2006年03月07日

WASABI

WASABI普段、死んだ魚の目で授業を受けている女子学生たちが、突然、目を輝かせて「フランス語、がんばる!」と言い出します。やはり彼女たちは、広末涼子がフランス語をしゃべっているのを見て勇気づけられるようです。それも彼女たちが見慣れた日本の風景の中で。ヒロスエはこの映画のためにフランスで、1ヶ月、フランス語の猛特訓したそうです(インタビュー参照)。フランスのサイトを見ると、彼女の演技とフランス語は賛否両論だったようですが、大俳優ジャン・レノを相手にあれだけしゃべれれば大したものですね。
 
『WASABI』は確かに、映画好きには物足りない、B級アクション映画なのですが、「テクノ・オリエンタリズム」という視点から見ると、とても興味深い作品です。つまりは、日本を先端のテクノロジーと古来の伝統文化が混在した国として見る視点なのですが、それには憧れと軽蔑というアンビヴァレントな感情がともなっています。

この映画は製作・脚本がリュック・ベッソン、監督は『TAXi2』も撮っているジェラール・クラヴジック。彼は『TAXi2』でも「ニンジャー!」など、日本ネタを随所にちりばめています。「WASABI」のDVD付録のインタビューでクラヴジックは、お約束のようにリドリー・スコット監督の「ブレードランナー」に言及しています。スコット監督の「ブラック・レイン」(これが遺作となった松田優作の鬼気迫る演技、サイバーシティー、大阪が舞台)も同じ系列の作品として挙げられるでしょう。

『WASABI』の舞台が東京に移るなり、フランス人の確信犯的な日本幻想が炸裂しています。細かく見ていくとけっこう芸も細かく、「先端と伝統」の対比も徹底されています。…アキハバラを通って浅草寺へ。携帯の着メロとお寺から流れるお経が重なる。遺体は天冠(幽霊が頭につけている三角の布)をつけ、一方でTVモニターを通して送棺する。フランス人もビックリなゴルフ練習場(接待ゴルフも暗示)と巨大なゲーセン(ジャン・レノがダンス・ダンス・レボリューションを踊らされる)。ヒロスエは銀行で電子サインをし、好んで聴くのは奇妙なオリエンタル・テクノなどなど…。もし、この映画がウソ臭く感じるとすれば、それはまさに「ポストモダン」日本のウソ臭さなんでしょうね。
 
こういう映画を見ると、日本の先端技術を誇りに思ったり、バカにされてんのかなあと感じたり、ナショナリズムの感情が揺れ動くのですが、そういう心の動きを見つめ直すのもいいかもしれません。
 
☆フランス語的見所
ヒロスエがジャン・レノにフランス語の発音を直されているシーンがあります。フランス語の音に関わる話なので、字幕だけ見ていると意味不明です。trou(穴)という音を正確に発音させるために、tigre(虎)とloup(狼)という単語を出してますが、発音するときの口の動きや表情がとても参考になります。

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posted by cyberbloom at 19:56 | パリ ☔ | Comment(0) | TrackBack(1) | フランス映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Excerpt: TBさせて頂きますので、よろしかったらTB返しをお願いします。 とにかくハチャメチャなストーリーですが、全体的にテンポよく進むので気軽に楽しめました。 ユベールは影で護衛をしながら二人は行動を共にする..
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