2010年01月07日

ふたたび掃除をするようになった生徒たち

繁栄とともに失われてしまった掃除当番が学校に帰ってきた。

日本の夜明けである。まだ始業時間前であるが、生徒たちはトイレにいる。掃除をするためだ。ブラシをあてがわれ体操服を着て、みんなで熱心に磨き掃除をしている。そのうちの何人かはひざまずき、真面目に熱心に洗面台などにブラシをかけている。「隠れた汚れがないか手で触ってたしかめなさい」と先生が指示している。

これは、朝日新聞に掲載された東京近郊の公立中学での光景である。ところがこの光景は日本のほとんどどこででもみられるものである。トイレも含めて生徒による学校の掃除がふたたび脚光を浴びるようになった。

ほとんどすべての児童や生徒がかかわっているのである。トイレ関連メーカーや清掃会社などが合同でおこなった調査によると、95%の小学生と97%の中学生がトイレ掃除に参加している。

謙虚さを学ぶ

目的はなによりも精神的なものである。謙虚さやイジメ問題、日本文化の特徴である集団精神を学ぶことだ。「他人の多くが嫌がる仕事をやることによって、私たちは謙虚であることを学ぶのです」と鍵山秀三郎さん(76)は説明する。日本を美しくする会の創設者で、その目的はしっかりした掃除の方法を教えることであり、さきほど紹介した中学校の生徒にも掃除の指導をしていた。「トイレを掃除することで精神が磨かれるのです」と、この元中小企業の社長はつづける。彼は、自動車部品の流通をする会社を経営していたが、そこのトイレも自らの手で掃除していた。

こうした行為は、軍国主義的であった戦前の日本においてよくみられたものであり、1980年代、日本経済が大繁栄した時代に失われてしまった。学校の管理は用務員や民間企業に委ねられていた。これらは時代の風潮をあらわしているのだろうか? 伝統的美徳への回帰は、昨年、日本人が戦後はじめて民主主義的な政権交代を実現させ、中道左派政党の民主党に投票したときと重なる。格差の広がりやより団結した社会への郷愁にたいする反応をあらわす、政治的大転換のことである。子どもにトイレ掃除という仕事を課すことはこうした平等への強い願いをあらわしているように思われる。子をもつ親を対象とした世論調査によると、100%のひとびとがこれを好ましく思っている。そのうちの何人かは質問自身にたいして驚いた様子をみせる。「あなたはなににショックを受けているのですか? 子どもたちが掃除をすることか、それともトイレ掃除に従事していることでしょうか?」と、銀行で管理職のしている夫をもち、母親でもあるヨウコさんはたずねてきた。西洋の精神の不可解さを読みとろうとするかのようだった。

(訳者註:唐突に学校の掃除と戦時中の日本が結びつけられるなど、とくに後半部はツッコミどころ満載で、理解に苦しむ箇所も多々ありますが(あと、学校の掃除の伝統が80年代になくなり、最近復活したなんて聞いたことがない)、まぁこれも文化の違いってところでしょうか。なお欧米では、生徒が学校の掃除をするというのは当たり前のことではないようです)





★日本各地及びスリランカとパリにチーム拠点を置き、街の清掃活動を行う原宿表参道発信の非営利組織グリーンバードが去年エッフェル塔周辺で掃除活動をして話題になった。それがフランスのテレビ局TF1のサイト上で紹介されたところ、様々なコメントが寄せられた。その中で多かったのは、グリーンバードの活動に敬意を表するものの、パリに住む人たちは、清掃は行政が中心に行うサービスなので掃除のボランティアはあまり意味がないと思っていると。つまり、フランス人の多くは街の清掃はある一部の人たちに割り当てられる仕事だと考えている。ボランティアで清掃をするとその人たちの仕事が奪われてしまうと考えるかもしれない。失業率を下げるために清掃の仕事を一時的に増やすという話もよく耳にする。そういう意味でフランスでは街の清掃は政治の問題なのだ。しかし、そういう分業は階級社会的な発想が根底にある。みんなが清掃のボランティアにいそしめる社会の方がいいに決まっている。
★しかし、街の清掃とトイレ掃除ではちょっと事情が違ってくる。日本には新入社員に素手でトイレ掃除をさせる会社があるらしいが、それはある種人間の尊厳を剥ぎ取り、社畜にする意味があるのだろう。学校でトイレ掃除をすることには別に異論はないが(身の回りのことは自分でやれるようにするという意味で)、精神論にまで落とし込む必要はないだろう。
(cyberbloom)




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posted by cyberbloom at 21:30 | パリ 🌁 | Comment(0) | TrackBack(0) | フランスから見た日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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