2010年02月10日

ギリシャの財政危機とユーロの急落

Berlin looks to build Greek ‘firewall’
■Financial markets surged on Tuesday on hopes of a European rescue plan for Greece, as officials in Berlin admitted it was looking at how to construct a “firewall” to prevent the debt crisis spiralling out of control.
■A German government official said that the steep decline in the euro and pressure on bond prices had forced Berlin to ”take a significant step” in how to deal with the crisis.(…)
(February 9, Financial Times)

ドイツ、ギリシャなどに対する融資保証を検討
■ドイツは欧州連合(EU)加盟各国とともに、ギリシャをはじめとする問題を抱えたユーロ圏加盟国への融資保証の提供を検討している。こうした諸国の国債のデフォルト(債務不履行)に対する市場の懸念を沈めるとともに、このところ世界の市場を揺るがしていた信用問題の拡大回避を目指す。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。
■同関係者の一人によると、この計画はドイツの主導で、EUの枠組みの中で実施される見通し。ドイツのショイブレ財務相はここ数日間、欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁と同案について協議を進めているという。この協議は、ギリシャをはじめとするユーロ圏諸国の巨額債務を取り巻く市場の混乱が、通貨統合を弱体化させる可能性があるとの域内の懸念を強調している。
■この保証がどのような構造となるかについては明らかではないが、ギリシャやスペインなどユーロ圏の財政赤字基準に反する諸国が財政緩和政策の後始末を免れるような構想となれば、共通通貨ユーロの長期的な存続可能性をめぐって懸念が再燃する公算が大きい。 それにもかかわらずEUがこうした措置を検討しているということは、政策当局者がユーロ圏加盟国のデフォルトという別の選択肢となれば結果は一層悪く、欧州と世界の経済に深刻な結果をもたらしかねないとみていることを示唆している。
■EU圏の首脳陣は11日にブリュッセルで開かれるEU首脳会議で、状況を協議する見通し。事情に詳しい関係者によると、週内にこの計画の最終決定には至らないかもしれないが、ドイツは既にこうした保証が債務危機の阻止に最も効果的だとの結論に達している。
(2月10日、Wall Street Journal)

先週末に開催されていたG7では、EUが国際通貨基金(IMF)の力を借りずに、自分たちでギリシャの財務問題を解決するとドイツの財務大臣が発言していた。最近、PIIGSという言葉をニュースで見かける。「豚」の複数形のスペルミスではない。ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン、つまりソブリン・リスクを抱えた国の頭文字である。これらの国の信用力が懸念されているのは、リーマンショック以降、政府が民間の金融機関や企業を救済するために借金の肩代わりをしたり、積極的な財政政策を打って、景気刺激策を実施してきた背景がある。こうした政策には膨大な資金が必要になり、それを税収で賄えなければ、国債を発行するしかない。そうすると政府の借金が雪だるまのように拡大し、その債務の返済能力に対する懸念が生じることになる。このような国が借金を返せなくなってしまうリスクのことを、ソブリン・リスク sovereign risk(英) risque souverain(仏)と呼ぶ。

現時点で言えば、最も問題なのがギリシャで、次にポルトガル、スペインと続く。ギリシャの財政赤字の対GDP比率は12.7%に達し、金融危機後の緊急時とはいえマーストリヒト条約の3%をはるかに越えている。少し前にはドル決済からユーロ決済に移行するという話が出るくらい、ユーロの信用はバブっていた。今回、多数の国が参加する統一通貨の弱点が暴露されてしまった。

日本だって全く他人事ではなく、今や新規の国債発行額が税収を上回っている状態で、総額は1000兆円にも迫る勢いだ。国の借金の担保としてしばしば挙げられる日本の個人金融資産は約1400兆円と言われるが、それを越えてしまうのは時間の問題と言われている。

この機会にEU諸国のEU全体に対するGDP比率を見ておこう。2007年のデータ(GDP:単位は10億USドルとEU全体に対する比率)である。

ドイツ 3,080.6 19.4%
フランス 2,401.4 16.8%

PIIGS
ポルトガル 211.7 1.3%
イタリア 1,993.7 12.6%
アイルランド 250.2 1.6%
ギリシャ 341.8 2.2%
スペイン 1,359.1 8.6%

イタリアやスペインが入るとかなり大きいが、ポルトガルとギリシャくらいならデフォルトを起こしてもそんなにダメージがないように見える(2国合わせて3.5%)。ギリシャ問題が引き金になってユーロは急落に見舞われているが(1ユーロ=121円を底にとりあえずリバウンド)、以前からサルコジ大統領はユーロが高すぎると言い続けてきた。ここにきて図らずも彼の願いが実現したわけだ。ユーロ安はヨーロッパの輸出国にとっては好都合に違いないが、ユーロ存続の危機につながってしまえば元も子もない。



cyberbloom

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posted by cyberbloom at 13:06 | パリ ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 時事+トレンド特集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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