2006年05月08日

カンヌ映画祭特集(1) 去年のカンヌはどうだった?

ダ・ヴィンチ・コード ヴィジュアル愛蔵版今年で59回目を迎えるカンヌ国際映画祭が5月17日、『ダ・ヴィンチ・コード』の特別上映で開幕します。FRENCH BLOOM NET では、「カンヌ映画祭特集」を組み、今年の注目作品から、過去の受賞作品まで、幅広く、また多様な切り口で紹介してみたいと思います。おまけに5月は注目のフランス映画もいくつか公開予定なので、それらもまとめて。

去年のカンヌ映画祭の出品作品のほとんどは、ちょうど1年経った今頃になって次々公開されている状況です。去年、exquise さんがカンヌ映画祭の記事を書いてくれたのですが、逆に今読んだ方がよくわかったり、ピンときたりします。一方で、カンヌ映画祭の出品作品が日本で公開されないことも多く、DVD化を待つしかないこともあります。まずは exquise さんの去年(2005年)のエントリーを紹介してみたいと思います。カンヌ映画祭の各賞の解説もあるので、とても参考になります。


いよいよ5月11日から第58回カンヌ映画祭が始まりました。去年の柳楽優弥君の主演男優賞受賞が記憶に新しいですが、今年はどんな驚きが生まれるのか、早くもワクワクしています。

というのも、今年は例年になく豪華な顔ぶれが参加しているのです。まず、賞レースが展開されるコンペティション(長編映画)(注1)部門には、デヴィッド・クローネンバーグ、ダルデンヌ兄弟、アトム・エゴヤン、ミヒャエル・ハネケ、ホウ・シャオシェン、ヴィム・ヴェンダースなどなど、歴代の受賞者・候補者や実力者の作品がずらりと揃っています(注2)。日本からはイラクでの人質事件を扱った小林政広監督の『バッシング』がノミネートされました。私が注目しているのは、ジム・ジャームッシュとガス・ヴァン・サントのアメリカ勢。ジャームッシュの"Broken Flowers"はビル・マーレイ、シャロン・ストーンなど大物が出演する久々の新作長編で、カンヌでの前評判も高く、ファンとしては楽しみです。またヴァン・サントの"Last Days"は、90年代初頭のロック・シーンに衝撃を与えたアメリカのバンド「ニルヴァーナ」のフロントマン、カート・コバーンが自殺にいたるまでの数日間を扱ったもので、2年前にパルム・ドール(注3)と監督賞をダブル受賞した「エレファント」(注4)が非常にすばらしかっただけに、期待大です。

映画祭ではこのほかさまざまな部門に分かれて、作品が上映されます。特別招待作品では、去年『マトリックス・リローデッド』が話題になりましたが、今年の目玉はやはりジョージ・ルーカスの『スター・ウォーズ エピソード3』でしょう。その他ウディ・アレンの"Match Point"、日本からは鈴木清順の『オペレッタ狸御殿』(オダギリジョーとチャン・ツィイーという異色の組み合わせ!)などが上映されます。またコンペ外ですが、芸術志向の強い映画を集めた「ある視点」部門には、フランス人監督フランソワ・オゾン(注5)や日本の青山真治などが名を連ねています。これ以外に、フランス映画協会など別組織によって運営される「監督週間」、「批評家週間」といった部門もあり、ここでも小栗康平、柳町光男、内田けんじの日本人監督3人の作品が上映されます。

さて話はコンペに戻りますが、カンヌ映画祭では審査員が毎年変わります。今年の長編部門の審査委員長は、95年「アンダーグラウンド」でのパルム・ドールのほか、カンヌで数々の賞を獲得したボスニア・ヘルツェゴビナのエミール・クストリッツァ監督です。また審査員は各国の映画監督(「ミッション・インポッシブル2」のジョン・ウーなど)や、作家、俳優たちがつとめます。審査員陣のカラーが賞の行方を大きく左右するので、メディアの批評などはあまりあてになりません。昨年のウォン・カーウァイの「2046」のように、下馬評は高かったのに結局何の賞も取らなかった、なんていうこともあるのです(注6)。さあ、どの作品がパルム・ドールを獲得するのでしょうか。この結果は次回のエントリーでお伝えします!

注1:Compétition−「競争」の意味です。この部門は芸術性と商業性のバランスがとれた作品を対象としています。

注2:とはいうものの、無名・有名、新人・ベテランを問わずノミネートするのがカンヌのよいところ。今回も各国から幅広いジャンルの映画が集められています。なかにはアメリカの俳優、トミー・リー・ジョーンズの初監督作品、なんていうのもあります。

注3:Palme d'or−「金のシュロ」の意で、シュロの枝はこの映画祭のトレードマークです。カンヌには「グラン・プリ」という賞もあってまぎらわしいのですが、現在は最高賞がパルム・ドール、次点の賞がグラン・プリです。

注4:この年、カンヌは賞が1つの作品に集中しないように、各賞を分散させるきまりを作ったばっかりだったのに、早速例外を作ってしまいました。

注5:François Ozon −フランスの若手監督で最も意欲的なのは彼でしょう。次々と問題作・話題作を送り出しています。日本でも「まぼろし」、「8人の女たち」、「スイミング・プール」などの作品がDVDもしくはビデオで鑑賞できます。

注6:ちなみに去年の審査委員長は「キル・ビル」の監督クエンティン・タランティーノ。コンペ候補には彼の趣味が反映されたのか、ヴァイオレンスものや日本のアニメなどが挙がっていましたが、グラン・プリに彼好みの「オールド・ボーイ」(パク・チャヌク)が選ばれたものの、パルム・ドールは政治色の強いマイケル・ムーアの「華氏911」に決まりました。おそらくキャスリーン・ターナー、エマニュエル・ベアールといった大御所女優を集めた審査員陣の意見が強力だったのでしょう。タランティーノさんは押しが弱そうですし…。

exquise

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posted by cyberbloom at 21:50 | パリ ☀ | Comment(0) | TrackBack(2) | 映画祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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