2006年04月17日

『ルパン三世』

よりぬきパンチ・ザ・モンキー イン・ザ・ミックス人気アニメ「ルパン3世」がテレビで放映開始されたのは1971年のこと。モーリス・ルブランの有名な探偵小説シリーズの主人公、アルセーヌ・ルパンの孫という設定だった。ルパンはLupinと綴り、「リュパン」がより正確な読み方。

80年代以降、フランスでは日本のアニメが爆発的に流行している。元祖ルパンの国なら「ルパン3世」もさぞかし人気があるのだろうと思いきや、ヨーロッパではイタリアで人気が高いようだ(1)。イタリア人の友人によると、作者のモンキー・パンチ(現在、大手前大学メディア芸術学科教授)が古いイタリア映画好きで、「スタイリッシュでダンディな泥棒」というキャラはそこから来ている(2)。それがアニメを通して逆輸入された。本来はイタリア的なテーマなんだと彼は誇らしげに言っていた。

先日、ジャズが好きだという学生と話していて、「君の世代がジャズに興味を持つきっかけって何?」と聞いたら、彼は考え込んでしまって、ようやく出てきたのは「ルパン3世かな」という結論だった。確かに大野雄二のサントラは印象的だ。「ルパン3世」のトリビュートアルバム「パンチ・ザ・モンキー イン・ザ・ミックス」もすでに3枚出ていて、東京スカパラダイスオーケストラや元ピチカート・ファイブの小西康陽らのリミックス・ヴァージョンが話題になっていた。

ジャン=リュック・ゴダールの「勝手にしやがれ」というヌベル・ヴァーグ期の有名なフランス映画があるが、あれも犯罪に手を染めるスタイリッシュな若者とジャズの組み合わせだった。シーンにカッコよく色を添えると思えば、唐突にシーンを切り裂くジャズのフレーズ。主人公のミシェルは、犯罪の企みの合間に、ジーン・セバーグ扮するヤンキー娘、パトリシア(不二子ちゃんとは全然タイプが違うけど)をひたすら口説いている。ミシェルの服装もいちおう、「ダークカラーの細身のスーツに細いネクタイ」というジャズメン・スタイルの定番に沿っているのかな。考えてみれば、「勝手にしやがれ」もイタリア礼賛の映画で、あちこちでイタリアへの憧れが口にされている。

ジェノーバ、ミラーノ!チネチッタ!一緒にローマへ行こう、パトリシア!

□注記:exquiseさんとbird dogさんから補足をいただきました。
1)ルパン三世は、フランスでは著作権の問題でルパンの名前が Edgar に変えられ、ただの「有名な泥棒」という設定になってしまったらしいです。全然イメージが変わってしまいますね。カラーシャツに白や黄色のネクタイとか、確かにルパンの服の着こなし方はイタリアっぽいかも。乗ってる車もイタリア車(フィアット・チンクチェント)だし、今回のエントリーを読んでなるほど〜と思いました。お洒落なアニメだったのだと再認識です。(by exquise)

黄金の七人2)確認したことはありませんが、『ルパン3世』のモデルはイタリアの泥棒映画『黄金の七人』ではないのでしょうか。チームプレイで豪快な盗みを実現するところや、銀行の下にトンネルを掘ってベルトコンベアーで金塊を運ぶ話、『ルパン3世』にもあったような気がします。で、『黄金の七人』の音楽といえば、フリッパーズ・ギターが「恋とマシンガン」で引用したダバダ・スキャットですから、大野雄二の念頭にあったのは、アルマンド・トロバヨーリかもしれません。1960年代のイタリア映画は、B級でも音楽だけはやけに洗練されたものが多いですね。(by bird dog)

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posted by cyberbloom at 17:48 | パリ | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ+アニメ+BD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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