2006年04月06日

『ファストフードが世界を食いつくす』−BSE問題の背景

ファストフードが世界を食いつくす税関で食用牛の危険部位が見つかった事件を受けて、体たらくな日本のマスコミですら、アメリカの食肉事情の内幕を暴露し始めた。アメリカ政府が食肉の業界団体と癒着していること、すでにアメリカで発症したBSEをもみ消していること…。アメリカの要人が次々と日本にプレッシャーをかけるが、BSE問題がどのように決着するのか目が離せない。

以前、エリック・シュローサーの著作、『ファストフードが世界を食いつくす』と『ファストフードと狂牛病』を取り上げたが、とりわけ前者が赤裸々にリポートするアメリカの食肉産業の実態はスプラッター映画を思わせる。食肉加工工場の光景は凄まじく、「アメリカの解体方法では、本来安全な部分にも危険部位が混ざる可能性がある」ことをリアルに伝えている。アメリカでの視察から帰ってきた議員さんや業界の人たちも「解体方法が雑だ」と口々に言っている。

ファストフードと狂牛病アメリカのファーストフード業界が「スピードと効率」を果てしなく追求した結果、極端な合理化が非合理へと反転してしまった。そういうシステムの最大の被害者はジャンクフードの消費者であるアメリカ国民自身だ。過剰な脂肪と添加物で健康を脅かされ、自国の食文化は破壊されてしまっている。

この「スピードと効率」は産業自体の構造でもある。mcjob(マックジョブ)という言葉がある。要するにマックのバイトの仕事だが、「夢も希望もない低賃金の仕事」を意味するらしい。さらに「裏マックジョブ」と呼ぶべき仕事がある。現場は先ほど述べた食肉加工工場だ。そこでは不法移民など、アメリカの最底辺の人々が劣悪な労働に従事させられている。次から次へと送り出されてくる肉の塊を休みなくチェンソーや電動ナイフで切り刻む。誤って隣の同僚や自分の身体の一部を切り落とす事故が頻発するが、もちろん怪我をすれば即刻解雇。確かにこれじゃ、危険部位もへったくれもない。あまりにひどい労働環境に覚醒剤まで支給されているのだとか。ファーストフード・マシーンはあらゆるレベルで人間の尊厳と文化(つまりは人間と自然の関係のあり方)を破壊し、世界に拡散しているわけだ。

地球は売り物じゃない!―ジャンクフードと闘う農民たちフランスにもマクドナルドが多いが(実はフランス人は無二のアメリカ文化好き)、マクドナルドを「多国籍企業による文化破壊の象徴」として解体してしまったジョゼ・ボヴェという戦う農民がいる。彼は遺伝子組み換え作物の刈取活動にも取り組んでいて、一見過激に見える反グローバリゼーション活動だが、フランスでは一定の支持を得、地方の主張や国の行動に確実に影響を与えている。

長寿県として知られる沖縄で平均寿命がどんどん下がっていると聞く。沖縄はアメリカ軍の基地のおかげで、マクドナルドが日本に初上陸した場所。歴史が長い分だけ、他県よりも影響が深刻なようだ。1ヶ月マクドナルドのみを食べ続けるという、モーガン・スパーロック監督が自ら実験台となった恐怖の人体実験ドキュメンタリー「スーパーサイズ・ミー」のDVDも出てるので要チェック!。

さらにリチャード・リンクレーター監督が新作『ファースト・フード・ネイション』を撮った。これは『ファーストフードが世界を食い尽くす』をベースにしており、著者のシュローサーも脚本に参加。こちらは『スーパーサイズ・ミー』と違って、あくまでフィクションの作品だが、食肉加工工場の凄まじい実態が克明に描かれている。ファーストフード業界からの反発を避けるために別のタイトルで製作が進められ、店の名前もマクドでなく、「ミッキーズ」になっている。歌手のアヴリル・ラヴィーンも出演。アメリカの内部からこのような自己批判の表現が出てくることはとても頼もしいことだ。それでこそアメリカだ。

「ファストフード・ネイション」を見る前に(08/02/10)
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posted by cyberbloom at 15:06 | パリ | Comment(0) | TrackBack(1) | エコロジー+スローフード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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