2006年03月19日

兵役とスポーツ

「ニート」って言うな!韓国政府は、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で準決勝に進んだ韓国代表チームの崔熙渉(ドジャース)ら11人の兵役免除を決定した(17日、共同通信)。韓国では五輪で3位以上など国際大会での活躍により兵役免除が決まる。

兵役免除が高めるモチベーションがどれほどのものなのか、兵役のない国の私たちには想像がつかない。これは前回のサッカーのワールドカップの際にも議論のテーマになった。共同開催国の韓国がイタリア、スペインを破り、3位決定戦まで戦った。日本は決勝トーナメントに進出したが、そこで終わった。「日本の若者は根性がないのは、コンビニなどが日常化していて、いつも欲望が瞬時に満たされる状況にあるからだ。韓国が強国に最後まで食い下がれたのは、兵役の厳しい訓練がハングリー精神を育てているからだ」−あたかも「日本の若いやつには兵役を課して、根性をつけさせた方がいい」と言いたげな論調が横行していた。こういう議論がまことしやかに徴兵制復活の根拠に結び付けられる。これは今のニートというレッテル貼りにもつながる。引きこもりやニートをやらせておくくらいなら、戦場でもどこで働きに行かせろ。こういう論理の飛躍に騙されてはいけない。そう言えば、「ニートって言うな!」って本が出ている。この言葉がジイさん・オジさんたちからの言いがかりにすぎず、いかにスケープゴート的なレッテル貼りとして機能しているかを社会学的に分析している。

書いているうちに、日本が韓国を破った。6-0で完勝。これで日本チームの敗戦のストレスで「若者根性なし論」が再燃するのを見なくてすみそうだ。

パリで知り合った韓国の友人が、彼の車の鍵をこじ開け、中を物色していたコソ泥をテコンドーの技一発でのしてしまった。「すごいな」って言ったら、「当たり前だ、人を殺す訓練もしているからね」と涼しい顔で答えた。韓国に兵役のあることは知っていたが、隣の国の凄まじい現実にギョッとさせられた。

しかし、兵役で培われた根性が、韓国のスポーツ選手のモチベーションを高め、勝利への執念を燃やしているのだと単純に考えてはいけない。それほど兵役は辛いのだ。韓国の若者に投げかけている暗い影にこそ注目すべきなのだ。兵役逃れをした韓国の俳優が激しくバッシングされたように、なぜおまえばかり逃げるんだという同質圧力も強い。韓国のドラマには兵役という現実が自然に現れると聞く。それが男女のあいだを引き裂いたり、人生の長い中断になったりしている。以前、韓国と台湾の兵役に関するドキュメンタリーを見たが、多く若い韓国人にとって兵役は不条理な壁として存在しているようだ。

フランスでは1997年にシラク大統領によって兵役が廃止された。次の戦争はおそらくハイテク戦争なので、高度に訓練されたエキスパートが戦うだろう。その場で駆り集めるような素人に出番はない。それまで兵役は、いろんな地域から集まった同じ世代の若者が出会い、兵舎で生活をともにし、同じ国に属していることを確認する機会になっていた。現在、フランスの若者は兵舎に何ヶ月も閉じ込められる代わりに、警察や消防の手伝いをしたり、貧しい地域で社会奉仕をしたり、外国へ協力活動に出たりしている。相変わらず若者は国家の名の下に集っているが、やることはボランティアだ。大きな重いボートをみんなで肩にかついで徹夜で立っているような、「訓練のための訓練」をするよりは、そういう活動で苦労をしたほうが断然いいに決まっている。

田中康夫が、「続憂国呆談」
(週刊ダイヤモンド)の最終回で、韓国で発達しているブログ・ジャーナリズムを、韓国の民主主義は自ら勝ち取ったものだから、根性が入っていると評していた。そういう根性こそ見習いたいものだ。そうそう、パリでは数日前から、学生を中心に大規模なデモが組織されている。大学を占拠した学生が、機動隊に排除されたり、日本では完全なノスタルジーとして封印されている光景がフランスでは今も現実なのだ。学生といっても、中心は高校生だったりする。デモはドピルパン首相が提出した新しい雇用法案をめぐって若者の怒りが爆発したのだが、割を食っているのは日本の若者だけじゃない。

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posted by cyberbloom at 18:06 | パリ | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事+トレンド特集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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