2006年04月29日

グローバルブランド「RED」

4月に予定されていたU2の来日が延期されてしまったようだ。今年の後半になるとか。U2のデビュー当時は本当にかっこよかった。Sunday Bloody Sunday と New Years Day は鮮烈だった。あのギターの音を出してみたいと思った。オヤジバンドと化した今はつまらないと言っているわけでなく、最近は音楽的には全くフォローしていないだけ。今日のお題は音楽ではなく、U2のボノが関わったブランド「RED」。
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89カ国から政財界の指導者が集まる世界経済フォーラム、いわゆるダボス会議が1月に行われ、中国とインドの経済成長が話題の中心だったが、もうひとつ関心を集めたのが、新プロジェクト「RED」。 REDとは、アフリカにおけるエイズおよびマラリア対策をより効果的に進めるために、U2のボノが中心になって考案されたブランド構築プロジェクト。実際にREDという新ブランドから商品を発表し、販売することによって世界基金支援(The Global Fund)に直接義援金が集まる仕組み。つまり、世界的なブランド企業がREDブランドの付いた商品を売り、その収益の一部を世界基金支援に支払う。この基金は、アフリカのエイズ、結核、マラリアなど、恵まれない女性や子供たちを援助する組織として2001年発足し、各国政府、様々な市民運動団体、企業などが参加している。

今のところ、REDに関わっているのはアメリカン・エクスプレス、ギャップ、コンバーズ、ジョルジョ・アルマーニ。アメックスはREDアメックスカードを発足し、使用額の1%がREDへ。ギャップはアフリカ製の赤いTシャツを販売。コンバースはシューズ(写真、右)を。ボノが「ヴァーティゴ・ツアー」でかけていたサングラス(写真、左)は、アルマーニの「レッド・カプセル・コレクション」の第1号商品で、4月から入手可能になっている。フランス企業の名前はないけど、ルイ・ヴィトンとか参加すれば良いのに。

「敵と対立するのではなく、敵の中に入りこんで、敵を変える。ワールドブランドと敵対するのではなく協同する、したたかな戦略」とCUT(4月号)のライターは評価していた。しかし、ロックにとってビジネスが敵だというのはあまりにもロマンティックな考え。ロック・アーティストがビジネス(=金)の世界を汚いと歌い、ファンの共感を得ながら、がっぽり儲ける。昔からよくある構図だ。アーティストは80年代のあたりから、身の回りのことだけじゃなく、世界の平和や貧困のことを気にかけ始めた。アーティストはメッセージを歌うだけでは信用が得られず、自ら実践しなければならなくなった。そうしないと倫理と実践のバランスがとれなくなってきたのだ。ボノ自身もREDを慈善事業じゃなくビジネスだと語ってるが、ロックはすでにチャリティーコンサートを活用することを含めたビジネスだったと言える。ボノはこのような開き直り戦略に加え、自分の知名度を徹底的に活用する。何よりも話題になることが重要だからだ。Ipodのコマーシャルにノーギャラで出たらしいが、話題の製品と話題の人物の相乗効果を狙う。

エイズに関して言えば、エイズ治療薬は特許の壁によって値段がつりあがっていて、本当にそれが必要な人々の手になかなか渡らない現実がある。製薬会社も慈善事業をやっているわけではない。あくまでエイズ治療薬は利益をあげる手段なのだ。

ボノの今回の役割はコーディネーターだ。今までつながらなかったところをつなげる。そして重要な顧客である若者たちが自然に参加できるように、彼ら彼女らの欲望の方向にシステムを構築する。レコードを買い、カフェやクラブに行き、服やアクセサリーを買う。そういう日常のライフスタイルをなぞるように、その中に組み込む。それが特別な行為になってはいけない。ファッションと倫理を結びつける戦略も最近よく使われ、エコロジーの分野では常套手段。ヒップホップを聴いているなら、ゴミを分別しよう、みたいなCM。

ネットを使って「できるだけ多くの人々に少しづつ」負担してもらう。ホワイトバンドを売るのも手だが、ネットショップの方が効率的だ。『ウェブ進化論』にも書かれていたが、そういう効率的な富の再分配のシステムを構築することが重要になってくる。いちばんコストがかかるのが流通の過程だったりするから。資本のグローバル化が世界規模の搾取構造を可能にしているとすれば、もうひとつのグローバル化の象徴であるネットがそれを逆流させ、再分配するのだ。

■SHOP INFO:RED

グローバルブランド「RED」(2)-世界エイズデーとU2の来日




cyberbloom

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posted by cyberbloom at 23:22 | パリ ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | ART+DESIGN | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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