2006年05月09日

カンヌ映画祭特集(2) 去年のサプライズと掟破り

昨日に引き続き、去年のカンヌ国際映画祭のおさらいです。カンヌの季節が再びめぐって来たころに、去年のおさらいをすることは意外に重要なことかもしれません。映画祭では一般人は出品作品が見れないので、タイトルやウワサだけで内容を想像するしかありませんが、1年経った今は出品作品の多くがDVD化されているのですから。情報だけの興奮にようやくリアリティが伴うわけです。今日は去年の受賞発表後の exquise さんのエントリーを紹介します。DVD情報も提供しながら。去年もサプライズや掟破りがあったようです。


シン・シティ スタンダード・エディションカンヌ映画祭の授賞式が5月21日に行われました。当日スカパーの生中継で直前の模様から見ていたのですが、式場へのレッドカーペットを歩いていたのは、アモス・ギタイ、ジム・ジャームッシュ、トミー・リー・ジョーンズ、そして「シン・シティ」(注1)を監督したロバート・ロドリゲスなどなど。授賞式に列席した人たちはたいてい何らかの賞を獲得するのが慣例なので、これを見ると大体受賞者がわかってしまいます。しかし審査委員長のクストリッツァは審査員の意見が分かれ、授賞式ではサプライズがあると予言していました。

さて授賞式の結果はすでに方々で結果が報じられているのでご存知の方も多いでしょう。今回は各国の映画に賞が分散する一方で、トミー・リー・ジョーンズの作品(注2)に2つ賞が与えられるという「掟破り」がまたありました。そしてメディアの評価が高かったクローネンバーグ、ヴェンダース、ホウ・シャオシェン、レイガダスらの作品は選ばれませんでした(赤絨毯の上に姿を見せなかったので、予想はしていましたが)。

ある子供パルム・ドールだといいなあと思っていたジャームッシュがグラン・プリに選ばれたとき、私は「まさか『シン・シティ』がパルム・ドール?そういやロドリゲス来てたしなあ…これがサプライズかい」と早合点してました。そうしたらダルデンヌ兄弟の「ある子供」!いとし・こいしのような風貌のこのお二人をすっかり見落としていたんですね〜。まあ確かにこの結果は予想していなかったけれども、全体を振り返ってみるとやっぱり「カンヌ好み」の作品が大半を占めていたように思います。

ダルデンヌ兄弟がこの最高賞を、イラクで行方不明になっているフランス人ジャーナリストとイラク人ガイドに捧げたこと(前回述べましたが、開会式にドミニク・モルも彼らのポートレートを胸につけていました)も印象的でしたが、今回選ばれなかった監督たちの名前を挙げて、「私は芸術表現における競争というものを信じない。このコンペティションに他の偉大な映画人たちとともに選ばれただけで光栄だ。私たちはみな同じ家族の一員であり、私はその家族の一員であることを名誉に思う」というジャームッシュのスピーチもすばらしかったです。

運命じゃない人+WEEKEND BLUES ツインパック残念ながら日本からの「バッシング」は賞を逃しましたが、批評家週間に上映された「運命じゃない人」(内田けんじ監督、DVD右)は大きな注目を浴び、「フランス作家協会賞」、「金のレール賞」、「(ベリー)ヤング・クリティック賞」、「最優秀ドイツ批評家賞」の4賞(注3)を受賞しました。内田監督はこれが長編デビュー作だそうで、今後の活躍が期待されますね。

映画祭は幕を閉じましたが、ここで上映された作品が日本で公開されるのはこれからです。受賞を逃した作品にも面白そうなのがたくさんありましたし(注4)、来年の5月がやってくるのを楽しみにしながら、今回の出品作を1つ1つ味わっていきたいです。もっとも私は専らDVD鑑賞者なので、実際に目にするのはいつの日になることやら…

注1:「シン・シティ」はアメリカのコミックを実写・アニメ・CGを織り交ぜながらフィルム・ノワール調で描いた作品で、ベニチオ・デル・トロ、クライヴ・オーウェン、ミッキー・ローク、ジェシカ・アルバなどが出演。またゲスト監督(!)にタランティーノの名が。今までのコミックを映画化した作品とはひと味違う斬新な映像で、個人的には非常にそそられます。

注2:当初新人監督に贈られる「カメラ・ドール」受賞が有力と思われていましたが、過去にテレビ番組を監督していたことがわかり、対象外に。

注3:いずれの賞も映画祭本部とは別の団体から贈られる賞で、「フランス作家協会賞」は批評家週間に上映された作品のうち最も優れた脚本に対するもの、「金のレール賞」は映画好きの鉄道員たちが選んだもの、「ヤング・クリティック賞」は高校生が選んだもの、「最優秀ドイツ批評家賞」は文字通りドイツ人批評家たちが選んだものだそうです。

注4:たとえばシャルロット・ゲンズブールとシャーロット・ランプリングが共演したドミニク・モルのサスペンス作品"Lemming"、「ロード・オブ・ザ・リング」のアラゴルン役、ヴィゴ・モーテンセン主演のスリラー"A History of Violence"(デヴィッド・クローネンバーグ)、最近気になりっぱなしのケヴィン・ベーコンとコリン・ファース出演の"Where the Truth Lies"(アトム・エゴヤン)、私のなかで「いい男さん」ベスト3に入るサム・シェパードとジェシカ・ラングのカップルが出演した"Don't Come Knocking"(ヴィム・ヴェンダース)などなど。

exquise

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posted by cyberbloom at 22:32 | パリ ☔ | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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