2006年04月21日

『危険な関係』ラクロ

危険な関係 (角川文庫)「ヨン様」主演の映画「スキャンダル」、アメリカの若者たちのあぶない恋愛ゲームを描いた映画「クルーエル・インテンションズ」、そして昨年フジテレビでやっていたお昼の連ドラ‥‥さてこれらの共通点はなんでしょう?もうおわかりですね。すべての原作が、18世紀のフランス小説『危険な関係』だということです。上記3作のみならず、この小説は世界各国で映画化・ドラマ化されてきました。今から200年以上も前に書かれた小説が、なぜこうも繰り返し映像化されるのか?いくつか理由を考えてみました。

1 まず内容がスキャンダラスである、ということ。表向きは貞淑な未亡人メルトイユ夫人が、かつて捨てられた男に復讐するため、過去の恋人ヴァルモン子爵と共謀して男の婚約者を堕落させ、さらに周囲の人物を次々誘惑していく‥‥という物語は、現代でもかなりショッキング。

2 とはいえそれほどいやらしい感じがしないのは、目的の行為そのものよりも、そこに至るまでの経過に語りの重点が置かれているから。2人は誰を使ってどう動くか逐一報告し、戦術の善し悪しを互いに批評し合いますが、次第に相手よりも優位に立とうとする権力争いになり、その成り行きはまるでチェスか将棋の試合でも見ているようです。

3 その報告をはじめ、この小説はすべてが手紙の形式で語られています。「手紙」は、秘め事を述べるに格好の場ですが、一方で語られる内容にどこまで書き手の本心があらわれているのかは謎。なので、映像化する際には色々な解釈が可能になります。

4 中心の2人のほか、清らかで信仰の厚い人妻だとか、幼くて世間知らずの少女だとか、登場人物の個性がはっきりしていて、「あの俳優さんで」とついキャスティングしたくなります。

映画化された作品を3本見てみましたが、原作に匹敵するものは残念ながらありませんでした(その感想はこちらで)。すぐれた作品は映像作家たちの創作意欲を沸き立たせる反面、完全な映像化はやはり難しいのですね〜。ちなみに私が知るかぎり、最初に映画化した国は意外なことに日本(1957年)です。井上梅次監督のこの作品でヴァルモンを演じたのは、何と金子信雄!「仁義なき戦い」の組長が世紀のプレーボーイ役ですよ!いや〜実に見てみたい!!

危険な関係〈上〉
危険な関係〈上〉
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C.D. ラクロ Choderlos De Laclos 伊吹 武彦
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4 大人の小説
3 長編書簡体小説


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posted by cyberbloom at 21:59 | パリ | Comment(0) | TrackBack(0) | 書評−フランス小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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