジラ」への愛着を告白させている。カッセルの妻は、今年の審査委員でもあるモニカ・ベルッチ。「イタリアの宝石」と呼ばれるほどの美貌を持つ。「ドーベルマン」では超セクシーな爆破のスペシャリストを演じていた。

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posted by cyberbloom at 10:24 | パリ | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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