2009年10月16日

皆既日食のための音楽 KLAUS NOMI + PINK FLOYD

世界が地球上で閉じていた時代には皆既日食はとんでもない出来事だった。すべてをつかさどる太陽が隠れてしまうのだから。しかし近代の科学主義を受け入れている私たちにとって日食は不吉さの象徴ではなく、単なる天体ショーに過ぎない。天体ショーに過ぎないとはいえ、そのスケールを目の当たりにすると人間の営みのちっぽけさを思い知らされる。次の日本で起こる皆既日食は26年後の2035年9月2日というから、マジで自分がもう生きていないかもしれないという現実に愕然とする。

20世紀末の1999年の8月にパリで皆既日食を見た。真昼間なのに突然夕方になったように暗くなって、弱々しい太陽の光が油を塗りこめたようにギラギラし始めた。日食のせいかは知らないが、その年のパリの夏はひどく寒くて、8月上旬なのにジャケットを着ていても寒く感じるほどだった。



明日は何十年に一度の extra-ordinary な日なわけだが(本エントリーは main blog で09年7月23日に掲載)、そんな日には extra-ordinary な音楽がふさわしい。Total eclipse と言えば、この人物を真っ先に思い出す。クラウス・ノミ Klaus Nomi である。パリでの皆既日食の日も一日中この曲をかけていた。

バックバンドの白いつなぎの衣装は時代を感じさせるが、クラウス・ノミの風貌は時代を超越してしまっている。途中で現れるダンサーたちとのかけ合いの暗黒ぶりも尋常ではない。クラウス・ノミはデヴット・ボウイのバックコーラスとして脚光を浴びたが、その強烈なキャラは主役を食ってしまっていた。デヴッド・ボウイも空から落ちてきたとか、スターダストとかぬかして宇宙人性をアピールしていたが、クラウス・ノミの宇宙人度には到底かなわなかった。

クラウス・ノミはエイズで亡くなったアーティスト第1号としても有名である(1983年没)。それは日本でエイズが認知されるよりも早かったと言われている。80年代世代ならばクラウス・ノミが石橋楽器店のポスターに使われていたことを覚えている人もいるだろう。80年代はそういう時代だった。クラウス・ノミは80年代の遺物として忘れ去られたかと思われていたが、2005年に関係者などの証言などを集めたドキュメンタリー映画「Nomi Song」が製作され再び注目を集めることになる。

もう1曲、Eclipseというタイトルの忘れてはならない曲がある。ピンク・フロイド Pink Floyd の名盤 The dark side of the moon (邦題は『狂気』)をしめくくる最後の曲である。「太陽のもとにあるすべてのものは調和の中にある。しかし、太陽は月によって食われてしまう」という一節によってドラマティックなコンセプトアルバムが幕を閉じる。

youtube でこの曲をバックに使った今回の皆既日食のスライドを見つけた。圧巻である。



All that you touch, all that you see, all that you taste, all you feel, all that you love, all that you hate, all you distrust, all you save, all that you give, all that you deal, all that you buy, beg, borrow, or steal, all you create, all you destroy, all that you do, all that you say, all that you eat, everyone you meet, all that you slight, everyone you fight, all that is now, all that is gone, all that's to come and everything under the sun is in tune, but the sun is eclipsed by the moon

(There is no dark side of the moon, really. Matter of fact it's all dark)

The Dark Side of the Moon
The Dark Side of the Moon
posted with amazlet at 09.07.21
Pink Floyd
Toshiba EMI (1991-07-20)
売り上げランキング: 4592
おすすめ度の平均: 5.0
5 気負わずに買ってみ
5 冥福 リックライトを祈って
5 金字塔
5 不思議な引力
5 「通添オリオン」の思い出

youtubeでこのアルバムを試聴できます。





cyberbloom

rankingbanner_03.gif
↑ライターたちの励みになりますので、ぜひ1票=クリックお願いします!

FBN22.png
posted by cyberbloom at 07:58 | パリ ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | Musique pour…のための音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック