2007年11月27日

『アメリー』の宝箱―ナンシーのベルガモット・キャンディー

bergamote01.jpgオードレー・トトゥーが中性的な魅力を惜しみなくふりまいた『アメリー』は、フランス人によるフランス人のためのディテールに満ちた(ディテールだけでできた?)映画ではないだろうか。フランス人なら知っている仕掛けがさまざまあった中で、今はさえない中年男になってしまったブルトドーが、アメリーから返してもらった子供時代の宝箱のエピソードを憶えているだろうか。往年の自転車選手のブロマイドやベーゴマといった中身もさることながら、オレンジ色をした金属製の小さな小箱そのものが持ち主の記憶を掻きたてているはずだ。それはフランス北東部の都市、ナンシーの名産であるベルガモット・キャンディーの容器で、市の中心のスタニスラス広場のしゃれた鉄柵とタンポポの花が意匠化されて描かれている。製造元はルフェーヴル=ルモワンヌで、1840年に創業以来、ナンシー駅前の広場に面した店舗でこのベルガモット・キャンディーを売り続けている。ナンシーの銘菓といえばマカロンという焼菓子もあるのだが、これはフランス人の好きなニッキ味が多く、日本人にとっては好き嫌いが分かれるだろう。それに較べてベルガモット・キャンディーは、素朴な味わいながら時代を超えた風味を保っている。そう、100年や200年なんて、フランスでは大した時間ではないのだ。

筆者も以前、ナンシーでベルガモット・キャンディーを一缶買い求めたことがある。しゃれた小箱は最初、フランスのカフェで供される角砂糖を持ち帰ったのを入れておくのに使っていた。今はなぜか、最近引っこ抜いた親知らずを保存するのに用いている。これはこれで、わが記憶の宝箱だ。

□ベルガモットは南欧産の柑橘類で、果皮のオイルを紅茶に混ぜるとアール・グレイ・ティーになる。



セリーX・マニア

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posted by cyberbloom at 00:28 | パリ | Comment(0) | TrackBack(0) | おフランス商品学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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