2006年03月13日

音楽で観る映画(1)「ロシュフォールの恋人たち」

Demoiselles.jpg映画を楽しむ要素として、監督、俳優、脚本、映像などいろいろ挙げられますが、音楽もまたその一つ。印象深い音楽を聴かせてくれるフランス映画はいろいろありますが、今回はジャック・ドゥミ監督の「ロシュフォールの恋人たち」(1965)をご紹介しましょう。

この作品は、大西洋に面した港町ロシュフォールに暮らす美しい双子の姉妹の恋物語を中心に、この町にやってきたさまざまな人々のエピソードをロマンチックに織りまぜた映画です(注1)。双子を演じるのは、実の姉妹であるカトリーヌ・ドヌーヴとフランソワーズ・ドルレアック。また名女優ダニエル・ダリュウ、ジャック・ペラン(注2)、渋いおじさまミッシェル・ピコリといったフランス人俳優だけでなく、ジョージ・チャキリスとジーン・ケリーというアメリカの俳優も出演するという豪華な顔ぶれです。

映画に詳しい人にはチャキリスとケリーという名前でピンと来るかもしれませんが、彼らはそれぞれ「ウェストサイド物語」、「雨に唄えば」という有名なミュージカル映画の主演男優。そうです、この「ロシュフォール」もミュージカル作品で、ある意味音楽が主役の映画なのです。

66Demoiselles03.jpgその音楽を担当するのは、ミシェル・ルグラン。フランスの映画音楽を語るときには欠かせない人物です。彼は実にさまざまな映画音楽を手がけており、とりわけジャック・ドゥミ監督と組んだ「シェルブールの雨傘」と、この「ロシュフォール」は成功をおさめました。ルグランが紡ぎだすのは、ジャズ、ポップス、クラシックなどが融合された、華やかで、上品で、「粋」な音楽‥‥というと何だかとっつきにくい感じがするかもしれません。しかし「ロシュフォール」で聴こえてくるのは、つい鼻歌で出てきてしまいそうな、実に親しみやすい、そしてどこか懐かしさを感じるメロディーばかり。また最近まで車のCM音楽に使われていたので、冒頭に流れる旋律に聴き覚えのある人も多いのではないでしょうか(注3)。

ルグランの軽快な音楽に合わせ、俳優たちはロシュフォールの町じゅうを終始歌って踊りまくります。今では貫禄たっぷりの大女優ドヌーヴ様もこのときはまるでお人形さんのよう。姉のフランソワーズ(注4)と息の合ったコンビぶりで、2人が町のお祭りで演ずるショーは見ものです。また「大御所」ジーン・ケリーは出番はそれほど多くないですが、さすがに登場すると存在感があり、笑っちゃうくらい愉快なステップを披露してくれます。

66Demoiselles04.jpgウキウキするようなメロディー、俳優たちの着こなすカラフルな60年代ファッション(これも必見!)、そして太陽の光にあふれた明るいロシュフォールの町‥‥この映画はすべてに生きるよろこびが物語られている、チャーミングな作品です。実は私はミュージカルは苦手なんですが、「ロシュフォール」だけは別。いきなり人々が歌って踊りだす状況に違和感を覚える人にも、おすすめしたい映画です。残念ながらDVDの生産は終了してしまったのですが、大きなレンタルビデオ店なら見つかると思いますよ。

注1:未解決の殺人事件、といった暗いエピソードも何気なくまじっています。

注2:「ニュー・シネマ・パラダイス」を観たことがある人なら、最後に映画館で泣いている人、といったらわかるかな? 最近では「WATARIDORI」という映画も監督しました。

注3:ルグランの音楽は、現在も某発泡酒のCMに使われています。

注4:この映画の公開後、フランソワーズは若くして世を去りました。それだけに、「ロシュフォール」の人生賛歌には感慨深いものがあります。


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posted by cyberbloom at 22:41 | パリ | Comment(0) | TrackBack(0) | フランス映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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