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今回スポットを当てるのは、リシャール・ピナス Richard Pinhas という人物。今から40年ほどさかのぼる五月革命の1968年前後、当時高校生のピナスはブルースに興味を持ち、ブルース・コンヴェンションというグループに参加していた。グループには後にマグマ Magma (そのうち紹介!)のメンバーになる、クラウス・ブラスキーズがいた。その後、ピナスはソルボンヌ(パリ第4大学)に登録し、哲学の勉強を始める。それと平行してスキゾ Schizo というグループを結成。スキゾは72年にシングルを録音するが、自身の博士論文が忙しくなって同年に解消する。その« Le Voyageur/Torcol » (写真のアルバム「SINGLE COLLECTION 1972-1980」に収録)という45回転シングルでは、ニーチェのテクストを朗読するジル・ドゥルーズ Gilles Deleuze の肉声を聴くことができる。68年のモノクロ映像を背景にこのレアチューンを聴けるなんて粋な演出である。
ピナスはドゥルーズの講義を受け、思想的に大きな影響を受けている。リゾスフィア組曲 Rhizosphere suite など、彼の曲のタイトルにもそれが伺える。一方、彼の博士論文の指導をしたのは『ポスト・モダンの条件』で知られるジャン=フランソワ・リオタールJean-François Lyotard で、彼の指導のもと「スキゾ分析と SF の関係」というタイトルの博士論文を書き上げている。
博士論文のタイトルからも察せられるように、SFに深い関心を抱いていたピナスは73年にロサンジェルスでノーマン・スピンラッド Norman Spinrad と初めて会う。彼にフィリップ・K ・ディック Philip K. Dick を紹介され、「マガジン・アクチュエル magazine Actuel」にディックのインタビューを掲載する。74年、ピナスはエルドン Heldon を結成。グループの名前はスピンラッドの小説『鉄の夢 The Iron Dream』に出てくる都市にちなんでつけられた。
そしてリシャール・ピナスが音楽の師と仰いでいたのが、キング・クリムゾンの超絶技巧のギタリスト、ロバート・フリップである。キング・クリムゾンは『クリムゾン・キングの宮殿』で1969年に衝撃的なデビューを果たし、ビートルズの『アビイ・ロード』をチャートから引き摺り下ろしたと言われている。赤い顔のジャケットに見覚えのある人もいるだろう。それ以降、フリップはバンドのメンバーを次々と交代させ、グループのカラーも時代によって大きく異なる。個人的にはファースト・アルバムや『アイランド』も捨てがたいが、1972年以降のビル・ブラッフォード Bill Bruford 、ジョン・ウェットン John Wetton 、デヴィッド・クロス David Cross 、ジェイミー・ミューア Jamy Muir らが集結した時期、アルバムで言えば、『太陽と戦慄 Lark’s tongues in aspic 』『暗黒の世界Starless and Bible Black』『レッド Red 』が一押しである。クリムゾンは1974年に解散し、1981年に再結成する。そして去年は、キング・クリムゾン(King Crimson)のデビュー40周年で、それを記念したスペシャル・アイテムが発売されていた。
一方で、ヴァイオリンやメロトロンが醸し出すヨーロッパ的な夢幻と哀愁も忘れがたい魅力のひとつだ。『暗黒の世界』に収められた Night Watch と Trio は美しさの極みである。
また専属の詩人が歌詞を書いていて、文学的な曲のタイトルと象徴的なジャケットの絵柄もいかにもプログレのバンドらしい。Lark’s tongues in aspicを『太陽と戦慄』と訳している邦題の意図もよくわからないが、『暗黒の世界』の原題 Starless and Bible Black は20世紀前半に活躍したウェールズの詩人、ディラン・トーマスの劇作品「Under Milk Wood.」の一節から引用されている。
いかにも一般受けしそうにない音楽ではあるが、クリムゾンはCMと無縁だったわけではない。最も有名な曲「21世紀の精神異常者 21st century schizoid man 」がときどき思い出したようにCMに使われるし、08年にオダギリジョーをフィーチャーしたトヨタのCMに「Easy Money」が使われていた。
ところでリシャール・ピナスに話題を戻すと、彼の場合、キング・クリムゾンというよりはギタリストのロバート・フリップからの影響が大きい。エルドンのサウンドはグループによるジャズロックというよりは、ギターとシンセサイザーを使った実験性の高い音楽だった。フリップはかつてフィリッパートロニクスというオープンリールテープレコーダーを使った独自のディレイ・システムを使っていたが(最近では Windows Vista のサウンドを担当した)、ピナスのギターはフリップのギター奏法やサウンド・エフェクトの影響を受け、とりわけフリップの音楽のヘビーメタリックな質感を受け継いでいる。
■定年退職前の厳しくも優しいロペス先生のもとで、勉強したり遊んだりする13人の子供たちの姿を追った、心温まるドキュメンタリー映画。Etre et Avoir―タイトルにもなっているこの二つの動詞から見ても、フランス人にとってのフランス語の始まりも、日本人がフランス語を始めるときと全く同じなんだな、と分かります。フランス語をやっている人なら、まるで自分も小学生になったような気分になり、子供たちと一緒に「うぃぃ〜!」「ぼんじゅ〜る、むっしゅ〜」と言ってしまいそう。