2007年04月25日

フランツ・フェルディナンドとロシア構成主義

このところのイギリス・ロック界は、若いパワーが方々で炸裂して、なかなか盛り上がっています。なかでもフランツ・フェルディナンド(Franz Ferdinand)という名の4人組は、細身のスタイルでまとめた端正なルックスに、80年代のニューウェイヴを彷彿とさせる音で一昨年大型新人として注目を集め、去年出た新アルバムも評価が高く(その中にも入っている "Do you want to" は今ソニーのCMに流れています)、ノリにノッているバンドです。音だけでなく、彼らのヴィジュアル戦略も面白い。アルバムのジャケットや、公式サイト、そしてヒット曲 "Take me out" のプロモーション・ヴィデオ(以下PV)はどこかで見たような・・とよくよく考えてみたら、ロシア構成主義の作風をまんま取り入れているのでした。

ロシア構成主義って実際のところ何なんだろう、と調べてみると、ロシア・アヴァンギャルドと呼ばれた美術運動のひとつで、このロシア・アヴァンギャルドというのは、19世紀末からロシアでフランス近代絵画を始めとする西欧美術が次々紹介されたことで、20世紀初頭に突如生まれた芸術現象を包括したもの。ウィキペディアには、ロシア構成主義の「特徴は、抽象性(非対象性・幾何学的形態)、革新性、象徴性等である。平面作品にとどまらず、立体的な作品が多い」とあります。

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"Take me out"のPVは、コラージュ (collage) 技法によるアニメです。コラージュというのは、もともとピカソやブラックといったキュビスムの画家たちが実践していた、カンバスに絵の具以外の要素を貼付けるパピエ・コレ (papier collé) をさらに発展させたもので、ドイツのダダ、フランスのシュルレアリスムといった芸術運動においても、さかんに行われました。現実の断片を作品に直に取り込みながら、イメージとイメージがぶつかりあい、さらには思いも寄らぬ新しいイメージが生み出される・・という効果を狙ったものでした。立体的な要素を使った3次元的なものはアッサンブラージュ (assemblage) 、写真を取り入れたものはフォトモンタージュ (photomontage) と呼ばれ、ロシアではアレクサンドル・ロトチェンコなどがコラージュやフォトモンタージュの作品を多く残していますが、彼の作風はまさにフランツのPVに激似です。

ロシア構成主義の精神はその後ドイツの造形大学バウハウスの理念に影響を与え、そのバウハウスの理念はアメリカや日本など受け継がれていきます。20世紀初めのヨーロッパは、ロシア・アヴァンギャルドのほか、ダダイスム、シュルレアリスム、未来派などといった前衛的な芸術運動が次々と生まれ、それぞれが互いに影響し、影響されあいながら発展し、さらに世界へと発信されていくという、活気ある状況だったんですね〜。そして、それが時代を経てイギリスのロックバンドのPVに使われるなんて、感慨深いじゃありませんか。

今回はフランスとあんまり関係ない内容でしたが、そこはまあご愛嬌。一応技法名は全部フランス語だ、ということで〜。

(2006年3月25日のエントリーを再掲)


Take me out / Franz Ferdinand (PV From Youtube)


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フランツ・フェルディナンド
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