2010年10月11日

週刊フランス情報 4 - 10 OCTOBRE 前編

中国に劉氏の釈放呼び掛け
■クシュネル仏外相は8日、今年のノーベル平和賞に中国の民主活動家、劉暁波氏が選ばれたことを受け、「フランスは欧州連合(EU)と共に劉 氏の逮捕に懸念を表明し、何度も釈放を呼び掛けてきた。その要望を繰り返す」との声明を出し、中国当局に対し改めて同氏の釈放を求めた。 
(10月8日、時事通信)
★ところで、2010年のノーベル文学賞はペルー出身の作家、マリオ・バルガス・リョサ氏(74)に。バルガス・リョサ氏は、1982年にノーベル文学賞を受賞したコロンビアのガルシア・マルケス氏らと共に60年代のラテンアメリカ文学ブームを先導。首都リマの士官学校を舞台にした小説『都会と犬ども』 (新潮・現代世界の文学)などの作品で知られる。同氏は1990年の大統領選にも立候補していてフジモリ元大統領に敗れている。

緑の家(上) (岩波文庫)楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)フリアとシナリオライター (文学の冒険シリーズ)

ブルカ禁止法は合憲、仏憲法会議
■フランスの法律について違憲審査を行う憲法会議(Constitutional Council)は7日、ニコラ・サルコジ政権が推進してきた「顔をすべて覆うベール」の公共の場所での着用を禁じる法律に対し、合憲との判断を下した。ただし、信仰の自由を侵害するおそれがあるとして、礼拝所での着用は適用除外とした。合憲判断を受け、同法は来年から施行される。
■国民議会と元老院を通過して成立したこの法律には「イスラム」との明記はないが、イスラム教徒女性のブルカやニカブの公共の場での着用を禁じることがねらい。反対派は、仏欧の人権法に違反していると訴えている。
(10月8日、AFP)

英仏横断ユーロスターに独シーメンス車両、仏閣僚ら不快感
■英国と欧州大陸を結ぶ高速鉄道ユーロスター(Eurostar)の次世代車両を、独シーメンス(Siemens)が供給することが7日、発表された。これまで車両を供給してきたのは仏輸送機器・重電大手アルストム(Alstom)。ユーロスターの決定に驚いた仏政府は、安全性を理由に強い不快感を示している。
■ユーロスター・インターナショナル(Eurostar International)は7日、パリ・ロンドン間の路線に導入する次世代車両10編成を、独シーメンス製の高速鉄道車両ヴェラロ(Velaro)に決定したと発表した。新車両の導入と従来型車両の整備・改修に、8億ユーロ(約900億円)を投資する計画という。
■しかし、ユーロスターの最大株主は、株式55%を保有するフランス国鉄(SNCF)だ。発表を受け、フランスのジャンルイ・ボルローエコロジー・エネルギー・持続的開発相とドミニク・ビュスロー運輸担当相は「仰天した」と述べ、不快感を表明。声明で、シーメンスの車両が海峡横断トンネルの通行安全基準を満たしているかどうか確認するよう、ユーロスターに要求した。
■これまで車両供給を担ってきたアルストムは、シーメンス製車両は安全基準を満たしていないと主張している。仏高速鉄道TGVの車両製造元であるアルストムは、欧州・世界の鉄道車両市場でシーメンスを大きく引き離しており、シーメンスは長年、対抗意識を燃やしてきた。
(10月7日、AFP)
★世界各地で鉄道事業の受注争奪戦が展開。11月下旬から年明けにかけてブラジルと米フロリダ州で高速鉄道の入札が行われる見通しとなっていて、日本やフランスやドイツのあいだの競争となるが、新しいライバルとして中国も浮上。総延長1290キロの高速鉄道計画を持つ米カリフォルニア州のシュワルツェネッガー知事も来日したところ。

水道事業の危機 パリは民営から公営へ逆戻り
■ベルトラン・ドラノエ市長は「よりよい価格と、よりよいサービスを提供するため、100年以上続いた企業の独占を終わらせ、上下水道の運営をすべて市が取り戻す」と宣言した。再公営化の背景には、25年の間に水道料金が3倍以上に値上がりし、市民の不満が高まっていたことがある。「ヴェオリア」や「スエズ」といった水メジャー企業を生み出した水道民営化の先進国で、公営でしか低コストの良質なサービスを維持できなくなったというのは皮肉な話だ。
■「ポンプの部品の交換時期は異音で分かる。マニュアルにも交換時期が書かれているが、人間の経験則に勝るものはない」。50代の大阪市水道局職員は、こう言って胸を張る。機械の“クセ”は、後輩に受け継がれていく。技術の継承以上に、職員は「水を絶対に止めてはならない」というスピリットを、徹底的にたたき込まれてきたという。
■いったん水質で問題が起きれば、数十万人、数百万人が影響を受ける。神田氏は「公営がだめとか私営がだめとかいう以前に、情報の透明化や決定のプロセスを公開すべきだ。多くの事柄が、住民の知らないところで勝手に決められている」と指摘する。
■命の源である水。空気のように、あって当たり前のものだが、日本の水道事業は、事業者による24時間態勢の監視があり、日夜たゆまぬ技術向上の努力があって維持されている。 かたや、公営水道の事業者は深刻な財政難に見舞われ、将来的な水道料金の高騰も懸念される。国内でも下水道事業を含め、一部で民営化が進むが、公営であろうと民営であろうと、市民生活に重大な影響を及ぼすような事態をつくり出してはならない。水道普及率97%を誇る日本。今後も水道事業は生き残っていけるのだろうか。今、その岐路にさしかかっている。
(10月7日、産経新聞)
★上記のフランスの水メジャー「ヴェオリア」と「スエズ」の給水人口はそれぞれ1億800万人、1億2500万人。2025年には世界全体で100兆円市場になる国際水ビジネス。水と安全はただと思い込んでいる日本人を尻目に、開発途上国で先行しているフランスなどの企業がビジネスチャンスをつかんでいる。日本でも2001年に水道法が改正され、水道事業の包括的な民間委託が可能となった。日本最大の水道局を有する東京都が4月、整備から課金システム構築まで、水道事業を包括して受注することを目的とする「海外事業調査研究会」を設置した。石原慎太郎都知事が4月の定例会見で千葉県・手賀沼の浄水事業をフランス企業が50億円で落札したことに「フランスごときがしゃしゃり出て、手賀沼の浄水をやるなんて、こしゃくな話だ。こんなの東京の技術力ですぐにできた」憤ったというエピソードがある。 

日本経済の秘密兵器:女性
■日本経済の見通しは一段と暗くなった。日銀が6日発表した10月の金融経済月報で、景気判断を引き下げたのだ。政策手段がほとんど尽きるなか、景気浮揚のために日銀と政府は何ができるのだろうか。日本の国内総生産(GDP)を最大15%押し上げる簡単な方法が存在する。ゴールドマン・サックスの最近のリポート「Womenomics 3.0: The Time is Now」は、より多くの女性を労働力に加えるべき、としている。
■これによると、日本女性の就業率は現在、過去最高の60%だが、男性の80%を大きく下回る。女性の就業率も80%になれば、820万人が労働力に加わり、日本のGDPは最大15%増加する可能性がある。ゴールドマンは「日本は最も活用されていない資源に手をつける以外に方法はない」とし、「片足でのマラソンは難しい」との見方を示した。
■日本は人口動態上の時限爆弾を抱えている。総人口は2055年までに約30%減少する見通しだ。厳しい移民政策により、国内の労働力に外国人が占める割合は、経済協力開発機構(OECD)加盟国中、最も低い2%未満だ。日本女性の70%が第一子の出産後に労働力から離脱する事実が、状況を一段と悪化させている。ちなみに米国女性の場合、離職率は約33%だ。日本女性が高学歴であることを考慮すれば、70%の離職はあまりに痛い。この不均衡を是正するために、日本は何ができるのか。ゴールドマンのリポートによると、それは託児所と保育園の受け入れ能力の拡大と利用料金の適正化、そして女性に仕事の一部のアウトソースを可能にする移民法の改正だ。日本は今後数十年の間に何らかの手を打つ必要がある。さもなくば、苦境から永久に脱却できなくなるかもしれない。
(10月7日、WSJ日本版)



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posted by cyberbloom at 01:04 | パリ | Comment(0) | TrackBack(0) | 週刊フランス情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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