2009年11月10日

「シルバーショック」に見舞われる日本(後半)―Le Figaro より

老人たちを手助けする老人たち

いくつかのタブーがなくなりはしたが、日本固有の和の習慣も消えてしまった。さきほど挙げた施設の責任者が1つの解決策を考えた。「あなたがたの国フランスには隣人祭りがありますが、それは人々のつながりを作りだすよい方法です」。おなじ町に住む住民同士でやるバーベキューの伝統は日本においてまだ根強いと思われていた。「残念ながら、それももう頻繁にはおこなわれなくなりました」とため息を吐く。またべつのボランティアで、髪の毛を短く刈り、入念に手入れをしたあごひげをたくわえたヤマザキさんは笑いながら冗談を口にする。「私は70歳で一人暮らしをしています。私自身が助けを必要とする前に、他人の手助けをするのは当然のことだと思います」。日本では、老人たちが老人たちを手助けしているのである…。同年代の多くの人々とおなじく、ヤマザキさんもまた仕事を続け、毎晩、銀座にある彼のレストランの厨房に立ちつづけている。日本大使館の契約料理人として世界中を飛びまわったキャリアがあるのに、退職年金を受けとる権利を得られなかったとヤマザキさんはいう。高齢労働者は東京の至るところでみられる。守衛、ビラ配り、職人、さらに企業幹部。多くの会社が65歳の定年を迎えたあとも、給料を下げてより負担の少ない仕事をあてがいつつ従業員の一部を雇用している。

東京に隣接する蕨市は社会福祉事業センターに施設を提供している。これは日本に多くみられる団体で、「シルバー労働者」を雇用している。シルバー労働者たちはみな給料をもらい、仕事を続けたいと思っている。「手薄な年金を埋めあわせるために職を求める人たちもいれば、孤独を避けるためにという人たちもいます」と所長はいう。関心のある高齢者たちが会費を払い、リストに登録してもらうというシステムになっていて、給料はこの団体を通じて雇用主から支払われることになっている。実際の仕事は、高齢者たちの現役時代の職業とはかならずしも関係しない。元事務職員は近くのネットカフェの清掃をすることになった。最高齢者はパートタイムで庭師をしている82才の男性である。未来へのイメージ? 年金財政を管理するためには、受給年齢を70歳まで引きあげねばならないかもしれない。2025年には労働人口の4割が50歳以上になるのである…。

女性一人につき1,37人の子ども

若者たちは子どもを作らない。現状のまま世代交代するとしたら2,07人生む必要があるが、2008年度で女性一人につき1,37人である。短期的にはこの傾向は変えられない。1億2700万人いるいまの人口が、2025年には10%減少する。その理由はさまざまだ。非正規雇用の30%を占める男性たちは配偶者をみつけるのに苦労している。べつの生き方を模索する男たちもいる。彼らのことをジャーナリストの深澤真紀は「草食系」と名づけた。「肉食系」とは対照的に、彼らは性や結婚、消費にほとんど関心を示さない。これは疑問が投げかけられているように思われる日本の生活様式そのものである。家族が個性を成熟させる媒介とはみなされていない生活様式である。あいかわらず多くの男性は、「組織の団結」のために同僚と外で飲んでから、夜遅く帰宅する。彼らは平日、子どもたちの顔をみないこともあるし、休日は休日で多くの子どもたちは受験競争に踏みとどまるために塾に通っている。

公務員はべつの障害に直面する。2年ごとに転勤させられ、子どもを転校させないために単身赴任を迫られることもある。これらのことが原因となってどんどん晩婚化が進んでいる。30歳から35歳までの男女の3分の1以上が独身で、婚外子もめったにいない。対応策はほとんどない。つねに外国人を警戒する閉鎖的な社会では、移民のことを口にするのはタブーとなっている。まもなく在留外国人はみな、警察に身元を明らかにするための在留カードをもたされることになる…。外国人労働力の輸入は制限されたままだ。老人ホームの人員不足を穴埋めするインド人看護婦たちは、3年間のうちに日本語をマスターしなければ帰国せねばならない。彼女らにとってほぼ不可能だろう。新政権は出産を奨励するために、子ども一人につき月額2万6000円を中学卒業まで支給する政策を打ちだしている。日本列島の高齢化を好転させるには十分でないと思われる対策である。





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posted by cyberbloom at 20:44 | パリ | Comment(0) | TrackBack(0) | フランスから見た日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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